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旅の途中。アルビオールが作る日陰部分に隠れながら、皆で食事の用意を始める。 何もない砂浜で、強い陽射しを避けつつ食事する為の苦肉の策だ。 この後、気晴らしのため皆で海水浴をする事になっているので、退くわけにもいかない。 ガイとジェイドが海の幸を調達し、アニスとティアが調理をした。俺とナタリアは極めて自然にはぶられた。 料理のメイン材料は当然、新鮮な魚たちだ。もちろん他にもある。割合でいったら9対1だけど。 見つからないよう超振動でガイごと生臭いソレを消そうとしたら、ティアに叩かれたので止めた。 父上にだってぶたれたことないのにー。 「ルーク」 「な…………なんだよ」 くだらない事を考えていた俺を呼ぶ冷たい声。彼女の顔を見るのが怖く、反射的にそっぽを向く。 怯える俺を、肩をすくめながら笑うジェイドが見えた。 「食べないの?」 「うっ…………」 幻の魚(調理済み)をパクパクと口に運びながらティアが言う。俺の前には全く手付かずの魚料理があった。 「あ〜!! ルークったらまたお魚残してる〜!! それ、せっかくアニスちゃんが作ってあげたのに〜」 「ち、ちげーよ!! これは、その、えーと…………」 「おいおい、好き嫌いは良くないぜルーク」 うるせえよガイ。だったらおまえもトウフとレモンと女嫌いを治せ。 …………マズイ、アニスの目が三白眼だ。このままじゃ料理を作ってくれたアニスに、俺は借りを作ることになる。 ファブレ家の財産が危ない。 そんな時、ファブレ家の財産と俺を救う為、やれやれといった感じでジェイドが口を挟んできた。 一瞬だけのアイコンタクト。数多の戦場を共に越えた戦友だけが出来る技だ。 俺の考えを全て把握し、ニッコリとジェイドが口を開いた。 「ルークは魚を最後に食べる為、分けておいたのでしょう?」 「へ…………?」 「何も言わなくていいですよルーク。嫌いな物を克服する為、あえて最後に魚系を回し、それと一対一の勝負に持ち込む。 いやー、貴方のその『やれることはやる』という姿勢に私は心打たれました」 「いや、ちょっと待て」 何を言ってやがるコイツ。 「ですから私の分の魚も進呈しましょう。これを機に魚類嫌いを克服してください」 「だから待てって、ジェイド!!」 俺の目の前にある皿一杯に幻の魚やメジオラフイッシュ、山のような量のブルブ(クラゲ型魔物)が盛られる。 最後のは魚じゃねえし。モンスターじゃん。食えるのか、つか判る人がいるのか、というツッコミは心の中で押し留めた。 考えたら負けだ。とりあえずこんなもんまで釣り上げたガイを睨んでから、ジェイドに向き直る。 「ジェイド、てめえ裏切ったな…………!!」 「失礼な。私はどこぞの人形使いじゃありませんよ?」 視界の端で落ち込んだアニスとそれを慰めるナタリの姿が見えたが、とりあえず置いておく。 今はこのバスローブメガネをぶっ飛ばすことが最優先だ。 秘奥技くれてやった後に、ディストと並べて首まで砂浜に埋めてやる!! 満潮で溺死しちまえ!! 「これでも喰ら「ルーク、食事中は静かにね」…………はい」 怒られた。ティアは優しい時とそれ以外の時の落差が激しい気がする。 貯まっていたOVLが一気にゼロになったので、項垂れながら砂の上に座り込んだ。もうだめだ。 皆は俺のことなんて気にしないでさっさと料理を食べ終えてしまった。しかもそのまま海に直行。遊んでる。 そんな俺を見かねたのか、ノエルが色々と話しかけてきてくれたが、流石にこんな状況じゃ相槌を返す事もままならない。 このままじゃノエルがかわいそうなんで、皆と一緒に遊んできたら? と提案してみた。 「ですが…………」 「いいからいいから。せっかくノエルも水着に着替えてんだから」 「…………わかりました。それじゃルークさんも後からでいいですから、一緒に遊びましょう。 …………待ってますから」 おー、と気のない返事だけはした。最後にノエルが何か呟いた気がするけど、まあ気のせいだろう。 そんでもって魚の山を睨む。食えそうにもないクラゲは取り除いた。 「…………それで? どうするの?」 「おわっ!? 何だよティア、おまえ、居たのかよ?」 「…………あら、ノエルには何も言わなかったくせに、私が居ちゃマズイのかしら」 「…………いや、そんなことねえけど」 「ならいいじゃない。