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零れ落ちる闇」(2009/01/05 (月) 20:17:54) の最新版変更点

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*零れ落ちる闇  ―― EXCEED CHARGE ――  ブティックやCD専門店の並ぶショッピングセンターにて、男性の無機質な電子音が響く。  電子音と共に赤い閃光を引きつれて、黒い影が駆ける。  金のバイザーと赤いラインを持つ黒い強化スーツの仮面ライダー。  ファイズは道路を駆けて、空に浮かぶ赤い異形の怪人へと跳躍した。 「らぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」  ベルトよりチャージされたエネルギーは拳のパンチングマシン、ファイズショットに届き破壊の衝撃を生み出す。  ファイズに変身した海堂は、そのまま赤い異形、ゴルゴスへとグランインパクトを振り下ろした。 「甘いわ!!」  ファイズのグランインパクトをゴルゴスは両腕で受け止め、鬼のような形相でファイズの仮面を睨みつける。  下半身の岩に生える十面の人の顔。うち一つは潰され、九つとなった顔面から炎が吹き出た。 「ぐっ、あちちち、熱っちー」 「そのまま焼け死ねい!!」  殴った反動で地面に落ちていくファイズに向けて、ゴルゴスは炎を浴びせ続けた。  ―― FULL CHARGE ――  電子音と共にゴルゴスの巨体を閃光が貫く。  光の矢を撃ち放った緑のライダーは落ちるファイズを受け止め、ゴルゴスの正面に立った。 「私を忘れてもらっては困りますね」  黄金の列車のレールを模したラインを持つ緑のライダー、仮面ライダーゼロノスとして香川は立ち向かう。  彼の信念を持って、侑斗を生かすために。 「触んじゃねー」  ファイズは乱暴にゼロノスの腕を跳ね除け、しっかりと地面を踏みしめる。  明らかな拒絶の態度に、ゼロノスは仮面の下で怪訝な表情を浮かべた。 「あなたは木場くんの知人ではないのですか? 彼と私たちは協力体制にあります。 戦う際に力をあわせるのは妥当だと判断しますが」 「うるせー! てめーは仮面ライダーなんだろ? 俺は仮面ライダーを認めねえ!!」  ファイズはゼロノスに背を向けたまま、ゴルゴスへと駆けていく。  ゼロノスは冷静に思考しながら、ファイズ……いや、海堂の仮面ライダーへの嫌悪の原因を探る。  ゼロガッシャー・ボウガンモードでゴルゴスを牽制し、神崎が引き起こしたライダーバトルを思い起こした。  あの時ライダーバトルを遂行する意思を持っていたライダーは十一人。  当時集めた情報によれば、手塚や城戸といった例外を除けばそれぞれ己がエゴでライダーバトルに乗ったのだ。  悲しいことに、教え子の東條も含めて。  もしも海堂が今まで出会ったのが神崎の選んだ仮面ライダーのような相手なら、彼の不信感も理解できる。 (つまり、彼を盾として扱うには、仮面ライダーへの不信を拭い去るのが先ということですね)  ゼロガッシャーを組みかえて大剣とし、剣先をゴルゴスへと向ける。  まずはゼロノスの力がゴルゴスにどの程度通じるか計る必要があった。 (場合によっては、桜井くんが使ったゼロフォームになる必要もありますからね)  ゼロノスは再度ゴルゴスに攻撃を仕掛けようとするファイズに合わせて、斬りつけるべく街灯を蹴って跳躍の距離を稼いだ。  ファイズに集中していたゴルゴスは、ゼロノスの接近に対する反応に遅れている。  距離が後数メートルの時点で気づいたが、もう遅い。 「はあぁっ!!」  ゼロノスはゼロガッシャーを横凪に振るう。ゴルゴスの下半身の岩に横一文字の傷が走った。  傷の浅さにゴルゴスの頑強さを確かめ、続けて迫る火炎弾をゼロノスは両腕を交差して身体を庇う。  身体の炎を冷静に消し止め、ゴルゴスの力が並でないことを悟る。 (やはり、使うべきですね)  視線を一瞬ゴルゴスに向けると、ファイズのほうを相手にしているのが見える。  圧倒的力に翻弄されているファイズを冷静に観察しながら、ベルトのゼロノスカードを取り出し裏返す。  侑斗がそうしたようにまた、ゼロノスとなった香川も赤い面が表になったゼロノスカードをベルトに差し込む。  ―― CHARGE AND UP ――  雪のごとく淡く赤い光がゼロノスの身体を赤く染め上げていく。  仮面ライダーゼロノス・ゼロフォームとなった香川は、ゆっくりと銃口をゴルゴスへと向けた。 「こざかしい!!」  ゴルゴスは自身の身体を焼く光線を睨みつけて、忌々しげに吐く。  先ほどは緑だった仮面ライダーは赤と変わっていた。地を走るファイズともども、倒せばいい。  ゴルゴスの力は、自他とも認めるほど強い。押し切る。以前、ファイズとは戦っている。  別のライダーが傍にいるとはいえ、二人の仮面ライダー程度相手にできることは既に経験済みだ。  ゴルゴスはそのまま身体を浮かせた。  巨体を活かした突撃で吹き飛ばす。ゴルゴスが猛スピードでゼロノスへと向かってきた。 「む……」 「死ねぇぇぇぇい!」  轟音が響き、空気が震えた。ゼロノスはゴルゴスの突進に、 「なにぃ!!」 「何とか、受け止めることができたようですね」  吹き飛ばされず、純粋な腕力で止めた。一瞬ゴルゴスは焦るが、すぐに余裕を取り戻す。  なぜなら、身動きが取れないのは相手も同じ。ゴルゴスは嘲るように高笑いを続ける。 「ぐわっはっはっは! だが、キサマも身動きが取れない!」 「ええ、一人なら愚策だったでしょう。一人なら……ね」  ゼロノスの瞳が怪しく輝く。ゴルゴスはゼロノスの言葉の意味を悟り、首を回した。  ―― EXCEED CHAGE ――  ゴルゴスの本能に怖気が走る。反応が遅かったことに気づいたのだ。  赤い光がゴルゴスの視界に入る。三角錐の赤いクリスタルのようなエネルギーがゴルゴスの身体を縛り付けた。  顔の一つが潰されたあの技が迫る。ゴルゴスはどうにか身を捻り、クリムゾンスマッシュの打点をずらした。 「らぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」  ドリル状のエネルギーをまとい、ファイズが赤い閃光となってゴルゴスの岩と化した下半身を貫いた。  φのギリシャ文字が空中に浮かび、ゴルゴスの身体を炎が纏う。  それでも、ゴルゴスの瞳は死んでいない。 「ぬうぁぁぁぁぁぁ!」  咆哮と共に炎とφのギリシャ文字を砕き、ゴルゴスは眼下のファイズとゼロノスを睨みつけた。  鬼のような形相が憤怒によって、さらに赤く染まる。 「キサマら……覚悟はいいな。血を一滴も残さず、殺してくれる……!!」  ゴルゴスの岩に宿る九人の顔から砲撃が始まる。  爆発に翻弄される二人の仮面ライダーを見下ろしながら、ゴルゴスは怒りに任せたままただ破壊を続けた。 □  ショッピングセンターを抜け、廃墟に隠れたファイズとゼロノス。  ようやく二人きりになれたとゼロノスは物陰から牽制しながら、同じようにフォンブラスターで牽制するファイズに話しかける。 「そろそろ私たちに協力をする気になりましたか?」 「だから言っているだろ。俺は仮面ライダーが大嫌いだって!」 「あなたが仮面ライダーを嫌うということは、相応の人物に出会ったのだと推察します。 しかし、私たちもあなた方オルフェノクの中の危険人物と出会っております」 「おめー、なにがいいたいっちゅーんだよ!」 「あなた方オルフェノクの中に、人間の心を保っているように、我々仮面ライダーの中にも英雄的行為を志す者もおります。 いかがですか? 私たちとの共闘、そう悪い提案ではないはずですが?」 「うるせー! あいつは……あいつは…………」  気落ちするファイズの様子を見て、ゼロノスはショックが大きいことを悟る。  ゼロガッシャーの引き金を引きながら、ゼロノスはファイズに視線を一瞬だけ向けた。 「そうやって、駄々をこねるだけで、あなたは仮面ライダーに無念を晴らせると思っているのですか?」 「んだと!」 「私はスマートブレインを打倒し、多くの人たちを救い出します。私の命は、そのための捨石にすぎません」  ゼロノスの言葉に、ファイズが顔を上げる。  確かな覚悟を感じ取ったのか、ファイズが押し黙った。 「あなたはスマートブレインを倒したくはありませんか?」  ゼロノスの言葉にファイズは沈黙したままだった。  わざとらしく、ゼロノスはため息をついて、呆れている様子を演出する。 「そうですか……あなたの気持ちは、ここで駄々をこねる程度にしか過ぎないのでしょうね」  ゼロノスが告げ終えた瞬間、胸倉が掴まれる。明らかに怒りを示すファイズの視線を、涼しげに受け流した。 「もういっぺん言ってみろ……」 「何度も言う必要など、ありません。そろそろ出ましょう。 もし、あなたがスマートブレインを打倒する、という気持ちが本気なら……戦うというのなら、私が囮として出て行きます。 その結果生まれる隙をつくのもいいでしょう」 「俺が出なかったら、どうする気だ!」 「その時は……私が死ぬだけです。結局はその程度の器、ということなのでしょう」 「そういう問題かっちゅーの!」 「……とはいえ、私は死にたくはありません。期待していますよ?」  ゼロノスはもう言うことはないと物陰から飛び出し、光弾でゴルゴスの身体を射抜く。  別に、死ぬつもりはまったくない。ファイズこと海堂を試しているのだ。  今後、侑斗を守り抜く盾として相応しいか。ここで怯むのなら、用はない。この場で文字通り、ゴルゴスの攻撃を受け止める盾として使う。  だが、覚悟を示し、飛び出してくるのなら……今後必要な戦力とする。  これはゼロノスの命をチップにした賭けではない。海堂の価値を計る瞬間なのだ。  ゼロノスは後方のファイズの気配を気にする。できれば、後者のほう、必要な戦力がありがたい。  前者の使い捨ての盾は一度しか使えないが、後者なら仲間意識を持たせれば何度でも盾として使えるからだ。  冷徹ともいえる思考。それこそが香川の考える英雄の理論。  凡人の倫理はそこにはない。