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ルークが帰って来てからもうすぐ1ヶ月が経とうとしている お互い忙しくなかなか会う事ができない二人は、久しぶりのデートを満喫していた 「な、なあ‥ティア?週末家に泊まりに来ねえ?」 「えっ?」 「あっ///そ、その‥屋敷に誰もいないんだ‥だから…」 ファブレ夫妻が用事で留守にするため、メイド達もお暇を貰ったようだ 「も、もしティアがよければだけど…」 「本当?うれしい///」 「マジで?(ティ、ティアもその気か?///)」 彼女の反応に照れるルーク・・だが・・ 「ミュウに会うのひさしぶりだわ♪」 「‥(そっちかよ)‥」 そして週末・・・ 「お邪魔します」 「ああ、うん‥(この機会にティアと///)」 だが、そんなルークの気持ちとは裏腹に一方のティアはというと・・ 「ねえルーク?ミュウはどこ?」 やはりお目当てはミュウのようである 「‥(そればっかだな)‥里帰り!!」 「え~~‥ミュウと会えるの楽しみにしてたのになぁ‥もぅ‥」 「‥(俺はどうでもいいのかよ)‥」 ティアの態度に、ルークは一人張りきる自分が惨めに思えてくるのであった 「それにしても静かね‥」 「ん?まあな‥いつもはメイドや白光騎士団のみんながいるからな‥」 ただでさえ広い公爵邸、屋敷の中は静まりかえっている 「ひょっとしてルーク‥寂しいの?」 「ばっ///んなわけ…(ってまてよ!)」 何か思いついたらしいルークはわざとらしく話しだした 「そうなんだよなぁ~!もう寂しくて寂しくてさぁ~(嘘)…だからぁ‥」 チラッとティアの方を見る 「今日はティアが俺のメイドなっ♪」 「…なっ///あ、あなたばか?どうして私がっ」 「いいじゃん♪ティアだってメイドの服着てみたいだろ?」 「えっ!メイドの洋服‥?」 さすがにルークはティアの性格をよく知りつくしている 「ティアが着たらきっと可愛いと思うんだけどなぁ~」 「///‥そっ、そこまで言うなら‥」 「マジで♪(ちょろいぜ!)」 ティアは急ぎ足で部屋にむかい着替えをすることにした 「やっぱり可愛いい///前からいいなって思ってたのよね」 着替えを済ましたティアは嬉しそうにルークの元に戻った 「おっ!よく似合ってんじゃん」 「ほ、ほんとぅ///?」 「うん!うん!馬子にも衣装ってやつだな!」 「・・・」 「それじゃあ次は『ルーク様』って呼んで‥」 「‥(ぎろり)‥」 「ご、ごめんなさい…」 どうやら調子に乗りすぎたようである 「そ、そういえばさぁ~、お腹すかないか?」 「そうね‥そろそろお昼の時間かもしれないわね」 ティアは時計を見た 時刻はもうすぐ12時を迎えようとしている 「私何か作るわね。キッチン借りてもいい?」 「ああ!じゃあ一緒に作ろうぜ」 「う、うん///」 ―トントン♪トントン― リズムのいい包丁の音がキッチンに響きわたる 「♪♪♪‥(何だかこうしてると新婚みたい‥って、わ、私ってば何考えて///)」 「何かティア楽しそうだな」 「えっ?そ、そうかしら///・・・『痛っ』」 動揺したティアは指を切ってしまった 「だ、大丈夫か?血が出てるじゃないか」 「平気よこれくらい。舐めておけば治るわ」 「見せて診ろよ」 そう言うとルークはティアの傷口を口に含んだ 「ル、ルーク/////」 「あっ‥わっ、わりぃ///つ、つい…」 二人ともみるみるうちに顔が赤くなっていく 「…」 「…」 しばらく無言で見つめあう二人 そしてルークがティアの肩に手をかけようとしたその時・・・ ―ピンポーン― タイミングよく玄関のベルが鳴った 「だ、誰かしら‥わ、私見てくるわね‥」 「あっ‥お、おい」 足早に走り去るティアの後ろ姿を見つめながら、ルークは行き場の失った手をぶらぶらさせるのであった 「はぁ‥まだドキドキしてる///」 激しく脈打つ心臓をどうにか落ち着け、ティアは玄関の方に向かった 「ったく!いったい誰だよ‥邪魔しやがって!!」 そうぶつぶつ呟きながらルークも玄関へ向かう そこに現れたのは・・ 「どうだルーク!元気にしてるか?」 「来てさしあげましたわよ」 ガイ&ナタリアである 「お、おまえらなんで!!」 「ん?いや、おまえが寂しがってるんじゃないかと思ってな…って、ティアじゃないか?」 「ひさしぶりね二人とも」 「ええ本当ですわね…って、ティ、ティア?あなたのその格好!!」 そこにはメイドの服を着たティアの姿があった 「あっ///こ、これは‥そのぉ‥」 「ル、ルーク‥お前そんな趣味が…」 「…不潔ですわ」 「///ち、違うっつぅの!」 必死に弁解するルークだが、辺りは微妙な空気に包まれる そんな時・・ 「ティアさん、おひさしぶりですの!」 二人の後ろからひょこっとミュウが姿を現した 「ミュ、ミュウ?