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サウンド・オヴ・サイレンス」(2010/09/05 (日) 14:30:50) の最新版変更点

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*サウンド・オヴ・サイレンス  年代がかったコンクリートの床は、コンコースに湿った音を響かせる。  結果的に芦原に引き連れられる形で戻って来た三人を、待っていた四人が黙って出迎える。  じっとこちらを見つめている彼らに、木場は我知らず身がすくむのを感じた。 「どうした、木場」  一瞬足が止まったのに気づき、葦原が尋ねる。 「いや、別に」  口走りつつ思わず視線をそらしてしまった彼を、非難の目が睨んでいる……ように感じたのは、ただの被害妄想にちがいない。が、そう割り切ってしまうには、彼は優しすぎた。 「じゃ、みんな揃ったし、行こっか」  立ち上がりかけた響鬼を、香川が制する。 「待って下さい」  首を傾げる彼らの前で、おもむろに携帯を取り出す。  放送まで、あと5分もなかった。           *     *     *  廃屋の壁の隙間から、朱く弱々しい光が流れ込む。  真魚は薄暗い部屋の中、ただ膝を抱えて待っていた。割れたガラスに新聞紙が貼付けられただけの窓辺には、乾ききった土の上にひからびた草の茎だけが、心細げに立ち尽くしている。  辺りが静かになってからしばらく時間が経った。その静けさに一度は安堵したものの、戻ってくる足音が聞こえないことが少しずつ不安を煽る。おいて行かれたのでは、見捨てられたのではないかという疑念を体から追い出そうと、少女は膝を抱く腕に力を込めた。  傍らの床におかれた荷物が彼女の代わりに身を震わせた。  真魚の手がおずおずとデイパックに伸びる。  どこからか、時を告げるはずの鐘の音が遅れて鳴り響いた。           *     *     *  乾いた沈黙がコンコースを満たす。  改めて手塚の死を胸に叩き込まれたのが一つ。そしてもう一つの理由があった。 「僕が、一文字さんをおいて来たから……ですか?」  呟く志村の顔は、常にもまして血の気を失っている。その様子には、呆然という言葉が最もふさわしいだろう。 「空を飛ぶ怪物、と言いましたね」  冷徹な香川に尋ねられ、志村は目を見開いた。 「君の上司を襲ったモノのことです」 「あ、ええ、はい」 「追跡されていた可能性はありますか」  畳み掛けるような問いに、彼は素直に首を縦に振る。 「ない、とは言い切れません。相手は人間ではありませんから」 「なるほど」  香川が鋭い視線を虚空に移して考えを巡らせ始める。志村は内心安堵した。この男、ひょっとすると賢すぎるがゆえにつけいる好きがあるかもしれない。  その向こうで、ヒステリックな金切り声が上がった。 「なんでですか!なんで威吹鬼さんまで!」  京介だった。  今にもつかみかかってきそうな少年を受け止め、響鬼が答える。 「まあ、あれだ。俺たちにもできないことはあるってことだ」 「だけどヒビキさん!」  少年はなおも食い下がる。  「イブキさんはあんなに修行してたじゃないですか!ヒビキさんほどじゃなかったとしても……」  京介の態度はよく聞いてみると抗議をしている、というよりは懇願している、といったほうが近いだろう。最終的には響鬼に、その強さにすがっているからこそ、『鬼』の強さを否定するがごとき現実に憤懣を感じるのに違いない。  実際、続いた言葉は彼の心情を裏返したものだった。 「修行したって殺されるなら、そんなのどういう意味があるんですか!だったらヒビキさんも簡単に殺されたりとかするんですか!」 「そうだよ」  あっけない肯定に、少年が声を失う。 「だから努力すんだろ、少年」  響鬼は少年の肩を軽く手で叩いた。 「できないことをできるようにする。それでこそ人間ってもんじゃん。なぁ」  今度こそ、京介には返す言葉がなかった。  彼が一応は口をつぐんでおとなしくなったのを確かめ、響鬼は困ったように頭をかいて仲間に向き直った。 「俺の友達。つか、同僚、かな?今、呼ばれたのよ。名前」  放送で、名前を呼ばれる。その意味が実感に変わるまで、聞く側にも数秒の時間が必要だった。響鬼は淡々と続ける。 「俺らは戦って死ぬの、珍しいことじゃないし?仕事だからさぁ」 「仕事……」木場がおうむ返しに呟く。 「そう。仕事なんだよねぇ、コレ」  いいながら向ける笑顔も、穏やかさのどこかに寂しさを隠していないと言えば嘘になる。朋輩、盟友、同志……どのような関係だったのかは分からないが、仲間を失ってなお仕事と言い切れる意思の強さは冷徹とは別物だろう。  言うなれば、仲間も信念を貫いたに違いないという信頼か。 「そんじゃ、行きますか。ここで立ち話してても、誰の役にも立てないでしょ」  笑顔のまま大きく手を広げる響鬼には、それ以上誰も口を挟める雰囲気ではなかった。香川が頷き、彼に続ける。 「一応、外に出るときは辺りに気をつけて下さい。空を飛べる者もいるくらいだ。こう暗くなってくれば、夜目が効く者がいても不思議ではありません」  暗に自分のことを指摘されているように感じ、木場の喉が焼け付く。 「まあ待ってよ。それなら、こいつが偵察に行ってくれるからさ」  響鬼は先ほど受け取った灰色の円盤を音叉で弾くと、空に向かって放りあげた。途端、ただの板でしかなかったものが細く機敏な蛇の姿に変わる。 「頼むぞ、ほら」  本来の主に声をかけられたのが嬉しいのだろうか。蛇は小さく身を震わせると改札口から向こうに消えて行った。  が、ほどなくして戻ってくると、響鬼の足下からズボンに潜り込んでしまう。 「おっかしいなぁ。あんま遠く行きたくないみたいだなぁ」  響鬼は裾から覗くしっぽをつまんで引っ張りだし、目の前で蛇をぶらぶらさせた。埒のあかないその様子に、木場が意を決して立ち上がる。 「じゃあ、俺が先に出ます」 「わかりました。お任せしましょう」  木場は唇を噛んで外に向かった。自分がこうも息苦しく感じる理由がどこにあるのか、それだけはもう考えたくなかった。           *     *     *  辺りを見回した瞬間、夕日の名残に視界を染められてめまいすら感じる。