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*完璧の名の下に それは本来、ここにあるべきではない究極の力。 だが、その飾り気のないシンプルかつ銀色のカブトムシを象った力が確かにここにはあった。 「ハイパーゼクターか…」 その力を片手に死神博士は病院の廊下を歩いていた。 そして適当な空き部屋に、といっても空いていない部屋など1つしかないのだが、入ると腰を落ち着けてハイパーゼクターの観察を始めた。 少し確認しただけでも湧き上がる疑問点。 まず、このゼクターは何故動かないのか? これまでに確認してきたゼクターは皆、まるで生きているかのように動き回っていた。 動く機能を持っていない? いや違う。影山の持っていたザビーゼクター同様の移動機構と思しき装置が取り付けられている。 次に、その容姿と名前だ。何故カブトムシの形をしているのにハイパーゼクターなのか? 素直にカブトゼクターと呼べばいいものだ。 既に存在しているゼクターと名前が被るといってもハイパーゼクターと名前をつける理由にはならない。蜂でザビー、蜻蛉でドレイクならビートルゼクターなどと名づけそうなものだ。 そして何より対応するアイテムの存在だ。やはりこれまでに確認してきたゼクターは皆、対応するアイテムが存在した。ゼクターはそれらと組み合わせることで仮面ライダーへの変身を可能とするのだ。 見ればこのハイパーゼクターにも何かにはめるような溝が刻まれてある。 影山のようなブレスにでもはめるのだろうか。ならば影山にこのゼクターが使えるのだろうか? (それはないな…) 即座にその意見は却下された。これまでの考察を結びつけた上での結論だ。 1つ、スマートブレインが異世界の多種多様なアイテム全てを解析し、能力調整をしている可能性は低い。 2つ、ゼクターは生きているかのように動き回り、ハイパーゼクターも同様の移動機構をもっている。 3つ、各ゼクターにはそれぞれ対応するアイテムが存在する。 4つ、動いているゼクターの所有者はまた、そのゼクターの対応アイテムも所持している。 5つ、ハイパーゼクターのみネーミングが他のゼクターと異なる。 これらの情報から次のように考えられる。 各ゼクターには仮面ライダーへの変身に必要な対応アイテムが存在する。 しかし、ハイパーゼクターは例外だ。ZECTによって開発された仮面ライダーを強化するためのゼクターであり、これ単体で用いるものではないのだろう。 仮面ライダーに新たな力を与えるゼクター。だから名前がハイパーゼクターなのだ。 そしてハイパーゼクターが動かないのは近くにその対象となる強化すべき仮面ライダーがいないからであろう。 この理屈に従えば影山、ならびに風間はハイパーゼクターの対象外だと判断される。 (となると…これ以上はどうしようもあるまい) 推論が正しければ、現状ではハイパーゼクターは戦力にはなりえない。 かといって無駄にできる力でもないので科学設備の整った施設でもなければ迂闊に分解するわけにもいかない。 (まあ、ダメ元で影山のブレスにでもはめさせてみるか…) 死神博士は重い腰を上げて、影山の待つ玄関ロビーへと向かった。 「博士! 本当に私が…私が使ってもいいんですか!?」 「ああ、いいから早くはめてみろ」 「はい!」 死神博士の絶望的な推論を知らない影山は生き生きとしながらハイパーゼクターを受け取る。 「変身!」 そう叫びながらハイパーゼクターをブレスへとあてがう。が… 「…あ、あれ…これ、はまらない…何で…?」 「…やはりな。影山、もういい」 「ちょっと、ちょっと待ってください! もう少しで入りそうなんですよ!」 ブレスになんとかハイパーゼクターをはめ込もうと必死な影山の回りをザビーゼクターが飛び回っている。 (まあ、予想通りというところか) 慌てふためく影山を尻目に思考を続ける。 やはり影山にはハイパーゼクターは使えなかった。そもそもカブトムシの形をしたアイテムだ。 (使えるとしたらカブトムシ型のゼクターの所有者であろう) そう結論づけた。 「影山、もういい。ザビーがハイパーゼクターに対応していないのは予想済みだ。分かったらその辺りにしておけ」 「…はい」 影山がしぶしぶとハイパーゼクターを返却すると時刻は正午を迎えた。 病院内のある一室に放送を聞き終えた男が2人。 「そんな…本郷さんまで…嘘だろ…」 死の放送で告げられた名前に城戸は悲しみを隠せなかった。 「…スマートブレインは絶対に許さない! こんな闘い…俺が必ず止めてやる!!」 