駆ける海堂

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駆ける海堂


「あ、あの…」
風谷真魚はやや早足で歩いている。
この暗闇で僅かに灯された希望、澤田亜希と少しでも離れないように。
澤田は真魚の事など気にする様子も無くずんずんと先へと進む。
実際どうでもいいと思ってるのかもしれない。
澤田から話しかけられたことと言えば名前の事くらいのもので、今は無言だ。
外灯もまばらな暗い道をただ黙って進むのは、キツイ。
「あの…っ!」
キツイだけではなく疑問もあるから、澤田の考えを聞きたいのだ。
何故わざわざ市街地から遠ざかる道を進んでいるのか。
「あのっ、澤田s…くん!」
少し強く呼びかけてようやく澤田の足が止まり、振り返ってくれた。帽子の影に隠れて目元は見えない。
「どうしたの?…疲れた?」
少しでも心配してくれたのだろうか、気にかけてくれた事を嬉しく思いつつも真魚は疑問をぶつける。
「あの、どうしてこの道なんですか?市街地から遠ざかってるように思うんですけど…」
最後の方は呟くようになってしまう。考えてみれば自分が勝手について行っているだけだ。
それなのにどこに向かっているのか聞くのは、前進の邪魔をするのは迷惑では?

もしも「ついて来ないで」等と言われたりしたら?
澤田は別について来いともついて来るなとも言ってはいない、だがもしも明確に拒否されたら。
不安に心が押しつぶされそうになる。
恐怖心を知ってか知らずか、1分ほどの沈黙の後、澤田は答えた。
「街中は危ないと思うんだ。この殺し合いに乗った連中が集まってくるかもしれない」

殺し合い。
そんな言葉を聞いただけで背筋が凍る思いだ。確かに真魚の世界でもアギトとアンノウンの戦いはある。
だが人と人との殺し合いだなんて、先ほど見た戦いでは人と怪物の戦いではあったが…
何故同じ人同士で戦わなくてはいけないのか、それほどまでに魅力的なのだろうか。
この殺し合いの勝者に与えられる賞品が。他人を殺してまで叶えたい願い等あるのだろうか?
自分にはとてもじゃないが理解できそうにない。
「顔色悪いみたいだけど…少し休む?」
澤田の優しい言葉が素直に嬉しい。そんな澤田に迷惑をかけたくはなかった。
「いえ、大丈夫です…あ、あの、私、邪魔じゃないでしょうか?」

強がりの言葉に続いてつい、漏れてしまった。答えが、澤田から返される答えが怖い質問を。
何故聞いてしまったのだろうか?怖いがそれでも聞きたかったのだ、澤田の答えを。

「別に…邪魔じゃない、一緒に来たければ来なよ。休みたくなったら言ってくれれば休むし」
恐怖心が少し薄れた気がした。思わず、ほんの一瞬ではあるが戦いを忘れた。
ただ…と澤田は付け加えるように言葉を続ける。

「君の身を護れる保障はしないよ。俺だって何があるかわからないし。支給品は確認した?」

澤田の言葉で支給品の存在を思い出す、もしかしたら何か使えるものがあるかもしれない。
慌てて自分のデイパックの中身を確認して、悲しくなった。
「へぇ?よかったね、それなら君でも使えそうだ」

澤田はそう言ったが、自分にはこれはハズレだ。これは殺し合いだ、そう改めて宣告されたような気がして。
真魚でもわかる、これがどういった物で、どう使うのか。
外灯の人工的な光りに照らされて、真魚の手の中で支給品であるその銃は鈍く光っていた。

   *   *   *

暗い道を進む。後ろには先ほどから女が(風谷真魚とか言ったか?)付いてくる。
「あ、あの…」
どうせ自分を頼っているのだろう。
どう解釈したのかはわからないが、少なくとも自分が殺し合いに乗っていないと考えて。
(馬鹿なやつ…)
思わずそう呟く。所詮人間は何かに頼らないと生きていけない弱い生物なのだ。改めて確信する。
自分は違う。人間の心を捨て去り、完全なるオルフェノクとなってみせる。
その為にこのゲームに参加したのだ、このような場を用意したスマートブレインには素直に感謝したい。

「あの…っ!」
しかし先ほどから後ろがやたらと五月蝿い。一々声を上げられると他の参加者にばれてしまうかもしれない。
大方今どこに向かっている等のくだらない質問だろうが…
「あのっ、澤田s…くん!」