が、視界を脅かすものは彼の心のうちにしかなく、風景は至って静かに迫り来る夜を待っていた。  叫びも嗚咽もなく、ただひたすらに静かに。 「大丈夫です。出て来てください」  振り返って声をかけると、駅舎の中から残りの者が一人、また一人と姿を現した。 「ひとまず安全のようですね。では、先ほど言った通りに」  香川が冷徹に指示を下す。  選ばれたルートはこうだった。  まずはバイクの機動性が高まる幹線道路まで進む。基本的にバイクを操れるものは年長で戦闘能力も高いが、全員を乗せて移動するにはいかにせん台数が足りない。三角乗りというわけにもいくまいし、今にもガス欠に至りそうなものもある。そのため緊急時に備えてバイクは運転できる者が押し、徒歩チームの前後を固める。  病院にいた一文字が殺されたとすれば、その近辺は危険も多い。状況によっては病院を素通りして放送局に寄り、定時放送からまだ生きていると類推される橘と合流。ガソリンスタンドで給油をすませ、次の目的地を決める。  とにかく一丸となって動くことが肝要、というのが香川の考えで、異論を唱える者はいなかった。今ここで無為にチームを分断することは、敵対勢力に各個撃破の機会を与えることになる。スマートブレインがなにやら怪しげなプレゼントとやらを仕組んでいることを考えると、その可能性はできるだけ避けなければならなかった。  交差点の信号は、誰もいないこの街でも律儀に点滅している。  赤に変わった信号を見て、響鬼と京介が律儀に足を止める。その脇を平然と芦原が追い抜き、響鬼が「あ、そっか。いっか。いいんだよね」とかなんとか独り言を呟きながら後を追う。この期に及んで日常生活のお行儀を優先するその態度は滑稽でもあり、偉容でもあった。  隣で物思いに沈む木場をよそにどこか孤高の感のある芦原がバイクを押して先頭を行き、響鬼が両脇に瓜二つの少年ふたりを従えてひょうひょうとした足取りで続く。互いに穏やかならざる考えを抱く香川と志村は、最後列で沈黙を守っていた。  と、不意に響鬼が口を開いた。 「それにしても少年はおとなしいなあ。何だっけ、名前」 「桜井侑斗」 「侑斗!そうか、侑斗ねぇ」  響鬼は親指で鼻の頭をぬぐった。 「いいねぇ。なんかでっかい感じの名前だよね。なんつぅか、こう、ゆうとおおおおおお!みたいな。ほら」 「違うだろ!」  デネブを思わせる微妙にずれたノリについ突っ込みを入れようとした侑斗をひょいと避けると、中年の星はさわやかに笑った。 「お前ら、やっぱり似てんなぁ」 「えっ?」 「はァ?」  言葉は違うが、反応のタイミングと声は全く同じだ。 「やっぱ根っこのとこ、どっか似てると思うよ。ほら、違う世界の同一人物だったりして?ねぇ」 「一緒にしないでください」 「名前違うじゃん」  年上を相手にしてずいぶんと素っ気ないやり取りに反応したのは、香川だった。 「可能性は、ゼロではないでしょうね」  淡々と評する彼に、響鬼が目をしばたたく。 「まいったなぁ、そんなつもりで言ったんじゃないんだけどなぁ」  困ったように振り仰いだ空は、既に濃紺に染まっていた。  西へと向かう緩やかなカーブにさしかかった時、不意に木場が呟いた。 「……なにか、聞こえませんか」  誰もがいぶかしげに眉をひそめる。  木場ははっと息を飲み、振り返りたい気持ちをぐっとこらえた。  わかっている。この声は自分にしかきこえないのだ。 「だれかの声が聞こえる気がするんです」  「生存者がいると?」 「……かも、しれません」  自分の与り知らない情報の価値を値踏みするように、香川が彼を見据える。 「先に行ってください。すぐに追いつきます」  木場には、香川が一瞬顔をしかめたように見えた。気のせいかもしれない。いつもこんな顔をしている男だ。勢力を分割しないという策を短時間とはいえ崩すわけだから、不満を抱かれても仕方あるまい。 「わかりました、お願いします」  香川の言葉に神妙にうなずくと、木場は声のする方角に向き直った。二、三歩歩き出した彼に、芦原が背後から声をかける。 「使えよ」  赤い車体を片手で叩いてみせる。  木場はかけ戻ると、「ありがとうございます」と早口に言ってカブトエクステンダーに飛び乗った。  エンジンの音が、静かな夜道に響き渡る。  自分にしかあの声は聞こえていない。  それは理由の一つではある。だが、すべてではなかった。  少し距離を置いて、香川たちのことを見極めてみたかったのだ。何より、側にいて冷たい沈黙に苛まれるのが怖かった。無言の非難を浴びせられるのが怖かった。  ことによっては、怒りのあまり唐突な行動を取りかねない自分が怖かった。  自分がそういう人間だと知っているから、それのできる醜い存在だとわかっているからこそ怖かったのだ。           *     *     *  実のところ、声が聞こえていたのは木場一人ではなかった。 「すみません、香川教授。彼の事が心配なので、僕も行っていいですか」  心底気を揉んでいるといった顔でそう言い出したのは、志村だった。  香川の表情筋が、ほんの一瞬こわばる。が、続いたのは肯定の言葉だ。 「お願いします。気をつけてあげてください」 「大丈夫です!」  はきはきと答えて、志村は自分のバイクに飛び乗った。エンジンを吹かすのももどかしく、テールライトを追って走りだす。 「いいの?みんな一緒に行くんじゃなかったの」  響鬼に問われても、香川は特に表情を変えなかった。実のところ、バイクが二台ではチーム全体の機動力にプラスの影響はない。信頼面で今もっとも評価し難い二人を泳がせ、頭数を増やせるならよし、信頼に値しないことが証明されればそれでもよい。  そんな彼の考えをはかるつもりすらないのだろう。響鬼は大きく伸びをした。 「そんじゃさ、あいつら待ってる間にショッピングセンターまで行っていいかな」 「構いませんが、なぜですか」 「今、欲しいんだよね。俺の着替えが」    むろん志村には、木場の聞いた「なにか」が聞こえていた。それがなにかも、おおよそ判別がついていた。  若い女の声だ。か弱く、細い、消え入るような咽び声。山から海へと下る風が、塩の匂いを乗せてここまで流れて来たのだ。  塩の匂いをーーーー血と、涙の匂いを乗せて。 「木場さぁん!待ってくださぁい!」  背後の声に気づいて、木場はバイクを止めた。追いかけて来たバイクの持ち主の名を、割れ知らず呟く。 