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*月夜 「う~ん、今日もいいお天気ね…」 いつもより少し遅めの朝を迎えた彼女の部屋に、元気のいいノックの音が響く。 「え?誰かしら、こんな時間に…」 思わぬ訪問客を迎えるために、慌てて身支度を整え、ドアに声を掛けた。 「どうぞ?」 その声を待ちかねたように、勢い良くドアが開く。 「ぶぅ~、ティアってば待たせすぎだよぉ」 珍客だ。何をしに来たのか、全くわからない。 「アニス!?どうしたの、こんな時間に?」 「あのね、一緒に明日の準備をしようと思って」 「明日の?」 「そうだよ。ティアも自分の準備があるでしょ?」 「準備って…何を?」 「ティア…明日はバレンタインだよ?ルークに何もあげないの?」 「あ…そう、だったわね…」 「まさか二人ともあれから何の進展もないの?いい加減キスぐらいしたんでしょ?」 「わ、私は、その…」 あまりに直球な質問に頬を赤らめてうつむく。 「あー、相変わらずかぁ…」 「た、多少は…そういう事も…でも、その、いざとなると恥ずかしくて…」 「ティア、い~い?待ってるだけじゃ駄目なの。自分からぐいぐい行かないとっ!」 「でも…」 「そのためのバレンタインでしょ?わたしも協力するから、ね?」 「わ、わかったわ」 勢いに圧されてつい返事をしてしまった。 「よしよし、そうと決まれば早速買い出しに行こー!」 数時間後、両手に買い物袋を下げ、二人が帰って来た。 「じゃあ、始めましょうか」 「うん、やろー」 部屋を満たしていく甘い香りに、初めとはうって変わって心が躍る。 「…後は固まるのを待つだけだね♪」 「ええ、そう言えばアニスは誰にあげるの?」 「わたし?わたしはフローリアンにあげるんだぁ。図書室で文献を見たみたいで、ちょうだいって駄々こねだしちゃって」 「そう…」 「モテる女はつらいよねぇ♪そう言えばもう明日の約束はしたの?」 「え、ええ。さっきしたわ。急だったから驚いていたみたいだけど…」 一方、バチカル ファブレ公爵邸 「どうしたルーク、考えごとか?珍しいな」 「なぁガイ、明日って何かあったっけ?ティアから急に会いたいって言われてさ」 「明日…あぁ、バレンタインだな」 「ばれんたいん?」 「あー、お前はきちんと理解してなかったか」 「何だよそれ?」 「お前毎年屋敷のメイドとナタリアからチョコ貰ってただろ?」 「あぁ、ナタリアには何度も食い物以外にしろって言ったのによ…」 「バレンタインってのはな、女性が好きな男性にチョコを渡して告白する日なんだよ。ただし、一般的にチョコには義理と本命があってだな…(以下略)」 「つーと、ティアのは…」 「そりゃあ本命だろうよ。お前達、それなりに進んでるんだろ?」 「い、いや、それは…」 「まさか…」 「た、多少はな。ただ、いざとなると恥ずかしくてさ…」 「お前なぁ、こういうのは男がきちんとリードしてあげないとだな」 「だってよ…誰も教えてくれヌェーし」 「また親善大使か?」 「わ、わーかったよ!そんで、どうすりゃいいんだ?」 「今からどうこう言ってもしょうがないからな…素直に思ってる事を伝えてあげろよ。お前達、そういうの苦手だろ?」 「う…」 「今回の事だって、ティアはティアなりに頑張ろうとしてるからこそだろ?なら、お前もお前なりに頑張ればいい」 「わかった…ガイ、ありがとう」 「どう致しまして。これも心の友の仕事だからな」 「そう言えばさ」 「何だ?」 「お前毎年メイドに囲まれてガタガタ震えてたよな…」 「…忘れさせてくれ」 そして翌日… 「ふぁ…緊張して眠れなかったわ。何て言って渡せばいいかしら」 「だーいじょうぶ!昨日ちゃんと練習したでしょ!?あのとーりにやれば、あのバカなんてイチコロだよぉ」 「で、でも、アレはちょっと…」 「いいから!あれぐらいやらないと、いつまでもこのままだよ?ティアはかわいいんだから、絶対だいじょうぶ!」 「そ、そうかしら…」 「そうそう、だーかーら、自信を持って、ね?」 「ありがとう、アニス」 「それじゃあ、わたしはそろそろ行くね?」 「ええ、気をつけて」 「そうそう、ちゃーんと結果は報告してねぇ♪」 「え?ちょ、ちょっとアニス!もぉ…」 騒がしい友人と別れ、訪れた静けさの中、一人彼を想う。 「…もうすぐバチカルね」 その頃、彼女の想い人は、既に待ち合わせの場所に来ていた。 