ただスマートブレインを潰し、ライダーバトルと似たこの祭りを終わらせる。  鉄のように硬く、氷のように冷たい覚悟があった。 □ 「はあ、はあ、はあ……」  あちこちに被害が広がるショッピング街を抜けて、侑斗は赤い空を浮かぶ怪人、ゴルゴスを見つけた。  肩にかけたまま持ってきたライフルを向けて、スコープを覗き込む。  一条は自分たちを守るために命を落とした。金居は自分が信用せずに命を落とした。  二人分の命が重い。だからこそ、侑斗は覚悟を持ってライフルの銃口を向ける。  下は攻撃を受けるゼロノスが入る。香川が赤のカードを使っていることを確認して、自分の記憶が消えることも覚悟する。  香川には赤カードを使うことによって、誰かが侑斗に関しての記憶を失うことを知らない。  単純に、戦力の底上げとしか認識していないからこそ、使ったのであろう。  自分の記憶を誰かが忘れることに心が痛みを訴える。だが、仕方ないと侑斗は思う。  このバトルロワイアルを潰し、誰かを救うためなのだ。  だから、侑斗は引き金を引く。ゴルゴスの気を引いて、フルチャージの一撃を打ち込む隙を作るために。  侑斗の全身に反動が響き、弾はゴルゴスを掠めた。  ゆっくりと、赤い異形がこちらを向く。 「桜井くん! なぜこちらに来たのですか!?」 「今です! 香川さん!!」  言い終えて、侑斗の地面が爆ぜる。この隙に攻撃してくれ。  侑斗は祈るが、身体が突き飛ばされて砲撃の衝撃から免れた。 「うあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」  侑斗の視界に、吹飛んでいく木場が眼に入る。  また誰か、自分のせいで犠牲になったのだろうか?  侑斗は悔しげにうつむいて、自分に、ゴルゴスに向けて怒った。 □  ファイズは遠のいていくゼロノスの背中を見届けて拳をギュッ、と握った。 (わかんねえ……わかんねえよ……モグラ……)  子供のように純真な瞳を向けるモグラの姿を思い出す。  海堂が最初に出会った仲間。仮面ライダーを正義の味方だと本当に思っていた姿。  無残に、仮面ライダーに首を落とされたモグラの姿と、正義の仮面ライダーを語る姿を交互に思い出す。 『うわ~すごいんだな、かいどーは。俺、尊敬しちゃうよ~』 『困ってる人は絶対に見捨てないし、助けを求める人がいたらどこへだって飛んでいくんだ』 (わかんねえけどよ……)  うなだれているファイズの耳に、銃声が聞こえ現場へと顔を向ける。  若い茶髪の青年と、海堂もよく知る木場勇治が姿を見せた。ゼロノスが明らかに驚いた態度をとっている。  と、言うことは彼等はこの危険な地域に駆けつけてきたのだ。 「あの……馬鹿!!」  ファイズが怒声を上げて地面を蹴る。ゴルゴスが力をためて、岩石に刻まれた九つの顔がうごめいた。 「キサマらから殺してやる! 死ねえ!!」  ゴルゴスの下半身の顔面岩が輝いたと思った瞬間、侑斗の周囲が爆発する。  侑斗を庇った木場を見て、思わずファイズは駆けた。手を必死に伸ばすが、距離は圧倒的に開いている。  そのまま木場が川へと落ちるのを、黙ってみていることしかできなかった。  ボチャン、と派手な音がファイズの耳に入る。わなわなと震えた拳を握り、地面を跳躍した。 「俺様はここだ! ゲドンの獣人野郎!!」  別に、ゴルゴスの容姿をモグラから聞いたわけではない。  だが、モグラを苦しめ、仮面ライダーが戦う相手としての名を叫ぶ。  それは、海堂直也が始めて行う、仮面ライダーとしての戦いであった。  ファイズの脚のポインターから三角錐の赤いエネルギーが降り注ぐ。  ゴルゴスは両腕を交差して、受け止めた。身体が固定されるが、無理やりはじき返す。  そのつもりなのだろう。ファイズはそれを知りながら、エネルギーの内部へと右脚を向けながら飛び込む。 「おらあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」 「小癪な!!」  クリムゾンスマッシュの衝撃と、ゴルゴスの怪力が拮抗する。  押し込むように全身に力を入れるファイズは、この技が通ることを必死で祈った。 (なあ、モグラ……仮面ライダーって、ゲドンの獣人を倒すんだろ? 困っている奴を助けるんだろ?)  ファイズは心の中で、既に死んでしまった仲間に声をかける。  胸がじくじくと、できたばかりの傷口を抉り返すように痛む。  されど、モグラの純真な願いに答えるように、ファイズの蹴りが少しずつ押し進む。 (だったらよ……俺がなってやるよ。俺が…………)  ファイズが気合を込めた瞬間、クリムゾンスマッシュのドリル状のエネルギーが深く突き進む。  ガリガリとゴルゴスの強固な皮膚が削れていった。 「俺が、仮面ライダーになってやる! モグラを殺した奴のような仮面ライダーじゃねえ!! 俺様は、困ってる人は絶対に見捨てないし、助けを求める人がいたらどこへだって飛んでいく。そんな仮面ライダーになってやる!!」  ファイズの宣言と共に、身体が閃光と化してゴルゴムの身体にめり込む。  その光は赤いゴルゴスを…… 「ぬるいわ!!」  貫かず。ファイズは天高く舞い上がった。  ゴルゴスの高笑いが響く。余裕の表情。しかし、ファイズの右腕はファイズフォンのエンターキーを押し込んでいる。  ―― EXCEED CHARGE ――  再び鳴る電子音。赤いエネルギーを引きつれて、再びファイズショットを構えた腕を振り上げる。  かつて、乾巧も取った戦術を、海堂は知らず選択する。目的は…… 「落ちやがれぇぇぇぇぇぇ!!」 「ぬぅ……おおおおおぉぉぉぉぉ!!」  クリムゾンスマッシュのダメージが残るゴルゴスに、グランインパクトの衝撃が炸裂した。  ゴルゴスの全身が大きく震え、滞空していた巨体が力を失って地面へと落ちる。  ―― FULL CHARGE ―― 「なに!」 「へへ……俺様の狙い通りだぜ……」  電子音が轟いた位置には、ゼロノスがエネルギーを溜めている刃を構えていた。  ダメージが残るゴルゴスはなすがままだ。 「よくやりました。私の計画通りです」  ゼロノスは冷静に、エネルギーを宿す大剣を横凪に振るう。  稲妻のごとくほとばしるエネルギーが横一文字に走り、ゴルゴスを貫いた。 □ 「ぐぁぁぁぁぁぁ!!」  ゴルゴスは気合を込めると同時に、再び天へと舞い上がる。  ゼロノスとファイズがまだ余力のあるゴルゴスに驚愕の視線を送っているのを見届け、鬼のような形相を向けた。 「やるな……ここは一旦引いてやるが、次こそはキサマらの血を一滴も残さず飲み干してやる!!」  胸に横一文字に走る、血が滴る傷口を押さえながら、ゴルゴスはすばやくその場を離れる。  ファイズが反応しようとしているが、ゼロノスが押しとどめた。  理由は分からないゴルゴスは、己の力に恐れたのだと考えながら突き進む。  怒りの形相に、ガガの腕輪に一瞬視線を向けて、忌々しげに牙を剥く。 (クソッ……俺が生き残るには、ギギの腕輪が必要なようだな……。アマゾンを探し出して、殺してやる!)  ゴルゴスの怒りは止まらない。  空を駆け、復讐を胸に移動して行った。  そしてゴルゴスは、己がデイバックを落としていったことに気づいていなかった。 □ 「なんで止めたんだよ?」  ゼロノスの斬撃で紐が千切れたデイバックを拾い、ファイズは疑問をぶつけた。  ゼロノスが答える前に、答えがやってくる。ゼロノスの変身が解除され、白衣の中年、香川が姿を見せた。 「変身には制限がかっていて、私たちは十分しか戦えません。あなたは後二分強時間が残っていますが……深追いは禁物です」 「そーかい」  ファイズは戦っている最中に変身が解けたことを思い出した。  そういうことかと納得したまま、首を軽く鳴らす。 「一応、周囲の警戒を引き続きお願いします。桜井くん、怪我はありま……」  香川の声を中断するように、周囲が再び爆発する。  またもや、ゴルゴスが戻ったのかと考えるが、ファイズは十分の制限を思い出し、それはないと判断する。  視線を向けた先には、緑のロボットのようなモンスター、マグナギガが砲身をファイズに向けていた。 「ここは一旦退きますよ」 「……いや、俺が残る」 「な、お前!」  ファイズの言葉に侑斗が反応するが、ファイズは鬱陶し気に手を振った。  とっとと行け、と言外に告げて、マグナギガの正面に立つ。まだ、モグラに誓った仮面ライダーの仕事は終えていない。 「木場を頼むわ。あいつ、俺様がいないと何にもできない奴だからな。 せめて、俺様と合流するまで頼む。な?」 「そんなふざけた頼み、聞けるか! そのベルトを貸せ! 俺があいつを倒……」 「それは無理です。桜井くん、このベルトをつけるには、条件があるのですから」  香川の言葉に、侑斗はうつむいて歯を食いしばる。ファイズはその様子を邪魔そうに見つめながら、二人を守るように立つ。  その背中に、確かな覚悟があった。 「安心しろ。俺様は、正義の味方…………」  それはある未来の話だ。照夫という少年がいた。  海堂が助けた少年だ。施設に預けられて少年はいじめられ、偶然それを目撃した未来の海堂が助けることとなる。  その時と同じく、ファイズは右腕を左方向にまっすぐ伸ばし、天を介して反対方向へと向ける。  腰に止めていた左腕と交代するように右腕を引き、左腕を右方向へとまっすぐ伸ばした。  そのポーズは、偶然にも『仮面ライダー1号』の変身ポーズと酷似していた。 「『仮面ライダー』だからな!」  ファイズの、海堂の宣言が響く。満身創痍なその身でも、決して戦いの意志を曲げない。  いや、本当は逃げ出したかった。いつものようにお調子者らしく、去りたかった。  それでも、胸に宿る重さが逃げることを許さない。 (これいいんだよな? モグラ……)  海堂の祈りが、天に眠るモグラへと向けて呟かれた。 「……海堂さん、でしたよね?」 「ああ? 早く行けっちゅーに」 「……私たちは木場くんを探して、北へと向かいます。その後動物園と向かいますので、そこでお会いしましょう」 「へいへい。覚えておくよ」  ファイズは言い捨てて、マグナギガへと向かった。香川はその場にある、デイバックをすべて持つ。  