「志村……」 「助けたいんでしょう?一緒に行かせて下さい」  薄やみの中でも、木場には彼の人懐っこい笑顔がはっきりと見える。  何のために、とは言わない。が、今の木場は、それを追求するような精神状態にはなかった。 「それで、どっちですか?」 「……こっちだ」  木場が指し示す方角は志村には初めからわかっているのだが、無論彼は気取られるようなそぶりは見せない。  車両にはいささか狭くも思える砂利道を、二台のバイクはひたすらに駆けていった。  最後の数百メートルはほとんど下生えを踏みしだいての走行だった。一部は既に別の轍に踏みにじられている。誰かがここに来た証拠だった。  近づくほどに、うめくような嗚咽の声ははっきりと聞こえてくる。だが少しずつかすれているのも間違いない。疲弊、という言葉が適切だろうか。  その声の主と彼らとを、声以上に疲弊しきった廃屋の扉が隔てていた。  危険があるとは思えない。木場と志村は互いに目配せを交わし、扉に近づく。  木場が軽く引くと、それは簡単に開いた。  聞こえていた嗚咽が、喘鳴に取って代わる。  膝を抱えてうずくまっていた少女が、泣きはらした顔を上げた。 「無事でよかった。大丈夫ですか?」  いつもの笑顔で歩み寄り、差し伸べた志村の手を、少女は驚くほど乱暴に払った。 「来ないで!」  ほとんど這いずるように壁まで後ずさる。 「来ないで……」  怯えきった表情でそう呟く少女の涙がほほを伝って落ちるたび、窓際の枯れた小枝が生気を取り戻し、緑の葉が芽吹く。  これは、と木場は思った。  彼女には、不思議な力がある。  異なる時代とか時の列車とか、時という言葉が連呼されたせいだろう。彼は無意識のうちに、理解不可能な現象を「時空をねじ曲げる力」に結びつけていた。  一方で、志村はなんとか少女を落ち着かせようと語りかける。 「ごめん、すまないけど何があったか僕にはわからないんだ」 「私、殺したの……」  少女が押し殺した声で呟く。  木場は少女が座っていた場所、荷物の脇に落ちている帽子に気づいて拾い上げた。これはたしか、園田真理を殺したとかいうラッキークローバーの新参のものではないだろうか。そういえば、隙間だらけの床板には灰が散らばっているようにも見える。  澤田亜希は、確かに先ほど放送でその名を呼ばれた。 「君は悪くないよ」  木場は足下の荷物を取った。 「君は何も悪いことはしてない」  あれこれ詮索するのは得策ではない、と彼は感じていた。いや、自分が詮索されたくないという思いの裏がえしにすぎなかったかもしれない。 「でも、私……」 「大丈夫。一緒においでよ。仲間がいるんだ」  志村は優しく少女の肩を抱いた。彼女は引きつった表情ながらも、それ以上逆らう力もなくなすがままになっている。 「君、名前は?」  尋ねられて、消え入るような声が答える。 「真魚、です……風谷真魚」 「真魚ちゃん、一つだけ」  木場がそっと彼女に耳打ちする。 「君の力、誰にも話さない方がいいよ」 「え……?」 「みんな、疑うかもしれない。ここには、怖いものがありすぎるからね」  その言葉に、少女の肩がぴくりと震える。が、すぐに小さく頷いた。  死神に見放された青年と、命の主に疎まれた少女。出会うはずのなかった二人の道が交わったのもまた、捻じ曲げられた運命の産物であろう。そして、それを見守るのが地上における死の宣告者であったのも、偶然ではなく必然だったのかもしれない。  走り去るバイクのヘッドライトが、壊れた窓をほんの一瞬だけ照らす。  ひび割れたガラス越しに佇んでいるのは、目が醒めるような青さの一輪の薔薇だった。 **状態表 【香川英行@仮面ライダー龍騎】 【1日目 夜】 【F-6・ショッピングセンター付近】 【時間軸】:東條悟に殺害される直前 【状態】:深い後悔、強い決意。全身にダメージ・軽い疲労。 【装備】:デルタギア、ゼロノスベルト、ゼロノスカード3枚(内1枚赤カード) 【道具】:リュックサック、保存食2日分、ペットボトル500ml(水入り)、懐中電灯、軍手、医療品(消毒薬、包帯、ガーゼなど少量)      観光マップ、弾丸(発砲済) 【思考・状況】 基本行動方針:殺し合いの阻止 1:ヒビキたちと共に仲間と合流し、研究所で首輪の解除の方法を探る。 2:オルフェノクの存在に危機感。信頼できるのは今の所ヒビキと侑斗のみ。 3:ガドル(名前は知らない)、北崎を警戒。 4:五代雄介に一条薫の死を伝える。 5:侑斗を生存させるため、盾となるべく変身アイテム、盾となる参加者を引き入れる。 【備考】 ※ショッピングセンター・動物園あたりの川に香川の支給品が流されました。川のどこかにあるかもしれません。 ※3ヶ月ほど前にスマートブレインによってホテルの従業員と宿泊客の強制退去が行われたと推測しています。 ※ホテルの宿泊客管理ソフトのIDとパスワードを記憶してしまいました。忘れる事ができません。 ※観光マップは南北C~H、東西1~6の範囲まで載っています。道路や駅、観光地とホテルの位置がわかります。 【日高仁志(響鬼)@仮面ライダー響鬼】 【1日目 夜】 【F-6・ショッピングセンター付近】 【時間軸】:最終回前 【状態】:顔面・胸に切り傷(軽度)、腹部に火傷と刺し傷(中程度)、強い決意。 【装備】:変身音叉・音角@仮面ライダー響鬼、劣化音撃棒×2、音撃増幅剣・装甲声刃@仮面ライダー響鬼 【道具】:基本支給品一式×2(ヒビキ+手塚・元の服を含む)、ディスクアニマル(ニビイロヘビ)、戦国時代のディスクアニマル(イワベニシシ)     野点篭(きびだんご1箱つき)、青いバラ(ビニールパック入り)、マシンガンブレード@仮面ライダーカブト、強化マスク、釘数本、不明支給品×1(確認済) 【思考・状況】 基本行動方針:出来るだけ多くの仲間を守って脱出 1:新たな仲間と共に別行動中の仲間と合流。 2:葦原と五代たちにある誤解を解きたい。 3:歌舞鬼・黒いライダー(澤田)が気にかかる。 4:ダグバと北崎は放置できない。 5:もっと仲間を増やす。 6:志村は信頼することを前提に行動する。 【葦原涼@仮面ライダーアギト】 【1日目 夜】 【F-6・ショッピングセンター付近】 【時間軸】:第27話死亡後 【状態】:全身に負傷・軽い疲労・腕部・胸に裂傷(軽度)変身の後遺症、仇を討てなかった自分への苛立ち。 