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*東條悟のお料理教室 照りつける太陽の下、コンクリートで舗装された道路は、熱を帯びて独特の匂いを放っていた。 砂利の入り混じった地面を、二つのタイヤが転がるように回り、一つのマシンを動かしていく。 「凱火」と呼ばれるそのバイクは、後方に穏やかな空気の渦を作りながら操縦者を運んでいった。 速度は大して出ていなく、むしろ自転車などといった移動手段と変わらないのではないか、といった程だった。 「ふふ……いい天気ですね。先生……」 眩しそうに目を細めながら空を見上げ、凱火の持ち主――東條悟は、独り言を発した。 普段から、あまり明るいとは言えない性格の持ち主である彼が、大空を仰ぎ、微笑さえ浮かべたのには理由があった。 少し前に自ら殺害した協力者、金居。彼の情報を伝えられたその時から、テンションは下がることを知らずにいた。 (先生が、あれだけ近くで見ていてくれたなんて……) この手で殺すと決めた恩師、香川英行その人が、自分の正義をすぐ近くで見物していた。 その気になれば、いつでも殺しにかかれる程、手の届く距離で。その事実を思い出すと、今でも身体が震える。 なんとも言えない気持ちが全身を支配し、東條は宙に浮いたような、高揚した気分になった。 バイクの速度を緩め、周りの風景を楽しみながら走る余裕すら、今の東條にはあった。 「先生……必ず、必ず僕が殺しますから……そう、僕を否定したあいつと一緒に…………っ!」 急ブレーキをかけ、後ろを振り返る。その表情からは、すでに笑顔は消えうせていた。 無意識に口から出るまで、すっかり忘れていた。そう、元はといえば、自分を英雄ではない、と言い放ったあの男を殺すために、あそこまで探しに向かったのだ。 そこで起こっていた戦闘に乱入したのだが、油断による仕留め損ない。意外な強敵による苦戦。三つ巴という乱戦による疲労。 そして……香川がすぐ傍にいたという、現実。その全てが起因した事によって、目的を失念してしまったのだろう。 「どうしようか……」 今まで来た道を不機嫌そうに見つめ、東條は呟く。瞳は黒く冷たく、殺意の色を宿していた。 顔はしっかりと覚えている。あれほど自分を――英雄となるべき自分の存在全てを認めようとしなかった男の顔を、忘れるはずもない。 出来れば戻って探し出し、今すぐにでも殺したい。だが、と思いなおす。 (もうあそこから離れて、少なくとも一時間……いるわけない、か……) 小さくため息をつき、そう東條は結論づける。今の今まで思い出せなかったことを、自嘲気味に笑いながら。 だが、もう決して忘れはしない。何があろうと見つけ出して、次こそ確実に殺す。 そう考える東條の顔には、またも微笑みが浮かぶ。だが、先ほどとは違い、どこか陰があるその笑顔は、間違いなく狂気を孕んでいた。 ############################# 「うん、ここがいいかな」 大き目の岩の下に立ち、東條は言った。自分も隠れて休める上、多少へこみもあるのでバイクを隠すのにもうってつけだった。 日よけになるのも意外に助かる。道路からもさほど離れてなく、通行人を不意打ちすることも可能であるという事実も、東條は気に入っていた。 自分の失態に気付いたことで、上場だった気分は落ち着きを取り戻していた。同時に、自分が無防備に近い状態だという事にも気がついた。 先ほどの乱戦で、自分がもつカードデッキは二つとも使用していたのである。変身による制限で、今は両方沈黙しているはずだ。 試しに、タイガのデッキをサイドミラーにかざしてみたが、ベルトは現れなかった。 (もしベルトが出ても、デッキをセットしなければいいだけだけど……面倒だな……) その行動により、確信する。自分は今、間違いなく「狩られる側」であると。丸腰で襲われたら一たまりもないだろう。身を隠し、しばらく休むことを東條は決める。 道路から離れ、川の近くまで来たところで、手ごろな岩を見つけ、現在に至る。 岩に持たれかけたバイクの横に座り、東條は一息つく。すぐ横からオイルの香りがただよい、鼻を刺激する。 あまり気持ちのいいものではないが、贅沢はいっていられない。距離をあけて座れば、自分かバイクのどちらかが道路から目視できてしまうかも知れないからだ。 