いい加減邪魔になってきたし、これ以上騒がれる前に答えてやったほうがよさそうだ。
振り返ると少し疲れているように見える。少し早足過ぎたか?
「どうしたの?…疲れた?」

一応声を掛けてやるとそれだけで嬉しかったのだろうか、少し笑顔になったように見える。

「あの、どうしてこの道なんですか?市街地から遠ざかってるように思うんですけど…」

予想通りの質問をぶつけてきたのがなんとも滑稽に感じた。別に考え無しに市街地を離れているわけではない。
このゲームに乗る奴は少なからずいるはずだ。そいつらは恐らく人が集まりやすそうな市街地を目指す事だろう。
なら勝手に潰しあえばいい。その道中でも多くの人間を殺す事はずだ。
俺は市街地を離れながら、道中に会う参加者を殺す。そして隠れている参加者を探し出し、殺す。
今進んでいる場所の先には森林がある。隠れるにはもってこいと言える場所だ。何人かはいると踏んでいる。
隠れているからには大した力を持っていない参加者のはず。初めのうちはそんな奴らを狙う事にする。
序盤から強者と戦っていけば無駄な消耗をする。あの赤い奴との戦いでそれを実感した。
勝ち残るためには無駄な消耗だけは避けたかった。
「街中は危ないと思うんだ。この殺し合いに乗った連中が集まってくるかもしれない」

もっともらしい理由をつけたが真実の所は無力な人間を虐殺したいだけなのかもしれない。
それはオルフェノクとしての本能なのか自らの本性なのかは自分にもわからなかった。
真魚の顔がみるみる青くなっていくのが見て取れた。殺し合いという言葉に過敏に反応したのだろうか。

「顔色悪いみたいだけど…少し休む?」
できれば休まず進んでいきたい所ではあるが、真魚に無理をさせるのはまずい。
いざという時に咄嗟の反応を取れず、それが仇となって殺されてしまっては悔いが残る。
真魚は最後の仕上げなのだ。その時までは護ってやろう、自分のために。

「いえ、大丈夫です…あ、あの、私、邪魔じゃないでしょうか?」
邪魔だなんてとんでもない、最後の最後まで一緒にいてもらうと決めたのだ。
「別に…邪魔じゃない、一緒に来たければ来なよ。休みたくなったら言ってくれれば休むし」

よほど嬉しかったのだろうか、先ほどのような笑顔が見える。依存されすぎるというのも考え物なのだが…
最低限の自衛手段は持っていて欲しいものなのでそろそろ支給品の事を思い出させてやることにする。

「君の身を護れる保障はしないよ。俺だって何があるかわからないし。支給品は確認した?」

もしもカイザギアのように変身できる物なら自分が装備しておいた方が良いだろう。
制限の都合上変身手段が多ければ多いほど有利だ。
だから、真魚のデイパックから顔を覗かせた物にはガッカリさせられた。

「へぇ?よかったね、それなら君でも使えそうだ」

ただの拳銃。自分にはハズレだ。真魚の自衛手段という意味では、アタリか?
弱い人間には丁度いいか。
銃を見つめ続ける真魚を見つめる澤田の目にはある種哀れむような感情さえ浮かんでいた。

川のせせらぎと風の音に混じり、話声が聞こえた。その声は徐々に近づいてくる。
声が聞こえたのは五感の発達したオルフェノクだからこそなのだろうか?
真魚は気づいた様子も無く未だ手の中の銃を見つめている。
話声から察するに相手は恐らく二人、三人グループといったとこか。
距離があるようだがこのまま進めばすぐにでも鉢合わせるだろう。

「風谷さん、ここで待ってて。今声が聞こえたから…ちょっと先の様子を見てくる」

自分のデイパックを真魚に任せ、カイザギアを手にし先へと進む。
待ち伏せ等も考えたが、相手は少人数と判断し正面からぶつかる事にした。
カイザに少しでも慣れるためだ。慣れるためには純粋に力でぶつかっていく方が手っ取り早い。
少し進むとコンクリートで造られた橋が見えてきた。橋の中央で立ち止まり、じっと耳をすます。
話声も少しずつはっきりとしてきた、ご対面まであとわずか、か。