【装備】:フルフェイスのヘルメット、ホッパーゼクターのベルト 【道具】:基本支給品×2 【思考・状況】 基本行動方針:殺し合いには加担しない。脱出方法を探る。 1:ヒビキたちに同行し、五代から話を聞いた上で真実を見極める。場合によっては倒す。 2:白い怪物(風のエル)、北崎は必ず倒す。 3:黒いライダー(カイザ)を探してみる。 4:立花藤兵衛の最後の言葉どおり、風見の面倒を見る? 5:白い怪物(ダグバ、ジョーカー)を倒す。 6:木場の様子がおかしいのが気がかり。 【備考】 ※澤田=カイザ=スパイダーオルフェノクである事を把握しました。 【桜井侑斗@仮面ライダー電王】 【1日目 夜】 【F-6・ショッピングセンター付近】 【時間軸】:最終回直後 【状態】:全身にダメージ・軽い疲労、強い決意、無力感。 【装備】:神経断裂弾(1発)、サソードヤイバー 【道具】:基本支給品×2、ラウズカード三枚(ダイヤK・ブランク二枚)      ショッカー戦闘員スーツ×2@仮面ライダー、      煤けた首輪、双眼鏡、コーヒーセット、デジタル一眼レフ(CFカード)、望遠レンズ 【思考・状況】 基本行動方針:殺し合いの阻止 1:ヒビキたちと共に仲間と合流。 2:香川の話に反感。木場との仲を取り持ちたい。 3:ガドル、風のエル(名前は知らない)、北崎を倒す。 4:五代雄介に一条薫の死を伝える。 5:ナオミにそっくりな少女(真魚)が気になる。 6:ハナの無事に安堵。可能性は低いが良太郎や愛理を探す。 【備考】 ※サソードゼクターに適格者として認められました。 ※澤田=ダークカブト=カイザ=スパイダーオルフェノクである事を把握しました。 【桐矢京介@仮面ライダー響鬼】 【1日目 夜】 【F-6・ショッピングセンター付近】 【時間軸】36話、あきらに声を掛けた帰り 【状態】:バイク転倒による擦り傷や打ち身、疲労(大)、人間不信、周囲の無力感に怒り。 【装備】:なし 【道具】:基本支給品(食料紛失)、ラウズカード(スペードの10、クラブの10) 【思考・状況】 基本行動方針:生き残る 1:響鬼達に守ってもらえるか不安。 2:激しい恐怖(特にダグバ、ゾルダ、ドラゴンオルフェノクに対して) 3:北崎・木場を始めとするオルフェノクに不安。 4:侑斗に僅かな嫉妬・羨望。 【木場勇治@仮面ライダー555】 【1日目 夜】 【E-6 家の廃墟】 【時間軸】:39話・巧捜索前 【状態】:全身に打撲(中程度)、背中等に火傷(軽度)、疲労(大)、激しい動揺。 【装備】:ファイズギア、サイガギア、トンファーエッジ 【道具】:基本支給品×1、Lサイズの写真(香川の発砲シーン) 、カブトエクステンダー@仮面ライダーカブト 【思考・状況】 基本行動方針:海堂の遺志を継ぎ、仮面ライダーとしてみんなを守るために戦う。 1:香川達の会話の内容に動揺。 2:香川たちの信頼を取り戻すために戦う。 3:死神博士、ゴルゴス、風のエル(名前は知らない)、東條、北崎を警戒。影山はできれば助けたい。 4:葦原に僅かに憧れの感情。 【備考】 ※赤カードの影響で自分が香川の記憶を失った事を把握しました。 ※カブトエクステンダーはキャストオフできないため武装のほとんどを使えません。  今の所、『カブトの資格者』のみがキャストオフできます。 ※真魚の治癒能力を「時間を操作する能力」と勘違いしています。 【風谷真魚@仮面ライダーアギト】 【1日目 夜】 【E-6 家の廃墟】 [時間軸]:31話・サイコキネシス発現後 [状態]:健康。動揺。強い自己嫌悪。 [装備]:コルトパイソンA@クウガ(装弾数5/6、マグナム用神経断裂弾) [道具]:基本支給品一式x2(真魚・天道)     ライダーパス、首輪(天道)     特殊効果弾セット(マグナム用神経断裂弾54、ライフル用神経断裂弾20、     ランチャー用非殺傷ゴム弾5、ランチャー用催涙弾5、ランチャー用発煙弾5、ランチャー用対バリケード弾5) 、 [思考・状況] 1:誰……? 2:人殺しをした自分が憎い。 3:自分の能力と支給品の銃を嫌悪。 4:能力の事を誰にもに知られたくない。 [備考] ※制限もしくは心理的な理由で超能力が不完全にしか発揮できません。  現状では、サイコメトリーで読めるのは断片的なイメージだけです。 ※以下のように事実を誤解しています。 サイコメトリーで見えた灰色のモンスターの正体は天道=カブト。 灰色の怪物(海堂)と赤い怪物(モグラ)は殺し合いに乗っている。 青いライダー(ガタック・ライダーフォーム)に変身して自分を守ったのは澤田。 加賀美(名前は知らない)は自分がサイコキネシスで殺した。 自分をナオミと呼んだ男(侑斗)と黒い異型(デネブ)は親友。 ※青いバラに触れた女性が灰化するビジョンを見ました。 【志村純一@仮面ライダー剣・Missing Ace】 【1日目 夜】 【E-6 家の廃墟】 【時間軸】:剣崎たちに出会う前 【状態】:胸にダメージ(中程度)、疲労。 【装備】:ライアのカードデッキ@仮面ライダー龍騎、蓮華のワイヤー内蔵型指輪@仮面ライダーカブト 【道具】:基本支給品(携帯・地図のみ)、ラウズカード(クラブのK、ハートのK)@仮面ライダー剣、ホンダ・XR250(バイク@現実)、首輪 【思考・状況】 基本行動方針:人間を装い優勝する。 1:根回しの続行。他のメンバーからの信頼を得る。 2:ダグバなどの強敵とは戦わず泳がせる。 3:馬鹿な人間を利用する。鋭い人間(香川・葦原)やアンデットには限りなく注意。 4:誰にも悟られず、かつ安全な状況でならジョーカー化して参加者を殺害。 5:橘チーフを始め、他の参加者の戦力を見極めて利用する。自分の身が危なくなれば彼らを見捨てる。 6:『14』の力復活のために、カテゴリーKのラウズカードを集める。 ---- |118:[[目覚めのカリスマ]]|投下順|000:[[後の作品]]| |118:[[目覚めのカリスマ]]|時系列順|000:[[後の作品]]| |111:[[憎悪の声は歓喜する(後編)]]|[[桜井侑斗]]|000:[[後の作品]]| |~|[[木場勇治]]|~| |~|[[葦原涼]]|~| |~|[[香川英行]]|~| |~|[[日高仁志]]|~| |~|[[桐矢京介]]|~| |~|[[志村純一]]|~| |114:[[龍は更なる力を手に入れる]]|[[風谷真魚]]|~|