「あー、考え過ぎて眠れなかった…素直に、か。出来るかな…」 友人から貰った助言を実行すべく、自分の彼女への素直な気持ちとは何か、ずっと考えていた。 自然と思い出されたのは、あの月夜の事… 「ルーク?どうしたの、まだ時間までは随分あるのに…」 急に視界に現れた彼女を見て、気が動転する。 「ティ、ティア!…それは、お互い様だろ?」 「そ、そうね…」 「それよりお前、あまり寝てないんじゃないか、顔色が良くないぞ?」 「そ、そう?昨日はアニスが来ていたから…」 「アニスが?最近会ってないな…元気にしてたか?」 「ええ、相変わらずだったわ」 「そうか…」 「…」 二人共、お互いを意識し過ぎて会話が続かない。 「…なぁ、ちょっとその辺歩かないか?」 沈黙を破り、立ち上がる。素直な気持ちを、伝える為に。 「え、ええ…」 「ここ、晴れた夜は月が良く見えるんだ。今日は、ちょっと雲が多いけど…」 「そう…綺麗な所ね」 「さっきさ…」 「え?」 「ちょうど、思い出してたんだ。二人で月を見た時の事…」 「…」 「あの時オレ、今が一番幸せじゃないって言えたらいいのにって…言ったよな」 「ええ、そう言ったわ…」 「オレ、今なら言えるよ。今が一番幸せなんじゃないって」 「ルーク…」 「だから…ティア、ありがとう。全部、ティアのおかげだから…」 突然聞かされた彼の真っすぐな気持ちに、嬉しさがこみ上げる。同時に、自分も素直になろう、そう思った。すうっと、肩の力が抜けていく。 「それは、私の台詞だわ。あなたがそばに居てくれたから、色々な悲しみを乗り越えて来れた…ありがとう。それから、これ…」 手渡されたのは、彼女の心のこもった宝物。 「ありがとう。開けていいか?」 「ええ」 小さな宝箱を開けた彼の目に飛び込んだのは、大きなハート。一口かじってみる。 「うまいな」 「ほ、本当?良かった…あのね、ルーク…」 「ん?」 雲間から漏れる月の光が映す二人の影は、寄り添い、重なり合って… 「…大好き…」 二人の心を、温かさが包んでいった。 ---- #comment(vsize=2,nsize=20,size=40)
*月夜 「う~ん、今日もいいお天気ね…」 いつもより少し遅めの朝を迎えた彼女の部屋に、元気のいいノックの音が響く。 「え?誰かしら、こんな時間に…」 思わぬ訪問客を迎えるために、慌てて身支度を整え、ドアに声を掛けた。 「どうぞ?」 その声を待ちかねたように、勢い良くドアが開く。 「ぶぅ~、ティアってば待たせすぎだよぉ」 珍客だ。何をしに来たのか、全くわからない。 「アニス!?どうしたの、こんな時間に?」 「あのね、一緒に明日の準備をしようと思って」 「明日の?」 「そうだよ。ティアも自分の準備があるでしょ?」 「準備って…何を?」 「ティア…明日はバレンタインだよ?ルークに何もあげないの?」 「あ…そう、だったわね…」 「まさか二人ともあれから何の進展もないの?いい加減キスぐらいしたんでしょ?」 「わ、私は、その…」 あまりに直球な質問に頬を赤らめてうつむく。 「あー、相変わらずかぁ…」 「た、多少は…そういう事も…でも、その、いざとなると恥ずかしくて…」 「ティア、い~い?待ってるだけじゃ駄目なの。自分からぐいぐい行かないとっ!」 「でも…」 「そのためのバレンタインでしょ?わたしも協力するから、ね?」 「わ、わかったわ」 勢いに圧されてつい返事をしてしまった。 「よしよし、そうと決まれば早速買い出しに行こー!」 数時間後、両手に買い物袋を下げ、二人が帰って来た。 「じゃあ、始めましょうか」 「うん、やろー」 部屋を満たしていく甘い香りに、初めとはうって変わって心が躍る。 「…後は固まるのを待つだけだね♪」 「ええ、そう言えばアニスは誰にあげるの?」 「わたし?わたしはフローリアンにあげるんだぁ。図書室で文献を見たみたいで、ちょうだいって駄々こねだしちゃって」 「そう…」 「モテる女はつらいよねぇ♪そう言えばもう明日の約束はしたの?」 「え、ええ。さっきしたわ。急だったから驚いていたみたいだけど…」 一方、バチカル ファブレ公爵邸 「どうしたルーク、考えごとか?珍しいな」 「なぁガイ、明日って何かあったっけ?ティアから急に会いたいって言われてさ」 「明日…あぁ、バレンタインだな」 「ばれんたいん?」 「あー、お前はきちんと理解してなかったか」 「何だよそれ?」 