走らせ続けて熱を放つバイクの横にあるデイパックに目が留まり、東條は数秒思考が停止する。しばらくして、腹の虫が鳴いた。 「あ。そういえば……」 ここに連れてこられてから、あまり食料を口にしてないことを思い出す。魅力のある報酬に突き動かされ、体を酷使していたからだ。 休息の時がきて、ようやく東條はデイパックの中身を確認することになったのだ――食欲によって。 中から出てきたのは、いかにも保存食料といった、粗末な物だった。だが、東條は特に気にもせず口に入れてゆく。 味や質など東條には関係がない。ただ、体力の回復と、自身の体調を整えるために、食事をとる。英雄として、勝ち残るために。 多少腹を満たしたところで、もう一度デイパックの中身を漁る。飲食料があった場所より、更に奥深く。 変身できない状態の自分には、護衛手段が必要だ。最初に集められたあの部屋で、妙に派手な女性が言っていた。 ――最初に配ったデイパックには、色んな道具が入っている――と。 タイガという自分の力さえあれば十分だと思っていたが、最早それだけでは難しいだろう。 生き残るために、どんな手段も選んではいられない。銃やナイフなら、無防備を装って一瞬で終わらせることも可能だろう――デッキを使わずとも。 変身アイテムが出てくれば、それだけでかなり有利になるのだが…… 「さすがにそれは高望みのしすぎかな……おっと」 少し自分を諌めながら、デイパックを漁り続ける東條の手に何かがあたった。 引き抜いた時に零れ落ちたペットボトルや缶詰を中に戻しつつ、手に取った物体をみる。長方形の木箱が、厳重に包装されたものだった。 少しずつ紐解き、わきあがる埃を手で払いつつ、慎重にあけていく。 封されていたものを全て取り除き、ゆっくり蓋を開ける。そこで東條が見たものは… 「あ!……錆びてる……」 赤く錆び付いた、菜切り包丁だった。とある蕎麦屋の秘伝の包丁なのだが、東條本人は知る由もない。 ご丁寧にも、デイパックの中にはしっかりと砥石も入っていた。傍に「しっかり砥いでね」とハートマークのついたメモも添えられて。 わざわざ錆びたものをよこさずとも、新品のものを送ればいいのに……そう東條は考えたが、突然何かを閃き、顔を上げる。 「そうか……これを砥ぐ根性も無いものは、英雄になる資格がないという事なんだね……」 突拍子もなく思いつき、それが正しいと東條は思い込む。勿論、それが間違いだという事に突っ込みを入れられる人物は存在しない。 川が近くにあることをこれ幸いと、東條は砥石と錆びた包丁を持って歩く。そして、英雄となるために、包丁を心を込めて砥いだ。 ########################### 赤錆が下流に流れていく様子をしばらく眺め、手元の包丁を確認する。 光を反射してか、それとも意外にも鋭い切れ味のためか、先ほどとは打って変わって白く輝いていた。 これなら適当なナイフなんかよりも、殺傷能力が高いのかも知れない。東條は、期待していなかった分、意外な掘り出し物に心躍らせていた。 すぐにでも性能を試したい気持ちを抑え、時間を確認する。砥ぎ始めてから数十分は経っていたようだ。間もなく放送も始まるだろう。 先生なら大丈夫だと思うが、それでも多少なり気にはなっている。それなら、せめて死者を確認してから動き回るとしよう。東條はそう決めて、携帯を弄る。 名簿には、自分が知る人物は大して多くはないようだ。今生きている中では、城戸と香川ぐらいだろう――もっとも、今回の放送で呼ばれるかも知れないが。 大した収穫も無く携帯を閉じようとしたとき、「地図」とされるファイルを見つける。東條は何の疑いも持たずそれを開き、現在地を確認した。 「ふーん……禁止エリアかぁ……」 そういえば、最初の放送でそんなことを言っていた気もする。このまま北に進むと、そこに突入するところだったようだ。 こんなぎりぎりの距離で気付くことが出来た運を、天が自分を生かそうとしているのだと、東條は嬉しく思う。 ともあれ、このまま進むことはままならなくなった。戻るのも悪くはないと思うが、先生がいたという建物にはなるべく近寄りたくはない。 禁止エリアを迂回するなり別の方角に進むなりは、放送が始まってから決めよう。そう考えて、今度こそ東條は携帯を閉じる。 先ほどから手に持っていた包丁の水滴を払い、岩陰へと歩を進める。