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「仮面ライダーの称号」(2008/06/01 (日) 02:48:55) の最新版変更点
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* 仮面ライダーの称号
「そう簡単には、死なせてくれないというわけか。」
自分の掌を見つめる。今はまだ、綺麗なままだ。
流星が、流れ落ちる様を見ながら葦原涼はふと、思い返した。
自分は確かに一度、死んだ筈だ。だが、今こうして命を与えられて再び生きている。
死ぬ前と違う部分があるとすれば、この首に巻かれた「違和感」だ。
目覚めた先で言われた言葉は、「ここにいる者達と殺し合いをしろ」。
どういう理由であれ、自分にはそんな事は出来ない。
人間に絶望をした事はある。だが、だからといってそれが殺し合いをする理由にはならない。だが、戦おうとする相手には…この力を使うしかない。
主催者から与えられた支給品に目を通す。少量の食料、水。
あとは、用途不明のベルトだけだ。何かに使える可能性もある以上、持っておいて損はなさそうだ。一通り状況を確認した涼は、決意を固めた。
俺の力で、救いを求める人を救う。たとえ、その人に自分の姿を拒絶されたとしても。
冷たい風が、頬を殴る。涼は、しっかりと地に足跡を刻みながら歩を進めた。
□
「何が殺し合いだ…まったく!」
壮年の男、立花藤兵衛は何が何だか分からない状況に落とされても尚、その正義感だけは熱く燃やし続けていた。
仮面ライダー1号、2号、そしてV3の親のような存在として共に悪の組織と対峙してきた彼には、主催者であるスマートブレインもその同類にしか見えなかった。
「こんな時に、猛や隼人…志郎がいてくれたらなぁ。そういや…あの、アマゾンとかっていう奴はどうしちまったんだ?この場所にはいないみたいだが…」
藤兵衛は、この場所に連れて来られるまでに一緒にいた青年、アマゾンと呼ばれる男を思い出していた。
確かに変わった奴だったが、出来ればこんな場所にはいて欲しくない。
ましてやあいつと殺し合いなんざまっぴらだと。
「お前が死んじちまったら、マサヒコが悲しむんだからな…元気でいるんだぞ。アマゾン。」
――「心配はいらない。何故なら…あんたはここで死ぬんだからな。悪く思わないでくれ。」――
声がした方向へ振り向いた先にいたのは、1人の男だった。人形のように、表情がない。
歳はアマゾンとそれほど変わりもない。茶髪の髪と切れ長の目が、精悍な顔立ちを印象付ける。だが、その言葉からは明らかな敵意が見て取れた。
「おいおい!物騒なこと言うんじゃねぇ。俺は誰とも戦うつもりはねぇんだぞ。
それに若いモンが威勢がいいからって、人生の先輩に向かってなぁ…」
藤兵衛が言葉を言い終えるまでもなく男は、ベルトが回転すると同時に強化服とマスクを装着した。男が変身したその姿に、藤兵衛はつい言葉を漏らしてしまった。
「仮面ライダー…V3!?お前…志郎!!風見志郎か!?」
その姿はかつて藤兵衛が共に戦った青年・仮面ライダーV3=風見志郎に似ていた。
「仮面ライダー?それに、何故俺の名前を知っている…?
何の事かは知らないが、これから死ぬあんたに聞いても意味はない。
安心しろ。楽に死ねるように一撃で殺してやる。」
だが、青年から放たれる言葉は藤兵衛が知るV3のそれとは大きく違う。
まるで自分の意志を持たない人形のように、V3に似た”怪人”は藤兵衛の首を片腕で締め上げながら一気に持ち上げていく。
凄まじい力が藤兵衛の体力を一気に奪っていこうとする。だが、その中でも自分はこの男に教えたいと思った。この青年に似た戦士の事を。仮面ライダーV3の勇姿を。
「お、おい…お前がどこから来たかは知らん。だが…お前とよく似た男をわしはよく知ってんだ。名前は、風見…風見志郎!!そ、そいつは親と”妹”を殺されても…その復讐を捨ててでも悪と戦った。お前は、そいつとよく似てる。
もしお前に仮面ライダーとしての魂があるんなら、こんな事は…止めろ!!うぅ…ち、ちくしょうめ……」
どうやら、彼の言うことに嘘はないようだ。このままでは、本当に殺されてしまう。
気が遠のいていく。だが、藤兵衛の言葉を聞いた後からだろうか。
心無しか、男の力はゆっくりと緩まっていくようにも感じられた。
――アマゾン、志郎、隼人、猛…すまん。もう駄目かもしれんな――
生を諦めようとした瞬間、後方でバイクの爆音が聞こえた気がした。
いや、気がしたのではない。実際に、”彼”はやって来た。
藤兵衛を締め上げる怪人を吹き飛ばし、バイクに乗った男はその姿を現した。
「よせ。その人を離さなければ、お前を…倒す!」
バイクから降りた男、葦原涼は敢然と立ち塞がった。
「今度は、どうやらまともみてぇだな。おい、若いの!!