ゴルゴスと木場が落とした物も、もっていく。何が役に立つかは、分からないからだ。  香川は後ろ髪を引かれるような思いをしているであろう、侑斗を無理やり引っ張って地面を蹴る。  それにしても、ファイズ及び海堂は仲間に欲しい逸材だ。  戦い慣れしたその動き。ファイズとしての力。仲間を守る正義感。  いずれも侑斗を守る盾として申し分ない。 (ここは生き延びてくださいよ。我々が、スマートブレインを打倒するために……)  香川のメガネの縁が光る。  その肩に、ライフルを担いで。それもすべて、侑斗を、ゼロライナーの道を守るために。 □  川から上がった木場は、どうにか身体を起こして近くの木へと背を向ける。  大きくため息をついたと同時に、重くなったまぶたを閉じる。  傷ついた身体は休憩を欲していた。  木場勇治に睡魔が訪れる。 (海堂……無事かな……? 桜井くん……)  どこか、乾巧を髣髴させる、出会ったばかりの青年を思い、木場の意識が闇へと落ちる。  やがて沈黙が訪れた。  風が穏やかに木場の髪をなで、静かに揺らす。  その一時だけ、凄惨な戦いから隔離されたような空間が形成された。 □ 「らあぁぁぁぁぁぁぁ!!」  ファイズは気合一閃。猛打をマグナギガの胸部へと繰り出す。  ミラーモンスターでも特に装甲の厚いマグナギガを相手では、拳を痛めるだけだった。 「いってぇ~」  ひりひり痛む手を振りながら、ファイズは正面で胸部の装甲を展開するマグナギガを目撃する。  ミサイルが並んだ火薬庫を前に、背筋に悪寒が走った。 「ちぃっ!」  ファイズがジグザクに走り、迫るミサイルをどうにか避ける。  爆風と衝撃が届くが、ひたすら無視してファイズは怪我で痛む身体に鞭を打って進む。  ―― EXCEED CHARGE ――  エネルギーを携えた拳をマグナギガの頭を殴打する。  たたらを踏んで後退するマグナギガの、閉じそうになる火薬庫に向けてすばやくファイズフォンの106キーを押した。  ―― Burst Mode ――  赤い光弾の三連射を火薬庫に撃ち込む。  盛大な爆発と共に、要塞のような強固な雰囲気を持つマグナギガが、初めて揺らいだ。 (しゃっあ! 決めるぜ!)  ファイズの変身時間は残り少ない。おまけに、マグナギガの身体に粒子があがり、鏡へと向かおうとしている。  逃がしてたまるか。そう思考するファイズに、マグナギガは後退しながら右腕の砲口を向けてきた。  あれを食らえばまずい。ファイズはとっさに判断して、地面を蹴って跳躍する。  マグナギガの砲弾が放たれた。同時に、ファイズフォンのエンターキーを押し終える。  ―― EXCEED CHARGE ――  向けた右足から放たれる赤い光が、ギガランチャーの砲弾とぶつかり、迫り勝つ。  鏡の世界へと逃げようとしたマグナギガを、赤い光が三角錐の形を展開して押しとどめる。 「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」  ファイズのクリムゾンスマッシュが、焼け焦げた胸部を後方の割れたショーウィンドウごと貫いた。  息も荒く膝と右手を地面につけるファイズの背中で、マグナギガがφの一文字と共に、青い炎を吹き上げて灰となる。  その灰もやがては粒子となり、消えていった。 「どうだ……ちくしょう! モグラ、俺は……勝ったぞー!!」  ファイズの変身が解けた海堂は、勝利の雄たけびをあげる。  ただ単純に勝った事実に酔い、死んだ仲間を思う。ある意味、お調子者の彼らしかった。  同時に仲間思いの、見捨てようとして見捨てきれない、彼らしくもあった。 「……へ……。木場、今俺様が駆けつけて……やる…………って、あれ……?」  歩みを進めようとした海堂が、ふらりと膝を崩した。  疲労がたまりすぎて、一歩も動けないらしい。立ち上がろうとする意思とは反対に、海堂はそのまま倒れ伏す。  やがて、海堂から寝息が聞こえてきた。  風が爽やかに吹き、勝利の美酒に酔いしれる戦士を祝福するように、髪を優しく撫でた。 □  木場を探して侑斗は走る。香川は念を入れて、周囲を警戒するように何度か呼びかけていたが、聞いている余裕はなかった。  侑斗の必死な態度に呆れたのだろうか。  香川はライフルを構えながら、周囲を警戒して進んでいる。侑斗は香川には何度感謝してもし足りないと思いながら、川原を走り続けた。  侑斗は今まで出会った人たちのことを思う。  一条薫、金居。いずれも自分のせいで死んでしまった人たちだ。  ゼロノスの力をうまく使っていれば、死ぬことはなかったはずだ。  侑斗の脳裏に浮かぶのは、戦うことを楽しそうに語る北崎や、ギリギリでしか食いつけなかったガドル、そしてゼロフォームでようやく撃退した鳥の怪人。  いずれも侑斗は名を知らない。ただ殺人者を取り逃がした。その意識がある。  負け続け、人を犠牲にし続けたのは、侑斗自身が弱いせいだ。少なくとも、彼自身はそう思っている。  そして、自分たちを助けるためにあの場に残ったファイズと化した男。  彼の願い、木場勇治を救うために侑斗は駆ける。最も…… (俺のことは覚えちゃいないだろうがな)  香川より返された、ゼロノスベルトを見つめる。仕方のないことだとは言え、香川は赤カードを使った。  しかし、香川も海堂も、侑斗のことを忘れた形跡がない。と、なると木場が侑斗の記憶を失った。  そう考えるのが自然だ。 「見つからない……」  かれこれ、一時間以上は探している。ゼロノスの制限も解けているかどうか、ギリギリの時間だ。  新たに増えた荷物を抱えて、侑斗はひたすら前を見て歩く。  やがて、気を背にこちらを見つめている人影を見つけた。  木場勇治。  立ち上がってこちらを見つめている。侑斗は無事を喜び、駆け寄ろうとした。 「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」  木場の顔にホースオルフェノクの顔が影となって浮かぶ。  水が崩れるような音と共に、木場の身体が揺らいでホースオルフェノクへとなる。  突然のことで驚いた侑斗が反応する間もなく、ホースオルフェノクは侑斗の傍を通り抜けた。  侑斗が振り返ると、ライフルを真っ二つに斬られ、衝撃で川へと落ちる香川が見える。  侑斗はあまりに不可解な展開に、呆気にとられた。  時は木場が目覚めたころ、五分ほど前に遡る。  仲間と合流しなければ、と考えた木場の胸元から、一枚の写真がひらりと落ちた。  香川がライフルを構えている姿。  無謀な侑斗を止める時に、目撃した一枚の写真だ。  そんな木場に、侑斗が視界に入る。赤カードの影響を受けた彼は、胸に宿る感情のままにホースオルフェノクへと変えた。 (あのままでは、桜井くんが撃たれる!)  『彼ら』の不幸は四つ。  一つ目は、香川が赤カードの弊害を知らなかったこと。  赤いカードは記憶をさび付かせた、代償を持って始めて使える力だ。  誰も傷つけない、何も失わせない、その覚悟持った侑斗が得た力だった。  二つ目は、侑斗が己の記憶が失う、と思い込んでいたこと。  ゼロノスベルトは侑斗以外が使う機会がなかった。  ゆえに、赤いカードは侑斗の記憶しか奪わない。他の者が変身した際に、侑斗でなく変身者が記憶が消える、ということを経験していなかった。  三つ目は、金居の遺産。  もともと彼が疑心をばら撒き、不要になった香川と侑斗を労力を少なく始末するための手段。  持ち主を失った罠が、香川の記憶を失った木場へと渡ってしまった。  四つ目は、香川が周囲を警戒していたゆえ、携えていたライフルが、偶然銃口を侑斗に向けてしまい、それを木場が目撃してしまったこと。  香川は木場と会話を果たしている。彼が味方であるゆえ、ライフルの銃口の向きなど気にしていなかった。  とはいえ、さすがに味方に長時間向ける気はない。数秒、銃口が侑斗に向かっていた。その事実が、香川の記憶を失った木場を突き動かした。  そう、侑斗を守るために。 「よかった……無事で」  変身をとき、安堵した表情で木場は侑斗に振り返る。  その瞬間、頬が強打され尻餅をついた。いきなりのことで、木場は驚愕に満ちた視線を侑斗へと向ける。 「何が……無事でだよ! 香川さんにいきなり斬りかかってきやがって……おかしくなったのかよ!」 「俺は、君を守ろうとしたんだ! 君が撃たれないように……」  木場は状況を説明するが、侑斗の表情はますます険しくなっていく。  説明すれば分かってもらえる。そう考えて次々と言葉を重ねるが、届いていないことを実感する。  焦る木場は、胸元から例の写真を取り出した。これを見れば理解してもらえる。  希望に縋るように侑斗へと突きつけた。 「これを見てくれ! あの人はライフルを発砲したことがあるんだ。今回君に銃口が向きそうになっていた。 きっと君を撃とうと狙っていたんだ……信じてくれ! 桜井くん……!!」  木場が思いを吐き出しきった刹那、再度侑斗の拳が木場の身体を吹き飛ばした。  信じてもらえない。絶望が木場に訪れる。 「…………行けよ……」 「……俺は、人を守るために……この力を……」 「うるさい! お前の声なんて、化け物の声なんて聞きたくない! 行け!!」  侑斗はこいつはくれてやる、とデイバックを一つ投げつけて、背を向ける。  香川を、ライフルを向けた男を捜すと告げられて、木場は弱々しくデイバックを取った。  侑斗が信じてくれない。自分を化け物だと見ている。  ハンマーで殴られたようなショックを受けて、木場はふらふらとその場をあとにした。  侑斗は怒りに燃えるまま、香川を探すために川を辿っていった。  まるで木場が香川のことを綺麗さっぱり忘れたような態度に怒り、所詮は北崎と同じ化け物だと心の中で罵る。 (……香川さんを、忘れたような……?)  そういえば、侑斗自身を木場は忘れていなかった。ゼロフォームへとなった香川を思い出し、不可解だった一つの事実が侑斗の中でつながる。  赤いカードによって引き起こされた悲劇だと気づいた時、侑斗は木場がいた地点へと走っていった。  辿り着いた現場で、息も荒く周囲を探すが、木場の姿は見えない。 (俺のせいじゃないか……)  赤カードの弊害を香川に伝えていれば、こんなことは起きなかった。  ゼロノスベルトを香川に貸さなければ、こうはならなかった。  自分が香川の記憶を、木場が失うことをに気づいていれば、こうはならなかった。 『うるさい! お前の声なんて、化け物の声なんて聞きたくない! 行け!!』  蘇るのは、自分が言った拒絶の言葉。人の心を抉る罵倒。  侑斗の胸に後悔が押し寄せる。 「全部……俺のせいじゃないか…………。う……く……」  侑斗は今度は声に出して呻く。涙は流さない。  ただ、己の過ちを無限に悔い続けた。 □ (私としたことが、見誤りましたか……)  香川は川より上がり、疲労した全身を引きずって目の前に見えるホテルへと向かう。  身体を休めるのに相応しい場所へとやってこれたのは幸いだ。 (誠実な青年だと思っていたのですが、よもやこのバトルロワイアルで人を殺すことを決意していたとは。 桜井くんには、ゼロノスベルトを返していたのであの場は何とかなるでしょう)  赤カードの弊害を知らない香川にとって、木場は突如襲ってきた殺人者としか判断しようがなかった。  殺人者としては不可解な点も見えたが、不意打ちを狙っていたと考えれば納得できないこともない。 (やはり、オルフェノクは敵と見るのが正しいのでしょうね。あの、海堂という青年を除いて)  同じオルフェノク、という餌に釣られ、木場に騙されているのだろう。  香川はそう結論付けて、目を細める。静かな決意がそこにはあった。 (彼ら、海堂くんと桜井くんに再会する前に、済ませておかねばならないことができましたね。 そう、木場勇治なる青年の抹殺。騙す人間が消えれば、騙された人間は害を受けない。 変身道具も武器も今はありませんが、私にはこの知能がある。木場勇治、覚悟してください。あなたは私が始末します)  このバトルロワイアルを潰すために。  香川は口の中で呟いて、ホテルへと入っていった。 □ 「つう……俺様、ひょっとして寝ていたのか……?」  海堂が呟いて、身体を見下ろした。節々が痛み各所に傷がある。  痛みに顔をしかめながらも、海堂の顔は晴々としている。 「なあ…………モグラ。俺は出会った仮面ライダーたちは最悪だと思う。復讐を誓うのも、しょうがないだろ? けど、俺様は決めたぜ」  海堂は拳を振り上げて、太陽と固めた拳を重ね合わせる。  死んだ仲間に示すように。 「正しい仮面ライダーになってやる! 間違っている仮面ライダーをちぎっては投げ、ちぎっては投げて、マシな仮面ライダーとして戦ってやるぜ!」  だから見ていてくれ。心の中で呟いて、海堂は立ち上がる。  そういえばと、香川が言っていた合流場所を思い出した。 (しょうがねえな。あいつらは俺様がいないとなーんにも出来ねえんだからな。俺様が何とかしてやるぜ。待っていな!)  満面の笑顔を浮かべた海堂は、傍から見ると仲間と合流でいるのが嬉しくてしょうがないように見えた。  たとえ、その内面が否定していても。  彼が向かう先に仲間はいない。それでも、海堂は希望を胸に進み続けた。  新たな決意、仮面ライダーとなることを決めて。 「うう……俺は……」  木場は力なく、当てもなく彷徨い続ける。  海堂と合流することも考えたが、彼が現在どこにいたのかは知らない。  それに、侑斗に『化け物』と呼ばれたことが悲しくてたまらなかった。  両親を、恋人を、すべてを失ったあの日を思い出す。  木場は人を憎しみで殺してしまった。だからこそ、人を殺すことをやめさせたいと決意した。  けれども、誰も彼も『人間』は木場を、オルフェノクを拒む。  またも、闇がささやいた。オルフェノクとなった日に、木場の中で蠢く憎しみが蘇る。  人を殺すことこそが、オルフェノクになった者の運命という声を、木場自身の心が生み出した。  木場の持つデイバックの中身が少し覗く。  それは、侑斗が間違えて渡したゴルゴスのデイバック。  支給品は人間の形をしておらず、オルフェノクでもないゴルゴスには無用の長物だったもの。  天のベルト、サイガドライバーとトンファーエッジが、木場を闇に誘うように、妖しく蠢いた。  木場勇治と海堂直也。  彼らは未来にて、互いに真反対の道を歩みことになる。  二人がそれぞれの未来において、バトルロワイアルでも同じ結末をたどるのか、ファイズとサイガのベルトしか知らなかった。 **状態表 【十面鬼ゴルゴス@仮面ライダーアマゾン】 【1日目 現時刻:昼】 【現在地:G-6・駐車場】 【時間軸】:本編13話前後 【状態】:胸に一文字の傷。全身打撲。ダメージ大。疲労大。三十分戦闘不可。 【装備】:ガガの腕輪 【道具】:なし 【思考・状況】 基本行動方針:打倒仮面ライダーアマゾン、主催者への報復 1:いずれ仮面ライダー(ゼロノス・ファイズ)を殺し、血を吸う。 2:アマゾンを見つけ次第殺す。腕輪を奪う。 3:牙王、死神博士、影山は最終的に殺し、血を吸う。 【備考】 ※岩石の9つある顔のうち一つが潰されました。 ※能力制限について思い当たりました。 【香川英行@仮面ライダー龍騎】 【1日目 現時刻:昼】 【現在地:E-6・中部ホテル前】 【時間軸】:東條悟に殺害される直前 【状態】:深い後悔、強い決意。全身に中程度のダメージ、中程度の疲労。三十分変身不可(ゼロノス) 【装備】:なし 【道具】:なし 【思考・状況】 基本行動方針:殺し合いの阻止 1:木場勇治の抹殺。そのために身体を休め、英気を養う。 2:木場勇治を抹殺後、海堂及び侑斗と合流。 3:東條は必ず自分が止める。 4:ガドル(名前は知らない)、北崎を警戒 5:五代雄介に一条薫の死を伝える。 6:侑斗を生存させるため、盾となるべく変身アイテム、盾となる参加者を引き入れる。 【備考】 ※変身制限に気づきました。大体の間隔なども把握しています。 ※剣世界の事についておおまかな知識を得ましたが、仮面ライダーやBOARDの事など金居が伏せた部分があります。 ※木場からオルフェノク・スマートブレイン社についての情報を得ました。 ※死者の蘇生に対する制限について、オルフェノク化させる事で蘇生が可能なのではと思いはじめました。 【海堂直也@仮面ライダー555】 【1日目 現時刻:昼】 【現在地:G-6・北部道路】 【時間軸】:34話前後 【状態】:身体の各部に大程度の打撲、怪我。疲労大。激しい怒りと決意。三十分変身不可(ファイズ、スネークオルフェノク) 【装備】:ファイズギア 【道具】:なし 【思考・状況】 基本行動方針:モグラのために「正義の仮面ライダー」となる。 1:木場たちと合流のため、動物園へ向かう。 2:ライダー(アマゾン、歌舞鬼、オーガ、ガイ)の危険性を伝える。 3:危険な仮面ライダーを倒す(殺さない) 【備考】 ※ 澤田の顔はわかりますが名前は知りません。また、真魚の顔は見ていません。 ※ モグラ獣人の墓にはガーベラの種が植えられています。 ※ 第一回放送は知っている名前がモグラのみ、ということしか頭に入っていません。 ※ 変身制限について知りました。 ※ゾルダのカードデッキは破壊されました。マグナギガも倒されました。 【桜井侑斗@仮面ライダー電王】 【1日目 現時刻:昼】 【現在地:F-6・北土手】 【時間軸】:最終回直後 【状態】:深い後悔、強い決意、激しい自己嫌悪。全身に中程度のダメージ、中程度の疲労。 【装備】:神経断裂弾(1発)、ゼロノスベルト 【道具】:基本支給品×2、ゼロノスカード五枚(内一枚赤カード)、ラウズカード三枚(ダイヤK・ブランク二枚)      ショッカー戦闘員スーツ×2@仮面ライダー、ディスクアニマル(ニビイロヘビ)、戦国時代のディスクアニマル(イワベニシシ)      煤けた首輪、双眼鏡、コーヒーセット、デジタル一眼レフ(CFカード)、望遠レンズ 【思考・状況】 基本行動方針:殺し合いの阻止 1:木場に謝りたい。 2:香川、木場、海堂との合流。 3:自分と同じ顔をした少年(桐矢)への疑問。保護が必要ならそうする。 4:ガドル、風のエル(名前は知らない)、北崎を倒す。 5:五代雄介に一条薫の死を伝える。 6:金居の死に後悔。 【備考】 ※変身制限に気づきました。大体の間隔なども把握しています。 ※首輪の損傷具合は不明です。 ※剣世界の事についておおまかな知識を得ましたが、仮面ライダーやBOARDの事など金居が伏せた部分があります。 ※木場からオルフェノク・スマートブレイン社についての情報を得ました。 ※シグザウアー SSG-3000は破壊されました。 【木場勇治@仮面ライダー555】 【1日目 現時刻:昼】 【現在地:E-6・南部道路】 【時間軸】:39話・巧捜索前 【状態】:全身に中程度の打撲。他人への不信感。全身に疲労大、背中等に軽い火傷。二時間変身不可(ホースオルフェノク) 【装備】:なし 【道具】:基本支給品×1、Lサイズの写真(香川の発砲シーン)、サイガギア、トンファーエッジ 【思考・状況】 基本行動方針:??? 1:侑斗に絶望。他人に不信感。 2:香川の危険を伝える。 3:海堂を心配。 4:死神博士、ゴルゴス、牙王、風のエル(名前は知らない)、東條を警戒。影山はできれば助けたい。 5:事情を知らない者の前ではできるだけオルフェノク化を使いたくない。 【備考】 ※香川から東條との確執を知り、侑斗から電王世界のおおまかな知識を得ました。  また、第一回放送の内容も二人から知りました。 ※香川を赤カードの影響で忘れてしまいました。 |077:[[blood]]|投下順|079:[[restart]]| |077:[[blood]]|時系列順|079:[[restart]]| |074:[[Weak and powerless]]|[[十面鬼ゴルゴス]]|092:[[鬼³]]| |074:[[Weak and powerless]]|[[桜井侑斗]]|093:[[時の波]]| |074:[[Weak and powerless]]|[[香川英行]]|091:[[信じるモノ]]| |074:[[Weak and powerless]]|[[木場勇治]]|091:[[信じるモノ]]| |074:[[Weak and powerless]]|[[海堂直也]]|083:[[EGO(前編)]]|
