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ティアは何十回目となる寝返りをうった。 時刻は真夜中。 「・・・寝むれない」 する事もなく早くベッドに入ったはずなのに、まったく寝付けない。少しでも睡眠をとらないと身体がもたないのに。 多少無理矢理にでも睡眠をとろうとしているせいか、身体が受け付けてくれない。 気を紛らわそうと水を飲んだりしているのだが、いまだ睡魔は襲ってきてくれない。 もう何百匹のぶうさぎを数えたのだろうか。それでもちっとも効いてこない。おまけに寝返りのせいで身体が痛い。 「・・・はぁ」 寝れない理由は分かってる。ルークが帰ってこないから。5日ほど前から遠い海の向こう、バチカルにいる。 彼がバチカルへと出かけていってから、自分はまともに睡眠をとっていない状況。 (・・・大丈夫かな・・・ちゃんとご飯食べてるかな) こんな心配などいらないはずなのに頭の中でループする。 いままでこんなことはなかった。でも、ルークが帰ってきてからは心配性になったような気がする。 心配でしょうがない。でも何故だろう? ルークはちゃんと約束を守って帰ってきてくれたのに・・・ ねぇ、いまどこなの? 肉体的にも、精神的にも疲れてきた。 何故ルークは帰ってこないのか。帰る約束は今日のはず、私をほったらかしにして何をしているの? はっきりいってこんな自分は我侭だろう。 うとうとしてもすぐに目が覚めてしまう。ろくに睡眠が取れていないせいか目の下にはクマができているし、食欲もない。 ストレスも溜まってるにちがいない。 「ルークのばか・・・」 早く帰ってきて。 心配ばかりかけさせないで。 声を聞かせて。 私の側にいてよ・・・ ごろりと寝返りをうった。 (・・・私何でこんなに不安になっているのかしら?) ルークが帰ってくるまでの3年間、私は耐えてきたじゃない。 切なさや寂しさで押しつぶされそうになった時もあったけど、いつも彼を信じて待っていたはず。 そんな彼が無事に帰ってきてくれて本当に嬉しかった。こんな私が涙まで流していた。 今の生活は十分すぎるほど幸せで、何も不満なんてないはず・・・。 ただルークの帰りを待つだけなのに、何を不安になっているの? (甘えてるのかな・・・) そう思いティアは再び寝返りをうった。 「・・・ルーク」 また満足な睡眠がとれなそうだ。食事もろくにとっていない、すでに体重も減ってきている。 早く帰ってきてよ・・・ なんで帰ってこないのよ・・・ ルークの存在がここまで影響を与えるとは思いもしなかった。 こんなに弱かっただろうか・・・? アニスがいたら、こんな私をきっとばかにするだろう。 早く会いたくてしょうがない。 会って、抱きしめて、そして――… それでもその願いが叶うのはいつなんだろう・・・ 眠れない時間は続く。 睡魔が訪れるような気配はない。 「るーくぅ・・・」 ねえ、いつ帰ってくるの? このままじゃわたし――死んじゃうかもしれないよ? 少し大袈裟かもしれない―― でもこのままじゃいずれおかしくなる。 そう思っても、ルークは遠い海の向こうにいる。こんなことを考えているなんて思いもしないだろう。 「・・・ばか」 もう許さないんだから・・・ ガタッ その音にすぐ気がつき、ティアはゆっくりとベットの上から身を起こして玄関に向かった。 真夜中、こんな時間勝手に家に入れるのは一人のみ。 私の場合――そう、彼しかいない。 期待を胸に階段を下りると、やはり彼が立っていた。 「・・・遅いわ」 「すまない」 彼――ルークは申し訳なさそうに返事をしてきた。 「色々あってな。ごめん、連絡もしないで」 帰ってきた。 私の前に帰ってきた・・・ 「・・・お帰り」 「ああ・・・ただいま」 「・・・なに?」 「顔色が悪いな」 すぐに体調を指摘された。 「ティア。もう寝たらどうだ?俺の事は気にしないでいい、平気…」 ティアはルークに抱きついた。 ぎゅうっと腕に力を込めるが、その力もか細く弱い。 「ティア?」 「・・・ルークのせいだからね・・・寝れないの・・・」 「え?」 「ルークのせい・・・不安だったのよ。あなたが帰ってきてからこれが始めてじゃない。私が一人で待っている事は。  またあなたがいなくなったらって考えたら、不安でたまらないの・・・」 「そうか・・・」 「眠れなかったんだから・・・どうしてくれるの。謝っても許してあげないんだから・・・」 こんな意地悪な事を言うなんてどうかしてる。 あまりにも我侭な自分。寝不足で苛々しているせいだろうか。 「・・・すまない、心配をかけて」 「・・・」 「俺にできることがあるのなら言ってくれ。なんでもする・・・」 ・・・なんでもする?  