*サウンド・オヴ・サイレンス  年代がかったコンクリートの床は、コンコースに湿った音を響かせる。  結果的に芦原に引き連れられる形で戻って来た三人を、待っていた四人が黙って出迎える。  じっとこちらを見つめている彼らに、木場は我知らず身がすくむのを感じた。 「どうした、木場」  一瞬足が止まったのに気づき、葦原が尋ねる。 「いや、別に」  口走りつつ思わず視線をそらしてしまった彼を、非難の目が睨んでいる……ように感じたのは、ただの被害妄想にちがいない。が、そう割り切ってしまうには、彼は優しすぎた。 「じゃ、みんな揃ったし、行こっか」  立ち上がりかけた響鬼を、香川が制する。 「待って下さい」  首を傾げる彼らの前で、おもむろに携帯を取り出す。  放送まで、あと5分もなかった。           *     *     *  廃屋の壁の隙間から、朱く弱々しい光が流れ込む。  真魚は薄暗い部屋の中、ただ膝を抱えて待っていた。割れたガラスに新聞紙が貼付けられただけの窓辺には、乾ききった土の上にひからびた草の茎だけが、心細げに立ち尽くしている。  辺りが静かになってからしばらく時間が経った。その静けさに一度は安堵したものの、戻ってくる足音が聞こえないことが少しずつ不安を煽る。おいて行かれたのでは、見捨てられたのではないかという疑念を体から追い出そうと、少女は膝を抱く腕に力を込めた。  傍らの床におかれた荷物が彼女の代わりに身を震わせた。  真魚の手がおずおずとデイパックに伸びる。  どこからか、時を告げるはずの鐘の音が遅れて鳴り響いた。           *     *     *  乾いた沈黙がコンコースを満たす。  改めて手塚の死を胸に叩き込まれたのが一つ。そしてもう一つの理由があった。 「僕が、一文字さんをおいて来たから……ですか?」  呟く志村の顔は、常にもまして血の気を失っている。その様子には、呆然という言葉が最もふさわしいだろう。 「空を飛ぶ怪物、と言いましたね」  冷徹な香川に尋ねられ、志村は目を見開いた。 「君の上司を襲ったモノのことです」 「あ、ええ、はい」 「追跡されていた可能性はありますか」  畳み掛けるような問いに、彼は素直に首を縦に振る。 「ない、とは言い切れません。相手は人間ではありませんから」 「なるほど」  香川が鋭い視線を虚空に移して考えを巡らせ始める。志村は内心安堵した。この男、ひょっとすると賢すぎるがゆえにつけいる好きがあるかもしれない。  その向こうで、ヒステリックな金切り声が上がった。 「なんでですか!なんで威吹鬼さんまで!」  京介だった。  今にもつかみかかってきそうな少年を受け止め、響鬼が答える。 「まあ、あれだ。俺たちにもできないことはあるってことだ」 「だけどヒビキさん!」  少年はなおも食い下がる。  「イブキさんはあんなに修行してたじゃないですか!ヒビキさんほどじゃなかったとしても……」  京介の態度はよく聞いてみると抗議をしている、というよりは懇願している、といったほうが近いだろう。最終的には響鬼に、その強さにすがっているからこそ、『鬼』の強さを否定するがごとき現実に憤懣を感じるのに違いない。  実際、続いた言葉は彼の心情を裏返したものだった。 「修行したって殺されるなら、そんなのどういう意味があるんですか!だったらヒビキさんも簡単に殺されたりとかするんですか!」 「そうだよ」  あっけない肯定に、少年が声を失う。 「だから努力すんだろ、少年」  響鬼は少年の肩を軽く手で叩いた。 「できないことをできるようにする。それでこそ人間ってもんじゃん。なぁ」  今度こそ、京介には返す言葉がなかった。  彼が一応は口をつぐんでおとなしくなったのを確かめ、響鬼は困ったように頭をかいて仲間に向き直った。 「俺の友達。つか、同僚、かな?今、呼ばれたのよ。名前」  放送で、名前を呼ばれる。その意味が実感に変わるまで、聞く側にも数秒の時間が必要だった。響鬼は淡々と続ける。 「俺らは戦って死ぬの、珍しいことじゃないし?仕事だからさぁ」 「仕事……」木場がおうむ返しに呟く。 「そう。仕事なんだよねぇ、コレ」  いいながら向ける笑顔も、穏やかさのどこかに寂しさを隠していないと言えば嘘になる。朋輩、盟友、同志……どのような関係だったのかは分からないが、仲間を失ってなお仕事と言い切れる意思の強さは冷徹とは別物だろう。  言うなれば、仲間も信念を貫いたに違いないという信頼か。 「そんじゃ、行きますか。ここで立ち話してても、誰の役にも立てないでしょ」  笑顔のまま大きく手を広げる響鬼には、それ以上誰も口を挟める雰囲気ではなかった。香川が頷き、彼に続ける。 「一応、外に出るときは辺りに気をつけて下さい。空を飛べる者もいるくらいだ。こう暗くなってくれば、夜目が効く者がいても不思議ではありません」  暗に自分のことを指摘されているように感じ、木場の喉が焼け付く。 「まあ待ってよ。それなら、こいつが偵察に行ってくれるからさ」  響鬼は先ほど受け取った灰色の円盤を音叉で弾くと、空に向かって放りあげた。途端、ただの板でしかなかったものが細く機敏な蛇の姿に変わる。 「頼むぞ、ほら」  本来の主に声をかけられたのが嬉しいのだろうか。蛇は小さく身を震わせると改札口から向こうに消えて行った。  が、ほどなくして戻ってくると、響鬼の足下からズボンに潜り込んでしまう。 「おっかしいなぁ。あんま遠く行きたくないみたいだなぁ」  響鬼は裾から覗くしっぽをつまんで引っ張りだし、目の前で蛇をぶらぶらさせた。埒のあかないその様子に、木場が意を決して立ち上がる。 「じゃあ、俺が先に出ます」 「わかりました。お任せしましょう」  木場は唇を噛んで外に向かった。自分がこうも息苦しく感じる理由がどこにあるのか、それだけはもう考えたくなかった。           *     *     *  辺りを見回した瞬間、夕日の名残に視界を染められてめまいすら感じる。が、視界を脅かすものは彼の心のうちにしかなく、風景は至って静かに迫り来る夜を待っていた。  叫びも嗚咽もなく、ただひたすらに静かに。 「大丈夫です。出て来てください」  振り返って声をかけると、駅舎の中から残りの者が一人、また一人と姿を現した。 