―…し、…ーく!モ…せぇなー!
―か、か…ーが……よ~

どうやら二人組みのようだ。声からして男二人。
贅沢を言えば一人一人と戦いたい所だが、構わない。
相手次第だができるだけ長く戦いたい。長く戦い、少しでもカイザに馴染みたい所だ。

澤田はこれから来るであろう二人を待ち構えた。獲物をじっと待つ蜘蛛のように…


          *   *   *

「…ってなわけでよー、木場や長田はけ~っきょく俺様がいないと駄目なわけよ!」
「うわ~すごいんだな、かいどーは。俺、尊敬しちゃうよ~」

妙にテンションが高い男とそれに付き添う赤いさつまいも…もとい怪人。
テンションの高い方は海堂直也、怪人はモグラ獣人という微妙にちぐはぐなコンビである。
海堂の武勇伝?を聞きモグラが憧れる。そんな無意味な事を繰り返しながら二人が目指すは市街地。
何故市街地かと言えば森の方に進めば先ほど吹っ飛ばした赤鬼獣人とまた遭遇するかもしれない。
それにモグラ獣人はアマゾンを探しているのだ。
『人探しするなら人に聞くのが一番!人が集まる場所?そりゃ市街地だろう!』
という海堂の提案により市街地を目指し二人は外灯もまばらな道路を進んでいるわけだが…

「どうした?かいどー」
不意に立ち止まった海堂につられて思わずモグラは立ち止まる。
「そういやお前は何支給されたんだ?」

そう、支給品だ。自慢話に夢中で確認どころか存在すらすっかり忘れていたのを唐突に思い出したのだ。
「支給品?そういや俺調べるの忘れてたなぁ~、いやぁ~流石かいどーだ」
モグラの微妙にずれた褒め言葉も海堂には嬉しい限りだ。もっと、もっと俺に賛辞を!

「ん~っとね、水に食料に地図にライト。コンパスに筆記用具に双眼鏡とカードが3枚。
 それに花の種…あ、これで終わりだ」
「なんじゃそりゃ!お前はボーイスカウトかっちゅうに!」

道路に並べられた支給品に思わず海堂もツッコミをいれる。
確かスマートレディの話だととってもスペシャルな便利グッズと言っていた。
てっきり武器か何かかと思っていたが違うようだ。双眼鏡は確かに便利グッズではあるが。

「双眼鏡って言っても何見るんだよ、バードウォッチング?この夜で?」
妙にゴテゴテした双眼鏡で海堂は辺りを見渡している。
一方のモグラは海堂を気にする事なく道路に並べた支給品を丁寧に戻し、花の種を手に取って考える。
「しかし、これ何の花だろうなぁ?かいどー、何の花だかわかるかい?」

パッケージに花の写真があるのだがあいにくモグラはそういった知識に疎い。
写真だけで無く名前も書いてあればよかったのだがあいにくそこまで気のきいたパッケージではなかった。

「あ?しらんしらん、花の事なんかしらん。お、月のうさぎさん!」
「そっかー、咲いたら綺麗なんだろうなぁ…アマゾンやまさひこに見せてやりたいなぁ…」

双眼鏡に夢中な海堂はモグラの話もろくに聞かずにいたが
モグラは特に気にする様子も無く花の種を大事そうにデイパックの奥へと仕舞い込んだ。
「そういやかいどーは何支給されたんだい?」

ピタ、っと海堂の動きが止まる。モグラは海堂はとっくの昔に支給品は確認してると思い聞いてみたのだが…

「…あー、俺の、はな。うん、すげーぞ?」
「本当かい?ちょっと見せておくれよ~」

思わず見栄を張ってしまうのは海堂の悪い癖なのだろうか。
双眼鏡をモグラに渡し海堂はここにきて初めてデイパックを漁り始めた。

「おーれーのーはーねー…。これ!…だ?」
基本支給品とは違う三つの物をデイパックから確認しシャキーン!と口で言いつつ海堂は取り出した、が。

「…フリスビー?」
「違う、CD。あー、CDでもないかもしれん」

モグラはCDの事等知らず、海堂も海堂でなんでこんなものが3枚も入ってるのか疑問である。
嫌な予感がしてデイパックを漁るが他には何も無い。つまり、この3枚のCDがスペシャルな便利グッ…