そいつを止めてくれ!!」
藤兵衛は涼の姿に、かつての戦士達を重ね合わせていた。
涼は藤兵衛にまるで正義の味方のように呼ばれた事に違和感は感じてはいたが、
その感じは嫌いでもなかった。何よりも、今は自分を必要としてくれる人間に出会えて充足感の方が大きい。
「ちはる…俺は、どうすればいい。」
吹き飛ばされた男は、そう呟き何故か変身を解いた。
呆然と顔を見合わせる涼と藤兵衛を余所に、志郎は心の中で深く葛藤していた。
□
風見志郎が気が付いた時には、既に見知らぬ場所。
見知らぬ者達との殺し合い。そして窮屈な首輪。
全てがお膳立てされた後であった。
愛する妹、ちはるの真実を知った後。志郎はショッカーから与えられた
充足感と、ちはるへの哀しみの狭間で葛藤していた。
――「今のお前はただの人形だ。」――
――「ちはるは自分の力で一生懸命輝いてた!!でも、お前は自分の力では輝けなかったってことじゃねぇか!!」――
放り出された世界で、志郎はちはるの親友の言葉、そして裏切り者の男・一文字隼人の言葉を思い出していた。
――俺は、どうすればいい?――
悩んだ結果、ゲームから生き残る事を決めた。それはまた、他人を殺すと決めたと同じ事でもあった。
だが、志郎の手の中ではまだピンクの腕時計が光る。
妹が残してくれた大切なプレゼントだ。ショッカーとなった今でも、これだけは
大切に持ち続けていた。
その時計が彼に何かを伝えようとするように、針を小刻みに震わせていた。
□
「風見志郎か…だが、信用出来ない。現に、あいつはあんたを殺そうとしていた。」
葦原涼は、憮然とした表情で立花藤兵衛へ言葉を返した。
志郎は戦いを放棄した。その事で藤兵衛は志郎の心の葛藤を感じ取り、涼へ
「停戦協定」を結ぶように提案したのだ。
だが、涼には簡単には受け入れられない。この男は、未遂とはいえ一度は殺し合いに乗ろうとした。
その事が、後々厄介になる可能性だってある。
だが、あくまで藤兵衛は志郎の「心変わり」を信じたいと言った。
しかし、当の志郎はその提案に無言で俯いているだけだ。
藤兵衛は、志郎の肩を叩き睨み付ける彼の瞳から目を逸らさずに、語り始めた。
「今までのお前に、何があって…そういう力を持てたかは知らん。
だが、わしは知ってるんだ。お前によく似た男達をな。
あいつ等は、自分達が人間でなくなっても、たとえ家族を失ったとしても。
誰の為でもなく、他人の為に報われもせん戦いをした。
なぁ、志郎。お前も、失った物もあれば得た物もあるんじゃないか?」
涼にはこの壮年風の男、立花藤兵衛と名乗った老人が嫌いにはならなかった。
むしろ、こういう昔気質で人情味のある人間は好きだ。
何より、今の言葉が涼の心を大きく揺さぶっていた。
この人なら、自分の異形の姿を認めてくれるのではないか。
恩師にも、恋人にも拒絶された力を。
(あんたなら、俺の気持ちを分かってくれるのか…?)