「ひとまず安全のようですね。では、先ほど言った通りに」  香川が冷徹に指示を下す。  選ばれたルートはこうだった。  まずはバイクの機動性が高まる幹線道路まで進む。基本的にバイクを操れるものは年長で戦闘能力も高いが、全員を乗せて移動するにはいかにせん台数が足りない。三角乗りというわけにもいくまいし、今にもガス欠に至りそうなものもある。そのため緊急時に備えてバイクは運転できる者が押し、徒歩チームの前後を固める。  病院にいた一文字が殺されたとすれば、その近辺は危険も多い。状況によっては病院を素通りして放送局に寄り、定時放送からまだ生きていると類推される橘と合流。ガソリンスタンドで給油をすませ、次の目的地を決める。  とにかく一丸となって動くことが肝要、というのが香川の考えで、異論を唱える者はいなかった。今ここで無為にチームを分断することは、敵対勢力に各個撃破の機会を与えることになる。スマートブレインがなにやら怪しげなプレゼントとやらを仕組んでいることを考えると、その可能性はできるだけ避けなければならなかった。  交差点の信号は、誰もいないこの街でも律儀に点滅している。  赤に変わった信号を見て、響鬼と京介が律儀に足を止める。その脇を平然と芦原が追い抜き、響鬼が「あ、そっか。いっか。いいんだよね」とかなんとか独り言を呟きながら後を追う。この期に及んで日常生活のお行儀を優先するその態度は滑稽でもあり、偉容でもあった。  隣で物思いに沈む木場をよそにどこか孤高の感のある芦原がバイクを押して先頭を行き、響鬼が両脇に瓜二つの少年ふたりを従えてひょうひょうとした足取りで続く。互いに穏やかならざる考えを抱く香川と志村は、最後列で沈黙を守っていた。  と、不意に響鬼が口を開いた。 「それにしても少年はおとなしいなあ。何だっけ、名前」 「桜井侑斗」 「侑斗!そうか、侑斗ねぇ」  響鬼は親指で鼻の頭をぬぐった。 「いいねぇ。なんかでっかい感じの名前だよね。なんつぅか、こう、ゆうとおおおおおお!みたいな。ほら」 「違うだろ!」  デネブを思わせる微妙にずれたノリについ突っ込みを入れようとした侑斗をひょいと避けると、中年の星はさわやかに笑った。 「お前ら、やっぱり似てんなぁ」 「えっ?」 「はァ?」  言葉は違うが、反応のタイミングと声は全く同じだ。 「やっぱ根っこのとこ、どっか似てると思うよ。ほら、違う世界の同一人物だったりして?ねぇ」 「一緒にしないでください」 「名前違うじゃん」  年上を相手にしてずいぶんと素っ気ないやり取りに反応したのは、香川だった。 「可能性は、ゼロではないでしょうね」  淡々と評する彼に、響鬼が目をしばたたく。 「まいったなぁ、そんなつもりで言ったんじゃないんだけどなぁ」  困ったように振り仰いだ空は、既に濃紺に染まっていた。  西へと向かう緩やかなカーブにさしかかった時、不意に木場が呟いた。 「……なにか、聞こえませんか」  誰もがいぶかしげに眉をひそめる。  木場ははっと息を飲み、振り返りたい気持ちをぐっとこらえた。  わかっている。この声は自分にしかきこえないのだ。 「だれかの声が聞こえる気がするんです」  「生存者がいると?」 「……かも、しれません」  自分の与り知らない情報の価値を値踏みするように、香川が彼を見据える。 「先に行ってください。すぐに追いつきます」  木場には、香川が一瞬顔をしかめたように見えた。気のせいかもしれない。いつもこんな顔をしている男だ。勢力を分割しないという策を短時間とはいえ崩すわけだから、不満を抱かれても仕方あるまい。 「わかりました、お願いします」  香川の言葉に神妙にうなずくと、木場は声のする方角に向き直った。二、三歩歩き出した彼に、芦原が背後から声をかける。 「使えよ」  赤い車体を片手で叩いてみせる。  木場はかけ戻ると、「ありがとうございます」と早口に言ってカブトエクステンダーに飛び乗った。  エンジンの音が、静かな夜道に響き渡る。  自分にしかあの声は聞こえていない。  それは理由の一つではある。だが、すべてではなかった。  少し距離を置いて、香川たちのことを見極めてみたかったのだ。何より、側にいて冷たい沈黙に苛まれるのが怖かった。無言の非難を浴びせられるのが怖かった。  ことによっては、怒りのあまり唐突な行動を取りかねない自分が怖かった。  自分がそういう人間だと知っているから、それのできる醜い存在だとわかっているからこそ怖かったのだ。           *     *     *  実のところ、声が聞こえていたのは木場一人ではなかった。 「すみません、香川教授。彼の事が心配なので、僕も行っていいですか」  心底気を揉んでいるといった顔でそう言い出したのは、志村だった。  香川の表情筋が、ほんの一瞬こわばる。が、続いたのは肯定の言葉だ。 「お願いします。気をつけてあげてください」 「大丈夫です!」  はきはきと答えて、志村は自分のバイクに飛び乗った。エンジンを吹かすのももどかしく、テールライトを追って走りだす。 「いいの?みんな一緒に行くんじゃなかったの」  響鬼に問われても、香川は特に表情を変えなかった。実のところ、バイクが二台ではチーム全体の機動力にプラスの影響はない。信頼面で今もっとも評価し難い二人を泳がせ、頭数を増やせるならよし、信頼に値しないことが証明されればそれでもよい。  そんな彼の考えをはかるつもりすらないのだろう。響鬼は大きく伸びをした。 「そんじゃさ、あいつら待ってる間にショッピングセンターまで行っていいかな」 「構いませんが、なぜですか」 「今、欲しいんだよね。俺の着替えが」    むろん志村には、木場の聞いた「なにか」が聞こえていた。それがなにかも、おおよそ判別がついていた。  若い女の声だ。か弱く、細い、消え入るような咽び声。山から海へと下る風が、塩の匂いを乗せてここまで流れて来たのだ。  塩の匂いをーーーー血と、涙の匂いを乗せて。 「木場さぁん!待ってくださぁい!」  背後の声に気づいて、木場はバイクを止めた。追いかけて来たバイクの持ち主の名を、割れ知らず呟く。 「志村……」 「助けたいんでしょう?一緒に行かせて下さい」  薄やみの中でも、木場には彼の人懐っこい笑顔がはっきりと見える。  何のために、とは言わない。が、今の木場は、それを追求するような精神状態にはなかった。 