「ええ、今回ばかりは私もあなたに同意しますね」 城戸の隣りで風間も静かに闘志を燃やしていた。 それはあすかの名前が呼ばれたためであろう。 (ハナさんが無事だったのは幸いですが…あすかさんは守ることが出来なかった。美しき女性を粗末に扱うなど…スマートブレインを許すわけにはいきませんね) 「風間さん。見張りの交代に行きましょう! 俺、もうここでじっとなんかしてらられない!」 「そうですね。もうだいぶ休みましたしね」 方向は違えどもスマートブレインの打倒を胸に2人は歩きだした。 「本郷が死んだだと…馬鹿な…」 死神博士もまた驚きを隠せなかった。本郷猛。その名が2回呼ばれたということは自分の知る本郷も、そうでない本郷もどちらも死んだということになる。 ショッカーの宿敵たるダブルライダーがこれほど早くに敗退するとは思ってもみなかった。 そして、あの本郷が死んだということは既に死んでいる一文字も自分が以前から知っている方の一文字だったのかもしれない。 さらに死亡者の中にはゾル大佐の名前もあった。 (自分の考えに自惚れるつもるなどないが…ここまで想定外の展開になるとはな…) 死神博士は自分の現状に対する認識不足を痛感していた。 思えば、天道総司とやらが死んだときの影山の反応も今の自分と大差はなかったのであろう。 この殺し合いには様々な世界から強力な力をもった参加者、それこそあのダブルライダーさえ凌駕するような強者が集められている。 (…これからはより注意せねばならんな) 利用できる駒はとことん利用する。 死神の冷たい視線は影山に刺さっていた。 (無事だったみたいだな…木場の奴) 自分の安全のために見捨てた男、木場。助かるためには仕方がなかったとはいえ多少は悔いが残るものだ。 (ここに来ないかな? 今なら受け入れてやれるかもしれないのに…) 死神博士は自分の本心を隠し、対主催者を集めて集団を形成しようとしている。 その真意はまだ分かりかねるが、せっかく集めた仲間に不信感をもたれるようなことはしないだろう。 ならば、木場を受け入れないということもないだろうし、いざとなればその程度の口利きは出来るだろう。 (まあ、木場がここに来たら…だけどな) 「Hyper Cannon」 影山の柄にもない優しさが垣間見えたとき、静寂を破る砲撃が彼らを襲った。 「…な!?」 遠方より放たれた光線は病院玄関の自動ドアを軽く粉砕し、受付の窓口を跡形もなく消し飛ばした。 「尋常ではないな…」 いきなりの砲撃。まず間違いなく来訪者は友好的な人物ではない。しかも、ダブルライダーのキックと同等か、はたまたそれ以上だろう。 「なんですか! 今の音!!」 「…これは酷い」 城戸と風間も轟音に驚き、慌てて駆けつけた。 「敵襲! 各自、戦闘体制!!」 死神博士の声を皮切りに皆が一斉に変身準備を整える。 それとほぼ同時。完璧と名にもつ兵器を片手に今は悪魔と化した神の使いが突入してきた。 倉庫を後にした風のエルは放送を聴くすべもなく、ただ血を求めて彷徨う獣と化していた。そして、その獣の目に留まったのがこの病院だった。 傷ついた人間達が集いし場所。エルの中での病院の認識だ。手負いの身としては少しでもいいから血が欲しい。その欲求が彼を病院へと突撃させた。 「「変身!」」 狂気に満ちた異形の出現に即座に対応し、変身を済ませる。 人を守り、殺し合いを阻止するために戦う戦士。仮面ライダー龍騎。 戦場の風となり、美しき花を守る戦士。仮面ライダードレイク。 2人の仮面ライダーが悪魔と対面する。 「おっしゃ!」 「SWORD VENT」 天より舞い降りた刀を手に龍騎が切りかかる。 その太刀を風のエルはパーフェクトゼクターの刃で受けるとすぐにボタンに触れる。 「KABUTO POWER」 「なっ!」 「HYPER BLADE」 目が眩むほどの閃光と共に、赤い光刀がドラグブレードごと龍騎を弾き飛ばし、壁へと叩きつけた。 「力づくで…強引な方のようですね」 近距離戦の困難さを察したドレイクは間合いを取って射撃を行う。 鈍い閃光が風のエルの体表で弾け、鮮血が宙を舞う。 「血だ…血が欲しい…」 「GUN MODE」 自らの流血に興奮したのか、風のエルはすばやく飛びのきさらなる射撃をかわすとパーフェクトゼクターをガンモードへと切り替える。 「KABUTO POWER」 銃口をドレイクへと向けると、ためらうことなく引き金を引いた。 「Hyper Cannon」 先ほど龍騎を弾き飛ばした刀と同質のエネルギーが砲撃となり、ドレイクを襲った。 「!」 