― 昔私は泣き虫だった‥
「へ~‥お前みたいな『冷血女』でも泣いたりするんだな」
「‥あなた、本当に失礼ね」
「だってよ~‥今のお前からじゃあ想像できねぇもん」
「‥小さい頃の話よ‥」
「‥あなた、本当に失礼ね」
「だってよ~‥今のお前からじゃあ想像できねぇもん」
「‥小さい頃の話よ‥」
― そう‥私は小さい時とても泣き虫だった。些細な事ですぐ泣いてた‥その度に兄さんが慰めてくれた‥
〈10年前〉
「ねぇ‥お兄さん、どうして私には『お父さん』も『お母さん』もいないの‥」
「どうしたティア?また誰かに何か言われたのか?」
「‥そうじゃないけど‥」
「どうしたティア?また誰かに何か言われたのか?」
「‥そうじゃないけど‥」
― 私が物心ついた時、両親はすでに居なかった。だから兄さんだけが唯一血の繋がった肉親だった‥
「‥うっ‥ぐすっ‥おとうさん‥おかあさん‥」
「ティア‥‥『トゥエレィセィクロアリョトゥエツェ…』」
「‥うっ‥うっ‥‥‥‥」
「ティア‥‥『トゥエレィセィクロアリョトゥエツェ…』」
「‥うっ‥うっ‥‥‥‥」
― 私が夜泣いていると、兄さんはいつも譜歌を詠ってくれた。言葉の意味は分からなかったけど‥私は兄さんの詠う譜歌が大好きだった‥
「『トゥエレィセィクロアリョトゥエツェ』」
「ティア?その譜歌は‥」
「お兄さんが、いつも子守り歌変わりに詠ってくれる歌‥覚えたの」
「そうか‥それは『ユリアの譜歌』と呼ばれているものだ」
「ユリア?」
「そうだ。『ユリア・ジュエ』‥ローレライと契約したといわれている女性だ」
「ティア?その譜歌は‥」
「お兄さんが、いつも子守り歌変わりに詠ってくれる歌‥覚えたの」
「そうか‥それは『ユリアの譜歌』と呼ばれているものだ」
「ユリア?」
「そうだ。『ユリア・ジュエ』‥ローレライと契約したといわれている女性だ」
― 兄さんは『ユリアの譜歌』についていろいろ教えてくれた。私達がユリアの子孫であるという事も。
ただ『ローレライ』についてはあまり話してはくれなかった。いつも優しい兄さんだったけど‥その話をする時だけは‥何故か恐かった‥
ただ『ローレライ』についてはあまり話してはくれなかった。いつも優しい兄さんだったけど‥その話をする時だけは‥何故か恐かった‥
「えっ‥神託の盾(オラクル)騎士団?」
「そうだ‥ローレライ教団を守るために設立された組織だ。私はそこに入団しようと思う」
「そ、そんな‥だってそこは外殻大地に‥‥」
「泣くなティア‥私にはやらなければならない事がある」
「‥ぐすっ‥それって‥」
「‥お前にもいつか分かる時が来る‥」
「そうだ‥ローレライ教団を守るために設立された組織だ。私はそこに入団しようと思う」
「そ、そんな‥だってそこは外殻大地に‥‥」
「泣くなティア‥私にはやらなければならない事がある」
「‥ぐすっ‥それって‥」
「‥お前にもいつか分かる時が来る‥」
― 最初の頃、兄さんはよく家に帰って来てくれた。でも教団内で出世していく内にだんだん拠点を外殻に移していった‥
私は毎日泣いていた‥寂しかった‥
私は毎日泣いていた‥寂しかった‥
「何?神託(オラクル)騎士団に入団したいだと?」
「ええ。私も兄さんのような軍人になりたいの」
「‥ダメだ。考え直せティア‥外殻大地はお前が思っているほど甘くはない」
「兄さん!私真剣よ。少しでも兄さんの役に立ちたいの‥力になりたいのよ」
「ティア‥‥わかった‥だが一つだけ言っておく。これからはもう泣くな!‥強くなるんだティア」
「ええ。私も兄さんのような軍人になりたいの」
「‥ダメだ。考え直せティア‥外殻大地はお前が思っているほど甘くはない」
「兄さん!私真剣よ。少しでも兄さんの役に立ちたいの‥力になりたいのよ」
「ティア‥‥わかった‥だが一つだけ言っておく。これからはもう泣くな!‥強くなるんだティア」
― それから私は一切涙を見せなくなった。兄さんの役に立ちたくて一生懸命頑張った。強くなりたかった‥兄さんの側にいるために‥
あの頃の私にとって兄さんが全てだった‥
あの頃の私にとって兄さんが全てだった‥
「やっぱりヴァン師匠は昔っから優しかったんだな~!さっすが俺の師匠♪」
「‥『昔』はね‥」
「んだよ~!お前まだ師匠の事疑ってるのかよっ!!」
「だって‥そう考えれば全部つじつまが合うものっ!」
「んな訳ねぇだろ!お前の勘違いだって!!」
「‥貴方には‥何もわからない‥」
「‥『昔』はね‥」
「んだよ~!お前まだ師匠の事疑ってるのかよっ!!」
「だって‥そう考えれば全部つじつまが合うものっ!」
「んな訳ねぇだろ!お前の勘違いだって!!」
「‥貴方には‥何もわからない‥」
― 誰にも私の気持はわからない‥私だって本当は信じたくない‥嘘だって思いたい‥
でも聞いてしまったから‥兄さんとリグレット教官の会話を‥
でも聞いてしまったから‥兄さんとリグレット教官の会話を‥
「‥ったく‥お前さ、『今』はヴァン師匠の事好きじゃないのかよ?」
「‥そうだったら‥こんなに悩まないわ‥」
「ならどうしてちゃんと話そうとしねぇんだよ!いきなり襲いかかったりしてさ‥」
「‥それは‥」
「‥そうだったら‥こんなに悩まないわ‥」
「ならどうしてちゃんと話そうとしねぇんだよ!いきなり襲いかかったりしてさ‥」
「‥それは‥」
― 兄さんを止めたかった。例え刺し違えてでも‥私がやるべきだと思った‥私にしかできないと思った‥
「‥何があったか知んねぇけどさ、お前にとって師匠はたった一人の肉親なんだろ?だったらまず話し合え!」
「‥あなたもたまには良い事言うのね」
「だぁ~!人がせっかく心配してやってんのに!!もういい!!!」
「あっ‥待ってルーク」
「‥んだよ?」
「‥ありがとぅ‥」
「///べ、別に‥ほ、ほら、みんなの所に戻るぞ!」
「‥ええ‥」
「‥あなたもたまには良い事言うのね」
「だぁ~!人がせっかく心配してやってんのに!!もういい!!!」
「あっ‥待ってルーク」
「‥んだよ?」
「‥ありがとぅ‥」
「///べ、別に‥ほ、ほら、みんなの所に戻るぞ!」
「‥ええ‥」
その先に待ち受ける運命を彼女はまだ知らない・・・