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*恐怖!死神ショッカーライダー大部隊結成作戦!! 「死神博士、少しお話が……」  影山の声が死神にかかる。白髪の老人に、黒いマントを羽織る死神博士は用意した紅茶を一口飲んで、影山に振り返った。  病院の一室、受付ロビーの並んでいるプラスチック製の椅子は座り心地がいいとはいえないが、それでも疲れを取るには充分である。  死神はここに合流する予定のヒビキを始め、風間らの仲間なる人物をロビーで影山と共に待つ。  襲撃者がいれば、ご丁寧に入り口から進入するとも思えないが、合流する連中はここを必ず通る。  だからこそ、ここは見張りに最適な場所なのだ。死神の目的、ヒビキたちとの接点を作る、という一点において。  彼らと交代で仮眠をとることに決め、こうして影山といる。  城戸たちとの情報を整理しようとしていた死神の思考を中断する結果となったが、影山の表情を見るに何か重大なことを気づいた様子が伺えた。  影山自身にはあまり期待でいないが、ZECTなる組織の技術には興味がある。  ZECTの技術についての情報か期待をして、影山を促した。 「いってみろ」 「はい。風間に支給されたハイパーゼクターについてです」 「ふむ……」  影山の幼い印象を抱いてしまう顔を見つめ、期待していた答えが返ってきたことに内心ほくそ笑む。  黒い高級そうなスーツとは不釣合いの印象を持つ影山の器にふさわしく、表情は緊張していた。 「はい。風間が持っているハイパーゼクターは、我らZECTの開発した新たなゼクターです。 機密のために詳しくは聞かされなかったのですが……何でもその力は時間を超越するとか」 「ほう、時間を」  機密保持のために聞かされていないということは、影山が信用できないのか、聞かされる地位にないのか。  仮面ライダーとしての力があるため、前者、あるいは両方である可能性が高い。  それはさておき、時間を超越する力、ということに聞き覚えがある。  牙王から聞かされた、『時の列車』である。 「ふむ、ご苦労だった。何か他に気づいたことがあるなら、また報告するがいい」 「はい! もちろんですよ!! 任せてください!!」  適当に相槌を打ちつつ、死神は調子に乗りやすい影山を醒めた目つきで見つめる。  機嫌よく離れていく影山を思考の隅に追いやり、改めてハイパーゼクターと牙王のいう『時の列車』について考える。  時間軸……周りとは自分の常識が大きくかけ離れていることはもちろん気づいている。  牙王のコンビニや、さまざまな機能を持つ小型電話。  明らかに自分たちがいた時代にない機能だ。影山、牙王、城戸、風間と話をしたところ、それぞれ2000年代出身という情報を聞き出した。  もっとも、牙王から聞いた『時の列車』の存在を考えれば自分たちをさまざまな時代から集めることが可能だろう。  そして、影山よりたった今入った情報、『ハイパーゼクター』について思考をまわす。  影山の情報は『時を超越』することが可能だということだ。そのようなアイテムが簡単に支給されたことに疑問を持つ。  もっとも、『時を超越』する能力は自分達の身体能力、変身能力に課せられたと同じように制限によって使えないのだろう。  これらを使い物にするには、まず制限を解除しなければならない。  制限自体は、改造されてリミッターがつけられた事実があれば死神は即見破っている。  そして、人間である影山のように制限がかかっているものもいた。  変身アイテムに手を加えた、と考えるにはその手のアイテムが多すぎる。  影山や影山と最初に組んでいた男、自分に支給されたカードデッキや牙王のマスターパス、技術も出自も違うそれらのアイテムに手を加えるのに、どれほどの時と手間が必要か科学者の死神は理解している。  何より、それらに手を加えて弱体化するより、手駒にして使った方が効率がいい。  となれば、一括で参加者に制限を加えるもの。 (首輪か……)  身体を灰化するだけでなく、身体能力を制限する。  重要な機能を目に入るところに置くスマートブレインに死神は呆れるが、同時に解除の道が極めて困難だと知る。  参加者に本郷や自分がいる。ショッカーの科学者やIQ600を越える天才を参加しても解除されないという自信。  その自信があるからこそ、自分たちを参加者と選んだのだろう。  首輪を解除しかねない自分たちが参加させら手理由は何通りか考えられる。  たとえばスマートブレインが自分たちを侮っているか。 (いや、それはない)  この殺し合いに参加させる際に、人選は厳選するはずだ。少なくとも、自分が主催者ならそうした。  それに、『侮ってくれている』に期待するなど、宝くじに当選することを視野に入れて高級マンションを購入するようなものだ。  科学者である自分がするべきことではない。 (なら、この首輪が解析不可能なのか……)  すべての機能を通常ではありえない技術を積み込み、並みの科学者では理解ができない構造という可能性を考慮してみる。  この世界に来てさまざまな未知の技術に出会った今では、ありえなくもないと唸る。  だが、解除となると話は別だ。首輪を外すなら、現物を手に入れて分解すればある程度道は開ける。  何も首輪に詰め込まれた技術を100%理解する必要はない。  外れない首輪を作るなど、死神を前にしては無理としか言いようがなかった。  死神はショッカーの誇る科学者だ。未知の技術だろうが、そんなものは無視して『外す』ことに一点集中して首輪の構造を理解することはできる。 (考えるに、首輪の解除は可能……)  そう、首輪を外すだけなら、決して不可能ではないだろう。  つまり、この制限と離れることもできるのだ。  