ドレイクは慌てて回避を試みるが、病院ロビーの壁ごと爆発に巻き込まれ、弾け飛んだ。 (まさか…これほどとは…) その様子を影から見ていた死神博士。油断したつもりなどなかった。だが、敵は一人。どれほど強力だろうとライダー3人がかりで撃退できぬはずはないとタカをくくり、自らの能力温存のため、不意打ちのために隣の病室へと回った。 だが、誤算があった。 1つ、敵の戦力は予想以上に高かった。普通、あのような強力な攻撃はとどめに用いるものだ。それを初撃から用いるような単細胞に負ける気がしなかった。まさか連発できるとは… 2つ、こちらの戦力は自分を除いて3人のはず。 (影山はどこへいった?) 辺りを見渡すと、敵に見つからないようにこそこそと何かを探し回る。男の姿が見えた。 「…影山、何をしている」 戦力として勘定に入れておいたはずの男が変身もせずに自分の周りをうろついている。疑問に思わぬはずがない。 「ザビーが…俺のザビーがいないんです…」 「何?」 影山の発言に耳を疑い、死神博士が戦場から目を離した瞬間にそれはやってきた。 「Hyper Sting」 槍状に噴出されたエネルギーが2人を隠す壁を貫き、ロビーを隣の部屋まで拡張した。 「…また見つけた」 血に飢えた獣はさらなる獲物を見つけた喜びと共にソードモードの刃先を向けて2人へ歩み寄る。 「俺の…ザビー!」 気が付けばザビーゼクターはパーフェクトゼクターの一部と化していた。 事の始まりは、影山がハイパーゼクターに興味を示したことだった。元々気難しく、適任者を見定めることに熱心なザビーゼクターはそのときから影山を注意視していた。 そして、先ほどのこと、ついに影山は自らが納まるべき場所であるライダーブレスへ、喜びを露わにしながら他のゼクターを装着しようとしていた。 前から他者の顔色ばかり伺い、シャドウの、組織のリーダーとしては少々頼りない一面も感じさせていた。 影山を見限ろう。ザビーゼクターがそう判断したのと、完璧と名にもつ力の保持者が現れたのはほぼ同時だった。 風のエルがザビーゼクターの存在に気が付いたのはドレイクを消し飛ばした後だった。 先ほどまではいなかった蜂が新たに装着された。蜂の体色から考え、黄色のボタンが使えるようになった可能性を見出し、敵が潜んでいそうな場所へ向かって実験を試みた。 そして、今へとつながる。 「俺のザビー…俺のザビーを返してくれよ!」 泣き叫ぶ影山を気にもせず、風のエルは刃先を2人に向ける。 「血が欲しい…血が欲しい…」 こいつは狂ってる。説得に応じる相手ではない。死神博士はそう判断した。 さらに変身能力を失い、ただのお荷物へと成り下がった影山に、敵の攻撃を喰らってまだ起き上がれない他のライダー。 (どいつもこいつも…役立たずが!) 苛立ちながらも自らの身を守るために死神博士は戦闘体制に入る。 「狂った怪人…わしを誰だと思っている」 老人の姿がおぞましきイカの怪物へと変化していく。 「偉大なるショッカー大幹部! 死神博士の力、思い知るがいい!!」 向かい合う異形の闘いの先に何があるのか…その答えはまだ誰も知らない… **状態表 【G-4 病院】【日中】 【風のエル@仮面ライダーアギト】 [時間軸]:48話 [状態]:頭部にダメージ。全身に大程度の負傷・行動原理に異常発生。左手首欠損。能力発揮中。 [装備]:パーフェクトゼクター [道具]:なし [思考・状況] 基本行動方針:優勝して帰る。 帰還した暁には、主に未知の力を報告。 1:「仲間」を持つ「強き者」を殺す。容赦する気はない。 2:人を殺すことに、快楽を覚えた。 3:人間の血から、主の人間へ抱く感情の一端を知りたい。 4:パーフェクトゼクター(名前は知らない)を有効活用したい。 [備考] ※デネブの放送、および第一回放送を聞いていません。 ※首輪の制限時間に大体の目星を付け始めました。 ※ショッピングセンター内に風のエルの左手首が落ちています。 ※パーフェクトゼクターの使用法を理解しました。 ※パーフェクトゼクターへの各ゼクターの装着よりも、基本的には各ライダーへの変身が優先されます。現在は資格者不在のザビーゼクターのみ装着されています。 【死神博士@仮面ライダー(初代)】 【時間軸】:一号に勝利後。 【状態】:擦り傷程度の傷多数  イカデビルに変身中 【装備】:鞭 【道具】:基本支給品一式、デスイマジンの鎌@仮面ライダー電王、ハイパーゼクター 【思考・状況】 基本行動方針:この殺し合いをショッカーの実験場と化す。 1:目の前の怪人を倒す。 