「ざけんなー!」

海堂は全てのCDを適当な方向に投げ捨てた。怒りを、悲しみを、様々な感情を込めて。
CDと双眼鏡にカード。おまけに花の種で戦えと言われれば誰もが捨て鉢になるというものではあるが。
モグラが慌てて投げ捨てられた3枚のCDを拾い集めてくる。まるで飼い主のボールを拾ってくる犬のようだ。

「おいおいかいどー、これすごい物なんだろ?勿体無いよ。」
モグラは丁寧に拾い集めたCDと双眼鏡を海堂に手渡した。

「いやいやいや、双眼鏡はお前のだろ?お前が持ってろよ」
「かいどー、それ気に入ったんだろ?俺、使えそうにないから。かいどーが使っておくれよ」

確かにモグラの顔や腕の造りを考えると使用するのは少し難があるだろうが…

「あー、そっか。…あんがとな」

海堂はモグラの優しさが少し嬉しかった。
「あー…そういや花の種、だっけか?見せてみろよ」
もしかしたら、わかるかもしれない。そう思いモグラから花の種を受け取り、パッケージの写真を睨む。

「んー、駄目だ。花の名前なんかやっぱ俺にはわかんねーや」
「そっかー…ちゅちゅ~ん…」
「いや、でも綺麗そうな花じゃねぇか、お前の鼻の花にちょっと似てるぜ?」
寂しそうな鳴き声を発したモグラを海堂が思わずフォローする。

「そ、そうかな?俺の鼻に似てるのはちょっとどうかと思うけど、やっぱり綺麗な花だよな~」
「そうそう!綺麗な花!こんな花が咲くといいな!ていうか咲かせる!」
花の種をモグラのデイパックに押し込むと海堂は自分のデイパックを肩に下げ、意気揚々と宣言する。

「そして俺達はでっかい太陽となり、あの大空で燦然と輝くのだっ!」

夜空に向かっていってもいまいち決まらない台詞であった…
「俺モグラだから太陽とかちょっと苦手なんだけど…」
「ば、ばっきゃろう。弱気?になるんじゃない、
 もっと明るくいこうぜ!そうでないとアマゾンにも会えないぞ!」
アマゾンという言葉にモグラも顔を上げ、頷く。

「そ、そうだよな~、俺だって頑張るんだ!頑張ってゲドンやスマートブレインをやっつけてやるんだ!」
「ようしその意気だ!モグラ!あの橋まで競争だ!あの橋で二つ目だから、目的地は近いぞ!」
「競争ならまけないぞー、かいどー!」
二人は走り出す。この殺し合いの場には似合わないほど明るく、元気に、健やかに。
体力の差かはたまた足の差か。橋まで競争の結果は海堂の勝利に終わった。
「よーし、いっちゃーく!モグラおせぇなー!」
「か、かいどーがはやすぎるんだよ~」
少し息を切らせながら二人は橋を渡ろうとして、足を止める。
「あぁ?誰だおめぇ?こんな所で何ボーっと突っ立ってんだ?」

橋の丁度真ん中辺りに男、いや、少年が立っているのだ。
海堂はどこか見覚えがある気がするが思い出すには至らない。
「あ、そうだ。ちょっと訊ねたいんだけどアマゾンって知らないかな、
  緑の服と腕輪をつけてるような奴なんだけどー…」

不用意に少年に近づくモグラを止めようとして、海堂は気づく。少年の腰に巻いてあるベルトを。
そして少年の右手に握られている携帯を。
何か、タイムリミットを刻む音のように、3回音が鳴り、電子音声が鳴り響く。
「に…」
海堂は知っている。この音を、このベルトを、この装着者…は未だに思い出せないが。

―――Standing By―――

「逃げるぞ…」
「え?どうしたんだよ、かいどー」

この後宣言される言葉も、聞こえる電子音声も簡単に予想できる、だから…

「逃げるぞモグラーッ!!」
「え、えぇ!?」
「変身…」

―――Complete―――

モグラへの警告もそこそこに海堂は少年に背を向けて走り出した。
「あ、あわわ、おいてかないでくれよ~、かい…ちゅちゅ!?」
走り出した海堂に慌てて付いていこうとモグラは少年に背を向けた。
咄嗟に走り出そうとしたせいか足をもつれさせモグラは思わず転んでしまう。
転ぶ寸前に背中に焼けるような痛みを感じた。斬られた、そう理解するのに随分と時間が掛かった。
闇に紛れそうだった少年は今は闇夜を照らす黄のライダーへと変わり、倒れこんだモグラを踏みしめた。
「逃げないでよ、かいどー…だったっけ?」