貴方がそれを食べ終えるのをちゃんと見届けてあげる」 フフ、と微かに笑って言うティアがうざいと思った。 多分、俺がこれを食べないで、捨てる気だった事に気付いているんだろう。 砂の中へ埋める為には、どうにかしてティアを追い払わなくちゃいけない。 「あー…………ティアは遊びにいかねえの? 皆向こうで遊んでるぜ」 「忘れたの? 貴方が言ったんじゃない。俺、変わるから自分の変化を見届けてほしい、って」 「こういう意味で変わるって言ったんじゃないんだけどな…………」 「ほら、早く食べないと遊ぶ時間がなくなるわよ」 それはイヤだ。でもこんなナマモノを食うのはもっとイヤかもしれない。 「…………はぁ。本当に貴方って…………」 「て、ティア?」 突然ティアは立ち上がって、わざわざ俺の隣にまでやってきた。 手に持つ箸を器用に使い、前にある皿から魚の切り身を取る。 「ほら、ルーク」 「え?」 「早く口をあけて」 何言ってんだ、と抗議しようと思って口を開けた途端、箸を突っ込まれた。 「味はどう?」 「………………………………うまい」 「————そう。それ、私が作ったんだけど、口にあってよかったわ」 そう言って俺に箸を持たせるティア。まずい。俺、顔が赤いかもしれない。 「貴方の場合、食わず嫌いなのよ。子供みたいな事してないで、早く食べてちょうだい」 「…………わかったよ」 「…………食べ終えるまで、ちゃんと待ってあげるから、ね?」 「あ、ああ。ありがとう」 ※本日のルークの日記よりいくつか抜粋。 ・今日、少しだけ魚系が好きになった。 ・ミュウが波にさらわれて溺れかける。浮き輪みたいなソーサラーリングは重りになっちまったみたいだ。 ・大量のブルブ(クラゲ型魔物)は日焼けしようと寝てたガイの上に捨ててきた。難易度をアンノウンにしておくのも忘れない。 ・ティアとアニスにしばらくトウフ料理ばかり出してもらうよう頼む。ジェイドは言わなくてもトウフ料理を出してくれる。 ・夜、ティアとノエルが微妙な表情で笑いあってた。何かあったんだろうか。
旅の途中。アルビオールが作る日陰部分に隠れながら、皆で食事の用意を始める。 何もない砂浜で、強い陽射しを避けつつ食事する為の苦肉の策だ。 この後、気晴らしのため皆で海水浴をする事になっているので、退くわけにもいかない。 ガイとジェイドが海の幸を調達し、アニスとティアが調理をした。俺とナタリアは極めて自然にはぶられた。 料理のメイン材料は当然、新鮮な魚たちだ。もちろん他にもある。割合でいったら9対1だけど。 見つからないよう超振動でガイごと生臭いソレを消そうとしたら、ティアに叩かれたので止めた。 父上にだってぶたれたことないのにー。 「ルーク」 「な…………なんだよ」 くだらない事を考えていた俺を呼ぶ冷たい声。彼女の顔を見るのが怖く、反射的にそっぽを向く。 怯える俺を、肩をすくめながら笑うジェイドが見えた。 「食べないの?」 「うっ…………」 幻の魚(調理済み)をパクパクと口に運びながらティアが言う。俺の前には全く手付かずの魚料理があった。 「あ〜!! ルークったらまたお魚残してる〜!! それ、せっかくアニスちゃんが作ってあげたのに〜」 「ち、ちげーよ!! これは、その、えーと…………」 「おいおい、好き嫌いは良くないぜルーク」 うるせえよガイ。だったらおまえもトウフとレモンと女嫌いを治せ。 …………マズイ、アニスの目が三白眼だ。このままじゃ料理を作ってくれたアニスに、俺は借りを作ることになる。 ファブレ家の財産が危ない。 そんな時、ファブレ家の財産と俺を救う為、やれやれといった感じでジェイドが口を挟んできた。 一瞬だけのアイコンタクト。数多の戦場を共に越えた戦友だけが出来る技だ。 俺の考えを全て把握し、ニッコリとジェイドが口を開いた。 「ルークは魚を最後に食べる為、分けておいたのでしょう?」 「へ…………?」 「何も言わなくていいですよルーク。嫌いな物を克服する為、あえて最後に魚系を回し、それと一対一の勝負に持ち込む。 いやー、貴方のその『やれることはやる』という姿勢に私は心打たれました」 「いや、ちょっと待て」 何を言ってやがるコイツ。 「ですから私の分の魚も進呈しましょう。これを機に魚類嫌いを克服してください」 「だから待てって、ジェイド!!」 