*零れ落ちる闇  ―― EXCEED CHARGE ――  ブティックやCD専門店の並ぶショッピングセンターにて、男性の無機質な電子音が響く。  電子音と共に赤い閃光を引きつれて、黒い影が駆ける。  金のバイザーと赤いラインを持つ黒い強化スーツの仮面ライダー。  ファイズは道路を駆けて、空に浮かぶ赤い異形の怪人へと跳躍した。 「らぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」  ベルトよりチャージされたエネルギーは拳のパンチングマシン、ファイズショットに届き破壊の衝撃を生み出す。  ファイズに変身した海堂は、そのまま赤い異形、ゴルゴスへとグランインパクトを振り下ろした。 「甘いわ!!」  ファイズのグランインパクトをゴルゴスは両腕で受け止め、鬼のような形相でファイズの仮面を睨みつける。  下半身の岩に生える十面の人の顔。うち一つは潰され、九つとなった顔面から炎が吹き出た。 「ぐっ、あちちち、熱っちー」 「そのまま焼け死ねい!!」  殴った反動で地面に落ちていくファイズに向けて、ゴルゴスは炎を浴びせ続けた。  ―― FULL CHARGE ――  電子音と共にゴルゴスの巨体を閃光が貫く。  光の矢を撃ち放った緑のライダーは落ちるファイズを受け止め、ゴルゴスの正面に立った。 「私を忘れてもらっては困りますね」  黄金の列車のレールを模したラインを持つ緑のライダー、仮面ライダーゼロノスとして香川は立ち向かう。  彼の信念を持って、侑斗を生かすために。 「触んじゃねー」  ファイズは乱暴にゼロノスの腕を跳ね除け、しっかりと地面を踏みしめる。  明らかな拒絶の態度に、ゼロノスは仮面の下で怪訝な表情を浮かべた。 「あなたは木場くんの知人ではないのですか? 彼と私たちは協力体制にあります。 戦う際に力をあわせるのは妥当だと判断しますが」 「うるせー! てめーは仮面ライダーなんだろ? 俺は仮面ライダーを認めねえ!!」  ファイズはゼロノスに背を向けたまま、ゴルゴスへと駆けていく。  ゼロノスは冷静に思考しながら、ファイズ……いや、海堂の仮面ライダーへの嫌悪の原因を探る。  ゼロガッシャー・ボウガンモードでゴルゴスを牽制し、神崎が引き起こしたライダーバトルを思い起こした。  あの時ライダーバトルを遂行する意思を持っていたライダーは十一人。  当時集めた情報によれば、手塚や城戸といった例外を除けばそれぞれ己がエゴでライダーバトルに乗ったのだ。  悲しいことに、教え子の東條も含めて。  もしも海堂が今まで出会ったのが神崎の選んだ仮面ライダーのような相手なら、彼の不信感も理解できる。 (つまり、彼を盾として扱うには、仮面ライダーへの不信を拭い去るのが先ということですね)  ゼロガッシャーを組みかえて大剣とし、剣先をゴルゴスへと向ける。  まずはゼロノスの力がゴルゴスにどの程度通じるか計る必要があった。 (場合によっては、桜井くんが使ったゼロフォームになる必要もありますからね)  ゼロノスは再度ゴルゴスに攻撃を仕掛けようとするファイズに合わせて、斬りつけるべく街灯を蹴って跳躍の距離を稼いだ。  ファイズに集中していたゴルゴスは、ゼロノスの接近に対する反応に遅れている。  距離が後数メートルの時点で気づいたが、もう遅い。 「はあぁっ!!」  ゼロノスはゼロガッシャーを横凪に振るう。ゴルゴスの下半身の岩に横一文字の傷が走った。  傷の浅さにゴルゴスの頑強さを確かめ、続けて迫る火炎弾をゼロノスは両腕を交差して身体を庇う。  身体の炎を冷静に消し止め、ゴルゴスの力が並でないことを悟る。 (やはり、使うべきですね)  視線を一瞬ゴルゴスに向けると、ファイズのほうを相手にしているのが見える。  圧倒的力に翻弄されているファイズを冷静に観察しながら、ベルトのゼロノスカードを取り出し裏返す。  侑斗がそうしたようにまた、ゼロノスとなった香川も赤い面が表になったゼロノスカードをベルトに差し込む。  ―― CHARGE AND UP ――  雪のごとく淡く赤い光がゼロノスの身体を赤く染め上げていく。  仮面ライダーゼロノス・ゼロフォームとなった香川は、ゆっくりと銃口をゴルゴスへと向けた。 「こざかしい!!」  ゴルゴスは自身の身体を焼く光線を睨みつけて、忌々しげに吐く。  先ほどは緑だった仮面ライダーは赤と変わっていた。地を走るファイズともども、倒せばいい。  ゴルゴスの力は、自他とも認めるほど強い。押し切る。以前、ファイズとは戦っている。  別のライダーが傍にいるとはいえ、二人の仮面ライダー程度相手にできることは既に経験済みだ。  ゴルゴスはそのまま身体を浮かせた。  巨体を活かした突撃で吹き飛ばす。ゴルゴスが猛スピードでゼロノスへと向かってきた。 「む……」 「死ねぇぇぇぇい!」  轟音が響き、空気が震えた。ゼロノスはゴルゴスの突進に、 「なにぃ!!」 「何とか、受け止めることができたようですね」  吹き飛ばされず、純粋な腕力で止めた。一瞬ゴルゴスは焦るが、すぐに余裕を取り戻す。  なぜなら、身動きが取れないのは相手も同じ。ゴルゴスは嘲るように高笑いを続ける。 「ぐわっはっはっは! だが、キサマも身動きが取れない!」 「ええ、一人なら愚策だったでしょう。一人なら……ね」  ゼロノスの瞳が怪しく輝く。ゴルゴスはゼロノスの言葉の意味を悟り、首を回した。  ―― EXCEED CHAGE ――  ゴルゴスの本能に怖気が走る。反応が遅かったことに気づいたのだ。  赤い光がゴルゴスの視界に入る。三角錐の赤いクリスタルのようなエネルギーがゴルゴスの身体を縛り付けた。  顔の一つが潰されたあの技が迫る。ゴルゴスはどうにか身を捻り、クリムゾンスマッシュの打点をずらした。 「らぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」  ドリル状のエネルギーをまとい、ファイズが赤い閃光となってゴルゴスの岩と化した下半身を貫いた。  φのギリシャ文字が空中に浮かび、ゴルゴスの身体を炎が纏う。  それでも、ゴルゴスの瞳は死んでいない。 「ぬうぁぁぁぁぁぁ!」  咆哮と共に炎とφのギリシャ文字を砕き、ゴルゴスは眼下のファイズとゼロノスを睨みつけた。  鬼のような形相が憤怒によって、さらに赤く染まる。 「キサマら……覚悟はいいな。血を一滴も残さず、殺してくれる……!!」  ゴルゴスの岩に宿る九人の顔から砲撃が始まる。  爆発に翻弄される二人の仮面ライダーを見下ろしながら、ゴルゴスは怒りに任せたままただ破壊を続けた。 □  ショッピングセンターを抜け、廃墟に隠れたファイズとゼロノス。  ようやく二人きりになれたとゼロノスは物陰から牽制しながら、同じようにフォンブラスターで牽制するファイズに話しかける。 「そろそろ私たちに協力をする気になりましたか?」 「だから言っているだろ。俺は仮面ライダーが大嫌いだって!」 「あなたが仮面ライダーを嫌うということは、相応の人物に出会ったのだと推察します。 しかし、私たちもあなた方オルフェノクの中の危険人物と出会っております」 「おめー、なにがいいたいっちゅーんだよ!」 「あなた方オルフェノクの中に、人間の心を保っているように、我々仮面ライダーの中にも英雄的行為を志す者もおります。 いかがですか? 私たちとの共闘、そう悪い提案ではないはずですが?」 「うるせー! あいつは……あいつは…………」  気落ちするファイズの様子を見て、ゼロノスはショックが大きいことを悟る。  ゼロガッシャーの引き金を引きながら、ゼロノスはファイズに視線を一瞬だけ向けた。 「そうやって、駄々をこねるだけで、あなたは仮面ライダーに無念を晴らせると思っているのですか?」 「んだと!」 「私はスマートブレインを打倒し、多くの人たちを救い出します。私の命は、そのための捨石にすぎません」  ゼロノスの言葉に、ファイズが顔を上げる。  確かな覚悟を感じ取ったのか、ファイズが押し黙った。 「あなたはスマートブレインを倒したくはありませんか?」  ゼロノスの言葉にファイズは沈黙したままだった。  わざとらしく、ゼロノスはため息をついて、呆れている様子を演出する。 「そうですか……あなたの気持ちは、ここで駄々をこねる程度にしか過ぎないのでしょうね」  ゼロノスが告げ終えた瞬間、胸倉が掴まれる。明らかに怒りを示すファイズの視線を、涼しげに受け流した。 「もういっぺん言ってみろ……」 「何度も言う必要など、ありません。そろそろ出ましょう。 もし、あなたがスマートブレインを打倒する、という気持ちが本気なら……戦うというのなら、私が囮として出て行きます。 その結果生まれる隙をつくのもいいでしょう」 「俺が出なかったら、どうする気だ!」 「その時は……私が死ぬだけです。結局はその程度の器、ということなのでしょう」 「そういう問題かっちゅーの!」 「……とはいえ、私は死にたくはありません。期待していますよ?」  ゼロノスはもう言うことはないと物陰から飛び出し、光弾でゴルゴスの身体を射抜く。  別に、死ぬつもりはまったくない。ファイズこと海堂を試しているのだ。  今後、侑斗を守り抜く盾として相応しいか。ここで怯むのなら、用はない。この場で文字通り、ゴルゴスの攻撃を受け止める盾として使う。  だが、覚悟を示し、飛び出してくるのなら……今後必要な戦力とする。  これはゼロノスの命をチップにした賭けではない。海堂の価値を計る瞬間なのだ。  ゼロノスは後方のファイズの気配を気にする。できれば、後者のほう、必要な戦力がありがたい。  前者の使い捨ての盾は一度しか使えないが、後者なら仲間意識を持たせれば何度でも盾として使えるからだ。  冷徹ともいえる思考。それこそが香川の考える英雄の理論。  凡人の倫理はそこにはない。ただスマートブレインを潰し、ライダーバトルと似たこの祭りを終わらせる。  鉄のように硬く、氷のように冷たい覚悟があった。 □ 「はあ、はあ、はあ……」  あちこちに被害が広がるショッピング街を抜けて、侑斗は赤い空を浮かぶ怪人、ゴルゴスを見つけた。  