なんかよくわかんない@Wiki

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匿名ユーザー

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 見上げた空には暗く染まり、妖しい輝きの月は闇に彩られ影に沈む木々は平然に佇み、その風景を形容するもの。
 ――夜、と呼ばれている世界。


 静寂は既に跡形も無い。状況は異常も危険もとうに過ぎ、もはや壊滅に限りなく等しい。
 一人死に、また一人死に、また一人死に、また一人死に、また一人死にを繰り返し。


 劈(つんざ)く悲鳴に添えるように爆発が枝を揺らし、映し出される一瞬の影が蠢く。
 それによって解ることは、また一人死んだと言う事実。
 それを認識できたのは、この場で二人しか居なかった。
 横たわる人の形をしたものは、当然何も見えず何も聞けず何も嗅げず何も食えず何も感じることはない。要約すれば、死んでいる。
 つまり。たった一人の圧倒的な殺戮者と、たった一人の絶望的な生存者しかこの場には残っていないということだ。


 最後の生存者は、太い樹木の幹に寄りかかっていた。
 女。肩に届く茶色の髪の、女。
 身に纏うローブの色は赤に銀線が四つ。原色系の四歩手前であることから、位は決して低いものではない。
 フチは、橙。最大武力を所有する、北塔の人間であることが解る。
 実力者――だった。


 しかしその彼女の表情は圧倒的な恐怖に染まっている。
 顎の痙攣は歯を打ち鳴らし、足腰も言うことを聞かない。
 理性は砕け散り、機能しているものは本能的恐怖だけ。


 「……ぃ」
 生存者が、僅かに唇を動かす。それが恐怖の中で唯一表すことの出来た反応(リアクション)だった。
 木々の隙間から、降り立った。音もなく、ただ自然に。
 蒼い長髪が空気の抵抗に阻まれ、遅れて落ちる様は津波のように。


 「――――」
 殺戮者が、無感情な瞳で生存者を見やる。
 ここで生存者は、初めてその姿を確認する。
 美しい女性だ。
 蒼の長髪。異形の黄色い瞳。羽織る黒革のジャケット。
 そこまで見て、生存者はびくっ、としゃくり上げる様に震える。
 細かい砂利を踏む音と共に、殺戮者が近づいてくる。
 生存者は、ただただ後ずさる。その背に樹木があるにも関わらず、ただただ後ずさることしかできない。
 距離は詰まっていく。殺戮者は生存者の眼前にまで迫ったところで、唐突にしゃがみ込んだ。


 「――――ひ」
 視線が重なる。顔の距離が近い。
 一層生存者はもがく。もがくが、それだけだ。
 殺戮者は品定めをするような表情でそれを見る。


 「抵抗の意思を、見せないのね」


 つまらない、と。


 殺戮者はそう言って無感情な瞳を向け、そして、


 喉元へと、喰らいついた。
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