足元に付着した水滴が、歩くたびに輝いた。 同時に手中にある菜切り包丁が、鈍く、美しく煌いた。まるで、本来料理に使われる道具が、凶器として扱われる事実を嘆くかのように。 ――刃物を握る手で人を幸せに出来るのは、料理人だけだ―― かつてそう言った男がいたように、刃物に心があるとすれば、人を殺めるなどということは望まないのかも知れない。 だが、その想いはきっと東條には届かないだろう。何故なら東條は、この殺し合いに勝ち残り、自分が英雄となることで、全ての人間が幸せになると信じている。 凶器を握るその手で、全ての人を幸せに導こうとするその男は、目の前の刃物の鋭さをただ見つめていた。 傍目には――中身もさして変わらないのだが――ただの殺人鬼であるその行為に、本人は気付かない。 放送が始まるまでの間、東條はただただ包丁を見つめ続けていた。 **状態表 【F-5 中央  川と道路の間 】【昼】 【東條悟@仮面ライダー龍騎】 [時間軸]:44話終了後 [状態]:中程度のダメージ。疲労小程度。 [装備]:カードデッキ(タイガ、ガイ)、田所包丁@仮面ライダーカブト、「凱火」(Valkyrie Rune) [道具]:基本支給品×2、サバイブ烈火@仮面ライダー龍騎、首輪(芝浦、金居) [思考・状況] 基本行動方針:全員殺して勝ち残り、名実共に英雄となる 1:『ある程度の力を持つ参加者を一人でも多く間引く』 2:できれば最後の仕上げは先生(香川)にしたい 3:殺した奴の首輪をコレクションするのも面白い。積極的に外す 。 4:木場(名前は知らない)に自分が英雄であることを知らしめる為、自らの手で闘って殺す。 5:可能なら包丁で殺害する。 備考 ※東條はまだ芝浦の特殊支給品(サバイブ烈火)を確認していません ※東條がどこへ向かうかは、後続の書き手さんに任せます。 |081:[[継ぐのは魂]]|投下順|083:[[EGO(前編)]]| |081:[[継ぐのは魂]]|時系列順|083:[[EGO(前編)]]| |070:[[裏切りはすぐ傍に]]|[[東條悟]]|000:[[後の作品]]|
*東條悟のお料理教室 照りつける太陽の下、コンクリートで舗装された道路は、熱を帯びて独特の匂いを放っていた。 砂利の入り混じった地面を、二つのタイヤが転がるように回り、一つのマシンを動かしていく。 「凱火」と呼ばれるそのバイクは、後方に穏やかな空気の渦を作りながら操縦者を運んでいった。 速度は大して出ていなく、むしろ自転車などといった移動手段と変わらないのではないか、といった程だった。 「ふふ……いい天気ですね。先生……」 眩しそうに目を細めながら空を見上げ、凱火の持ち主――東條悟は、独り言を発した。 普段から、あまり明るいとは言えない性格の持ち主である彼が、大空を仰ぎ、微笑さえ浮かべたのには理由があった。 少し前に自ら殺害した協力者、金居。彼の情報を伝えられたその時から、テンションは下がることを知らずにいた。 (先生が、あれだけ近くで見ていてくれたなんて……) この手で殺すと決めた恩師、香川英行その人が、自分の正義をすぐ近くで見物していた。 その気になれば、いつでも殺しにかかれる程、手の届く距離で。その事実を思い出すと、今でも身体が震える。 なんとも言えない気持ちが全身を支配し、東條は宙に浮いたような、高揚した気分になった。 バイクの速度を緩め、周りの風景を楽しみながら走る余裕すら、今の東條にはあった。 「先生……必ず、必ず僕が殺しますから……そう、僕を否定したあいつと一緒に…………っ!」 急ブレーキをかけ、後ろを振り返る。その表情からは、すでに笑顔は消えうせていた。 無意識に口から出るまで、すっかり忘れていた。そう、元はといえば、自分を英雄ではない、と言い放ったあの男を殺すために、あそこまで探しに向かったのだ。 そこで起こっていた戦闘に乱入したのだが、油断による仕留め損ない。意外な強敵による苦戦。三つ巴という乱戦による疲労。 そして……香川がすぐ傍にいたという、現実。その全てが起因した事によって、目的を失念してしまったのだろう。 「どうしようか……」 今まで来た道を不機嫌そうに見つめ、東條は呟く。瞳は黒く冷たく、殺意の色を宿していた。 顔はしっかりと覚えている。