カイザブレイガンを倒れこんだモグラの首筋に当て、海堂の逃亡を止める。
海堂は動きを止め、ゆっくりと振り返る。ライダーへと変身した少年、澤田にはその顔に覚えがあった。

「ん…?なんだ、木場勇治のお仲間の海堂か」

以前木場勇治を襲った際に連れ添っていた仲間の一人、澤田にとって海堂はその程度の認識であった。

「逃げたら、このモグラを殺す」

低い声でそう宣言する。
丁度いい相手だ。オルフェノクとして戦った時はあっさりと川に落としたがカイザの力ならどうなのか?
それに武器らしい武器もなかったはずだ。本当に丁度いい相手…

「モグラ…っ!――――じゃ!」

右手を挙げて軽やかに海堂は去っていった。

「そ、そんな…かいどーー!?」

まさか構わず逃げるとは思ってもいなくカイザもモグラもポカンとしていたが、先に動いたのはモグラの方だった。
素早く起き上がりカイザの胴体にパンチをぶち込む。カイザが怯んだ隙に距離を取りデイパックを投げ捨てた。

「俺だってゲドンの獣人、モグラ獣人だ!そう簡単にやられてたまるかい!」
「ちっ…まぁ、誰でもいいけど」

折角相手がやる気になってくれているのだ。カイザブレイガンを仕舞い、素手でモグラ獣人と向かい合う。

「ちゅちゅ~っ!」
図体のわりになかなか速いモグラ獣人の体当たりをガッチリと受け止め、自然と腕四つの体制になる。
「…っ!」
「ちゅちゅ~…っ!」
背中の傷も影響しているのだろうか、互角と思われた力比べも次第にモグラ獣人が劣勢となっていく。
「こ、これしきで~…っ!?」
不意打ちのカイザの頭突きがモグラ獣人の鼻先にヒットし、思わずモグラ獣人の力が抜ける。
ついには倒れこみカイザにマウントポジションを取られてしまった。

カイザが殴る。
「ちゅっ!」
カイザがモグラ獣人の顔目掛けて殴る。
「ちゅ…っ!」
カイザがモグラ獣人の顔目掛けて力いっぱい殴る。
「ちゅ…!」
カイザがモグラ獣人の顔目掛けて、自分の力を楽しむように、ただ殴る。
「ちゅん…」

1ダースほど殴り終えたところでようやくカイザの動きが止まり、立ち上がる。
ミッションメモリーをカイザフォンから引き抜きカイザブレイガンへと装填させる。
――Ready――
一方のモグラ獣人はようやく地獄が終わったのかと安堵する。
気力だけでフラフラながらも立ち上がるが、すぐにその動きは拘束された。

―――Exceed Charge―――

光の拘束により身動きが取れないモグラ獣人はただただカイザが迫り来るのを見ている事しかできなかった。
(アマゾン~、まさひこ~…俺、もう駄目みたいだ…)
諦めたモグラ獣人の左肩に訪れる、衝撃。
何事かと思えば迫ってきたはずのカイザははるか前方に吹き飛ばされており、代わりに目の前に立っていたのは…
「かいどー!」
モグラ獣人を護るように、灰色の魔人がそこにいた。

――ほんの少し時は遡る――


モグラを見捨てて逃げ出した…のはいいが海堂は結局さほど離れてない場所で様子を見ていた、が。

―俺だってゲドンの獣人、モグラ獣人だ!そう簡単にやられてたまるかい!

モグラの威勢の良い声が響く。

(なんだ、大丈夫そうじゃねぇか…)
「あ~あ、心配して損した」

わざわざ声に出して海堂はその場を離れようとする。モグラなら大丈夫だ、そう信じて。
今度また会えるかどうかはわからない、最後に一目見ておこうと橋の方を振り返ると、誰も橋の上にいない。
不審に思い双眼鏡を用いてよくよく見てみれば、モグラがカイザに組み伏せられているのが見えた。

