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ルークは屋敷に戻り、ひとしきり再会の喜びを分かち合った後 ご両親にこう切り出した。 「彼女と結婚しようと思います」 あまりに唐突過ぎて、私はルークが何を言ってるのかすぐに理解できなかった。 その場にはナタリアもいたから、ナタリアとの結婚のことを言ってるのかと思い 心の奥では呆然としながらも何か祝福の言葉を掛けねば、と—— 考えているうちに、ルークは私の肩を抱き寄せた。 「俺とティアとの結婚を認めて頂けませんか」 この一言で、公爵家に漂っていた祝賀ムードは一変。 ファブレ公爵はこの上なく驚いたようで、 今にもルークに掴みかからんとしてラムダスさんに止められた。 そのラムダスさんの表情にも、何が何やら、という戸惑いの色。 多少驚きながらも平静を保っていたのは、私の仲間と、奥様。 ——私は混乱し、様々な感情が頭の中を駆け巡り、倒れそうになった。 というか、倒れた。 が気絶している間も公爵家は大騒ぎだったらしく、ルークとファブレ公爵は一晩中話し合ったそうだ。 ナタリアは既にルーク——正確にはアッシュなのだが——との婚約を破棄していた。 当然、このことはファブレ公爵も知っていて、一時は同意したらしいのだが、 ルークが帰ってきたことで婚約も再び成立するだろう—— と考えていた矢先の、ルークの爆弾発言だったのだろう。 私が目を覚ましたとき、傍らにはナタリアと 私が寝ていたベッドに突っ伏して眠りこけているルークがいた。 ナタリアは笑顔で「おめでとう。あなたとルークの結婚、認められましてよ」と言った。 「え、あの…」 「あら、何かご不満?」 「いえ、その…何が何だか」 「あなたはルークが好きなのでしょう? ルークは『ティアも俺のことが好きみたいだし』と言っていましたわよ」 ナタリアは上品に、けれど悪戯っぽく笑った。 何てことだ、と思った。 私はルークが好きだ。世界中の誰よりも愛している、と思う。 けれどそのことを私に確認せず、しかもいきなり結婚? ——どうかしてるわ。 私は好きな人との結婚を認められた喜びよりも、物事の順序を弁えないルークに腹が立ったのだろう。 横で涎を垂らしながらぐっすり眠っているルークをたたき起こした。 「まあ! 何をしますの!?」 「…ってぇー…何だよ…」 「何だよ、じゃないわよ! けっけけけけけ結婚、なんて、一人で決めるものじゃないでしょう!」 「……んあ? えーと……」 「わ、私がルークのこと好きじゃなかったらどうするのよ!」 「…え……でも…」 「何!?」 「エルドラントで言ってたじゃん。そのー…好きって。小声だったけど、俺、ちゃんと聞いたぜ」 顔から火が出そうになった。 本当はちゃんと向き合って伝えたかったけど、ルークの邪魔はできない。 伝えたい、でも伝えちゃいけない、という本能と理性がぶつかり合った結果、 ルークには聞こえない程度の「好き」…だったのに! 聞かれていた! 私は恥ずかしさのあまり、俯いてしまった。 「あら、告白はティアからでしたのね。ルーク、こういうのは男性から先に…」 ナタリアは私たちの口論などどこ吹く風といった様子で、男女間の心構えをルークに説いていた。 ナタリアは「お幸せに」と言い残して部屋を出て行った。 するとルークは、ずっと黙っている私を見て不安に思ったのか、言った。 「あのさ…もしかして、他に好きな奴ができた、とか?」 「え……」 「そ、そうだよな。ずっと待たせてたんだもんな。ごめん。また俺、先走っちまった」 「あの……」 「ごめんな。俺、父上と母上に話して——」 「違うの! そうじゃないのよ!」 私は努めて冷静に、こう言った。 「け、結婚っていうのはね、その…お互いが好きだったら結婚できるとか、そんな単純なものじゃないのよ。 二だけの問題じゃないし。