あなた森に帰ったんじゃぁ‥」 「?ミュウは今ナタリアさんの所にいるですの!」 ミュウの登場に慌てたルークは、場を取り繕うように必死にしゃべりだす 「ミュ、ミュウはどうしても城に行きたくて仕方なかったんだよなっ?なっ?」 「?違うですの!ご主人様が行けって‥」 「だぁ~!!黙れブタザル」 「みゅぅぅぅ‥」 「ちょっとルーク!ミュウが可愛そうじゃない!!」 そう言うとティアはミュウと一緒に向こうへ行ってしまった 「ハハ!嫌われたなルーク」 「自業自得ですわ!」 「お、おまえらなぁ!!」 ルークはじと目で二人を睨みつけた 「それにしてもティアがいるとはなぁ‥どうりで『絶対来るな』って言うわけだ(笑)」 「ええ、『絶対』を強調していましたものね」 「‥(わかってるなら来るなよな)‥」 結局ルークは不満を抱きながらも皆で昼食をとる事にした その後・・ティアはミュウと中庭へ遊びに行き、3人はそんな彼女について話をしている 「それにしても、彼女ずいぶん雰囲気変わったよな‥」 「ええ‥幸せそうですわね」 無邪気に笑っているティアの方を見る 「ミュウがいるからだろ?」 「お前なぁ‥本当にそう思うのか?よく考えてみろ!」 「まったく‥あなたが帰って来て『誰が』一番喜んでいると思っているのかしら!」 そう・・彼と交した『約束』を最後まで信じていたのは彼女だけ・・ 「大事にしてやれよ?彼女のこと」 「そうですわ!泣かしたら許しませんことよ」 「わ、わかってるっつぅの///」 そう言ってルークは窓越しに映るティアを愛しそうに見つめた 「‥それじゃぁそろそろ邪魔者は退散とするか」 「そうですわね。ずいぶんと長居してしまいましたわね」 しばらく話した後、二人(+一匹)は公爵邸を後にした 「ふぅ‥やっと帰ったか‥(これでティアとゆっくりできるぜ///)」 だが・・ 「あら?もうこんな時間だわ。私、夕食のお買い物に行って来るわね!」 そう言ってティアは外に出かけて行ってしまった 「…何か俺泣きそう」 素っ気ないティアの態度に、ルークはその場にへなへなとうなだれるのであった しばらくして・・ 「ただいまルーク」 どうやらティアが帰って来たようである しかし当のルークはというと・・・ 「すぅ‥ΖΖ‥すぅ‥ΖΖ」 「ルーク‥眠っているの?」 気持ちよさそうに寝息をたてているルークは一向に起きる気配がない 「きっと疲れてるのね…それにしてもルークの寝顔‥(かわいい///)」 ティアの唇がそっとルークの頬に触れる‥ 「…や、やだ///私ってば何してっ‥‥ル、ルーク?(まさか起きてないわよね)」 そう言うと、ほっぺをほんのり赤く染めながら夕食の準備にとりかかった・・ 「ん~~…何かいい臭いがするぅ~…」 「あら?起きたのねルーク。丁度夕食ができたところよ」 テーブルには二人では食べきれないという量の料理が並べられている 「うっわ!!こ、これ全部ティアが作ったのか?」 「ご、ごめんなさい‥ちょっと作りすぎちゃって‥」 「すっげぇうまそう♪♪」 ティアの料理は見た目こそ豪快であるが味は絶品である 「それじゃぁいっただきま~す『パクッ』‥うっめぇ~♪」 「ほ、ほんとぅ?///」 「ああ!前から思ってたんだけどさぁ、ティアって絶対いいお嫁さんになるよな(素)」 こういう事がさらっと言えてしまうのはガイゆずりか‥ 「えっ‥///」 「あっ‥///‥やっ、そ、その‥べ、別に深い意味は‥」 またまたいい雰囲気になる二人・・だが・・ ―ピンポーン― またしても、タイミングを見図ったかのようにベルが鳴った 「やっほぉ~♪アニスちゃんでぇ~す☆」 「二人ともご無沙汰しています。あっ、勝手に上がらせてもらいましたよ」 そう言って現れたのは、アニス&ジェイドである 「・・・帰れ」 「ぶぅ~ぶぅ~!せっかく(邪魔しに)来てあげたのに~」 「ルークが(『暴走』しないか)心配になったものですから」 どうやらミュウから事の一端を聞い駆けつけたようだ 「それにしてもティアのその格好‥ルークにはそんな趣味がおありでしたか」 「最低だねっ★」 「だぁ~///違うっつぅの!いいから帰れ!!」 ティアとの時間を邪魔されたくないルークは声を荒げる・・だが・・ 「ちょっとルーク!静かにしなさい!!」 「へっ?」 「せっかく来てくれたのにそんな言い方ないでしょう!」 ルークとは反対にティアの方は歓迎モードである 「二人とも丁度良かったわ。夕食作りすぎちゃって‥一緒に食べましょう!」 「やったぁ~♪(ムフフ☆ルーク可愛そう♪)」 「それではお言葉に甘えて(哀れですねぇ)」 「・・・」 ルークは言葉を失った そして夕食後・・ 「ねぇねぇティア~?一緒にお風呂入ろっ♪」 「ええ、別に構わないけど」 「一度入ってみたかったんだよねぇ~♪ルークん家のお風呂☆‥‥『覗くなよ』」 「何で俺を見るんだよ!」 