「それで、どっちですか?」 「……こっちだ」  木場が指し示す方角は志村には初めからわかっているのだが、無論彼は気取られるようなそぶりは見せない。  車両にはいささか狭くも思える砂利道を、二台のバイクはひたすらに駆けていった。  最後の数百メートルはほとんど下生えを踏みしだいての走行だった。一部は既に別の轍に踏みにじられている。誰かがここに来た証拠だった。  近づくほどに、うめくような嗚咽の声ははっきりと聞こえてくる。だが少しずつかすれているのも間違いない。疲弊、という言葉が適切だろうか。  その声の主と彼らとを、声以上に疲弊しきった廃屋の扉が隔てていた。  危険があるとは思えない。木場と志村は互いに目配せを交わし、扉に近づく。  木場が軽く引くと、それは簡単に開いた。  聞こえていた嗚咽が、喘鳴に取って代わる。  膝を抱えてうずくまっていた少女が、泣きはらした顔を上げた。 「無事でよかった。大丈夫ですか?」  いつもの笑顔で歩み寄り、差し伸べた志村の手を、少女は驚くほど乱暴に払った。 「来ないで!」  ほとんど這いずるように壁まで後ずさる。 「来ないで……」  怯えきった表情でそう呟く少女の涙がほほを伝って落ちるたび、窓際の枯れた小枝が生気を取り戻し、緑の葉が芽吹く。  これは、と木場は思った。  彼女には、不思議な力がある。  異なる時代とか時の列車とか、時という言葉が連呼されたせいだろう。彼は無意識のうちに、理解不可能な現象を「時空をねじ曲げる力」に結びつけていた。  一方で、志村はなんとか少女を落ち着かせようと語りかける。 「ごめん、すまないけど何があったか僕にはわからないんだ」 「私、殺したの……」  少女が押し殺した声で呟く。  木場は少女が座っていた場所、荷物の脇に落ちている帽子に気づいて拾い上げた。これはたしか、園田真理を殺したとかいうラッキークローバーの新参のものではないだろうか。そういえば、隙間だらけの床板には灰が散らばっているようにも見える。  澤田亜希は、確かに先ほど放送でその名を呼ばれた。 「君は悪くないよ」  木場は足下の荷物を取った。 「君は何も悪いことはしてない」  あれこれ詮索するのは得策ではない、と彼は感じていた。いや、自分が詮索されたくないという思いの裏がえしにすぎなかったかもしれない。 「でも、私……」 「大丈夫。一緒においでよ。仲間がいるんだ」  志村は優しく少女の肩を抱いた。彼女は引きつった表情ながらも、それ以上逆らう力もなくなすがままになっている。 「君、名前は?」  尋ねられて、消え入るような声が答える。 「真魚、です……風谷真魚」 「真魚ちゃん、一つだけ」  木場がそっと彼女に耳打ちする。 「君の力、誰にも話さない方がいいよ」 「え……?」 「みんな、疑うかもしれない。ここには、怖いものがありすぎるからね」  その言葉に、少女の肩がぴくりと震える。が、すぐに小さく頷いた。  死神に見放された青年と、命の主に疎まれた少女。出会うはずのなかった二人の道が交わったのもまた、捻じ曲げられた運命の産物であろう。そして、それを見守るのが地上における死の宣告者であったのも、偶然ではなく必然だったのかもしれない。  走り去るバイクのヘッドライトが、壊れた窓をほんの一瞬だけ照らす。  ひび割れたガラス越しに佇んでいるのは、目が醒めるような青さの一輪の薔薇だった。 **状態表 【香川英行@仮面ライダー龍騎】 【1日目 夜】 【F-6・ショッピングセンター付近】 【時間軸】:東條悟に殺害される直前 【状態】:深い後悔、強い決意。全身にダメージ・軽い疲労。 【装備】:デルタギア、ゼロノスベルト、ゼロノスカード3枚(内1枚赤カード) 【道具】:リュックサック、保存食2日分、ペットボトル500ml(水入り)、懐中電灯、軍手、医療品(消毒薬、包帯、ガーゼなど少量)      観光マップ、弾丸(発砲済) 【思考・状況】 基本行動方針:殺し合いの阻止 1:ヒビキたちと共に仲間と合流し、研究所で首輪の解除の方法を探る。 2:オルフェノクの存在に危機感。信頼できるのは今の所ヒビキと侑斗のみ。 3:ガドル(名前は知らない)、北崎を警戒。 4:五代雄介に一条薫の死を伝える。 5:侑斗を生存させるため、盾となるべく変身アイテム、盾となる参加者を引き入れる。 【備考】 ※ショッピングセンター・動物園あたりの川に香川の支給品が流されました。川のどこかにあるかもしれません。 ※3ヶ月ほど前にスマートブレインによってホテルの従業員と宿泊客の強制退去が行われたと推測しています。 ※ホテルの宿泊客管理ソフトのIDとパスワードを記憶してしまいました。忘れる事ができません。 ※観光マップは南北C~H、東西1~6の範囲まで載っています。道路や駅、観光地とホテルの位置がわかります。 【日高仁志(響鬼)@仮面ライダー響鬼】 【1日目 夜】 【F-6・ショッピングセンター付近】 【時間軸】:最終回前 【状態】:顔面・胸に切り傷(軽度)、腹部に火傷と刺し傷(中程度)、強い決意。 【装備】:変身音叉・音角@仮面ライダー響鬼、劣化音撃棒×2、音撃増幅剣・装甲声刃@仮面ライダー響鬼 【道具】:基本支給品一式×2(ヒビキ+手塚・元の服を含む)、ディスクアニマル(ニビイロヘビ)、戦国時代のディスクアニマル(イワベニシシ)     野点篭(きびだんご1箱つき)、青いバラ(ビニールパック入り)、マシンガンブレード@仮面ライダーカブト、強化マスク、釘数本、不明支給品×1(確認済) 【思考・状況】 基本行動方針:出来るだけ多くの仲間を守って脱出 1:新たな仲間と共に別行動中の仲間と合流。 2:葦原と五代たちにある誤解を解きたい。 3:歌舞鬼・黒いライダー(澤田)が気にかかる。 4:ダグバと北崎は放置できない。 5:もっと仲間を増やす。 6:志村は信頼することを前提に行動する。 【葦原涼@仮面ライダーアギト】 【1日目 夜】 【F-6・ショッピングセンター付近】 【時間軸】:第27話死亡後 【状態】:全身に負傷・軽い疲労・腕部・胸に裂傷(軽度)変身の後遺症、仇を討てなかった自分への苛立ち。 【装備】:フルフェイスのヘルメット、ホッパーゼクターのベルト 【道具】:基本支給品×2 【思考・状況】 基本行動方針:殺し合いには加担しない。脱出方法を探る。 