それに…その、最初は好きでもお互いのことをよく知ったら、 思っていた人と違った、とか」 …声が裏返ったりもしたが、これが精一杯だった。 ルークはやはり納得がいかないようだった。 「でも俺、ティアのこと良く知ってるぜ。 そりゃ最初は『冷血女』とか思ったけど、本当はすごく優しいし、 すごく強く見えるけど、実はかなり無理してたり。あと、可愛いものが好き、とかな。 二人だけの問題じゃないってのは、俺も考えた。 だから父上と母上にちゃんと話をして、認めてもらおうって。 ……ティアは…俺のこと、まだ知らないか?」 「…知ってるわ。ずっと見てたもの」 「なら……」 …違う。そうじゃない。私は—— 「…プロポーズ、して…」 「……え」 物事の順序がどうとか、そういう理屈じゃない。 私はまだルークから、ルークの気持ちを聞いていない。それが引っ掛かっていたのだ。 ルークは赤面し、それから相変わらずの鼻をこする仕草をして、 「俺、もう待たせたりしない。ティアと死ぬまで一緒にいたい。ずっと一緒にいて、この世界を見ていたい」 私は、駄目かな…と付け加えるルークにキスをした。 「…これまた情熱的な日記だわ…。アニスちゃんもうお腹いっぱーい」 「いやー、若いですねぇ」 「おいおい、勝手にティアの日記見たりして。後が怖いぞ」 「ずるーい。読み終わってからそんなこと言い出すなんて」 「いや、俺は…心の友の伴侶がどう思ってるのかなー…と」 「うげ、過保護…」 「あなたは心の友がどうしてるかより、女性恐怖症を治す方が先決だと思いますよ」 「う……ごもっとも」 「それにしても…先程ルークの日記をこっそり拝見した時にも思いましたが、 この人たちはいつ日記を書いているんでしょうねぇ。まるで実況ですよ」 「確かに…台詞まで起こすとは、ある意味ルーク以上だが…」 日記を読んでどこか満足そうな三人の後ろに、恐ろしい形相で万能包丁を構える女の姿が…。
ルークは屋敷に戻り、ひとしきり再会の喜びを分かち合った後 ご両親にこう切り出した。 「彼女と結婚しようと思います」 あまりに唐突過ぎて、私はルークが何を言ってるのかすぐに理解できなかった。 その場にはナタリアもいたから、ナタリアとの結婚のことを言ってるのかと思い 心の奥では呆然としながらも何か祝福の言葉を掛けねば、と—— 考えているうちに、ルークは私の肩を抱き寄せた。 「俺とティアとの結婚を認めて頂けませんか」 この一言で、公爵家に漂っていた祝賀ムードは一変。 ファブレ公爵はこの上なく驚いたようで、 今にもルークに掴みかからんとしてラムダスさんに止められた。 そのラムダスさんの表情にも、何が何やら、という戸惑いの色。 多少驚きながらも平静を保っていたのは、私の仲間と、奥様。 ——私は混乱し、様々な感情が頭の中を駆け巡り、倒れそうになった。 というか、倒れた。 が気絶している間も公爵家は大騒ぎだったらしく、ルークとファブレ公爵は一晩中話し合ったそうだ。 ナタリアは既にルーク——正確にはアッシュなのだが——との婚約を破棄していた。 当然、このことはファブレ公爵も知っていて、一時は同意したらしいのだが、 ルークが帰ってきたことで婚約も再び成立するだろう—— と考えていた矢先の、ルークの爆弾発言だったのだろう。 私が目を覚ましたとき、傍らにはナタリアと 私が寝ていたベッドに突っ伏して眠りこけているルークがいた。 ナタリアは笑顔で「おめでとう。あなたとルークの結婚、認められましてよ」と言った。 「え、あの…」 「あら、何かご不満?」 「いえ、その…何が何だか」 「あなたはルークが好きなのでしょう? ルークは『ティアも俺のことが好きみたいだし』と言っていましたわよ」 ナタリアは上品に、けれど悪戯っぽく笑った。 何てことだ、と思った。 私はルークが好きだ。世界中の誰よりも愛している、と思う。 けれどそのことを私に確認せず、しかもいきなり結婚? ——どうかしてるわ。 