「・・・一緒に寝て」 「このままか?」 「うん」 「風呂に入ってないぞ?」 「いい・・だからお願い・・・」    わたしのそばにいて。 ティアはルークにしがみついた状態でベットに横になる。 「この体勢で大丈夫か?」 「うん・・・大丈夫」 ティアはルークの胸の上に頭を置く。すると心臓の音が聞こえ、心地よい振動が伝わってきた。 「もう眠れそうか?」 「うん・・・」 ゆっくりと睡魔が訪れてくるのがわかる。待ちわびていた感覚。彼に会ったことでようやく感じられた。 「ねえ・・・私が起きたときちゃんといてよ?」 心臓の音が私を起こしてくれる? 「ああ」 「どこか行っちゃったりしたら・・・許さないんだから」 目を覚ましたとき、一番に見るのはルークの顔がいい。 「安心して眠れよ。俺はちゃんとここにいる」 「ふふ・・・」 「今のティアは甘えん坊だな・・・。昔のお前だったら考えられないよ」 私が甘えてる? ――そうかもしれない。 ルークは帰ってきてから雰囲気が変わった。どこか落ち着いた印象を漂わせている。 7歳だった子供が、大人になったのだ。 今は人に頼らず何でもこなすルーク。昔と比べ、私にあまり頼ってはくれない。どこか寂しい・・・ だから甘えたくなる。 「別にいいでしょ・・・私だって甘えたりするわよ・・・」 「悪いだなんて言ってないだろ?甘えてるティアは可愛いぞ」 ルークはティアの頭を撫でながら語る。 「おやすみ、ティア」 「うん・・・おやすみ・・・」 ---- - ああ・・・なんかいい・・・ -- 名無しさん (2006-07-02 02:39:42) - うん・・ほんとGJ! -- 名無しさん (2006-08-05 23:44:07) - 神が降臨なされた・・・ -- 名無しさん (2006-08-09 11:06:41) - こんな二人がとても私の理想でした!&br()いいです。 -- 瑠紅 (2006-09-17 13:53:15) - あはははははははははははは &br() -- kintos (2008-10-06 14:36:10) - ティアならそれぐらい言ってもいいと思う &br() -- 茶味 (2008-10-26 21:05:16) #comment(vsize=2,nsize=20,size=40)
ティアは何十回目となる寝返りをうった。 時刻は真夜中。 「・・・寝むれない」 する事もなく早くベッドに入ったはずなのに、まったく寝付けない。少しでも睡眠をとらないと身体がもたないのに。 多少無理矢理にでも睡眠をとろうとしているせいか、身体が受け付けてくれない。 気を紛らわそうと水を飲んだりしているのだが、いまだ睡魔は襲ってきてくれない。 もう何百匹のぶうさぎを数えたのだろうか。それでもちっとも効いてこない。おまけに寝返りのせいで身体が痛い。 「・・・はぁ」 寝れない理由は分かってる。ルークが帰ってこないから。5日ほど前から遠い海の向こう、バチカルにいる。 彼がバチカルへと出かけていってから、自分はまともに睡眠をとっていない状況。 (・・・大丈夫かな・・・ちゃんとご飯食べてるかな) こんな心配などいらないはずなのに頭の中でループする。 いままでこんなことはなかった。でも、ルークが帰ってきてからは心配性になったような気がする。 心配でしょうがない。でも何故だろう? ルークはちゃんと約束を守って帰ってきてくれたのに・・・ ねぇ、いまどこなの? 肉体的にも、精神的にも疲れてきた。 何故ルークは帰ってこないのか。帰る約束は今日のはず、私をほったらかしにして何をしているの? はっきりいってこんな自分は我侭だろう。 うとうとしてもすぐに目が覚めてしまう。ろくに睡眠が取れていないせいか目の下にはクマができているし、食欲もない。 ストレスも溜まってるにちがいない。 「ルークのばか・・・」 早く帰ってきて。 心配ばかりかけさせないで。 声を聞かせて。 私の側にいてよ・・・ ごろりと寝返りをうった。 (・・・私何でこんなに不安になっているのかしら?) ルークが帰ってくるまでの3年間、私は耐えてきたじゃない。 切なさや寂しさで押しつぶされそうになった時もあったけど、いつも彼を信じて待っていたはず。 そんな彼が無事に帰ってきてくれて本当に嬉しかった。こんな私が涙まで流していた。 今の生活は十分すぎるほど幸せで、何も不満なんてないはず・・・。 ただルークの帰りを待つだけなのに、何を不安になっているの? (甘えてるのかな・・・) そう思いティアは再び寝返りをうった。 「・・・ルーク」 また満足な睡眠がとれなそうだ。食事もろくにとっていない、すでに体重も減ってきている。 