2:集団を結成し、スマートブレインに対抗する。 3:影山、風間が役立たずで苛立ち。 4:首輪を外す方法を研究する。その為にも研究施設へ向かう。首輪のサンプルが欲しい。 5:未知のライダーシステムおよびハイパーゼクターの技術を可能な限り把握する。 6:利用できそうな人物を集める、障害となりうるのであらば排除。 7:真司はいずれ切り捨てる。 ※一文字隼人(R)の事を一文字隼人(O)だとは信じていません。 ※流れ星は一戦闘に六発まで使用可、威力はバイクがあれば割と余裕に回避できる程度。  尚、キック殺しは問題なく使えます。 ※変身解除の原因が、何らかの抑止力からではないかと推測しています。 ※風間と城戸の所持品、カブト世界、 龍騎世界について把握しました。 ※ハイパーゼクターはジョウント移動及び飛行が不可能になっています。マニュアルはありません。 【考察まとめ】 1.首輪の100%解析は不可だが、解除することは可能。 2.首輪を外せるのは罠で、タイミングが重要。 3.時空を超越して逃げても、追跡される。 4.会場に時の列車はない。あるとしてもスマートブレインの手の中。 5.ガオウから聞いた、デンライナーの持ち主は干渉を避けるために既に死んでいる可能性が高い。 6.ハイパーゼクターはカブトムシ型ゼクターで変身するライダーの強化アイテム。 【影山瞬@仮面ライダーカブト】 【時間軸:33話・天道司令官就任後】 【状態】:全身に若干の疲労。背中に軽い裂傷。 ザビーを失った悲しみ。 【装備】:ザビーゼクター、ブレス 【道具】:支給品一式×2、ラウズカード(◆J)、不明支給品0~2(確認済) 【思考・状況】 基本行動方針:?????? 1:ザビーを返してくれ! ※午前1時過ぎの時点でG-2のガソリンスタンドに乗り物はありませんでした。 ※不明支給品は彼に戦力として見なされていません。 ※風間と城戸の所持品、龍騎世界について把握しました。 【風間大介@仮面ライダーカブト】 [時間軸]:ゴンと別れた後 [状態]:鼻痛(鼻血は止まっています) 仮面ライダードレイクに変身中。気絶中。全身に大ダメージ。 [装備]:ドレイクグリップ、ドレイクゼクター [道具]:支給品一式、オロナミンC2本(ぬるめ) 【思考・状況】早期に殺し合いを止めた上でのスマートブレイン打倒 基本行動方針:打倒スマートブレイン 1:都市部の探索。仲間との合流。 2:協力者を集める(女性優先) 3:謎のゼクターについて調べる。 4:あすかの死に怒りと悲しみ。 5:移動車両を探す。 6:影山瞬に気をつける ※変身制限に疑問を持っています。 【城戸真司@仮面ライダー龍騎】 [時間軸]:劇場版、レイドラグーンへの特攻直前 [状態]:仮面ライダー龍騎に変身中。気絶中。全身に大ダメージ。本郷、芝浦の死に悲しみ [装備]:カードデッキ(龍騎) [道具]:支給品一式 【思考・状況】 基本行動方針:早期に殺し合いを止めた上でのスマートブレイン打倒 1:仲間を集めて主催者打倒 。 2:金色の仮面ライダー(グレイブ)に注意する。茶髪の男?まさか…? 3:本郷の分まで戦う。 4:志村の後を追い、長田結花との合流を目指すついでに話を紐解く。 5:手塚に似てるなぁー。 [備考] ※不信感を多少持ちましたが、志村をまだ信用しています。 ※名簿に手塚、芝浦、東條、香川の名前がある事から、スマートブレインが死者蘇生の技術を持っていると考えています。 ※連続変身出来なかった事に疑問を感じています。 ※志村について話していません。 ※カブト世界について把握しました。 |094:[[Fatality-Cross(後編)]]|投下順|000:[[後の作品]]| |094:[[Fatality-Cross(後編)]]|時系列順|000:[[後の作品]]| |077:[[blood]]|[[風のエル]]|097:[[Sturm und Drache]]| |073:[[恐怖!死神ショッカーライダー大部隊結成作戦!!]]|[[死神博士]]|097:[[Sturm und Drache]]| |073:[[恐怖!死神ショッカーライダー大部隊結成作戦!!]]|[[影山瞬]]|097:[[Sturm und Drache]]| |073:[[恐怖!死神ショッカーライダー大部隊結成作戦!!]]|[[城戸真司]]|097:[[Sturm und Drache]]| |073:[[恐怖!死神ショッカーライダー大部隊結成作戦!!]]|[[風間大介]]|097:[[Sturm und Drache]]|
