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薔薇銀の恋愛相談……趣旨が完全に変わったが

高校生と言えば、恋の話に華が咲くお年頃。
薔薇学といえどもそれは例外ではなく。
一人の恋する乙女が、恋愛相談にやってきていた。

銀「……私ぃ、好きな人がいるんです」
暗室の中、ぼんやりと浮かんだ影と水晶玉。
水銀燈は、学校一当たるという占い師の元に来ていた。
占「……それで、相手は?」
目深く被ったフードによって、その表情は見えないが。
水銀燈がイメージしていたのより遙かに若く、愛らしい声だった。
銀「同じクラスの……桜田ジュン君です」
水晶に水銀燈の顔が映し出される。不安そうな表情が。
占「そう、それは何時から?」
銀「中学の頃からです。何度かアプローチしたんですけど、彼気付いてくれなくて」
身体をわざと密着させたり、それとなく仄めかしたりはしてみた。
だがJUMは恥ずかしがったり戸惑ったりするだけだった。
嫌われている様子もないし、脈がないわけではないのだろうが……
占「そうですね――ズバリ言うわよ」
銀「え?」
占「アンタ死ぬわよ……じゃなかった。アナタ、現実を見てはどう?」
銀「現実?それってどういう……」
占「その桜田君、私も見たことあるけど、結構な人気があるようね」
ドキリとした。確かに、JUMの周囲には一部女子が集まってくる。
まさか、ジュンはその中の誰かのことが……?
占「アナタ、私から見ても魅力的だけどね」
銀「はぁ……ありがとうございます」
占「脈のない相手より、身近であなたのことを想ってくれる人はいないかしら」
なんて残酷なことを言うのだろうと、そう思った。
だが一理ある。思えば、ずっとジュンのことばかりを追っていた。
そのせいで視野狭窄に陥っていたのかもしれない。
ジュンのことは確かに好きだが……本当に、一番なのだろうか。
占「アナタの相を今見たけれど。近いうち、悪いことが起こるかもしれないわ」

ショックだった。占いを受ければ、幸せになれると思っていた。
見せられたのは優しい幻想ではなく、厳しい現実。
でもそれが逆にありがたかった。少し、自分を見つめなおしてみよう。

……暗室の中、占い師は歯軋りをする。
先程の客と、その話についてずっと考えていた。
ぎりぎりぎりぎっりぎりぎりぎりぎりぎり
憎い。あまりにも憎憎しい。あの男が、桜田ジュンが憎い
ぴしり、水晶玉に罅が入る。掴んだそれを、床に向かって叩きつける。
――少女の純真弄ぶ桜田ジュン、許すまじ!!


策を練りながら廊下を歩く占い師。そこを雛苺が通りがかった。
雛「占い師さん、どうしたの?」
占「……お嬢さん、うにゅぅは欲しくないかな?」
雛「うにゅぅ欲しいの~」
占「それじゃあ、少しだけ私の言うことを聞いてくれない?」
占い師が、嗤った。雛苺も、笑った。

翌日
銀「ジュン~おはよ……う?」
凍りついた。周囲で焔が燃え上がっている中、水銀燈は凍りついた。
雛苺が、ジュンにべったりと抱きついている。
雛「ジュン~好きなの~」
J「ちょ、やめろよ。どうしたんだよ急に。皆見てるだろ!!」
雛「え~?ジュンは雛のこと嫌いなの?」
J「き、嫌いじゃないよ。でもちょっと近すぎるっていうか、胸。胸が」
ベ「ん?お前巨乳が好きだって前言ってたろ。良かったな」
J「よ、良くねえよ!!確かに好きだがってお前何を言わせ」

氷点下まで冷え込んだ。今、何を言った?
巨乳が好き。巨乳が好き。キョニュウガスキ……
ああ、漸く理解した。
アレだけラブコールを送っても彼がなびかなかったわけ。
要するに、カラダに魅力が足りなかったのか。
そしてそれと同時に、ジュンも所詮はオスだと認識する。
冷えていく。心が冷めていく。なんだか、哀しくなっていく。

薔「どうしたの、水銀燈?」
冷めた視線で二人を見ていると、薔薇水晶が声をかけてくる。
薔「なんだか、寂しそう?」
ああ、この娘はよく気がついてしまうのだ。
普段から仲良くしているから、些細な変化も見逃さない。
薔「何か辛いことあったの?嫌なことがあったの?」
銀「違うのよ薔薇水晶。違うの……」
慰められたら、泣きそうになってしまうじゃないか……
薔「嫌なら何も言わないでいいよ。私はいつでも、水銀燈の味方だから」
にっこりと微笑んで抱き締めてくれる薔薇水晶。
ああ、占いは当たっていた。よく当たる占いだ。
私のことを見てくれている人が、こんなにも側にいた。
この娘と一緒なら、私は生きていける。
感謝しながら、少しだけ薔薇水晶の胸に抱かれて、泣いた。

――水銀燈からは、見えない位置。薔薇水晶が、ニヤリと嗤った。

雛「占い師さん、言われたとおりにやったよぉ~」
占「ご苦労、これは報酬のうにゅぅです」
雛「わ~い。ありがとうなのぉ~」
喜びながら走り去っていく雛苺を見て、占い師はほくそ笑む。
フードの奥から、薄紫の長髪の束が覗く。
さあ、次で仕上げだ――。

……
J「ふぅ……なんだったんだ今日の雛苺。まあ、確かに悪くなかったが」
思い出してJUMが笑う。なんというのか、ある意味役得なのだろうか。
校庭を歩いていると、上から声が聞こえた。
「おーい」
見上げてみれば、窓から見えるベジータが手を振っている。
なんだか顔色が良くないというか、白目を剥いているが。
J「どうしたんだーベジー」
JUMは気がついた。ベジータの手に、何故か花瓶が握られていることを。
そして気付いたときには、花瓶は手を離れ、重力に従い落下してきていた。
寸分違わず、脳天に直撃。だらだらと流血しながら、JUMは意識を失った。

翌日から凄まじい勢いで噂が広がっていた。
「桜田君入院したらしいわよー」
「なんでもベジータがやっかみで桜田君を殺して自分も死のうとしたとか」

教室の盛り上がりには関係なく、水銀燈は薔薇水晶を猫かわいがりしていた。
その表情に翳りはもはやない。何か吹っ切れたのか、心から幸せそうだった。
薔薇水晶もされるがままに、幸せそうだった。

数日後、意識の回復したベジータは語る。
ローブを被った謎の占い師に襲撃された、と。
さしたる証拠も見つからず、記憶の混濁かでっち上げだと判断された。
また、学園のよく当たると評判の占い師は、以降ぱったりと姿を消した。
そのことから一部では、本当に犯人は占い師かもしれないとも噂された。
が、ベジータには人望がなかった為大凡の人間は犯人だと思っている。
ジュンは幸いなことに一命を取り留めた為、ベジータは辛うじて停学で済んだ。

薔「銀ちゃん」
銀「何、薔薇水晶?」
薔「私ね、世界で一番銀ちゃんが大好きだよ!!」
以降、二人の笑顔が絶える事はなかった。
水銀燈が笑えば、薔薇水晶も嬉しそうに嗤った。

END