そう言って、アニスとティアはお風呂場に行ってしまった 「はぁ‥全然ゆっくりできねぇ‥」 「それは残念ですね~(笑)」 「‥(誰のせいだよ)‥」 ルークはもはや怒る気力も失せていた 「それにしても、あなたもずいぶん積極的になったものですねぇ~」 「あ~?何の話だよ」 「またまたぁ‥わかってるくせに」 ジェイドはいやらしい目つきでルークを見る 「お、俺は、ただティアとのんびり過ごしたかっただけで‥や、やましい事は‥」 「おやぁ?私は『ティア』なんて一言も言ってませんけどねぇ」 「なっ///」 愛変わらずジェイドにいいように扱われるルークであった 「ふっ‥あなたは本当に素直ですね‥ではこれを!」 そう言ってジェイドが手渡した物とは・・ 「Σジェ、ジェイドお前!」 「こういう物は男性の方が用意するべきです!」 「///お、俺達まだそんな関係じゃぁ‥」 「なるほど‥『まだ』なんですね!」 「!!!」 ルークの顔は火がついたように真っ赤に燃えあがっていった 一方ティア達は・・ 「ふわぁ~☆極楽♪極楽♪」 「はぁ‥気持ちいい‥」 無駄に広い浴室に二人の声が響きわたる 「それにしてもぉ、ティアって本っ当に胸おっきいよねぇ~(この胸をルークが‥)」 「えっ///そ、そうかしら?でも肩とかこっちゃって‥」 「そうなんだ‥(ちっ!うらやましい)」 そんな会話で盛り上がっているうちに、のぼせたのか二人は湯船からあがることにした 「それにしてもさぁ、ティアも大胆になったもんだよね~」 「えっ?何が?」 どうやらこちらでも同じ展開が繰り広げられているようだ 「何がって‥相手が『あの』ルークとはいえ男の人の家に泊まるんだよ?しかも二人っきり‥当然‥そういう事でしょ?」 「・・・」 「なに?なに?ひょっとして自覚なかった?」 「//////」 ティアの顔はみるみるうちに赤くなっていく 「(思った通りか)‥それじゃぁ、はいこれ!アニスちゃんからのプレゼント♪」 そう言ってアニスが手渡した物とは・・やはり 「Σア、アニスこれ///」 「今は女の子でも持っておかなくっちゃ!常識だよっ☆」 「///わ、私達まだそんな関係じゃぁ‥」 「へぇ‥『まだ』なんだぁ」 「!!!」 これまた同じ展開で、ティアの顔はこれ以上ないというくらい耳まで真っ赤に染まっていった その後・・ 「それじゃぁティア、報告よろしくねん☆」 「ルーク‥健闘を祈ります」 結局さんざんからかいぬいた挙げ句、アニスとジェイドは嵐のように去っていった そして残された二人はというと・・ 「‥(お、俺この後どうすればいいんだ)‥」 「‥(わ、私本当にそんなつもりじゃぁ)‥」 パニック状態に陥っている 「あ、あの‥ティ‥」 「『Σびくっ』…わ、私疲れたからもう寝るわね!!」 そう言うとティアは逃げるようにルークの元を去って行った 「・・何か俺傷付いた」 そう言ってルークもとぼとぼと自分の部屋に戻って行った 「はぁ‥眠れねぇっつぅの」 ルークはベッドに寝転がり天井を見上げている 「‥だいたい俺そんなつもりは(少しはあったけど)‥でも二人でゆっくり過ごせればそれだけでよかったのに‥」 どうやら、ふてくされているようである 「‥(なのにティアの奴、明らさまにびくつきやがって)‥傷付くっつぅの!!」 静かな部屋にルークの声が響きわたる 「‥ったく‥‥外の空気でもすってくるか」 そう言ってルークは部屋を後にした 一方ティアはというと・・ 「はぁ‥眠れない‥」 何度寝転がりを打ったことだろうか 「‥ひょっとしてルーク‥そのつもりで今日誘ったのかな?でも私‥まだ心の準備が‥」 恥ずかしくて逃げて来たものの、ルークの事が気になって仕方がない 「‥(でもルークになら私///)‥って、な、何考えてるのよっ‥もぅ///」 まさに一人百面相状態である 「‥ふぅ‥ちょっと頭冷やしてこようかな」 ティアは部屋を出て中庭の方に歩いて行った そこにルークが居ることも知らずに・・ 「ル、ルーク‥」 「ティ、ティア?どうしてここに‥」 「…ちょっと夜風にあたろうと思って‥」 「そっか‥俺も‥」 空気が重い 「‥ね、ねぇ‥隣いい?」 「ん?ああ‥」 そう言ってティアはルークの横にちょこんと座った 「ねぇ‥何してたの?」 「別に‥ただ月を見てた‥」 夜空には満月が輝いている 「きれいね‥そういえば、あの時もこうやって二人で月を見上げてた‥」 「…俺も今同じ事考えてた」 ―あの時― そう、あのエルドラントの戦いの前日に二人で見たきれいな満月・・ 「あれからもう2年経ったんだな‥なんかあんまり実感湧かねぇけどさ‥」 「そうね‥でも世界は変わったわ。少しずつだけど、みんな『預言(スコア)』のない世界を受け入れ始めている」 ローレライを解放した今、人々が『預言(スコア)』に支配される事はもうない 「俺達の選択は間違ってなかったって事だよな‥」 「ええ‥私ね、今なら本当に心の底から思えるの。