*完璧の名の下に それは本来、ここにあるべきではない究極の力。 だが、その飾り気のないシンプルかつ銀色のカブトムシを象った力が確かにここにはあった。 「ハイパーゼクターか…」 その力を片手に死神博士は病院の廊下を歩いていた。 そして適当な空き部屋に、といっても空いていない部屋など1つしかないのだが、入ると腰を落ち着けてハイパーゼクターの観察を始めた。 少し確認しただけでも湧き上がる疑問点。 まず、このゼクターは何故動かないのか? これまでに確認してきたゼクターは皆、まるで生きているかのように動き回っていた。 動く機能を持っていない? いや違う。影山の持っていたザビーゼクター同様の移動機構と思しき装置が取り付けられている。 次に、その容姿と名前だ。何故カブトムシの形をしているのにハイパーゼクターなのか? 素直にカブトゼクターと呼べばいいものだ。 既に存在しているゼクターと名前が被るといってもハイパーゼクターと名前をつける理由にはならない。蜂でザビー、蜻蛉でドレイクならビートルゼクターなどと名づけそうなものだ。 そして何より対応するアイテムの存在だ。やはりこれまでに確認してきたゼクターは皆、対応するアイテムが存在した。ゼクターはそれらと組み合わせることで仮面ライダーへの変身を可能とするのだ。 見ればこのハイパーゼクターにも何かにはめるような溝が刻まれてある。 影山のようなブレスにでもはめるのだろうか。ならば影山にこのゼクターが使えるのだろうか? (それはないな…) 即座にその意見は却下された。これまでの考察を結びつけた上での結論だ。 1つ、スマートブレインが異世界の多種多様なアイテム全てを解析し、能力調整をしている可能性は低い。 2つ、ゼクターは生きているかのように動き回り、ハイパーゼクターも同様の移動機構をもっている。 3つ、各ゼクターにはそれぞれ対応するアイテムが存在する。 4つ、動いているゼクターの所有者はまた、そのゼクターの対応アイテムも所持している。 5つ、ハイパーゼクターのみネーミングが他のゼクターと異なる。 これらの情報から次のように考えられる。 各ゼクターには仮面ライダーへの変身に必要な対応アイテムが存在する。 しかし、ハイパーゼクターは例外だ。ZECTによって開発された仮面ライダーを強化するためのゼクターであり、これ単体で用いるものではないのだろう。 仮面ライダーに新たな力を与えるゼクター。だから名前がハイパーゼクターなのだ。 そしてハイパーゼクターが動かないのは近くにその対象となる強化すべき仮面ライダーがいないからであろう。 この理屈に従えば影山、ならびに風間はハイパーゼクターの対象外だと判断される。 (となると…これ以上はどうしようもあるまい) 推論が正しければ、現状ではハイパーゼクターは戦力にはなりえない。 かといって無駄にできる力でもないので科学設備の整った施設でもなければ迂闊に分解するわけにもいかない。 (まあ、ダメ元で影山のブレスにでもはめさせてみるか…) 死神博士は重い腰を上げて、影山の待つ玄関ロビーへと向かった。 「博士! 本当に私が…私が使ってもいいんですか!?」 「ああ、いいから早くはめてみろ」 「はい!」 死神博士の絶望的な推論を知らない影山は生き生きとしながらハイパーゼクターを受け取る。 「変身!」 そう叫びながらハイパーゼクターをブレスへとあてがう。が… 「…あ、あれ…これ、はまらない…何で…?」 「…やはりな。影山、もういい」 「ちょっと、ちょっと待ってください! もう少しで入りそうなんですよ!」 ブレスになんとかハイパーゼクターをはめ込もうと必死な影山の回りをザビーゼクターが飛び回っている。 (まあ、予想通りというところか) 慌てふためく影山を尻目に思考を続ける。 やはり影山にはハイパーゼクターは使えなかった。そもそもカブトムシの形をしたアイテムだ。 (使えるとしたらカブトムシ型のゼクターの所有者であろう) そう結論づけた。 「影山、もういい。ザビーがハイパーゼクターに対応していないのは予想済みだ。分かったらその辺りにしておけ」 「…はい」 影山がしぶしぶとハイパーゼクターを返却すると時刻は正午を迎えた。 病院内のある一室に放送を聞き終えた男が2人。 「そんな…本郷さんまで…嘘だろ…」 死の放送で告げられた名前に城戸は悲しみを隠せなかった。 「…スマートブレインは絶対に許さない! こんな闘い…俺が必ず止めてやる!!」 「ええ、今回ばかりは私もあなたに同意しますね」 城戸の隣りで風間も静かに闘志を燃やしていた。 