早く帰ってきてよ・・・ なんで帰ってこないのよ・・・ ルークの存在がここまで影響を与えるとは思いもしなかった。 こんなに弱かっただろうか・・・? アニスがいたら、こんな私をきっとばかにするだろう。 早く会いたくてしょうがない。 会って、抱きしめて、そして――… それでもその願いが叶うのはいつなんだろう・・・ 眠れない時間は続く。 睡魔が訪れるような気配はない。 「るーくぅ・・・」 ねえ、いつ帰ってくるの? このままじゃわたし――死んじゃうかもしれないよ? 少し大袈裟かもしれない―― でもこのままじゃいずれおかしくなる。 そう思っても、ルークは遠い海の向こうにいる。こんなことを考えているなんて思いもしないだろう。 「・・・ばか」 もう許さないんだから・・・ ガタッ その音にすぐ気がつき、ティアはゆっくりとベットの上から身を起こして玄関に向かった。 真夜中、こんな時間勝手に家に入れるのは一人のみ。 私の場合――そう、彼しかいない。 期待を胸に階段を下りると、やはり彼が立っていた。 「・・・遅いわ」 「すまない」 彼――ルークは申し訳なさそうに返事をしてきた。 「色々あってな。ごめん、連絡もしないで」 帰ってきた。 私の前に帰ってきた・・・ 「・・・お帰り」 「ああ・・・ただいま」 「・・・なに?」 「顔色が悪いな」 すぐに体調を指摘された。 「ティア。もう寝たらどうだ?俺の事は気にしないでいい、平気…」 ティアはルークに抱きついた。 ぎゅうっと腕に力を込めるが、その力もか細く弱い。 「ティア?」 「・・・ルークのせいだからね・・・寝れないの・・・」 「え?」 「ルークのせい・・・不安だったのよ。あなたが帰ってきてからこれが始めてじゃない。私が一人で待っている事は。  またあなたがいなくなったらって考えたら、不安でたまらないの・・・」 「そうか・・・」 「眠れなかったんだから・・・どうしてくれるの。謝っても許してあげないんだから・・・」 こんな意地悪な事を言うなんてどうかしてる。 あまりにも我侭な自分。寝不足で苛々しているせいだろうか。 「・・・すまない、心配をかけて」 「・・・」 「俺にできることがあるのなら言ってくれ。なんでもする・・・」 ・・・なんでもする?  「・・・一緒に寝て」 「このままか?」 「うん」 「風呂に入ってないぞ?」 「いい・・だからお願い・・・」    わたしのそばにいて。 ティアはルークにしがみついた状態でベットに横になる。 「この体勢で大丈夫か?」 「うん・・・大丈夫」 ティアはルークの胸の上に頭を置く。すると心臓の音が聞こえ、心地よい振動が伝わってきた。 「もう眠れそうか?」 「うん・・・」 ゆっくりと睡魔が訪れてくるのがわかる。待ちわびていた感覚。彼に会ったことでようやく感じられた。 「ねえ・・・私が起きたときちゃんといてよ?」 心臓の音が私を起こしてくれる? 「ああ」 「どこか行っちゃったりしたら・・・許さないんだから」 目を覚ましたとき、一番に見るのはルークの顔がいい。 「安心して眠れよ。俺はちゃんとここにいる」 「ふふ・・・」 「今のティアは甘えん坊だな・・・。昔のお前だったら考えられないよ」 私が甘えてる? ――そうかもしれない。 ルークは帰ってきてから雰囲気が変わった。どこか落ち着いた印象を漂わせている。 7歳だった子供が、大人になったのだ。 今は人に頼らず何でもこなすルーク。昔と比べ、私にあまり頼ってはくれない。どこか寂しい・・・ だから甘えたくなる。 「別にいいでしょ・・・私だって甘えたりするわよ・・・」 「悪いだなんて言ってないだろ?甘えてるティアは可愛いぞ」 ルークはティアの頭を撫でながら語る。 「おやすみ、ティア」 「うん・・・おやすみ・・・」 ---- - ああ・・・なんかいい・・・ -- 名無しさん (2006-07-02 02:39:42) - うん・・ほんとGJ! -- 名無しさん (2006-08-05 23:44:07) - 神が降臨なされた・・・ -- 名無しさん (2006-08-09 11:06:41) - こんな二人がとても私の理想でした!&br()いいです。 -- 瑠紅 (2006-09-17 13:53:15) - あはははははははははははは &br() -- kintos (2008-10-06 14:36:10) - ティアならそれぐらい言ってもいいと思う &br() -- 茶味 (2008-10-26 21:05:16) - ティア可愛い。 -- 無季 (2011-07-25 22:35:49) #comment(vsize=2,nsize=20,size=40)

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