TOAのティアタンはメロンカワイイ SS > スレ11 > 432-435

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ガラス玉


「ふぅ…、これで…最後、ね。…あら?」
世界の命運を握る戦いを目前に控え、それに備えて買い出しに来ていた少女の足が止まる。
「なにかしら…?あんな隅の方にたくさん集まって…」
目線の先には人だかりができていた。その大多数は幼い子供ばかりだが、自分と同じくらいの年の程の女の子もいる。
「露店でもあるのかしら。少しくらいなら…、覗いてもいいわよね?」
少女はそこに集まっている顔触れに、感じるものがあった。
子供や女の子が集まる場所=かわいい物がある場所。
そういった式が自然と頭の中に浮かび上がる。
そこに、ほんの少し前までその場にいた子供たちが横を通って行き、
「すっごくきれいだったねー!」
「ねー!」
と、すれ違いざまに言った。
(綺麗な物なの…?何かしら…)
かわいい物ではないと知り、一瞬残念な思いも出てきたが、綺麗な物が嫌いなわけでもない。むしろ好きなくらいだ。
しかし、近付いて行くにつれ、ひとつの不安が頭をよぎる。
「あんなに人がいるんじゃ商品が見えないかも…」
それが心配だ。買い出しにあまり時間を掛ける訳にはいかない。
時間厳守は団体行動の鉄則だ。
だがしかし、それは杞憂に終わった。


客は自分より小さな子供ばかり。少女は容易に中を覗くことが出来た。
「あ…」
少女は感嘆の声を上げた。
―綺麗だ。
確かにそうはっきりと言える物がそこには並んでいた。
色とりどりのガラス玉。
自分の存在を示すために、それらは懸命に輝いている。
「音譜帯の話をした時、―ガラスなんかと―だなんて言っちゃったけど、間違いだったわね…。すごく綺麗だもん…」
そこに、一組の親子の会話が聞こえてきた。「う~ん…、どっちにしよぉ…」
「いっこだけよ?」
何気ないその会話に、少女の胸は鼓動を速めた。
選ばれるのは一つだけ。比べて、より良いモノだけが選ばれる。
少女は一人の少年を思い浮かべた。
自らの浅慮で招いた悲劇を悔やみ、いつまでもそれを引きずり続ける赤い髪の少年を…。
(ルーク…)
彼は贖罪の場所をさがしていた。いや、死に場所と言ってもいいかもしれない。
だが、彼は死にたくないと言った。生きたいと言った。
死を間近に感じ、生への執着心を知ることが出来たのだ。
(ルーク…、私は…)
「…ょうちゃん!お嬢ちゃん!そんなとこにつったってないで、もっと近くで見ていきなよ!」
「へ…?あ…////」
気付くと、前に人はいなくなっていた。


考えごとをして周りが見えなくなっていた。
「お嬢ちゃん、名前は?」
「え…?ティアですけど…」
訝しがる少女をよそに、ガラス売りは話を続ける。
「涙、とかそれに近いしずく、あとは悲しみの意味がある名前だね。ティアちゃんは、人の悲しみを知って、人のことを思いやれる子なんだね」
いきなりそう言われ、少女は戸惑ってしまった。
「わっ、私はそんな…////」
「はは、照れない照れない」
「照れてません!」
笑いながらガラス売りは何かを取り出した。
それは透き通るほどに青いガラス玉。
「ティアちゃんの色だ。買ってくかい?」
「商売、お上手ですね…。…いえ、あの…、これ…、ください」
少女は、ガラス売りが薦める青ではなく、端の方で落ちそうになっている赤を拾い上げた。
「へ?それでいいのかい?」
「はい、これがいいんです」
ガラス売りは少し残念そうな顔をしたが、商売と割り切ったのか、その炎のように赤いガラス玉を少女に売った。
そして首をひねりながらこう言った。
「おかしいな…、さっきもさ、赤に由来のある名前の男の子がきたから赤を薦めたんだけど、その子は青を買って行ったんだよ…。腕落ちたかな…」
(ルーク…////)


「え、えっと、それじゃ失礼します。ありがとうございました」
その少年に心当たりのあった少女は、恥ずかしくなってすぐにその場を離れた。後ろの方でガラス売りがまだ何かを言っている。
少女はたった今買った赤いガラス玉を握り締め、決意を新たにした。
(ルーク…、私は…、たとえ誰も選ばなかったとしても、私はあなたを選ぶわ…。同情なんかじゃない。私はあなたに側にいて欲しいの…。あなたのことが…)

―好きだから―




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