それはあすかの名前が呼ばれたためであろう。 (ハナさんが無事だったのは幸いですが…あすかさんは守ることが出来なかった。美しき女性を粗末に扱うなど…スマートブレインを許すわけにはいきませんね) 「風間さん。見張りの交代に行きましょう! 俺、もうここでじっとなんかしてらられない!」 「そうですね。もうだいぶ休みましたしね」 方向は違えどもスマートブレインの打倒を胸に2人は歩きだした。 「本郷が死んだだと…馬鹿な…」 死神博士もまた驚きを隠せなかった。本郷猛。その名が2回呼ばれたということは自分の知る本郷も、そうでない本郷もどちらも死んだということになる。 ショッカーの宿敵たるダブルライダーがこれほど早くに敗退するとは思ってもみなかった。 そして、あの本郷が死んだということは既に死んでいる一文字も自分が以前から知っている方の一文字だったのかもしれない。 さらに死亡者の中にはゾル大佐の名前もあった。 (自分の考えに自惚れるつもるなどないが…ここまで想定外の展開になるとはな…) 死神博士は自分の現状に対する認識不足を痛感していた。 思えば、天道総司とやらが死んだときの影山の反応も今の自分と大差はなかったのであろう。 この殺し合いには様々な世界から強力な力をもった参加者、それこそあのダブルライダーさえ凌駕するような強者が集められている。 (…これからはより注意せねばならんな) 利用できる駒はとことん利用する。 死神の冷たい視線は影山に刺さっていた。 (無事だったみたいだな…木場の奴) 自分の安全のために見捨てた男、木場。助かるためには仕方がなかったとはいえ多少は悔いが残るものだ。 (ここに来ないかな? 今なら受け入れてやれるかもしれないのに…) 死神博士は自分の本心を隠し、対主催者を集めて集団を形成しようとしている。 その真意はまだ分かりかねるが、せっかく集めた仲間に不信感をもたれるようなことはしないだろう。 ならば、木場を受け入れないということもないだろうし、いざとなればその程度の口利きは出来るだろう。 (まあ、木場がここに来たら…だけどな) 「Hyper Cannon」 影山の柄にもない優しさが垣間見えたとき、静寂を破る砲撃が彼らを襲った。 「…な!?」 遠方より放たれた光線は病院玄関の自動ドアを軽く粉砕し、受付の窓口を跡形もなく消し飛ばした。 「尋常ではないな…」 いきなりの砲撃。まず間違いなく来訪者は友好的な人物ではない。しかも、ダブルライダーのキックと同等か、はたまたそれ以上だろう。 「なんですか! 今の音!!」 「…これは酷い」 城戸と風間も轟音に驚き、慌てて駆けつけた。 「敵襲! 各自、戦闘体制!!」 死神博士の声を皮切りに皆が一斉に変身準備を整える。 それとほぼ同時。完璧と名にもつ兵器を片手に今は悪魔と化した神の使いが突入してきた。 倉庫を後にした風のエルは放送を聴くすべもなく、ただ血を求めて彷徨う獣と化していた。そして、その獣の目に留まったのがこの病院だった。 傷ついた人間達が集いし場所。エルの中での病院の認識だ。手負いの身としては少しでもいいから血が欲しい。その欲求が彼を病院へと突撃させた。 「「変身!」」 狂気に満ちた異形の出現に即座に対応し、変身を済ませる。 人を守り、殺し合いを阻止するために戦う戦士。仮面ライダー龍騎。 戦場の風となり、美しき花を守る戦士。仮面ライダードレイク。 2人の仮面ライダーが悪魔と対面する。 「おっしゃ!」 「SWORD VENT」 天より舞い降りた刀を手に龍騎が切りかかる。 その太刀を風のエルはパーフェクトゼクターの刃で受けるとすぐにボタンに触れる。 「KABUTO POWER」 「なっ!」 「HYPER BLADE」 目が眩むほどの閃光と共に、赤い光刀がドラグブレードごと龍騎を弾き飛ばし、壁へと叩きつけた。 「力づくで…強引な方のようですね」 近距離戦の困難さを察したドレイクは間合いを取って射撃を行う。 鈍い閃光が風のエルの体表で弾け、鮮血が宙を舞う。 「血だ…血が欲しい…」 「GUN MODE」 自らの流血に興奮したのか、風のエルはすばやく飛びのきさらなる射撃をかわすとパーフェクトゼクターをガンモードへと切り替える。 「KABUTO POWER」 銃口をドレイクへと向けると、ためらうことなく引き金を引いた。 「Hyper Cannon」 先ほど龍騎を弾き飛ばした刀と同質のエネルギーが砲撃となり、ドレイクを襲った。 「!」 ドレイクは慌てて回避を試みるが、病院ロビーの壁ごと爆発に巻き込まれ、弾け飛んだ。 (まさか…これほどとは…) その様子を影から見ていた死神博士。油断したつもりなどなかった。だが、敵は一人。どれほど強力だろうとライダー3人がかりで撃退できぬはずはないとタカをくくり、自らの能力温存のため、不意打ちのために隣の病室へと回った。 だが、誤算があった。 1つ、敵の戦力は予想以上に高かった。普通、あのような強力な攻撃はとどめに用いるものだ。それを初撃から用いるような単細胞に負ける気がしなかった。まさか連発できるとは… 2つ、こちらの戦力は自分を除いて3人のはず。 (影山はどこへいった?) 辺りを見渡すと、敵に見つからないようにこそこそと何かを探し回る。男の姿が見えた。 「…影山、何をしている」 戦力として勘定に入れておいたはずの男が変身もせずに自分の周りをうろついている。疑問に思わぬはずがない。 「ザビーが…俺のザビーがいないんです…」 「何?」 影山の発言に耳を疑い、死神博士が戦場から目を離した瞬間にそれはやってきた。 「Hyper Sting」 槍状に噴出されたエネルギーが2人を隠す壁を貫き、ロビーを隣の部屋まで拡張した。 「…また見つけた」 血に飢えた獣はさらなる獲物を見つけた喜びと共にソードモードの刃先を向けて2人へ歩み寄る。 「俺の…ザビー!」 気が付けばザビーゼクターはパーフェクトゼクターの一部と化していた。 事の始まりは、影山がハイパーゼクターに興味を示したことだった。元々気難しく、適任者を見定めることに熱心なザビーゼクターはそのときから影山を注意視していた。 そして、先ほどのこと、ついに影山は自らが納まるべき場所であるライダーブレスへ、喜びを露わにしながら他のゼクターを装着しようとしていた。 前から他者の顔色ばかり伺い、シャドウの、組織のリーダーとしては少々頼りない一面も感じさせていた。 影山を見限ろう。ザビーゼクターがそう判断したのと、完璧と名にもつ力の保持者が現れたのはほぼ同時だった。 風のエルがザビーゼクターの存在に気が付いたのはドレイクを消し飛ばした後だった。 先ほどまではいなかった蜂が新たに装着された。蜂の体色から考え、黄色のボタンが使えるようになった可能性を見出し、敵が潜んでいそうな場所へ向かって実験を試みた。 そして、今へとつながる。 「俺のザビー…俺のザビーを返してくれよ!」 泣き叫ぶ影山を気にもせず、風のエルは刃先を2人に向ける。 「血が欲しい…血が欲しい…」 こいつは狂ってる。説得に応じる相手ではない。死神博士はそう判断した。 さらに変身能力を失い、ただのお荷物へと成り下がった影山に、敵の攻撃を喰らってまだ起き上がれない他のライダー。 (どいつもこいつも…役立たずが!) 苛立ちながらも自らの身を守るために死神博士は戦闘体制に入る。 「狂った怪人…わしを誰だと思っている」 老人の姿がおぞましきイカの怪物へと変化していく。 「偉大なるショッカー大幹部! 死神博士の力、思い知るがいい!!」 向かい合う異形の闘いの先に何があるのか…その答えはまだ誰も知らない… **状態表 【G-4 病院】【日中】 【風のエル@仮面ライダーアギト】 [時間軸]:48話 [状態]:頭部にダメージ。全身に大程度の負傷・行動原理に異常発生。左手首欠損。能力発揮中。 [装備]:パーフェクトゼクター [道具]:なし [思考・状況] 基本行動方針:優勝して帰る。 帰還した暁には、主に未知の力を報告。 1:「仲間」を持つ「強き者」を殺す。容赦する気はない。 2:人を殺すことに、快楽を覚えた。 3:人間の血から、主の人間へ抱く感情の一端を知りたい。 4:パーフェクトゼクター(名前は知らない)を有効活用したい。 [備考] ※デネブの放送、および第一回放送を聞いていません。 ※首輪の制限時間に大体の目星を付け始めました。 ※ショッピングセンター内に風のエルの左手首が落ちています。 ※パーフェクトゼクターの使用法を理解しました。 ※パーフェクトゼクターへの各ゼクターの装着よりも、基本的には各ライダーへの変身が優先されます。現在は資格者不在のザビーゼクターのみ装着されています。 【死神博士@仮面ライダー(初代)】 【時間軸】:一号に勝利後。 【状態】:擦り傷程度の傷多数  イカデビルに変身中 【装備】:鞭 【道具】:基本支給品一式、デスイマジンの鎌@仮面ライダー電王、ハイパーゼクター 【思考・状況】 基本行動方針:この殺し合いをショッカーの実験場と化す。 1:目の前の怪人を倒す。 2:集団を結成し、スマートブレインに対抗する。 3:影山、風間が役立たずで苛立ち。 4:首輪を外す方法を研究する。