だが、それを素直に現す事は涼にとっては苦手だった。
「あんた、お人好しが過ぎるな。こんな奴を庇っても、何の意味もない。
風見志郎。お前がどういう奴かは知らないし、知りたくもない。
だが、お前が持っている力はお前が使い道を決めろ。
迷っていても始まらない……その手で殺すのか。守るのか。決めるのは、お前だ。」
そう言うと、志郎の頬を一発殴り付けた。
「…何をする!!貴様…」
不意に殴られた志郎は、言葉少なに言い返した。
涼は、志郎を睨み付けたまま微動だにしない。
「お前が、この人にやった事の借りを返しただけだ。
今度、もしお前が本気で戦うというのなら…俺が全力で相手をしてやる。」
そう言うと、涼は藤兵衛を一瞥しそっぽを向いてしまった。
そんな涼を見て、藤兵衛もまた、葦原涼と名乗るこの青年を気に入った。
不器用そうで、いて根はいい奴だ。そう、藤兵衛は直感した。
「そういうお前も、あいつが戦いを止めたら何もしなかった。
口は悪そうだが、気に入ったぞ。お前と一緒に行動する。
俺は決めた!!あと、こいつともな。な、志郎!!」
志郎、と呼ばれ風見志郎は面倒臭そうに顔を上げた。
初めて会ったときよりも、いくらかは人間臭い表情ではある。
「俺は確かに風見志郎だ。だが、あんたのいう仮面ライダーV3じゃない。」
拗ねた子供のように答える志郎を見て、藤兵衛は微笑んだ。
まるで子を見守る父のように。
「確かに。まだ、お前は仮面ライダーじゃない。
だが、必ずわしがお前を仮面ライダー、いやV3にしてやる。絶対に、な。
まずは仲間を探すぞ!!さっとさと動かないと朝が来ちまう
からな。」
――もう1人の風見志郎に、仮面ライダーの称号を与える事を決めた男・立花藤兵衛。
再び与えられた命を賭けて、他者を守る事を決めた男・葦原涼。
未だ、妹と組織の狭間で葛藤する男・風見志郎。
3人の歩く先。見えるのは闇か、光か。
□
藤兵衛「さぁーて。まずは情報収集だ!それにしても、このバイク。やけに派手だな。お前のか?」
涼「俺のじゃない。」
藤兵衛「しかし、凄いデザインだな…作った奴の顔が見てみたい。」
涼「俺もだ。」
**状態表
【風見志郎@仮面ライダーTHE-NEXT】
【1日目 現時刻:黎明】
【現在地:C-5 採掘場】
【時間軸:】THE-NEXT中盤・CHIHARU失踪の真実を知った直後
【状態】: 健康。2時間変身不可。
【装備】:なし
【道具】:支給品(詳細不明)、ピンクの腕時計
【思考・状況】
1.出会った参加者(藤兵衛、涼)とは馴れ合うつもりはない。
あくまで利用する為に今は行動を共にする。
2.戦いに対する迷い。ショッカーに対する忠誠心への揺らぎ。
3.藤兵衛、涼の言葉にかつての琴美、一文字に投げかけられた言葉を思い出す。
深い葛藤。
【葦原涼@仮面ライダーアギト】
【1日目 現時刻:黎明】
【現在地:C-5 採掘場】
【時間軸:】第27話 死亡後
【状態】: 健康
【装備】:ジャングラー(採掘場で入手)
【道具】:支給品一式、ホッパーゼクターのベルト
【思考・状況】
1.殺し合いには加担しない。脱出方法を探る。
2.立花藤兵衛を信頼。行動を共にする。風見志郎への警戒心。いつでも戦う覚悟はある。
3.自分に再び与えられた命で、救える者を救う。
戦おうとする参加者には容赦しない。
【立花藤兵衛@仮面ライダーアマゾン】
【1日目 現時刻:黎明】
【現在地:C-5 採掘場】
【時間軸:】アマゾン本編、初登場頃(ジャングラー製作前)
【状態】: 首に軽傷(圧迫による痣)、その他は健康
【装備】:なし
【道具】:支給品(詳細不明)
【思考・状況】
1.殺し合いはしない。あくまで戦いの阻止、脱出を目指す。その為に、まずは
情報を集める。今置かれた状況を理解する。
2.自分の知る男と同じ名前、同じ姿を持つ風見志郎を仮面ライダーにする。
葦原涼を信頼。協力して脱出方法を探す。
3.同じ目的を持つ仲間を探す為に移動。
|012:[[「誰か」のためのライダー]]|投下順|014:[[我想フ――――、]]|
|006:[[そういう・アスカ・腹黒え]]|時系列順|000:[[後の作品]]|
||[[風見志郎]]|019:[[想いを鉄の意志に変えて]]|
||[[葦原涼]]|019:[[想いを鉄の意志に変えて]]|
||[[立花藤兵衛]]|019:[[想いを鉄の意志に変えて]]|
* 仮面ライダーの称号
「そう簡単には、死なせてくれないというわけか。」