肩にかけたまま持ってきたライフルを向けて、スコープを覗き込む。  一条は自分たちを守るために命を落とした。金居は自分が信用せずに命を落とした。  二人分の命が重い。だからこそ、侑斗は覚悟を持ってライフルの銃口を向ける。  下は攻撃を受けるゼロノスが入る。香川が赤のカードを使っていることを確認して、自分の記憶が消えることも覚悟する。  香川には赤カードを使うことによって、誰かが侑斗に関しての記憶を失うことを知らない。  単純に、戦力の底上げとしか認識していないからこそ、使ったのであろう。  自分の記憶を誰かが忘れることに心が痛みを訴える。だが、仕方ないと侑斗は思う。  このバトルロワイアルを潰し、誰かを救うためなのだ。  だから、侑斗は引き金を引く。ゴルゴスの気を引いて、フルチャージの一撃を打ち込む隙を作るために。  侑斗の全身に反動が響き、弾はゴルゴスを掠めた。  ゆっくりと、赤い異形がこちらを向く。 「桜井くん! なぜこちらに来たのですか!?」 「今です! 香川さん!!」  言い終えて、侑斗の地面が爆ぜる。この隙に攻撃してくれ。  侑斗は祈るが、身体が突き飛ばされて砲撃の衝撃から免れた。 「うあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」  侑斗の視界に、吹飛んでいく木場が眼に入る。  また誰か、自分のせいで犠牲になったのだろうか?  侑斗は悔しげにうつむいて、自分に、ゴルゴスに向けて怒った。 □  ファイズは遠のいていくゼロノスの背中を見届けて拳をギュッ、と握った。 (わかんねえ……わかんねえよ……モグラ……)  子供のように純真な瞳を向けるモグラの姿を思い出す。  海堂が最初に出会った仲間。仮面ライダーを正義の味方だと本当に思っていた姿。  無残に、仮面ライダーに首を落とされたモグラの姿と、正義の仮面ライダーを語る姿を交互に思い出す。 『うわ~すごいんだな、かいどーは。俺、尊敬しちゃうよ~』 『困ってる人は絶対に見捨てないし、助けを求める人がいたらどこへだって飛んでいくんだ』 (わかんねえけどよ……)  うなだれているファイズの耳に、銃声が聞こえ現場へと顔を向ける。  若い茶髪の青年と、海堂もよく知る木場勇治が姿を見せた。ゼロノスが明らかに驚いた態度をとっている。  と、言うことは彼等はこの危険な地域に駆けつけてきたのだ。 「あの……馬鹿!!」  ファイズが怒声を上げて地面を蹴る。ゴルゴスが力をためて、岩石に刻まれた九つの顔がうごめいた。 「キサマらから殺してやる! 死ねえ!!」  ゴルゴスの下半身の顔面岩が輝いたと思った瞬間、侑斗の周囲が爆発する。  侑斗を庇った木場を見て、思わずファイズは駆けた。手を必死に伸ばすが、距離は圧倒的に開いている。  そのまま木場が川へと落ちるのを、黙ってみていることしかできなかった。  ボチャン、と派手な音がファイズの耳に入る。わなわなと震えた拳を握り、地面を跳躍した。 「俺様はここだ! ゲドンの獣人野郎!!」  別に、ゴルゴスの容姿をモグラから聞いたわけではない。  だが、モグラを苦しめ、仮面ライダーが戦う相手としての名を叫ぶ。  それは、海堂直也が始めて行う、仮面ライダーとしての戦いであった。  ファイズの脚のポインターから三角錐の赤いエネルギーが降り注ぐ。  ゴルゴスは両腕を交差して、受け止めた。身体が固定されるが、無理やりはじき返す。  そのつもりなのだろう。ファイズはそれを知りながら、エネルギーの内部へと右脚を向けながら飛び込む。 「おらあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」 「小癪な!!」  クリムゾンスマッシュの衝撃と、ゴルゴスの怪力が拮抗する。  押し込むように全身に力を入れるファイズは、この技が通ることを必死で祈った。 (なあ、モグラ……仮面ライダーって、ゲドンの獣人を倒すんだろ? 困っている奴を助けるんだろ?)  ファイズは心の中で、既に死んでしまった仲間に声をかける。  胸がじくじくと、できたばかりの傷口を抉り返すように痛む。  されど、モグラの純真な願いに答えるように、ファイズの蹴りが少しずつ押し進む。 (だったらよ……俺がなってやるよ。俺が…………)  ファイズが気合を込めた瞬間、クリムゾンスマッシュのドリル状のエネルギーが深く突き進む。  ガリガリとゴルゴスの強固な皮膚が削れていった。 「俺が、仮面ライダーになってやる! モグラを殺した奴のような仮面ライダーじゃねえ!! 俺様は、困ってる人は絶対に見捨てないし、助けを求める人がいたらどこへだって飛んでいく。そんな仮面ライダーになってやる!!」  ファイズの宣言と共に、身体が閃光と化してゴルゴムの身体にめり込む。  その光は赤いゴルゴスを…… 「ぬるいわ!!」  貫かず。ファイズは天高く舞い上がった。  ゴルゴスの高笑いが響く。余裕の表情。しかし、ファイズの右腕はファイズフォンのエンターキーを押し込んでいる。  ―― EXCEED CHARGE ――  再び鳴る電子音。赤いエネルギーを引きつれて、再びファイズショットを構えた腕を振り上げる。  かつて、乾巧も取った戦術を、海堂は知らず選択する。目的は…… 「落ちやがれぇぇぇぇぇぇ!!」 「ぬぅ……おおおおおぉぉぉぉぉ!!」  クリムゾンスマッシュのダメージが残るゴルゴスに、グランインパクトの衝撃が炸裂した。  ゴルゴスの全身が大きく震え、滞空していた巨体が力を失って地面へと落ちる。  ―― FULL CHARGE ―― 「なに!」 「へへ……俺様の狙い通りだぜ……」  電子音が轟いた位置には、ゼロノスがエネルギーを溜めている刃を構えていた。  ダメージが残るゴルゴスはなすがままだ。 「よくやりました。私の計画通りです」  ゼロノスは冷静に、エネルギーを宿す大剣を横凪に振るう。  稲妻のごとくほとばしるエネルギーが横一文字に走り、ゴルゴスを貫いた。 □ 「ぐぁぁぁぁぁぁ!!」  ゴルゴスは気合を込めると同時に、再び天へと舞い上がる。  ゼロノスとファイズがまだ余力のあるゴルゴスに驚愕の視線を送っているのを見届け、鬼のような形相を向けた。 「やるな……ここは一旦引いてやるが、次こそはキサマらの血を一滴も残さず飲み干してやる!!」  胸に横一文字に走る、血が滴る傷口を押さえながら、ゴルゴスはすばやくその場を離れる。  ファイズが反応しようとしているが、ゼロノスが押しとどめた。  理由は分からないゴルゴスは、己の力に恐れたのだと考えながら突き進む。  怒りの形相に、ガガの腕輪に一瞬視線を向けて、忌々しげに牙を剥く。 (クソッ……俺が生き残るには、ギギの腕輪が必要なようだな……。アマゾンを探し出して、殺してやる!)  ゴルゴスの怒りは止まらない。  空を駆け、復讐を胸に移動して行った。  そしてゴルゴスは、己がデイバックを落としていったことに気づいていなかった。 □ 「なんで止めたんだよ?」  ゼロノスの斬撃で紐が千切れたデイバックを拾い、ファイズは疑問をぶつけた。  ゼロノスが答える前に、答えがやってくる。ゼロノスの変身が解除され、白衣の中年、香川が姿を見せた。 「変身には制限がかっていて、私たちは十分しか戦えません。あなたは後二分強時間が残っていますが……深追いは禁物です」 「そーかい」  ファイズは戦っている最中に変身が解けたことを思い出した。  そういうことかと納得したまま、首を軽く鳴らす。 「一応、周囲の警戒を引き続きお願いします。桜井くん、怪我はありま……」  香川の声を中断するように、周囲が再び爆発する。  またもや、ゴルゴスが戻ったのかと考えるが、ファイズは十分の制限を思い出し、それはないと判断する。  視線を向けた先には、緑のロボットのようなモンスター、マグナギガが砲身をファイズに向けていた。 「ここは一旦退きますよ」 「……いや、俺が残る」 「な、お前!」  ファイズの言葉に侑斗が反応するが、ファイズは鬱陶し気に手を振った。  とっとと行け、と言外に告げて、マグナギガの正面に立つ。まだ、モグラに誓った仮面ライダーの仕事は終えていない。 「木場を頼むわ。あいつ、俺様がいないと何にもできない奴だからな。 せめて、俺様と合流するまで頼む。な?」 「そんなふざけた頼み、聞けるか! そのベルトを貸せ! 俺があいつを倒……」 「それは無理です。桜井くん、このベルトをつけるには、条件があるのですから」  香川の言葉に、侑斗はうつむいて歯を食いしばる。ファイズはその様子を邪魔そうに見つめながら、二人を守るように立つ。  その背中に、確かな覚悟があった。 「安心しろ。俺様は、正義の味方…………」  それはある未来の話だ。照夫という少年がいた。  海堂が助けた少年だ。施設に預けられて少年はいじめられ、偶然それを目撃した未来の海堂が助けることとなる。  その時と同じく、ファイズは右腕を左方向にまっすぐ伸ばし、天を介して反対方向へと向ける。  腰に止めていた左腕と交代するように右腕を引き、左腕を右方向へとまっすぐ伸ばした。  そのポーズは、偶然にも『仮面ライダー1号』の変身ポーズと酷似していた。 「『仮面ライダー』だからな!」  ファイズの、海堂の宣言が響く。満身創痍なその身でも、決して戦いの意志を曲げない。  いや、本当は逃げ出したかった。いつものようにお調子者らしく、去りたかった。  それでも、胸に宿る重さが逃げることを許さない。 (これいいんだよな? モグラ……)  海堂の祈りが、天に眠るモグラへと向けて呟かれた。 「……海堂さん、でしたよね?」 「ああ? 早く行けっちゅーに」 「……私たちは木場くんを探して、北へと向かいます。その後動物園と向かいますので、そこでお会いしましょう」 「へいへい。覚えておくよ」  ファイズは言い捨てて、マグナギガへと向かった。香川はその場にある、デイバックをすべて持つ。  ゴルゴスと木場が落とした物も、もっていく。何が役に立つかは、分からないからだ。  香川は後ろ髪を引かれるような思いをしているであろう、侑斗を無理やり引っ張って地面を蹴る。  