その為にも研究施設へ向かう。首輪のサンプルが欲しい。 5:未知のライダーシステムおよびハイパーゼクターの技術を可能な限り把握する。 6:利用できそうな人物を集める、障害となりうるのであらば排除。 7:真司はいずれ切り捨てる。 ※一文字隼人(R)の事を一文字隼人(O)だとは信じていません。 ※流れ星は一戦闘に六発まで使用可、威力はバイクがあれば割と余裕に回避できる程度。  尚、キック殺しは問題なく使えます。 ※変身解除の原因が、何らかの抑止力からではないかと推測しています。 ※風間と城戸の所持品、カブト世界、 龍騎世界について把握しました。 ※ハイパーゼクターはジョウント移動及び飛行が不可能になっています。マニュアルはありません。 【考察まとめ】 1.首輪の100%解析は不可だが、解除することは可能。 2.首輪を外せるのは罠で、タイミングが重要。 3.時空を超越して逃げても、追跡される。 4.会場に時の列車はない。あるとしてもスマートブレインの手の中。 5.ガオウから聞いた、デンライナーの持ち主は干渉を避けるために既に死んでいる可能性が高い。 6.ハイパーゼクターはカブトムシ型ゼクターで変身するライダーの強化アイテム。 【影山瞬@仮面ライダーカブト】 【時間軸:33話・天道司令官就任後】 【状態】:全身に若干の疲労。背中に軽い裂傷。 ザビーを失った悲しみ。 【装備】:ザビーゼクター、ブレス 【道具】:支給品一式×2、ラウズカード(◆J)、不明支給品0~2(確認済) 【思考・状況】 基本行動方針:?????? 1:ザビーを返してくれ! ※午前1時過ぎの時点でG-2のガソリンスタンドに乗り物はありませんでした。 ※不明支給品は彼に戦力として見なされていません。 ※風間と城戸の所持品、龍騎世界について把握しました。 【風間大介@仮面ライダーカブト】 [時間軸]:ゴンと別れた後 [状態]:鼻痛(鼻血は止まっています) 仮面ライダードレイクに変身中。気絶中。全身に大ダメージ。 [装備]:ドレイクグリップ、ドレイクゼクター [道具]:支給品一式、オロナミンC2本(ぬるめ) 【思考・状況】早期に殺し合いを止めた上でのスマートブレイン打倒 基本行動方針:打倒スマートブレイン 1:都市部の探索。仲間との合流。 2:協力者を集める(女性優先) 3:謎のゼクターについて調べる。 4:あすかの死に怒りと悲しみ。 5:移動車両を探す。 6:影山瞬に気をつける ※変身制限に疑問を持っています。 【城戸真司@仮面ライダー龍騎】 [時間軸]:劇場版、レイドラグーンへの特攻直前 [状態]:仮面ライダー龍騎に変身中。気絶中。全身に大ダメージ。本郷、芝浦の死に悲しみ [装備]:カードデッキ(龍騎) [道具]:支給品一式 【思考・状況】 基本行動方針:早期に殺し合いを止めた上でのスマートブレイン打倒 1:仲間を集めて主催者打倒 。 2:金色の仮面ライダー(グレイブ)に注意する。茶髪の男?まさか…? 3:本郷の分まで戦う。 4:志村の後を追い、長田結花との合流を目指すついでに話を紐解く。 5:手塚に似てるなぁー。 [備考] ※不信感を多少持ちましたが、志村をまだ信用しています。 ※名簿に手塚、芝浦、東條、香川の名前がある事から、スマートブレインが死者蘇生の技術を持っていると考えています。 ※連続変身出来なかった事に疑問を感じています。 ※志村について話していません。 ※カブト世界について把握しました。 |094:[[Fatality-Cross(後編)]]|投下順|096:[[顔]]| |094:[[Fatality-Cross(後編)]]|時系列順|096:[[顔]]| |077:[[blood]]|[[風のエル]]|097:[[Sturm und Drache]]| |073:[[恐怖!死神ショッカーライダー大部隊結成作戦!!]]|[[死神博士]]|097:[[Sturm und Drache]]| |073:[[恐怖!死神ショッカーライダー大部隊結成作戦!!]]|[[影山瞬]]|097:[[Sturm und Drache]]| |073:[[恐怖!死神ショッカーライダー大部隊結成作戦!!]]|[[城戸真司]]|097:[[Sturm und Drache]]| |073:[[恐怖!死神ショッカーライダー大部隊結成作戦!!]]|[[風間大介]]|097:[[Sturm und Drache]]|

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