俺の目の前にある皿一杯に幻の魚やメジオラフイッシュ、山のような量のブルブ(クラゲ型魔物)が盛られる。 最後のは魚じゃねえし。モンスターじゃん。食えるのか、つか判る人がいるのか、というツッコミは心の中で押し留めた。 考えたら負けだ。とりあえずこんなもんまで釣り上げたガイを睨んでから、ジェイドに向き直る。 「ジェイド、てめえ裏切ったな…………!!」 「失礼な。私はどこぞの人形使いじゃありませんよ?」 視界の端で落ち込んだアニスとそれを慰めるナタリの姿が見えたが、とりあえず置いておく。 今はこのバスローブメガネをぶっ飛ばすことが最優先だ。 秘奥技くれてやった後に、ディストと並べて首まで砂浜に埋めてやる!! 満潮で溺死しちまえ!! 「これでも喰ら「ルーク、食事中は静かにね」…………はい」 怒られた。ティアは優しい時とそれ以外の時の落差が激しい気がする。 貯まっていたOVLが一気にゼロになったので、項垂れながら砂の上に座り込んだ。もうだめだ。 皆は俺のことなんて気にしないでさっさと料理を食べ終えてしまった。しかもそのまま海に直行。遊んでる。 そんな俺を見かねたのか、ノエルが色々と話しかけてきてくれたが、流石にこんな状況じゃ相槌を返す事もままならない。 このままじゃノエルがかわいそうなんで、皆と一緒に遊んできたら? と提案してみた。 「ですが…………」 「いいからいいから。せっかくノエルも水着に着替えてんだから」 「…………わかりました。それじゃルークさんも後からでいいですから、一緒に遊びましょう。 …………待ってますから」 おー、と気のない返事だけはした。最後にノエルが何か呟いた気がするけど、まあ気のせいだろう。 そんでもって魚の山を睨む。食えそうにもないクラゲは取り除いた。 「…………それで? どうするの?」 「おわっ!? 何だよティア、おまえ、居たのかよ?」 「…………あら、ノエルには何も言わなかったくせに、私が居ちゃマズイのかしら」 「…………いや、そんなことねえけど」 「ならいいじゃない。貴方がそれを食べ終えるのをちゃんと見届けてあげる」 フフ、と微かに笑って言うティアがうざいと思った。 多分、俺がこれを食べないで、捨てる気だった事に気付いているんだろう。 砂の中へ埋める為には、どうにかしてティアを追い払わなくちゃいけない。 「あー…………ティアは遊びにいかねえの? 皆向こうで遊んでるぜ」 「忘れたの? 貴方が言ったんじゃない。俺、変わるから自分の変化を見届けてほしい、って」 「こういう意味で変わるって言ったんじゃないんだけどな…………」 「ほら、早く食べないと遊ぶ時間がなくなるわよ」 それはイヤだ。でもこんなナマモノを食うのはもっとイヤかもしれない。 「…………はぁ。本当に貴方って…………」 「て、ティア?」 突然ティアは立ち上がって、わざわざ俺の隣にまでやってきた。 手に持つ箸を器用に使い、前にある皿から魚の切り身を取る。 「ほら、ルーク」 「え?」 「早く口をあけて」 何言ってんだ、と抗議しようと思って口を開けた途端、箸を突っ込まれた。 「味はどう?」 「………………………………うまい」 「————そう。それ、私が作ったんだけど、口にあってよかったわ」 そう言って俺に箸を持たせるティア。まずい。俺、顔が赤いかもしれない。 「貴方の場合、食わず嫌いなのよ。子供みたいな事してないで、早く食べてちょうだい」 「…………わかったよ」 「…………食べ終えるまで、ちゃんと待ってあげるから、ね?」 「あ、ああ。ありがとう」 ※本日のルークの日記よりいくつか抜粋。 ・今日、少しだけ魚系が好きになった。 ・ミュウが波にさらわれて溺れかける。浮き輪みたいなソーサラーリングは重りになっちまったみたいだ。 ・大量のブルブ(クラゲ型魔物)は日焼けしようと寝てたガイの上に捨ててきた。難易度をアンノウンにしておくのも忘れない。 ・ティアとアニスにしばらくトウフ料理ばかり出してもらうよう頼む。ジェイドは言わなくてもトウフ料理を出してくれる。 ・夜、ティアとノエルが微妙な表情で笑いあってた。何かあったんだろうか。 ---- #comment(vsize=2,nsize=20,size=40)

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