私は好きな人との結婚を認められた喜びよりも、物事の順序を弁えないルークに腹が立ったのだろう。 横で涎を垂らしながらぐっすり眠っているルークをたたき起こした。 「まあ! 何をしますの!?」 「…ってぇー…何だよ…」 「何だよ、じゃないわよ! けっけけけけけ結婚、なんて、一人で決めるものじゃないでしょう!」 「……んあ? えーと……」 「わ、私がルークのこと好きじゃなかったらどうするのよ!」 「…え……でも…」 「何!?」 「エルドラントで言ってたじゃん。そのー…好きって。小声だったけど、俺、ちゃんと聞いたぜ」 顔から火が出そうになった。 本当はちゃんと向き合って伝えたかったけど、ルークの邪魔はできない。 伝えたい、でも伝えちゃいけない、という本能と理性がぶつかり合った結果、 ルークには聞こえない程度の「好き」…だったのに! 聞かれていた! 私は恥ずかしさのあまり、俯いてしまった。 「あら、告白はティアからでしたのね。ルーク、こういうのは男性から先に…」 ナタリアは私たちの口論などどこ吹く風といった様子で、男女間の心構えをルークに説いていた。 ナタリアは「お幸せに」と言い残して部屋を出て行った。 するとルークは、ずっと黙っている私を見て不安に思ったのか、言った。 「あのさ…もしかして、他に好きな奴ができた、とか?」 「え……」 「そ、そうだよな。ずっと待たせてたんだもんな。ごめん。また俺、先走っちまった」 「あの……」 「ごめんな。俺、父上と母上に話して——」 「違うの! そうじゃないのよ!」 私は努めて冷静に、こう言った。 「け、結婚っていうのはね、その…お互いが好きだったら結婚できるとか、そんな単純なものじゃないのよ。 二だけの問題じゃないし。それに…その、最初は好きでもお互いのことをよく知ったら、 思っていた人と違った、とか」 …声が裏返ったりもしたが、これが精一杯だった。 ルークはやはり納得がいかないようだった。 「でも俺、ティアのこと良く知ってるぜ。 そりゃ最初は『冷血女』とか思ったけど、本当はすごく優しいし、 すごく強く見えるけど、実はかなり無理してたり。あと、可愛いものが好き、とかな。 二人だけの問題じゃないってのは、俺も考えた。 だから父上と母上にちゃんと話をして、認めてもらおうって。 ……ティアは…俺のこと、まだ知らないか?」 「…知ってるわ。ずっと見てたもの」 「なら……」 …違う。そうじゃない。私は—— 「…プロポーズ、して…」 「……え」 物事の順序がどうとか、そういう理屈じゃない。 私はまだルークから、ルークの気持ちを聞いていない。それが引っ掛かっていたのだ。 ルークは赤面し、それから相変わらずの鼻をこする仕草をして、 「俺、もう待たせたりしない。ティアと死ぬまで一緒にいたい。ずっと一緒にいて、この世界を見ていたい」 私は、駄目かな…と付け加えるルークにキスをした。 「…これまた情熱的な日記だわ…。アニスちゃんもうお腹いっぱーい」 「いやー、若いですねぇ」 「おいおい、勝手にティアの日記見たりして。後が怖いぞ」 「ずるーい。読み終わってからそんなこと言い出すなんて」 「いや、俺は…心の友の伴侶がどう思ってるのかなー…と」 「うげ、過保護…」 「あなたは心の友がどうしてるかより、女性恐怖症を治す方が先決だと思いますよ」 「う……ごもっとも」 「それにしても…先程ルークの日記をこっそり拝見した時にも思いましたが、 この人たちはいつ日記を書いているんでしょうねぇ。まるで実況ですよ」 「確かに…台詞まで起こすとは、ある意味ルーク以上だが…」 日記を読んでどこか満足そうな三人の後ろに、恐ろしい形相で万能包丁を構える女の姿が…。 ---- #comment(vsize=2,nsize=20,size=40)

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