『人は変われる』って‥だから‥だから兄さんにも‥」 そう言いかけてティアは口を閉ざす 「ヴァン師匠‥か‥」 「‥‥ごめんなさい。変な事言って‥」 ティアの表情が曇る 「‥‥そ、そういえばさぁ~、ガイ達がティアも変わったって言ってたぞ」 「私が?そうかしら‥ううん、そうね‥そうかもしれない。でもそれは‥」 ティアはルークの方を見る 「‥でもそれは、貴方のおかげだわ」 「俺の?」 「ええ、貴方が『約束』守ってくれたから‥帰って来てくれたから‥」 ルークはガイ達の言葉を思い出していた 「(よく考えろ‥か)…ティア‥この2年間辛かったか?」 「どうしたの急に?…そうね、『辛くなかった』って言ったら嘘になるわね」 「‥ごめん‥な‥」 「どうして謝るの?あなたはここにいる‥ちゃんと私のそばにいてくれる‥」 ティアはそっとルークの手を握った 「ティ、ティア///…と、ところでさぁ、俺は変わったかな?」 「ええ‥変わったわ」 「‥どこが?」 「そうねぇ‥」 ティアはルークを見つめる 「背が伸びた!」 「へ?」 「あっ、髪も伸びたわね!」 ティアはくすくす笑っている 「‥もういい‥」 「‥うそよっ!本当は‥」 ティアはルークの肩にゆっくり寄り添っていく 「‥(こんなに安心出来る存在になった。2年前とは比べ物にならないくらい)‥」 「‥本当は?」 「‥ひ・み・つ」 そう言ってルークの唇にそっと人さし指をあてた 「ふふ‥あの時も同じ事したわね。私、すごく幸せだった‥」 「ああ‥でも俺は『今が一番幸せじゃなければいいのに』って思ってた‥』 「‥今もそう思ってるの?」 ルークは首を横に振る 「‥俺さ、あの時自分がもうすぐ消えるって事を知ってた。でも、消えたくなかった‥生きたかった‥この先も、幸せだって思える事たくさん経験したいって思ってた‥『今』が最後に感じる幸せなんて嫌だったんだ‥俺は‥『未来』が欲しかった‥」 ティアは黙ってルークの横顔を見つめている 「‥でも俺はこうして帰って来る事ができた‥たくさんの人の『死』を踏み台にして‥俺は『未来』を手に入れた‥」 「ルーク‥それは‥」 「別に悲観してる訳じゃないんだ。俺はその事実を知っている‥そしてちゃんと受け止めているから‥」 ルークの瞳がわずかに潤るんでいるように見えた 「それにその事を知っているからこそ、『今』をより大事にしたいって思う。どんな些細な事でも、すごく幸せだって思えるんだよ。それで‥気付いたんだ‥」 「‥何を?」 ティアは優しく問う 「‥上手く言えないんだけどさ、またこうしてティアと一緒に月を見る事ができて、俺は幸せだって感じてる‥でもそれは、あの時感じた幸せとは比べる事ができなくて‥」 ルークはまた月を見上げる 「‥きっとさ、『幸せだと感じる気持ち』に一番も二番もないんだよな‥順番なんて付けちゃいけないんだ‥色々な幸せを経験する事ができて、俺はそれに気付いた。だからもう『今が一番幸せじゃなければいいのに』とは思わない」 そう言ったルークの瞳は輝いていた 「‥俺は生きている。それだけで幸せなんだ‥これからも、そういう幸せを一つ一つ積み重ねながら生きていきたい‥ティアと一緒に‥」 「ルーク…やっぱりあなた変わったわ‥」 ― 兄さん‥人は変われる。その証拠にルークは帰って来た‥彼がその証。本当は兄さんにもわかっていたんじゃないの?ただ認めるのが怖かっただけなんじゃないの? あなたは誰よりも『預言(スコア)』に縛られていた でも世界は変わったわ‥だから‥だから兄さんにも‥生きてこの世界を見てもらいたかった‥ 「ティア?」 「‥‥少し寒くなってきちゃった‥私部屋に戻るわね‥」 そう言って、ティアが立ち上がろうとしたその時・・ 「ル、ルーク?」 ルークはティアの手を引き留めていた 「ティア‥俺の部屋に来ないか?」 「えっ///‥」 「‥って、お、俺何言ってんだっつぅの///何でもない、何でもないから!!」 ティアは恥ずかしそうにうつ向いている 「‥ばか‥」 「そ、そうだよな‥嫌だよな‥ご、ごめんな変な事言って」 そう言ってルークが手を離そうとしたその時・・ 「ティ、ティア///」 ティアはルークに抱きついていた 「‥たい‥な‥」 「えっ?」 「私も‥ルークの部屋に行きたい‥な‥」 「‥ティア‥」 ルークは優しくティアを抱き締める 「‥ルークの心臓‥すごくドキドキしてる‥」 「ばっ///‥き、聞くなっつぅの///」 「‥私と一緒の音‥すごく安心する‥」 ティアはゆっくりと瞳を閉じていった・・ ― パタン ― 夜の静寂に扉の閉まる音がする そして部屋の明かりは静かに消えていった・・ 二人の『未来』は続いていく・・ ---- #comment(vsize=2,nsize=20,size=40)