自分の掌を見つめる。今はまだ、綺麗なままだ。
流星が、流れ落ちる様を見ながら葦原涼はふと、思い返した。
自分は確かに一度、死んだ筈だ。だが、今こうして命を与えられて再び生きている。
死ぬ前と違う部分があるとすれば、この首に巻かれた「違和感」だ。
目覚めた先で言われた言葉は、「ここにいる者達と殺し合いをしろ」。
どういう理由であれ、自分にはそんな事は出来ない。
人間に絶望をした事はある。だが、だからといってそれが殺し合いをする理由にはならない。だが、戦おうとする相手には…この力を使うしかない。
主催者から与えられた支給品に目を通す。少量の食料、水。
あとは、用途不明のベルトだけだ。何かに使える可能性もある以上、持っておいて損はなさそうだ。一通り状況を確認した涼は、決意を固めた。
俺の力で、救いを求める人を救う。たとえ、その人に自分の姿を拒絶されたとしても。
冷たい風が、頬を殴る。涼は、しっかりと地に足跡を刻みながら歩を進めた。
□
「何が殺し合いだ…まったく!」
壮年の男、立花藤兵衛は何が何だか分からない状況に落とされても尚、その正義感だけは熱く燃やし続けていた。
仮面ライダー1号、2号、そしてV3の親のような存在として共に悪の組織と対峙してきた彼には、主催者であるスマートブレインもその同類にしか見えなかった。
「こんな時に、猛や隼人…志郎がいてくれたらなぁ。そういや…あの、アマゾンとかっていう奴はどうしちまったんだ?この場所にはいないみたいだが…」
藤兵衛は、この場所に連れて来られるまでに一緒にいた青年、アマゾンと呼ばれる男を思い出していた。
確かに変わった奴だったが、出来ればこんな場所にはいて欲しくない。
ましてやあいつと殺し合いなんざまっぴらだと。
「お前が死んじちまったら、マサヒコが悲しむんだからな…元気でいるんだぞ。アマゾン。」
――「心配はいらない。何故なら…あんたはここで死ぬんだからな。悪く思わないでくれ。」――
声がした方向へ振り向いた先にいたのは、1人の男だった。人形のように、表情がない。
歳はアマゾンとそれほど変わりもない。茶髪の髪と切れ長の目が、精悍な顔立ちを印象付ける。だが、その言葉からは明らかな敵意が見て取れた。
「おいおい!物騒なこと言うんじゃねぇ。俺は誰とも戦うつもりはねぇんだぞ。
それに若いモンが威勢がいいからって、人生の先輩に向かってなぁ…」
藤兵衛が言葉を言い終えるまでもなく男は、ベルトが回転すると同時に強化服とマスクを装着した。男が変身したその姿に、藤兵衛はつい言葉を漏らしてしまった。
「仮面ライダー…V3!?お前…志郎!!風見志郎か!?」
その姿はかつて藤兵衛が共に戦った青年・仮面ライダーV3=風見志郎に似ていた。
「仮面ライダー?それに、何故俺の名前を知っている…?
何の事かは知らないが、これから死ぬあんたに聞いても意味はない。
安心しろ。楽に死ねるように一撃で殺してやる。」
だが、青年から放たれる言葉は藤兵衛が知るV3のそれとは大きく違う。
まるで自分の意志を持たない人形のように、V3に似た”怪人”は藤兵衛の首を片腕で締め上げながら一気に持ち上げていく。
凄まじい力が藤兵衛の体力を一気に奪っていこうとする。だが、その中でも自分はこの男に教えたいと思った。この青年に似た戦士の事を。仮面ライダーV3の勇姿を。
「お、おい…お前がどこから来たかは知らん。だが…お前とよく似た男をわしはよく知ってんだ。名前は、風見…風見志郎!!そ、そいつは親と”妹”を殺されても…その復讐を捨ててでも悪と戦った。お前は、そいつとよく似てる。
もしお前に仮面ライダーとしての魂があるんなら、こんな事は…止めろ!!うぅ…ち、ちくしょうめ……」
どうやら、彼の言うことに嘘はないようだ。このままでは、本当に殺されてしまう。
気が遠のいていく。だが、藤兵衛の言葉を聞いた後からだろうか。
心無しか、男の力はゆっくりと緩まっていくようにも感じられた。
――アマゾン、志郎、隼人、猛…すまん。もう駄目かもしれんな――
生を諦めようとした瞬間、後方でバイクの爆音が聞こえた気がした。
いや、気がしたのではない。実際に、”彼”はやって来た。
藤兵衛を締め上げる怪人を吹き飛ばし、バイクに乗った男はその姿を現した。
「よせ。その人を離さなければ、お前を…倒す!」
バイクから降りた男、葦原涼は敢然と立ち塞がった。
「今度は、どうやらまともみてぇだな。おい、若いの!!