あれほど自分を――英雄となるべき自分の存在全てを認めようとしなかった男の顔を、忘れるはずもない。 出来れば戻って探し出し、今すぐにでも殺したい。だが、と思いなおす。 (もうあそこから離れて、少なくとも一時間……いるわけない、か……) 小さくため息をつき、そう東條は結論づける。今の今まで思い出せなかったことを、自嘲気味に笑いながら。 だが、もう決して忘れはしない。何があろうと見つけ出して、次こそ確実に殺す。 そう考える東條の顔には、またも微笑みが浮かぶ。だが、先ほどとは違い、どこか陰があるその笑顔は、間違いなく狂気を孕んでいた。 ############################# 「うん、ここがいいかな」 大き目の岩の下に立ち、東條は言った。自分も隠れて休める上、多少へこみもあるのでバイクを隠すのにもうってつけだった。 日よけになるのも意外に助かる。道路からもさほど離れてなく、通行人を不意打ちすることも可能であるという事実も、東條は気に入っていた。 自分の失態に気付いたことで、上場だった気分は落ち着きを取り戻していた。同時に、自分が無防備に近い状態だという事にも気がついた。 先ほどの乱戦で、自分がもつカードデッキは二つとも使用していたのである。変身による制限で、今は両方沈黙しているはずだ。 試しに、タイガのデッキをサイドミラーにかざしてみたが、ベルトは現れなかった。 (もしベルトが出ても、デッキをセットしなければいいだけだけど……面倒だな……) その行動により、確信する。自分は今、間違いなく「狩られる側」であると。丸腰で襲われたら一たまりもないだろう。身を隠し、しばらく休むことを東條は決める。 道路から離れ、川の近くまで来たところで、手ごろな岩を見つけ、現在に至る。 岩に持たれかけたバイクの横に座り、東條は一息つく。すぐ横からオイルの香りがただよい、鼻を刺激する。 あまり気持ちのいいものではないが、贅沢はいっていられない。距離をあけて座れば、自分かバイクのどちらかが道路から目視できてしまうかも知れないからだ。 走らせ続けて熱を放つバイクの横にあるデイパックに目が留まり、東條は数秒思考が停止する。しばらくして、腹の虫が鳴いた。 「あ。そういえば……」 ここに連れてこられてから、あまり食料を口にしてないことを思い出す。魅力のある報酬に突き動かされ、体を酷使していたからだ。 休息の時がきて、ようやく東條はデイパックの中身を確認することになったのだ――食欲によって。 中から出てきたのは、いかにも保存食料といった、粗末な物だった。だが、東條は特に気にもせず口に入れてゆく。 味や質など東條には関係がない。ただ、体力の回復と、自身の体調を整えるために、食事をとる。英雄として、勝ち残るために。 多少腹を満たしたところで、もう一度デイパックの中身を漁る。飲食料があった場所より、更に奥深く。 変身できない状態の自分には、護衛手段が必要だ。最初に集められたあの部屋で、妙に派手な女性が言っていた。 ――最初に配ったデイパックには、色んな道具が入っている――と。 タイガという自分の力さえあれば十分だと思っていたが、最早それだけでは難しいだろう。 生き残るために、どんな手段も選んではいられない。銃やナイフなら、無防備を装って一瞬で終わらせることも可能だろう――デッキを使わずとも。 変身アイテムが出てくれば、それだけでかなり有利になるのだが…… 「さすがにそれは高望みのしすぎかな……おっと」 少し自分を諌めながら、デイパックを漁り続ける東條の手に何かがあたった。 引き抜いた時に零れ落ちたペットボトルや缶詰を中に戻しつつ、手に取った物体をみる。長方形の木箱が、厳重に包装されたものだった。 少しずつ紐解き、わきあがる埃を手で払いつつ、慎重にあけていく。 封されていたものを全て取り除き、ゆっくり蓋を開ける。そこで東條が見たものは… 「あ!……錆びてる……」 赤く錆び付いた、菜切り包丁だった。とある蕎麦屋の秘伝の包丁なのだが、東條本人は知る由もない。 ご丁寧にも、デイパックの中にはしっかりと砥石も入っていた。傍に「しっかり砥いでね」とハートマークのついたメモも添えられて。 わざわざ錆びたものをよこさずとも、新品のものを送ればいいのに……そう東條は考えたが、突然何かを閃き、顔を上げる。 