ルークが帰って来てからもうすぐ1ヶ月が経とうとしている お互い忙しくなかなか会う事ができない二人は、久しぶりのデートを満喫していた 「な、なあ‥ティア?週末家に泊まりに来ねえ?」 「えっ?」 「あっ///そ、その‥屋敷に誰もいないんだ‥だから…」 ファブレ夫妻が用事で留守にするため、メイド達もお暇を貰ったようだ 「も、もしティアがよければだけど…」 「本当?うれしい///」 「マジで?(ティ、ティアもその気か?///)」 彼女の反応に照れるルーク・・だが・・ 「ミュウに会うのひさしぶりだわ♪」 「‥(そっちかよ)‥」 そして週末・・・ 「お邪魔します」 「ああ、うん‥(この機会にティアと///)」 だが、そんなルークの気持ちとは裏腹に一方のティアはというと・・ 「ねえルーク?ミュウはどこ?」 やはりお目当てはミュウのようである 「‥(そればっかだな)‥里帰り!!」 「え~~‥ミュウと会えるの楽しみにしてたのになぁ‥もぅ‥」 「‥(俺はどうでもいいのかよ)‥」 ティアの態度に、ルークは一人張りきる自分が惨めに思えてくるのであった 「それにしても静かね‥」 「ん?まあな‥いつもはメイドや白光騎士団のみんながいるからな‥」 ただでさえ広い公爵邸、屋敷の中は静まりかえっている 「ひょっとしてルーク‥寂しいの?」 「ばっ///んなわけ…(ってまてよ!)」 何か思いついたらしいルークはわざとらしく話しだした 「そうなんだよなぁ~!もう寂しくて寂しくてさぁ~(嘘)…だからぁ‥」 チラッとティアの方を見る 「今日はティアが俺のメイドなっ♪」 「…なっ///あ、あなたばか?どうして私がっ」 「いいじゃん♪ティアだってメイドの服着てみたいだろ?」 「えっ!メイドの洋服‥?」 さすがにルークはティアの性格をよく知りつくしている 「ティアが着たらきっと可愛いと思うんだけどなぁ~」 「///‥そっ、そこまで言うなら‥」 「マジで♪(ちょろいぜ!)」 ティアは急ぎ足で部屋にむかい着替えをすることにした 「やっぱり可愛いい///前からいいなって思ってたのよね」 着替えを済ましたティアは嬉しそうにルークの元に戻った 「おっ!よく似合ってんじゃん」 「ほ、ほんとぅ///?」 「うん!うん!馬子にも衣装ってやつだな!」 「・・・」 「それじゃあ次は『ルーク様』って呼んで‥」 「‥(ぎろり)‥」 「ご、ごめんなさい…」 どうやら調子に乗りすぎたようである 「そ、そういえばさぁ~、お腹すかないか?」 「そうね‥そろそろお昼の時間かもしれないわね」 ティアは時計を見た 時刻はもうすぐ12時を迎えようとしている 「私何か作るわね。キッチン借りてもいい?」 「ああ!じゃあ一緒に作ろうぜ」 「う、うん///」 ―トントン♪トントン― リズムのいい包丁の音がキッチンに響きわたる 「♪♪♪‥(何だかこうしてると新婚みたい‥って、わ、私ってば何考えて///)」 「何かティア楽しそうだな」 「えっ?そ、そうかしら///・・・『痛っ』」 動揺したティアは指を切ってしまった 「だ、大丈夫か?血が出てるじゃないか」 「平気よこれくらい。舐めておけば治るわ」 「見せて診ろよ」 そう言うとルークはティアの傷口を口に含んだ 「ル、ルーク/////」 「あっ‥わっ、わりぃ///つ、つい…」 二人ともみるみるうちに顔が赤くなっていく 「…」 「…」 しばらく無言で見つめあう二人 そしてルークがティアの肩に手をかけようとしたその時・・・ ―ピンポーン― タイミングよく玄関のベルが鳴った 「だ、誰かしら‥わ、私見てくるわね‥」 「あっ‥お、おい」 足早に走り去るティアの後ろ姿を見つめながら、ルークは行き場の失った手をぶらぶらさせるのであった 「はぁ‥まだドキドキしてる///」 激しく脈打つ心臓をどうにか落ち着け、ティアは玄関の方に向かった 「ったく!いったい誰だよ‥邪魔しやがって!!」 そうぶつぶつ呟きながらルークも玄関へ向かう そこに現れたのは・・ 「どうだルーク!元気にしてるか?」 「来てさしあげましたわよ」 ガイ&ナタリアである 「お、おまえらなんで!!」 「ん?いや、おまえが寂しがってるんじゃないかと思ってな…って、ティアじゃないか?」 「ひさしぶりね二人とも」 「ええ本当ですわね…って、ティ、ティア?あなたのその格好!!」 そこにはメイドの服を着たティアの姿があった 「あっ///こ、これは‥そのぉ‥」 「ル、ルーク‥お前そんな趣味が…」 「…不潔ですわ」 「///ち、違うっつぅの!」 必死に弁解するルークだが、辺りは微妙な空気に包まれる そんな時・・ 「ティアさん、おひさしぶりですの!」 二人の後ろからひょこっとミュウが姿を現した 「ミュ、ミュウ?あなた森に帰ったんじゃぁ‥」 「?ミュウは今ナタリアさんの所にいるですの!」 ミュウの登場に慌てたルークは、場を取り繕うように必死にしゃべりだす 「ミュ、ミュウはどうしても城に行きたくて仕方なかったんだよなっ?