「お前毎年屋敷のメイドとナタリアからチョコ貰ってただろ?」 「あぁ、ナタリアには何度も食い物以外にしろって言ったのによ…」 「バレンタインってのはな、女性が好きな男性にチョコを渡して告白する日なんだよ。ただし、一般的にチョコには義理と本命があってだな…(以下略)」 「つーと、ティアのは…」 「そりゃあ本命だろうよ。お前達、それなりに進んでるんだろ?」 「い、いや、それは…」 「まさか…」 「た、多少はな。ただ、いざとなると恥ずかしくてさ…」 「お前なぁ、こういうのは男がきちんとリードしてあげないとだな」 「だってよ…誰も教えてくれヌェーし」 「また親善大使か?」 「わ、わーかったよ!そんで、どうすりゃいいんだ?」 「今からどうこう言ってもしょうがないからな…素直に思ってる事を伝えてあげろよ。お前達、そういうの苦手だろ?」 「う…」 「今回の事だって、ティアはティアなりに頑張ろうとしてるからこそだろ?なら、お前もお前なりに頑張ればいい」 「わかった…ガイ、ありがとう」 「どう致しまして。これも心の友の仕事だからな」 「そう言えばさ」 「何だ?」 「お前毎年メイドに囲まれてガタガタ震えてたよな…」 「…忘れさせてくれ」 そして翌日… 「ふぁ…緊張して眠れなかったわ。何て言って渡せばいいかしら」 「だーいじょうぶ!昨日ちゃんと練習したでしょ!?あのとーりにやれば、あのバカなんてイチコロだよぉ」 「で、でも、アレはちょっと…」 「いいから!あれぐらいやらないと、いつまでもこのままだよ?ティアはかわいいんだから、絶対だいじょうぶ!」 「そ、そうかしら…」 「そうそう、だーかーら、自信を持って、ね?」 「ありがとう、アニス」 「それじゃあ、わたしはそろそろ行くね?」 「ええ、気をつけて」 「そうそう、ちゃーんと結果は報告してねぇ♪」 「え?ちょ、ちょっとアニス!もぉ…」 騒がしい友人と別れ、訪れた静けさの中、一人彼を想う。 「…もうすぐバチカルね」 その頃、彼女の想い人は、既に待ち合わせの場所に来ていた。 「あー、考え過ぎて眠れなかった…素直に、か。出来るかな…」 友人から貰った助言を実行すべく、自分の彼女への素直な気持ちとは何か、ずっと考えていた。 自然と思い出されたのは、あの月夜の事… 「ルーク?どうしたの、まだ時間までは随分あるのに…」 急に視界に現れた彼女を見て、気が動転する。 「ティ、ティア!…それは、お互い様だろ?」 「そ、そうね…」 「それよりお前、あまり寝てないんじゃないか、顔色が良くないぞ?」 「そ、そう?昨日はアニスが来ていたから…」 「アニスが?最近会ってないな…元気にしてたか?」 「ええ、相変わらずだったわ」 「そうか…」 「…」 二人共、お互いを意識し過ぎて会話が続かない。 「…なぁ、ちょっとその辺歩かないか?」 沈黙を破り、立ち上がる。素直な気持ちを、伝える為に。 「え、ええ…」 「ここ、晴れた夜は月が良く見えるんだ。今日は、ちょっと雲が多いけど…」 「そう…綺麗な所ね」 「さっきさ…」 「え?」 「ちょうど、思い出してたんだ。二人で月を見た時の事…」 「…」 「あの時オレ、今が一番幸せじゃないって言えたらいいのにって…言ったよな」 「ええ、そう言ったわ…」 「オレ、今なら言えるよ。今が一番幸せなんじゃないって」 「ルーク…」 「だから…ティア、ありがとう。全部、ティアのおかげだから…」 突然聞かされた彼の真っすぐな気持ちに、嬉しさがこみ上げる。同時に、自分も素直になろう、そう思った。すうっと、肩の力が抜けていく。 「それは、私の台詞だわ。あなたがそばに居てくれたから、色々な悲しみを乗り越えて来れた…ありがとう。それから、これ…」 手渡されたのは、彼女の心のこもった宝物。 「ありがとう。開けていいか?」 「ええ」 小さな宝箱を開けた彼の目に飛び込んだのは、大きなハート。一口かじってみる。 「うまいな」 「ほ、本当?良かった…あのね、ルーク…」 「ん?」 雲間から漏れる月の光が映す二人の影は、寄り添い、重なり合って… 「…大好き…」 二人の心を、温かさが包んでいった。 ---- - いつものことながらこちらが恥ずかしくなりますね -- 条威 (2007-12-20 14:38:51) #comment(vsize=2,nsize=20,size=40)

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