「そうか……これを砥ぐ根性も無いものは、英雄になる資格がないという事なんだね……」 突拍子もなく思いつき、それが正しいと東條は思い込む。勿論、それが間違いだという事に突っ込みを入れられる人物は存在しない。 川が近くにあることをこれ幸いと、東條は砥石と錆びた包丁を持って歩く。そして、英雄となるために、包丁を心を込めて砥いだ。 ########################### 赤錆が下流に流れていく様子をしばらく眺め、手元の包丁を確認する。 光を反射してか、それとも意外にも鋭い切れ味のためか、先ほどとは打って変わって白く輝いていた。 これなら適当なナイフなんかよりも、殺傷能力が高いのかも知れない。東條は、期待していなかった分、意外な掘り出し物に心躍らせていた。 すぐにでも性能を試したい気持ちを抑え、時間を確認する。砥ぎ始めてから数十分は経っていたようだ。間もなく放送も始まるだろう。 先生なら大丈夫だと思うが、それでも多少なり気にはなっている。それなら、せめて死者を確認してから動き回るとしよう。東條はそう決めて、携帯を弄る。 名簿には、自分が知る人物は大して多くはないようだ。今生きている中では、城戸と香川ぐらいだろう――もっとも、今回の放送で呼ばれるかも知れないが。 大した収穫も無く携帯を閉じようとしたとき、「地図」とされるファイルを見つける。東條は何の疑いも持たずそれを開き、現在地を確認した。 「ふーん……禁止エリアかぁ……」 そういえば、最初の放送でそんなことを言っていた気もする。このまま北に進むと、そこに突入するところだったようだ。 こんなぎりぎりの距離で気付くことが出来た運を、天が自分を生かそうとしているのだと、東條は嬉しく思う。 ともあれ、このまま進むことはままならなくなった。戻るのも悪くはないと思うが、先生がいたという建物にはなるべく近寄りたくはない。 禁止エリアを迂回するなり別の方角に進むなりは、放送が始まってから決めよう。そう考えて、今度こそ東條は携帯を閉じる。 先ほどから手に持っていた包丁の水滴を払い、岩陰へと歩を進める。足元に付着した水滴が、歩くたびに輝いた。 同時に手中にある菜切り包丁が、鈍く、美しく煌いた。まるで、本来料理に使われる道具が、凶器として扱われる事実を嘆くかのように。 ――刃物を握る手で人を幸せに出来るのは、料理人だけだ―― かつてそう言った男がいたように、刃物に心があるとすれば、人を殺めるなどということは望まないのかも知れない。 だが、その想いはきっと東條には届かないだろう。何故なら東條は、この殺し合いに勝ち残り、自分が英雄となることで、全ての人間が幸せになると信じている。 凶器を握るその手で、全ての人を幸せに導こうとするその男は、目の前の刃物の鋭さをただ見つめていた。 傍目には――中身もさして変わらないのだが――ただの殺人鬼であるその行為に、本人は気付かない。 放送が始まるまでの間、東條はただただ包丁を見つめ続けていた。 **状態表 【F-5 中央  川と道路の間 】【昼】 【東條悟@仮面ライダー龍騎】 [時間軸]:44話終了後 [状態]:中程度のダメージ。疲労小程度。 [装備]:カードデッキ(タイガ、ガイ)、田所包丁@仮面ライダーカブト、「凱火」(Valkyrie Rune) [道具]:基本支給品×2、サバイブ烈火@仮面ライダー龍騎、首輪(芝浦、金居) [思考・状況] 基本行動方針:全員殺して勝ち残り、名実共に英雄となる 1:『ある程度の力を持つ参加者を一人でも多く間引く』 2:できれば最後の仕上げは先生(香川)にしたい 3:殺した奴の首輪をコレクションするのも面白い。積極的に外す 。 4:木場(名前は知らない)に自分が英雄であることを知らしめる為、自らの手で闘って殺す。 5:可能なら包丁で殺害する。 備考 ※東條はまだ芝浦の特殊支給品(サバイブ烈火)を確認していません ※東條がどこへ向かうかは、後続の書き手さんに任せます。 |081:[[継ぐのは魂]]|投下順|083:[[EGO(前編)]]| |081:[[継ぐのは魂]]|時系列順|083:[[EGO(前編)]]| |070:[[裏切りはすぐ傍に]]|[[東條悟]]|098:[[金色の戦士(前編)]]|

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