なっ?」 「?違うですの!ご主人様が行けって‥」 「だぁ~!!黙れブタザル」 「みゅぅぅぅ‥」 「ちょっとルーク!ミュウが可愛そうじゃない!!」 そう言うとティアはミュウと一緒に向こうへ行ってしまった 「ハハ!嫌われたなルーク」 「自業自得ですわ!」 「お、おまえらなぁ!!」 ルークはじと目で二人を睨みつけた 「それにしてもティアがいるとはなぁ‥どうりで『絶対来るな』って言うわけだ(笑)」 「ええ、『絶対』を強調していましたものね」 「‥(わかってるなら来るなよな)‥」 結局ルークは不満を抱きながらも皆で昼食をとる事にした その後・・ティアはミュウと中庭へ遊びに行き、3人はそんな彼女について話をしている 「それにしても、彼女ずいぶん雰囲気変わったよな‥」 「ええ‥幸せそうですわね」 無邪気に笑っているティアの方を見る 「ミュウがいるからだろ?」 「お前なぁ‥本当にそう思うのか?よく考えてみろ!」 「まったく‥あなたが帰って来て『誰が』一番喜んでいると思っているのかしら!」 そう・・彼と交した『約束』を最後まで信じていたのは彼女だけ・・ 「大事にしてやれよ?彼女のこと」 「そうですわ!泣かしたら許しませんことよ」 「わ、わかってるっつぅの///」 そう言ってルークは窓越しに映るティアを愛しそうに見つめた 「‥それじゃぁそろそろ邪魔者は退散とするか」 「そうですわね。ずいぶんと長居してしまいましたわね」 しばらく話した後、二人(+一匹)は公爵邸を後にした 「ふぅ‥やっと帰ったか‥(これでティアとゆっくりできるぜ///)」 だが・・ 「あら?もうこんな時間だわ。私、夕食のお買い物に行って来るわね!」 そう言ってティアは外に出かけて行ってしまった 「…何か俺泣きそう」 素っ気ないティアの態度に、ルークはその場にへなへなとうなだれるのであった しばらくして・・ 「ただいまルーク」 どうやらティアが帰って来たようである しかし当のルークはというと・・・ 「すぅ‥ΖΖ‥すぅ‥ΖΖ」 「ルーク‥眠っているの?」 気持ちよさそうに寝息をたてているルークは一向に起きる気配がない 「きっと疲れてるのね…それにしてもルークの寝顔‥(かわいい///)」 ティアの唇がそっとルークの頬に触れる‥ 「…や、やだ///私ってば何してっ‥‥ル、ルーク?(まさか起きてないわよね)」 そう言うと、ほっぺをほんのり赤く染めながら夕食の準備にとりかかった・・ 「ん~~…何かいい臭いがするぅ~…」 「あら?起きたのねルーク。丁度夕食ができたところよ」 テーブルには二人では食べきれないという量の料理が並べられている 「うっわ!!こ、これ全部ティアが作ったのか?」 「ご、ごめんなさい‥ちょっと作りすぎちゃって‥」 「すっげぇうまそう♪♪」 ティアの料理は見た目こそ豪快であるが味は絶品である 「それじゃぁいっただきま~す『パクッ』‥うっめぇ~♪」 「ほ、ほんとぅ?///」 「ああ!前から思ってたんだけどさぁ、ティアって絶対いいお嫁さんになるよな(素)」 こういう事がさらっと言えてしまうのはガイゆずりか‥ 「えっ‥///」 「あっ‥///‥やっ、そ、その‥べ、別に深い意味は‥」 またまたいい雰囲気になる二人・・だが・・ ―ピンポーン― またしても、タイミングを見図ったかのようにベルが鳴った 「やっほぉ~♪アニスちゃんでぇ~す☆」 「二人ともご無沙汰しています。あっ、勝手に上がらせてもらいましたよ」 そう言って現れたのは、アニス&ジェイドである 「・・・帰れ」 「ぶぅ~ぶぅ~!せっかく(邪魔しに)来てあげたのに~」 「ルークが(『暴走』しないか)心配になったものですから」 どうやらミュウから事の一端を聞い駆けつけたようだ 「それにしてもティアのその格好‥ルークにはそんな趣味がおありでしたか」 「最低だねっ★」 「だぁ~///違うっつぅの!いいから帰れ!!」 ティアとの時間を邪魔されたくないルークは声を荒げる・・だが・・ 「ちょっとルーク!静かにしなさい!!」 「へっ?」 「せっかく来てくれたのにそんな言い方ないでしょう!」 ルークとは反対にティアの方は歓迎モードである 「二人とも丁度良かったわ。夕食作りすぎちゃって‥一緒に食べましょう!」 「やったぁ~♪(ムフフ☆ルーク可愛そう♪)」 「それではお言葉に甘えて(哀れですねぇ)」 「・・・」 ルークは言葉を失った そして夕食後・・ 「ねぇねぇティア~?一緒にお風呂入ろっ♪」 「ええ、別に構わないけど」 「一度入ってみたかったんだよねぇ~♪ルークん家のお風呂☆‥‥『覗くなよ』」 「何で俺を見るんだよ!」 そう言って、アニスとティアはお風呂場に行ってしまった 「はぁ‥全然ゆっくりできねぇ‥」 「それは残念ですね~(笑)」 「‥(誰のせいだよ)‥」 ルークはもはや怒る気力も失せていた 「それにしても、あなたもずいぶん積極的になったものですねぇ~」 「あ~?