それにしても、ファイズ及び海堂は仲間に欲しい逸材だ。  戦い慣れしたその動き。ファイズとしての力。仲間を守る正義感。  いずれも侑斗を守る盾として申し分ない。 (ここは生き延びてくださいよ。我々が、スマートブレインを打倒するために……)  香川のメガネの縁が光る。  その肩に、ライフルを担いで。それもすべて、侑斗を、ゼロライナーの道を守るために。 □  川から上がった木場は、どうにか身体を起こして近くの木へと背を向ける。  大きくため息をついたと同時に、重くなったまぶたを閉じる。  傷ついた身体は休憩を欲していた。  木場勇治に睡魔が訪れる。 (海堂……無事かな……? 桜井くん……)  どこか、乾巧を髣髴させる、出会ったばかりの青年を思い、木場の意識が闇へと落ちる。  やがて沈黙が訪れた。  風が穏やかに木場の髪をなで、静かに揺らす。  その一時だけ、凄惨な戦いから隔離されたような空間が形成された。 □ 「らあぁぁぁぁぁぁぁ!!」  ファイズは気合一閃。猛打をマグナギガの胸部へと繰り出す。  ミラーモンスターでも特に装甲の厚いマグナギガを相手では、拳を痛めるだけだった。 「いってぇ~」  ひりひり痛む手を振りながら、ファイズは正面で胸部の装甲を展開するマグナギガを目撃する。  ミサイルが並んだ火薬庫を前に、背筋に悪寒が走った。 「ちぃっ!」  ファイズがジグザクに走り、迫るミサイルをどうにか避ける。  爆風と衝撃が届くが、ひたすら無視してファイズは怪我で痛む身体に鞭を打って進む。  ―― EXCEED CHARGE ――  エネルギーを携えた拳をマグナギガの頭を殴打する。  たたらを踏んで後退するマグナギガの、閉じそうになる火薬庫に向けてすばやくファイズフォンの106キーを押した。  ―― Burst Mode ――  赤い光弾の三連射を火薬庫に撃ち込む。  盛大な爆発と共に、要塞のような強固な雰囲気を持つマグナギガが、初めて揺らいだ。 (しゃっあ! 決めるぜ!)  ファイズの変身時間は残り少ない。おまけに、マグナギガの身体に粒子があがり、鏡へと向かおうとしている。  逃がしてたまるか。そう思考するファイズに、マグナギガは後退しながら右腕の砲口を向けてきた。  あれを食らえばまずい。ファイズはとっさに判断して、地面を蹴って跳躍する。  マグナギガの砲弾が放たれた。同時に、ファイズフォンのエンターキーを押し終える。  ―― EXCEED CHARGE ――  向けた右足から放たれる赤い光が、ギガランチャーの砲弾とぶつかり、迫り勝つ。  鏡の世界へと逃げようとしたマグナギガを、赤い光が三角錐の形を展開して押しとどめる。 「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」  ファイズのクリムゾンスマッシュが、焼け焦げた胸部を後方の割れたショーウィンドウごと貫いた。  息も荒く膝と右手を地面につけるファイズの背中で、マグナギガがφの一文字と共に、青い炎を吹き上げて灰となる。  その灰もやがては粒子となり、消えていった。 「どうだ……ちくしょう! モグラ、俺は……勝ったぞー!!」  ファイズの変身が解けた海堂は、勝利の雄たけびをあげる。  ただ単純に勝った事実に酔い、死んだ仲間を思う。ある意味、お調子者の彼らしかった。  同時に仲間思いの、見捨てようとして見捨てきれない、彼らしくもあった。 「……へ……。木場、今俺様が駆けつけて……やる…………って、あれ……?」  歩みを進めようとした海堂が、ふらりと膝を崩した。  疲労がたまりすぎて、一歩も動けないらしい。立ち上がろうとする意思とは反対に、海堂はそのまま倒れ伏す。  やがて、海堂から寝息が聞こえてきた。  風が爽やかに吹き、勝利の美酒に酔いしれる戦士を祝福するように、髪を優しく撫でた。 □  木場を探して侑斗は走る。香川は念を入れて、周囲を警戒するように何度か呼びかけていたが、聞いている余裕はなかった。  侑斗の必死な態度に呆れたのだろうか。  香川はライフルを構えながら、周囲を警戒して進んでいる。侑斗は香川には何度感謝してもし足りないと思いながら、川原を走り続けた。  侑斗は今まで出会った人たちのことを思う。  一条薫、金居。いずれも自分のせいで死んでしまった人たちだ。  ゼロノスの力をうまく使っていれば、死ぬことはなかったはずだ。  侑斗の脳裏に浮かぶのは、戦うことを楽しそうに語る北崎や、ギリギリでしか食いつけなかったガドル、そしてゼロフォームでようやく撃退した鳥の怪人。  いずれも侑斗は名を知らない。ただ殺人者を取り逃がした。その意識がある。  負け続け、人を犠牲にし続けたのは、侑斗自身が弱いせいだ。少なくとも、彼自身はそう思っている。  そして、自分たちを助けるためにあの場に残ったファイズと化した男。  彼の願い、木場勇治を救うために侑斗は駆ける。最も…… (俺のことは覚えちゃいないだろうがな)  香川より返された、ゼロノスベルトを見つめる。仕方のないことだとは言え、香川は赤カードを使った。  しかし、香川も海堂も、侑斗のことを忘れた形跡がない。と、なると木場が侑斗の記憶を失った。  そう考えるのが自然だ。 「見つからない……」  かれこれ、一時間以上は探している。ゼロノスの制限も解けているかどうか、ギリギリの時間だ。  新たに増えた荷物を抱えて、侑斗はひたすら前を見て歩く。  やがて、気を背にこちらを見つめている人影を見つけた。  木場勇治。  立ち上がってこちらを見つめている。侑斗は無事を喜び、駆け寄ろうとした。 「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」  木場の顔にホースオルフェノクの顔が影となって浮かぶ。  水が崩れるような音と共に、木場の身体が揺らいでホースオルフェノクへとなる。  突然のことで驚いた侑斗が反応する間もなく、ホースオルフェノクは侑斗の傍を通り抜けた。  侑斗が振り返ると、ライフルを真っ二つに斬られ、衝撃で川へと落ちる香川が見える。  侑斗はあまりに不可解な展開に、呆気にとられた。  時は木場が目覚めたころ、五分ほど前に遡る。  仲間と合流しなければ、と考えた木場の胸元から、一枚の写真がひらりと落ちた。  香川がライフルを構えている姿。  無謀な侑斗を止める時に、目撃した一枚の写真だ。  そんな木場に、侑斗が視界に入る。赤カードの影響を受けた彼は、胸に宿る感情のままにホースオルフェノクへと変えた。 (あのままでは、桜井くんが撃たれる!)  『彼ら』の不幸は四つ。  一つ目は、香川が赤カードの弊害を知らなかったこと。  赤いカードは記憶をさび付かせた、代償を持って始めて使える力だ。  誰も傷つけない、何も失わせない、その覚悟持った侑斗が得た力だった。  二つ目は、侑斗が己の記憶が失う、と思い込んでいたこと。  ゼロノスベルトは侑斗以外が使う機会がなかった。  ゆえに、赤いカードは侑斗の記憶しか奪わない。他の者が変身した際に、侑斗でなく変身者が記憶が消える、ということを経験していなかった。  三つ目は、金居の遺産。  もともと彼が疑心をばら撒き、不要になった香川と侑斗を労力を少なく始末するための手段。  持ち主を失った罠が、香川の記憶を失った木場へと渡ってしまった。  四つ目は、香川が周囲を警戒していたゆえ、携えていたライフルが、偶然銃口を侑斗に向けてしまい、それを木場が目撃してしまったこと。  香川は木場と会話を果たしている。彼が味方であるゆえ、ライフルの銃口の向きなど気にしていなかった。  とはいえ、さすがに味方に長時間向ける気はない。数秒、銃口が侑斗に向かっていた。その事実が、香川の記憶を失った木場を突き動かした。  そう、侑斗を守るために。 「よかった……無事で」  変身をとき、安堵した表情で木場は侑斗に振り返る。  その瞬間、頬が強打され尻餅をついた。いきなりのことで、木場は驚愕に満ちた視線を侑斗へと向ける。 「何が……無事でだよ! 香川さんにいきなり斬りかかってきやがって……おかしくなったのかよ!」 「俺は、君を守ろうとしたんだ! 君が撃たれないように……」  木場は状況を説明するが、侑斗の表情はますます険しくなっていく。  説明すれば分かってもらえる。そう考えて次々と言葉を重ねるが、届いていないことを実感する。  焦る木場は、胸元から例の写真を取り出した。これを見れば理解してもらえる。  希望に縋るように侑斗へと突きつけた。 「これを見てくれ! あの人はライフルを発砲したことがあるんだ。今回君に銃口が向きそうになっていた。 きっと君を撃とうと狙っていたんだ……信じてくれ! 桜井くん……!!」  木場が思いを吐き出しきった刹那、再度侑斗の拳が木場の身体を吹き飛ばした。  信じてもらえない。絶望が木場に訪れる。 「…………行けよ……」 「……俺は、人を守るために……この力を……」 「うるさい! お前の声なんて、化け物の声なんて聞きたくない! 行け!!」  侑斗はこいつはくれてやる、とデイバックを一つ投げつけて、背を向ける。  香川を、ライフルを向けた男を捜すと告げられて、木場は弱々しくデイバックを取った。  侑斗が信じてくれない。自分を化け物だと見ている。  ハンマーで殴られたようなショックを受けて、木場はふらふらとその場をあとにした。  侑斗は怒りに燃えるまま、香川を探すために川を辿っていった。  まるで木場が香川のことを綺麗さっぱり忘れたような態度に怒り、所詮は北崎と同じ化け物だと心の中で罵る。 (……香川さんを、忘れたような……?)  そういえば、侑斗自身を木場は忘れていなかった。ゼロフォームへとなった香川を思い出し、不可解だった一つの事実が侑斗の中でつながる。  赤いカードによって引き起こされた悲劇だと気づいた時、侑斗は木場がいた地点へと走っていった。  辿り着いた現場で、息も荒く周囲を探すが、木場の姿は見えない。 (俺のせいじゃないか……)  赤カードの弊害を香川に伝えていれば、こんなことは起きなかった。  ゼロノスベルトを香川に貸さなければ、こうはならなかった。  自分が香川の記憶を、木場が失うことをに気づいていれば、こうはならなかった。 