(たくっ、しょうがねぇなぁ…)
渋々助ける、自分にそう言い聞かせ海堂は橋へと足を向け…
モグラが光に包まれるのを見た。

「っと、本気でやべぇじゃねぇか!」
とぼとぼ歩きが全力疾走に変わり、顔には蛇の紋様が浮かび上がる。
人の身体がオルフェノク特有の灰色の肉体へと変貌していく。
勢いそのままにジャンプし、モグラの肩を踏み台にしカイザへとヤケクソ気味のとび蹴りを決めた。
突然の攻撃にカイザはなす術も無く吹き飛ばされ、カイザギアもその衝撃で吹き飛ばされた。
「かいどー!」
光の拘束からようやく解き放たれたモグラが歓喜の声を上げる。

「かいどー、助けに来てくれたんだね!俺本当に嬉しいよ!」
「ば、ばっきゃろう!お、俺は別に寝覚めが悪くなるから助けただけだ!」

カイザの変身が解除された澤田はオルフェノクの紋様を浮かべようとして…

「そらよっ!」

海堂、いやスネークオルフェノクから飛ばされたCDのような物を顔面にぶつけられ悶絶した。

「さーて、どう落とし前つけてもらおうかねー?」

弁髪のような頭の飾りをくるくる回しながらゆっくりとスネークオルフェノクが未だ悶絶している澤田に近づく。
そのスネークオルフェノクの足元が突然爆ぜた。
何事かと思い海堂達が辺りを見回すと反対の岸の暗闇に銃をもった人影が見えた。

「ちっ、連れがいたのか…モグラ!逃げるぞ!」
「ま、待ってくれよかいどー!」

先ほどとは違い今度は二人揃って橋を離れ暗闇へと身を隠す。
逃げる拍子に半開きになった海堂のデイパックから双眼鏡のようなものがポロリと落ちた。
橋の上にはカイザギアとCD、双眼鏡。そして気が抜けたような澤田だけが残された。

          *   *   *

「澤田くん、大丈夫!?」

少し経ってから、真魚が暗闇から姿を現し澤田の元へと近づく。

「大丈夫、だよ…」

吹き飛ばされたカイザギアと何かのCDを拾い上げ澤田は答える。

「風谷さんのおかげで助かったよ…ありがとう」

心にも無い感謝の言葉を述べる。
真魚が来なければオルフェノクの力を解放し、恐らくはあの二人を逃す事はなかっだろう。
或いは、最初から全力でかかれば少なくともあのモグラの方は殺せたに違いない。
苛立ちからか気づかぬうちに下唇を噛んでいた。

「あの、ごめんなさい…私、澤田くんの言う事無視して…うぅん、一人でいるのが怖くなって。
 それで様子を見に来たら澤田くん倒れてて…助けなきゃって…」

叱られた子供のようにしょげる真魚に澤田は何か言うべきか迷っていたが…
結局何も言わず荷物をまとめようとして、気づく。
見慣れぬ双眼鏡が橋の上に落ちている。拾って観察してみるとカイザブレイガン等との共通性が見て取れた。
CD一枚とカイザポインター。ないよりかはマシ、程度の収穫だった。
澤田は考える。
次からは参加者を確実に殺すため、全力で向かっていく。その為に支給品も惜しまず使う。
そして…真魚を必ず護る。時間が経てば経つほど自分の中で真魚の存在はより一層大きくなるだろう。
その存在が自分の中の大部分を占めた時、自らの手で殺す。
そうすれば人間の心を捨てられ、完全なオルフェノクになれる。
それまでは自分がオルフェノクになる所を見られ、真魚に逃げられるのはまずい。
カイザギア以外の変身道具が欲しい所だった。


真魚は思う。
橋の上にいた怪物二人、それにショッピングセンターで『見た』灰色の怪物。
おそらく参加者全員が人の皮を被った怪物なのだろう。まともなのはきっと自分だけに違いない。
そんな中で、澤田は助けてくれた。優しくしてくれた。
澤田と少しでも離れるのが怖い。失うのが、怖い。
離れないよう、少しでも長く澤田の傍にいられるように、と…