そいつを止めてくれ!!」
藤兵衛は涼の姿に、かつての戦士達を重ね合わせていた。
涼は藤兵衛にまるで正義の味方のように呼ばれた事に違和感は感じてはいたが、
その感じは嫌いでもなかった。何よりも、今は自分を必要としてくれる人間に出会えて充足感の方が大きい。
「ちはる…俺は、どうすればいい。」
吹き飛ばされた男は、そう呟き何故か変身を解いた。
呆然と顔を見合わせる涼と藤兵衛を余所に、志郎は心の中で深く葛藤していた。
□
風見志郎が気が付いた時には、既に見知らぬ場所。
見知らぬ者達との殺し合い。そして窮屈な首輪。
全てがお膳立てされた後であった。
愛する妹、ちはるの真実を知った後。志郎はショッカーから与えられた
充足感と、ちはるへの哀しみの狭間で葛藤していた。
――「今のお前はただの人形だ。」――
――「ちはるは自分の力で一生懸命輝いてた!!でも、お前は自分の力では輝けなかったってことじゃねぇか!!」――
放り出された世界で、志郎はちはるの親友の言葉、そして裏切り者の男・一文字隼人の言葉を思い出していた。
――俺は、どうすればいい?――
悩んだ結果、ゲームから生き残る事を決めた。それはまた、他人を殺すと決めたと同じ事でもあった。
だが、志郎の手の中ではまだピンクの腕時計が光る。
妹が残してくれた大切なプレゼントだ。ショッカーとなった今でも、これだけは
大切に持ち続けていた。
その時計が彼に何かを伝えようとするように、針を小刻みに震わせていた。
□
「風見志郎か…だが、信用出来ない。現に、あいつはあんたを殺そうとしていた。」
葦原涼は、憮然とした表情で立花藤兵衛へ言葉を返した。
志郎は戦いを放棄した。その事で藤兵衛は志郎の心の葛藤を感じ取り、涼へ
「停戦協定」を結ぶように提案したのだ。
だが、涼には簡単には受け入れられない。この男は、未遂とはいえ一度は殺し合いに乗ろうとした。
その事が、後々厄介になる可能性だってある。
だが、あくまで藤兵衛は志郎の「心変わり」を信じたいと言った。
しかし、当の志郎はその提案に無言で俯いているだけだ。
藤兵衛は、志郎の肩を叩き睨み付ける彼の瞳から目を逸らさずに、語り始めた。
「今までのお前に、何があって…そういう力を持てたかは知らん。
だが、わしは知ってるんだ。お前によく似た男達をな。
あいつ等は、自分達が人間でなくなっても、たとえ家族を失ったとしても。
誰の為でもなく、他人の為に報われもせん戦いをした。
なぁ、志郎。お前も、失った物もあれば得た物もあるんじゃないか?」
涼にはこの壮年風の男、立花藤兵衛と名乗った老人が嫌いにはならなかった。
むしろ、こういう昔気質で人情味のある人間は好きだ。
何より、今の言葉が涼の心を大きく揺さぶっていた。
この人なら、自分の異形の姿を認めてくれるのではないか。
恩師にも、恋人にも拒絶された力を。
(あんたなら、俺の気持ちを分かってくれるのか…?)