『うるさい! お前の声なんて、化け物の声なんて聞きたくない! 行け!!』  蘇るのは、自分が言った拒絶の言葉。人の心を抉る罵倒。  侑斗の胸に後悔が押し寄せる。 「全部……俺のせいじゃないか…………。う……く……」  侑斗は今度は声に出して呻く。涙は流さない。  ただ、己の過ちを無限に悔い続けた。 □ (私としたことが、見誤りましたか……)  香川は川より上がり、疲労した全身を引きずって目の前に見えるホテルへと向かう。  身体を休めるのに相応しい場所へとやってこれたのは幸いだ。 (誠実な青年だと思っていたのですが、よもやこのバトルロワイアルで人を殺すことを決意していたとは。 桜井くんには、ゼロノスベルトを返していたのであの場は何とかなるでしょう)  赤カードの弊害を知らない香川にとって、木場は突如襲ってきた殺人者としか判断しようがなかった。  殺人者としては不可解な点も見えたが、不意打ちを狙っていたと考えれば納得できないこともない。 (やはり、オルフェノクは敵と見るのが正しいのでしょうね。あの、海堂という青年を除いて)  同じオルフェノク、という餌に釣られ、木場に騙されているのだろう。  香川はそう結論付けて、目を細める。静かな決意がそこにはあった。 (彼ら、海堂くんと桜井くんに再会する前に、済ませておかねばならないことができましたね。 そう、木場勇治なる青年の抹殺。騙す人間が消えれば、騙された人間は害を受けない。 変身道具も武器も今はありませんが、私にはこの知能がある。木場勇治、覚悟してください。あなたは私が始末します)  このバトルロワイアルを潰すために。  香川は口の中で呟いて、ホテルへと入っていった。 □ 「つう……俺様、ひょっとして寝ていたのか……?」  海堂が呟いて、身体を見下ろした。節々が痛み各所に傷がある。  痛みに顔をしかめながらも、海堂の顔は晴々としている。 「なあ…………モグラ。俺は出会った仮面ライダーたちは最悪だと思う。復讐を誓うのも、しょうがないだろ? けど、俺様は決めたぜ」  海堂は拳を振り上げて、太陽と固めた拳を重ね合わせる。  死んだ仲間に示すように。 「正しい仮面ライダーになってやる! 間違っている仮面ライダーをちぎっては投げ、ちぎっては投げて、マシな仮面ライダーとして戦ってやるぜ!」  だから見ていてくれ。心の中で呟いて、海堂は立ち上がる。  そういえばと、香川が言っていた合流場所を思い出した。 (しょうがねえな。あいつらは俺様がいないとなーんにも出来ねえんだからな。俺様が何とかしてやるぜ。待っていな!)  満面の笑顔を浮かべた海堂は、傍から見ると仲間と合流でいるのが嬉しくてしょうがないように見えた。  たとえ、その内面が否定していても。  彼が向かう先に仲間はいない。それでも、海堂は希望を胸に進み続けた。  新たな決意、仮面ライダーとなることを決めて。 「うう……俺は……」  木場は力なく、当てもなく彷徨い続ける。  海堂と合流することも考えたが、彼が現在どこにいたのかは知らない。  それに、侑斗に『化け物』と呼ばれたことが悲しくてたまらなかった。  両親を、恋人を、すべてを失ったあの日を思い出す。  木場は人を憎しみで殺してしまった。だからこそ、人を殺すことをやめさせたいと決意した。  けれども、誰も彼も『人間』は木場を、オルフェノクを拒む。  またも、闇がささやいた。オルフェノクとなった日に、木場の中で蠢く憎しみが蘇る。  人を殺すことこそが、オルフェノクになった者の運命という声を、木場自身の心が生み出した。  木場の持つデイバックの中身が少し覗く。  それは、侑斗が間違えて渡したゴルゴスのデイバック。  支給品は人間の形をしておらず、オルフェノクでもないゴルゴスには無用の長物だったもの。  天のベルト、サイガドライバーとトンファーエッジが、木場を闇に誘うように、妖しく蠢いた。  木場勇治と海堂直也。  彼らは未来にて、互いに真反対の道を歩みことになる。  二人がそれぞれの未来において、バトルロワイアルでも同じ結末をたどるのか、ファイズとサイガのベルトしか知らなかった。 **状態表 【十面鬼ゴルゴス@仮面ライダーアマゾン】 【1日目 現時刻:昼】 【現在地:G-6・駐車場】 【時間軸】:本編13話前後 【状態】:胸に一文字の傷。全身打撲。ダメージ大。疲労大。三十分戦闘不可。 【装備】:ガガの腕輪 【道具】:なし 【思考・状況】 基本行動方針:打倒仮面ライダーアマゾン、主催者への報復 1:いずれ仮面ライダー(ゼロノス・ファイズ)を殺し、血を吸う。 2:アマゾンを見つけ次第殺す。腕輪を奪う。 3:牙王、死神博士、影山は最終的に殺し、血を吸う。 【備考】 ※岩石の9つある顔のうち一つが潰されました。 ※能力制限について思い当たりました。 【香川英行@仮面ライダー龍騎】 【1日目 現時刻:昼】 【現在地:E-6・中部ホテル前】 【時間軸】:東條悟に殺害される直前 【状態】:深い後悔、強い決意。全身に中程度のダメージ、中程度の疲労。三十分変身不可(ゼロノス) 【装備】:なし 【道具】:なし 【思考・状況】 基本行動方針:殺し合いの阻止 1:木場勇治の抹殺。そのために身体を休め、英気を養う。 2:木場勇治を抹殺後、海堂及び侑斗と合流。 3:東條は必ず自分が止める。 4:ガドル(名前は知らない)、北崎を警戒 5:五代雄介に一条薫の死を伝える。 6:侑斗を生存させるため、盾となるべく変身アイテム、盾となる参加者を引き入れる。 【備考】 ※変身制限に気づきました。大体の間隔なども把握しています。 ※剣世界の事についておおまかな知識を得ましたが、仮面ライダーやBOARDの事など金居が伏せた部分があります。 ※木場からオルフェノク・スマートブレイン社についての情報を得ました。 ※死者の蘇生に対する制限について、オルフェノク化させる事で蘇生が可能なのではと思いはじめました。 【海堂直也@仮面ライダー555】 【1日目 現時刻:昼】 【現在地:G-6・北部道路】 【時間軸】:34話前後 【状態】:身体の各部に大程度の打撲、怪我。疲労大。激しい怒りと決意。三十分変身不可(ファイズ、スネークオルフェノク) 【装備】:ファイズギア 【道具】:なし 【思考・状況】 基本行動方針:モグラのために「正義の仮面ライダー」となる。 1:木場たちと合流のため、動物園へ向かう。 2:ライダー(アマゾン、歌舞鬼、オーガ、ガイ)の危険性を伝える。 3:危険な仮面ライダーを倒す(殺さない) 【備考】 ※ 澤田の顔はわかりますが名前は知りません。また、真魚の顔は見ていません。 ※ モグラ獣人の墓にはガーベラの種が植えられています。 ※ 第一回放送は知っている名前がモグラのみ、ということしか頭に入っていません。 ※ 変身制限について知りました。 ※ゾルダのカードデッキは破壊されました。マグナギガも倒されました。 【桜井侑斗@仮面ライダー電王】 【1日目 現時刻:昼】 【現在地:F-6・北土手】 【時間軸】:最終回直後 【状態】:深い後悔、強い決意、激しい自己嫌悪。全身に中程度のダメージ、中程度の疲労。 【装備】:神経断裂弾(1発)、ゼロノスベルト 【道具】:基本支給品×2、ゼロノスカード五枚(内一枚赤カード)、ラウズカード三枚(ダイヤK・ブランク二枚)      ショッカー戦闘員スーツ×2@仮面ライダー、ディスクアニマル(ニビイロヘビ)、戦国時代のディスクアニマル(イワベニシシ)      煤けた首輪、双眼鏡、コーヒーセット、デジタル一眼レフ(CFカード)、望遠レンズ 【思考・状況】 基本行動方針:殺し合いの阻止 1:木場に謝りたい。 2:香川、木場、海堂との合流。 3:自分と同じ顔をした少年(桐矢)への疑問。保護が必要ならそうする。 4:ガドル、風のエル(名前は知らない)、北崎を倒す。 5:五代雄介に一条薫の死を伝える。 6:金居の死に後悔。 【備考】 ※変身制限に気づきました。大体の間隔なども把握しています。 ※首輪の損傷具合は不明です。 ※剣世界の事についておおまかな知識を得ましたが、仮面ライダーやBOARDの事など金居が伏せた部分があります。 ※木場からオルフェノク・スマートブレイン社についての情報を得ました。 ※シグザウアー SSG-3000は破壊されました。 【木場勇治@仮面ライダー555】 【1日目 現時刻:昼】 【現在地:E-6・南部道路】 【時間軸】:39話・巧捜索前 【状態】:全身に中程度の打撲。他人への不信感。全身に疲労大、背中等に軽い火傷。二時間変身不可(ホースオルフェノク) 【装備】:なし 【道具】:基本支給品×1、Lサイズの写真(香川の発砲シーン)、サイガギア、トンファーエッジ 【思考・状況】 基本行動方針:??? 1:侑斗に絶望。他人に不信感。 2:香川の危険を伝える。 3:海堂を心配。 4:死神博士、ゴルゴス、牙王、風のエル(名前は知らない)、東條を警戒。影山はできれば助けたい。 5:事情を知らない者の前ではできるだけオルフェノク化を使いたくない。 【備考】 ※香川から東條との確執を知り、侑斗から電王世界のおおまかな知識を得ました。  また、第一回放送の内容も二人から知りました。 ※香川を赤カードの影響で忘れてしまいました。 |077:[[blood]]|投下順|079:[[restart]]| |077:[[blood]]|時系列順|079:[[restart]]| |074:[[Weak and powerless]]|[[十面鬼ゴルゴス]]|092:[[鬼³]]| |074:[[Weak and powerless]]|[[桜井侑斗]]|093:[[時の波]]| |074:[[Weak and powerless]]|[[香川英行]]|091:[[信じるモノ]]| |074:[[Weak and powerless]]|[[木場勇治]]|091:[[信じるモノ]]| |074:[[Weak and powerless]]|[[海堂直也]]|083:[[EGO(前編)]]|

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