何の話だよ」 「またまたぁ‥わかってるくせに」 ジェイドはいやらしい目つきでルークを見る 「お、俺は、ただティアとのんびり過ごしたかっただけで‥や、やましい事は‥」 「おやぁ?私は『ティア』なんて一言も言ってませんけどねぇ」 「なっ///」 愛変わらずジェイドにいいように扱われるルークであった 「ふっ‥あなたは本当に素直ですね‥ではこれを!」 そう言ってジェイドが手渡した物とは・・ 「Σジェ、ジェイドお前!」 「こういう物は男性の方が用意するべきです!」 「///お、俺達まだそんな関係じゃぁ‥」 「なるほど‥『まだ』なんですね!」 「!!!」 ルークの顔は火がついたように真っ赤に燃えあがっていった 一方ティア達は・・ 「ふわぁ~☆極楽♪極楽♪」 「はぁ‥気持ちいい‥」 無駄に広い浴室に二人の声が響きわたる 「それにしてもぉ、ティアって本っ当に胸おっきいよねぇ~(この胸をルークが‥)」 「えっ///そ、そうかしら?でも肩とかこっちゃって‥」 「そうなんだ‥(ちっ!うらやましい)」 そんな会話で盛り上がっているうちに、のぼせたのか二人は湯船からあがることにした 「それにしてもさぁ、ティアも大胆になったもんだよね~」 「えっ?何が?」 どうやらこちらでも同じ展開が繰り広げられているようだ 「何がって‥相手が『あの』ルークとはいえ男の人の家に泊まるんだよ?しかも二人っきり‥当然‥そういう事でしょ?」 「・・・」 「なに?なに?ひょっとして自覚なかった?」 「//////」 ティアの顔はみるみるうちに赤くなっていく 「(思った通りか)‥それじゃぁ、はいこれ!アニスちゃんからのプレゼント♪」 そう言ってアニスが手渡した物とは・・やはり 「Σア、アニスこれ///」 「今は女の子でも持っておかなくっちゃ!常識だよっ☆」 「///わ、私達まだそんな関係じゃぁ‥」 「へぇ‥『まだ』なんだぁ」 「!!!」 これまた同じ展開で、ティアの顔はこれ以上ないというくらい耳まで真っ赤に染まっていった その後・・ 「それじゃぁティア、報告よろしくねん☆」 「ルーク‥健闘を祈ります」 結局さんざんからかいぬいた挙げ句、アニスとジェイドは嵐のように去っていった そして残された二人はというと・・ 「‥(お、俺この後どうすればいいんだ)‥」 「‥(わ、私本当にそんなつもりじゃぁ)‥」 パニック状態に陥っている 「あ、あの‥ティ‥」 「『Σびくっ』…わ、私疲れたからもう寝るわね!!」 そう言うとティアは逃げるようにルークの元を去って行った 「・・何か俺傷付いた」 そう言ってルークもとぼとぼと自分の部屋に戻って行った 「はぁ‥眠れねぇっつぅの」 ルークはベッドに寝転がり天井を見上げている 「‥だいたい俺そんなつもりは(少しはあったけど)‥でも二人でゆっくり過ごせればそれだけでよかったのに‥」 どうやら、ふてくされているようである 「‥(なのにティアの奴、明らさまにびくつきやがって)‥傷付くっつぅの!!」 静かな部屋にルークの声が響きわたる 「‥ったく‥‥外の空気でもすってくるか」 そう言ってルークは部屋を後にした 一方ティアはというと・・ 「はぁ‥眠れない‥」 何度寝転がりを打ったことだろうか 「‥ひょっとしてルーク‥そのつもりで今日誘ったのかな?でも私‥まだ心の準備が‥」 恥ずかしくて逃げて来たものの、ルークの事が気になって仕方がない 「‥(でもルークになら私///)‥って、な、何考えてるのよっ‥もぅ///」 まさに一人百面相状態である 「‥ふぅ‥ちょっと頭冷やしてこようかな」 ティアは部屋を出て中庭の方に歩いて行った そこにルークが居ることも知らずに・・ 「ル、ルーク‥」 「ティ、ティア?どうしてここに‥」 「…ちょっと夜風にあたろうと思って‥」 「そっか‥俺も‥」 空気が重い 「‥ね、ねぇ‥隣いい?」 「ん?ああ‥」 そう言ってティアはルークの横にちょこんと座った 「ねぇ‥何してたの?」 「別に‥ただ月を見てた‥」 夜空には満月が輝いている 「きれいね‥そういえば、あの時もこうやって二人で月を見上げてた‥」 「…俺も今同じ事考えてた」 ―あの時― そう、あのエルドラントの戦いの前日に二人で見たきれいな満月・・ 「あれからもう2年経ったんだな‥なんかあんまり実感湧かねぇけどさ‥」 「そうね‥でも世界は変わったわ。少しずつだけど、みんな『預言(スコア)』のない世界を受け入れ始めている」 ローレライを解放した今、人々が『預言(スコア)』に支配される事はもうない 「俺達の選択は間違ってなかったって事だよな‥」 「ええ‥私ね、今なら本当に心の底から思えるの。『人は変われる』って‥だから‥だから兄さんにも‥」 そう言いかけてティアは口を閉ざす 「ヴァン師匠‥か‥」 「‥‥ごめんなさい。