だが、それを素直に現す事は涼にとっては苦手だった。
「あんた、お人好しが過ぎるな。こんな奴を庇っても、何の意味もない。
風見志郎。お前がどういう奴かは知らないし、知りたくもない。
だが、お前が持っている力はお前が使い道を決めろ。
迷っていても始まらない……その手で殺すのか。守るのか。決めるのは、お前だ。」
そう言うと、志郎の頬を一発殴り付けた。
「…何をする!!貴様…」
不意に殴られた志郎は、言葉少なに言い返した。
涼は、志郎を睨み付けたまま微動だにしない。
「お前が、この人にやった事の借りを返しただけだ。
今度、もしお前が本気で戦うというのなら…俺が全力で相手をしてやる。」
そう言うと、涼は藤兵衛を一瞥しそっぽを向いてしまった。
そんな涼を見て、藤兵衛もまた、葦原涼と名乗るこの青年を気に入った。
不器用そうで、いて根はいい奴だ。そう、藤兵衛は直感した。
「そういうお前も、あいつが戦いを止めたら何もしなかった。
口は悪そうだが、気に入ったぞ。お前と一緒に行動する。
俺は決めた!!あと、こいつともな。な、志郎!!」
志郎、と呼ばれ風見志郎は面倒臭そうに顔を上げた。
初めて会ったときよりも、いくらかは人間臭い表情ではある。
「俺は確かに風見志郎だ。だが、あんたのいう仮面ライダーV3じゃない。」
拗ねた子供のように答える志郎を見て、藤兵衛は微笑んだ。
まるで子を見守る父のように。
「確かに。まだ、お前は仮面ライダーじゃない。
だが、必ずわしがお前を仮面ライダー、いやV3にしてやる。絶対に、な。
まずは仲間を探すぞ!!さっとさと動かないと朝が来ちまう
からな。」
――もう1人の風見志郎に、仮面ライダーの称号を与える事を決めた男・立花藤兵衛。
再び与えられた命を賭けて、他者を守る事を決めた男・葦原涼。
未だ、妹と組織の狭間で葛藤する男・風見志郎。
3人の歩く先。見えるのは闇か、光か。
□
藤兵衛「さぁーて。まずは情報収集だ!それにしても、このバイク。やけに派手だな。お前のか?」
涼「俺のじゃない。」
藤兵衛「しかし、凄いデザインだな…作った奴の顔が見てみたい。」
涼「俺もだ。」
**状態表
【風見志郎@仮面ライダーTHE-NEXT】
【1日目 現時刻:黎明】
【現在地:C-5 採掘場】
【時間軸:】THE-NEXT中盤・CHIHARU失踪の真実を知った直後
【状態】: 健康。2時間変身不可。
【装備】:なし
【道具】:支給品(詳細不明)、ピンクの腕時計
【思考・状況】
1.出会った参加者(藤兵衛、涼)とは馴れ合うつもりはない。
あくまで利用する為に今は行動を共にする。
2.戦いに対する迷い。ショッカーに対する忠誠心への揺らぎ。
3.藤兵衛、涼の言葉にかつての琴美、一文字に投げかけられた言葉を思い出す。
深い葛藤。
【葦原涼@仮面ライダーアギト】
【1日目 現時刻:黎明】
【現在地:C-5 採掘場】
【時間軸:】第27話 死亡後
【状態】: 健康
【装備】:ジャングラー(採掘場で入手)
【道具】:支給品一式、ホッパーゼクターのベルト
【思考・状況】
1.殺し合いには加担しない。脱出方法を探る。
2.立花藤兵衛を信頼。行動を共にする。風見志郎への警戒心。いつでも戦う覚悟はある。
3.自分に再び与えられた命で、救える者を救う。
戦おうとする参加者には容赦しない。
【立花藤兵衛@仮面ライダーアマゾン】
【1日目 現時刻:黎明】
【現在地:C-5 採掘場】
【時間軸:】アマゾン本編、初登場頃(ジャングラー製作前)
【状態】: 首に軽傷(圧迫による痣)、その他は健康
【装備】:なし
【道具】:支給品(詳細不明)
【思考・状況】
1.殺し合いはしない。あくまで戦いの阻止、脱出を目指す。その為に、まずは
情報を集める。今置かれた状況を理解する。
2.自分の知る男と同じ名前、同じ姿を持つ風見志郎を仮面ライダーにする。
葦原涼を信頼。協力して脱出方法を探す。
3.同じ目的を持つ仲間を探す為に移動。
|012:[[「誰か」のためのライダー]]|投下順|014:[[我想フ――――、]]|
|006:[[そういう・アスカ・腹黒え]]|時系列順|016:[[囚われの虎と蛇]]|
||[[風見志郎]]|019:[[想いを鉄の意志に変えて]]|
||[[葦原涼]]|019:[[想いを鉄の意志に変えて]]|
||[[立花藤兵衛]]|019:[[想いを鉄の意志に変えて]]|
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