状態表


【1日目 黎明】
【現在地:F-6 川に架かった橋近く】
【澤田亜希@仮面ライダー555】
【時間軸】:34話・真理再生前
【状態】:全身に軽微なダメージ カイザに2時間変身不能
【装備】:カイザギア
【道具】:基本支給品、通話発信可能な携帯電話、不明支給品×4(澤田と天道の二人分・本人確認済み)
   ライダーベルト(カブト)、ディスクアニマル(アカネタカ)、カイザポインター
【思考・状況】
1:参加者を皆殺しにして自分が完全なオルフェノクであることを証明する。
2:風谷真魚を殺すのは最後の仕上げ。先に他の参加者を殺す。
3:なるべくオルフェノク態で戦う事を避けるためカイザギア以外の変身装備が欲しい。
【備考】
※能力制限等のルールについて、あらかじめ大まかに知らされています。
※第一回放送を聞き損ねたため、禁止エリアを知りません。
※澤田の携帯電話は特別仕様のため、通話の発信機能が生きています。
 現在の所、通話可能な相手は主催者(村上社長・スマートレディ)のみです。

【1日目 黎明】
【現在地:F-6 川に架かった橋近く】
【風谷真魚@仮面ライダーアギト】
【時間軸]:31話・サイコキネシス発現後
【状態】:健康、精神的ショック。激しく動揺。
【装備】:なし
【道具】:基本支給品一式x2(真魚・天道)、コルトパイソン@クウガ(小消費)
      不明支給品(本人確認済み)、首輪(天道)
【思考・状況】
1:澤田についていく。なるべく離れたくない
2:怪物だらけのこの世界に対する恐怖。
2:帰りたい。でも、どこに帰ればいい……?
【備考】
※サイコメトリーで見えた灰色のモンスターの正体は天道=カブトだと思っています。
※制限もしくは心理的な理由で超能力が不完全にしか発揮できません。
 現状では、サイコメトリーで読めるのは断片的なイメージだけです。
※灰色の怪物(海堂)と赤い怪物(モグラ)は殺し合いに乗っていると思っています。




前息を切らせて地べたに座り込むのは既に変身を解いた海堂、そしてモグラだ。

「はぁ…はぁ…もう、もういやだからな!俺様は絶対に助けないからな!」
「そ、そんなぁ…でも助けてくれてありがとう、かいどー。
 これで助けてもらったのは二度目だぁ。本当に、ありがとう」

一度逃げた事を何も責めずに礼を言うモグラの態度に思わず背中が痒くなる。

「ちゅうかなんなんだよ…赤鬼といいさっきのといい…ついてねぇな、俺達…」

ほんの少し白みがかった空を見上げながら、自分と同じ境遇の木場や長田の顔を思いだす。

「あー、ちくしょう。なんか無性にあいつらの顔見たくなってきたっちゅーか、疲れたっちゅーか…」

そのまま海堂は寝転がり、しみじみと思った。

――人の心を持ったオルフェノクは楽じゃねぇな――、と。



【1日目 黎明】
【現在地:G-7】
【海堂直也@仮面ライダー555】
【時間軸】: 34話前後
【状態】:健康。オルフェノクに2時間変身不能
【装備】:なし
【道具】:基本支給品、ディスクアニマル(ニビイロヘビ)、戦国時代のディスクアニマル(イワベニシシ)
【思考・状況】
1:モグラ獣人と一緒に行動してやる。できる範囲で。
2:モモタロスに会ったらとっちめる。
3:モモタロスとカイザの危険性を会った奴に伝える。

【1日目 黎明】
【現在地:G-7】
【モグラ獣人@仮面ライダーアマゾン】
【時間軸】: ゲドン崩壊前
【状態】:顔面殴打による負傷、背中に裂傷。2時間能力発揮不可
【装備】:なし
【道具】:基本支給品、ガーベラの花の種、赤いゼロノスカード×3
【思考・状況】
1:海堂についていく。
2:アマゾンに会いたい。
【備考】
※携帯電話の内容を自分の目で確認してはいません

【その他共通備考】
※モモタロスを獣人だと誤解しています。
※澤田の顔はわかりますが名前は知りません。また、真魚の顔は見ていません。

028:それぞれの場合/NEXT STAGE 投下順 030:決断の刻は目の前に
028:それぞれの場合/NEXT STAGE 時系列順 023:クローズド・サーキット
001:Fiat Lux 澤田亜希 039:太陽背負う闘神
001:Fiat Lux 風谷真魚 039:太陽背負う闘神
011:出るか?モモ獣人の必殺技! 海堂直也 041:正義のためなら鬼となる
011:出るか?モモ獣人の必殺技! モグラ獣人 041:正義のためなら鬼となる
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