変な事言って‥」 ティアの表情が曇る 「‥‥そ、そういえばさぁ~、ガイ達がティアも変わったって言ってたぞ」 「私が?そうかしら‥ううん、そうね‥そうかもしれない。でもそれは‥」 ティアはルークの方を見る 「‥でもそれは、貴方のおかげだわ」 「俺の?」 「ええ、貴方が『約束』守ってくれたから‥帰って来てくれたから‥」 ルークはガイ達の言葉を思い出していた 「(よく考えろ‥か)…ティア‥この2年間辛かったか?」 「どうしたの急に?…そうね、『辛くなかった』って言ったら嘘になるわね」 「‥ごめん‥な‥」 「どうして謝るの?あなたはここにいる‥ちゃんと私のそばにいてくれる‥」 ティアはそっとルークの手を握った 「ティ、ティア///…と、ところでさぁ、俺は変わったかな?」 「ええ‥変わったわ」 「‥どこが?」 「そうねぇ‥」 ティアはルークを見つめる 「背が伸びた!」 「へ?」 「あっ、髪も伸びたわね!」 ティアはくすくす笑っている 「‥もういい‥」 「‥うそよっ!本当は‥」 ティアはルークの肩にゆっくり寄り添っていく 「‥(こんなに安心出来る存在になった。2年前とは比べ物にならないくらい)‥」 「‥本当は?」 「‥ひ・み・つ」 そう言ってルークの唇にそっと人さし指をあてた 「ふふ‥あの時も同じ事したわね。私、すごく幸せだった‥」 「ああ‥でも俺は『今が一番幸せじゃなければいいのに』って思ってた‥』 「‥今もそう思ってるの?」 ルークは首を横に振る 「‥俺さ、あの時自分がもうすぐ消えるって事を知ってた。でも、消えたくなかった‥生きたかった‥この先も、幸せだって思える事たくさん経験したいって思ってた‥『今』が最後に感じる幸せなんて嫌だったんだ‥俺は‥『未来』が欲しかった‥」 ティアは黙ってルークの横顔を見つめている 「‥でも俺はこうして帰って来る事ができた‥たくさんの人の『死』を踏み台にして‥俺は『未来』を手に入れた‥」 「ルーク‥それは‥」 「別に悲観してる訳じゃないんだ。俺はその事実を知っている‥そしてちゃんと受け止めているから‥」 ルークの瞳がわずかに潤るんでいるように見えた 「それにその事を知っているからこそ、『今』をより大事にしたいって思う。どんな些細な事でも、すごく幸せだって思えるんだよ。それで‥気付いたんだ‥」 「‥何を?」 ティアは優しく問う 「‥上手く言えないんだけどさ、またこうしてティアと一緒に月を見る事ができて、俺は幸せだって感じてる‥でもそれは、あの時感じた幸せとは比べる事ができなくて‥」 ルークはまた月を見上げる 「‥きっとさ、『幸せだと感じる気持ち』に一番も二番もないんだよな‥順番なんて付けちゃいけないんだ‥色々な幸せを経験する事ができて、俺はそれに気付いた。だからもう『今が一番幸せじゃなければいいのに』とは思わない」 そう言ったルークの瞳は輝いていた 「‥俺は生きている。それだけで幸せなんだ‥これからも、そういう幸せを一つ一つ積み重ねながら生きていきたい‥ティアと一緒に‥」 「ルーク…やっぱりあなた変わったわ‥」 ― 兄さん‥人は変われる。その証拠にルークは帰って来た‥彼がその証。本当は兄さんにもわかっていたんじゃないの?ただ認めるのが怖かっただけなんじゃないの? あなたは誰よりも『預言(スコア)』に縛られていた でも世界は変わったわ‥だから‥だから兄さんにも‥生きてこの世界を見てもらいたかった‥ 「ティア?」 「‥‥少し寒くなってきちゃった‥私部屋に戻るわね‥」 そう言って、ティアが立ち上がろうとしたその時・・ 「ル、ルーク?」 ルークはティアの手を引き留めていた 「ティア‥俺の部屋に来ないか?」 「えっ///‥」 「‥って、お、俺何言ってんだっつぅの///何でもない、何でもないから!!」 ティアは恥ずかしそうにうつ向いている 「‥ばか‥」 「そ、そうだよな‥嫌だよな‥ご、ごめんな変な事言って」 そう言ってルークが手を離そうとしたその時・・ 「ティ、ティア///」 ティアはルークに抱きついていた 「‥たい‥な‥」 「えっ?」 「私も‥ルークの部屋に行きたい‥な‥」 「‥ティア‥」 ルークは優しくティアを抱き締める 「‥ルークの心臓‥すごくドキドキしてる‥」 「ばっ///‥き、聞くなっつぅの///」 「‥私と一緒の音‥すごく安心する‥」 ティアはゆっくりと瞳を閉じていった・・ ― パタン ― 夜の静寂に扉の閉まる音がする そして部屋の明かりは静かに消えていった・・ 二人の『未来』は続いていく・・ ---- - 結局やりましたねぇ~ -- あびた (2008-01-05 03:12:46) #comment(vsize=2,nsize=20,size=40)

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