1:ヒビキたちに同行し、五代から話を聞いた上で真実を見極める。場合によっては倒す。 2:白い怪物(風のエル)、北崎は必ず倒す。 3:黒いライダー(カイザ)を探してみる。 4:立花藤兵衛の最後の言葉どおり、風見の面倒を見る? 5:白い怪物(ダグバ、ジョーカー)を倒す。 6:木場の様子がおかしいのが気がかり。 【備考】 ※澤田=カイザ=スパイダーオルフェノクである事を把握しました。 【桜井侑斗@仮面ライダー電王】 【1日目 夜】 【F-6・ショッピングセンター付近】 【時間軸】:最終回直後 【状態】:全身にダメージ・軽い疲労、強い決意、無力感。 【装備】:神経断裂弾(1発)、サソードヤイバー 【道具】:基本支給品×2、ラウズカード三枚(ダイヤK・ブランク二枚)      ショッカー戦闘員スーツ×2@仮面ライダー、      煤けた首輪、双眼鏡、コーヒーセット、デジタル一眼レフ(CFカード)、望遠レンズ 【思考・状況】 基本行動方針:殺し合いの阻止 1:ヒビキたちと共に仲間と合流。 2:香川の話に反感。木場との仲を取り持ちたい。 3:ガドル、風のエル(名前は知らない)、北崎を倒す。 4:五代雄介に一条薫の死を伝える。 5:ナオミにそっくりな少女(真魚)が気になる。 6:ハナの無事に安堵。可能性は低いが良太郎や愛理を探す。 【備考】 ※サソードゼクターに適格者として認められました。 ※澤田=ダークカブト=カイザ=スパイダーオルフェノクである事を把握しました。 【桐矢京介@仮面ライダー響鬼】 【1日目 夜】 【F-6・ショッピングセンター付近】 【時間軸】36話、あきらに声を掛けた帰り 【状態】:バイク転倒による擦り傷や打ち身、疲労(大)、人間不信、周囲の無力感に怒り。 【装備】:なし 【道具】:基本支給品(食料紛失)、ラウズカード(スペードの10、クラブの10) 【思考・状況】 基本行動方針:生き残る 1:響鬼達に守ってもらえるか不安。 2:激しい恐怖(特にダグバ、ゾルダ、ドラゴンオルフェノクに対して) 3:北崎・木場を始めとするオルフェノクに不安。 4:侑斗に僅かな嫉妬・羨望。 【木場勇治@仮面ライダー555】 【1日目 夜】 【E-6 家の廃墟】 【時間軸】:39話・巧捜索前 【状態】:全身に打撲(中程度)、背中等に火傷(軽度)、疲労(大)、激しい動揺。 【装備】:ファイズギア、サイガギア、トンファーエッジ 【道具】:基本支給品×1、Lサイズの写真(香川の発砲シーン) 、カブトエクステンダー@仮面ライダーカブト 【思考・状況】 基本行動方針:海堂の遺志を継ぎ、仮面ライダーとしてみんなを守るために戦う。 1:香川達の会話の内容に動揺。 2:香川たちの信頼を取り戻すために戦う。 3:死神博士、ゴルゴス、風のエル(名前は知らない)、東條、北崎を警戒。影山はできれば助けたい。 4:葦原に僅かに憧れの感情。 【備考】 ※赤カードの影響で自分が香川の記憶を失った事を把握しました。 ※カブトエクステンダーはキャストオフできないため武装のほとんどを使えません。  今の所、『カブトの資格者』のみがキャストオフできます。 ※真魚の治癒能力を「時間を操作する能力」と勘違いしています。 【風谷真魚@仮面ライダーアギト】 【1日目 夜】 【E-6 家の廃墟】 [時間軸]:31話・サイコキネシス発現後 [状態]:健康。動揺。強い自己嫌悪。 [装備]:コルトパイソンA@クウガ(装弾数5/6、マグナム用神経断裂弾) [道具]:基本支給品一式x2(真魚・天道)     ライダーパス、首輪(天道)     特殊効果弾セット(マグナム用神経断裂弾54、ライフル用神経断裂弾20、     ランチャー用非殺傷ゴム弾5、ランチャー用催涙弾5、ランチャー用発煙弾5、ランチャー用対バリケード弾5) 、 [思考・状況] 1:誰……? 2:人殺しをした自分が憎い。 3:自分の能力と支給品の銃を嫌悪。 4:能力の事を誰にもに知られたくない。 [備考] ※制限もしくは心理的な理由で超能力が不完全にしか発揮できません。  現状では、サイコメトリーで読めるのは断片的なイメージだけです。 ※以下のように事実を誤解しています。 サイコメトリーで見えた灰色のモンスターの正体は天道=カブト。 灰色の怪物(海堂)と赤い怪物(モグラ)は殺し合いに乗っている。 青いライダー(ガタック・ライダーフォーム)に変身して自分を守ったのは澤田。 加賀美(名前は知らない)は自分がサイコキネシスで殺した。 自分をナオミと呼んだ男(侑斗)と黒い異型(デネブ)は親友。 ※青いバラに触れた女性が灰化するビジョンを見ました。 【志村純一@仮面ライダー剣・Missing Ace】 【1日目 夜】 【E-6 家の廃墟】 【時間軸】:剣崎たちに出会う前 【状態】:胸にダメージ(中程度)、疲労。 【装備】:ライアのカードデッキ@仮面ライダー龍騎、蓮華のワイヤー内蔵型指輪@仮面ライダーカブト 【道具】:基本支給品(携帯・地図のみ)、ラウズカード(クラブのK、ハートのK)@仮面ライダー剣、ホンダ・XR250(バイク@現実)、首輪 【思考・状況】 基本行動方針:人間を装い優勝する。 1:根回しの続行。他のメンバーからの信頼を得る。 2:ダグバなどの強敵とは戦わず泳がせる。 3:馬鹿な人間を利用する。鋭い人間(香川・葦原)やアンデットには限りなく注意。 4:誰にも悟られず、かつ安全な状況でならジョーカー化して参加者を殺害。 5:橘チーフを始め、他の参加者の戦力を見極めて利用する。自分の身が危なくなれば彼らを見捨てる。 6:『14』の力復活のために、カテゴリーKのラウズカードを集める。 ---- |118:[[目覚めのカリスマ]]|投下順|120:[[謎 罪 弔い]]| |118:[[目覚めのカリスマ]]|時系列順|120:[[謎 罪 弔い]]| |111:[[憎悪の声は歓喜する(後編)]]|[[桜井侑斗]]|000:[[後の作品]]| |~|[[木場勇治]]|~| |~|[[葦原涼]]|~| |~|[[香川英行]]|~| |~|[[日高仁志]]|~| |~|[[桐矢京介]]|~| |~|[[志村純一]]|~| |114:[[龍は更なる力を手に入れる]]|[[風谷真魚]]|~|

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