そこで、先ほどの疑問が蘇る。  なぜ、ハイパーゼクターを支給したのかということ。  制限が解け、条件がそろうのなら一人でノーリスクで脱出する参加者がいないとも限らない。  参加者を逃がすなど、企画者であるスマートブレインからすれば痛手だ。  そういう事態を避ける方法は三つ。  一つは逃げた参加者を追撃する手段をスマートブレイン側が保持しているということだ。  ハイパーゼクターを解析し、時を超える能力を持っているゆえに、ハイパーゼクターを用なしと判断して純粋に殺し合いの道具として支給した。  どの道、ハイパーゼクターを手に入れて『時を超越』する能力を使える条件を整えてもスマートブレインを倒さねば参加者に安息の時は来ない。  つまり、スマートブレインはハイパーゼクターを手に入れた参加者が向かってくることを計算に入れている。  この線は妥当だろう。  二つ目は時を越えることが、この島に限り『時を超越』する能力を行えない可能性。  自空間を移動する門のような存在があるなら―― 事実、時の列車はパスと列車を通してしか時間移動できないと聞いた ――その門たる存在をスマートブレインが握っている。  ハイパーゼクターも能力を行使するなら、その門を通る必要があり、抑えるのはそこだけでいい。  もっとも、時の門などの仮説に意味はない。単純に時間移動の手段をすべてスマートブレインに握られている。  その可能性の考慮だ。  そして三つ目は、制限が決して解けないものだという可能性だ。  首輪を外すことは、先ほどの思考で確認したとおり、可能だと死神は推察している。  つまり、その上で制限が解けないということは、 (首輪を外すこと自体が罠)  という可能性が高くなる。最悪の結論が死神に訪れた。  首輪が外れないようにスマートブレインは厳重に警戒をしているはずだ。  首輪を外せば死体が灰化する、も首輪を解析させないための一手にすぎない。  幾重にも首輪を分解できないようにする手を仕掛けて、それでも解除した結果残ったのが罠という絶望を突きつける。  たとえば、首輪を解除した瞬間、バトルロワイアルのルールを無視して、スマートブレインが大部隊を投入してこないとも限らない。  あるいは、首輪を解除した参加者を確認した瞬間、ミサイルの雨をこの島に撃ち込みかねない。  あるいは、首輪が外れた瞬間、上空から強力な毒ガスをばら撒くのかもしれない。 (つまり、スマートブレインの目的を探り、大人数の首輪を同時に解除できる状況にならない限り、首輪を外すのはむしろ自殺行為というわけか)  辿り着いた結論に、死神は忌々しげに顔をしかめる。  スマートブレインがどれほどの規模の組織を持っているかは知らないが、もしショッカー並みの組織力を持つなら厄介だ。  首輪を解除した瞬間、殺し合いを放棄して上にあげた手段をもってして現メンバーを全滅、同じバトルロワイアルを他のメンバーで繰り返すであろう。  つまり、死神は首輪の解析を進めると同時に、スマートブレインの目的を探り、集団を結成し、叩き潰さねばならない。  そのためには必要な手がある。 (本郷猛、そして一文字隼人と同盟を組まねばならまい)  きりきりと胃が痛むが、死神はどうにか堪える。思考するだけで泥を吐きそうな気分になるのに、実際目の前にすればこれ以上の苦痛が生まれるだろう。  だが、そう贅沢は言っていられない。  実際、両名にあったことがある城戸や風間がいる。  容姿の説明をしようとした二人を遮り、見張りを買って出たのはダブルライダーとの同盟を持ち込むためでもある。  現状では正直、死神に戦力が足りない。  制限が厄介な現状、たとえ宿敵でも力を借りたい。何より、一番戦力を把握でいるのはダブルライダーだ。そうなると、連携を組みやすいのはゾル大佐かダブルライダーかである。  何より、二人……特に本郷猛の持つ『カリスマ』を死神は期待した。  スマートブレインとの決着は集団を結成できなければ厳しい。  その点、本郷なら立花藤兵衛や多くの協力者を得て、アンチショッカー同盟に見込まれ、ショッカーを裏切ってから僅か数ヶ月で日本だけでなく、世界にも仮面ライダーの名を轟かせたほどのカリスマがある。  結成した大集団が烏合の衆では困るのだ。仮面ライダーに力を持たせるのはなるべく避けたいが、そんな余裕はない。  それに、奇妙な話だが同盟を確約した時、こちらの約束を守る確信があるのはダブルライダーなのだ。  他のライダーおよび人間はバトルロワイヤルの恐怖にいつ気が触れるか信用が置けない。  いつ約束を反故にして襲い掛かるか気が気ではない。  精神の強固さと、誠実さ両方に信頼が置けるのはよりにもよって宿敵のダブルライダーだ。  たとえ一時的であっても、手を組まざるを得ない。 (いずれ本郷猛と組む日に備えて、影山のような戦力を増やしていかねばな。そう、この死神が指揮するショッカーライダー部隊を!!)  大きな組織を待つのは派閥による争い。  ショッカーとて例外ではない。死神にとっては未来の話だが、ショッカーがゲルショッカーへと代変わりした際、旧ショッカーの怪人および戦闘員は始末している。  これはショッカーを一枚岩にするための、手段である。もっとも、乱暴な手段であるが。  それはともかく、死神が本郷と組むにあたってしなければならないのは己の味方を増やすこと。  影山は既に丸め込んでいる。残り二人、風間と真司に本郷は警戒を呼びかけるだろう。 (それだけは避けなくてはな)  本郷の声をも退ける『信頼』が彼らとの間に必要だと、死神は悟った。 (そして、牙王の言っていた時の列車。あやつはどこかに時の列車……神の列車といっていたな。 それがあると考えていたが……ないだろう)  もし時の列車があるとしても、スマートブレインの手元以外には考えられない。  時の列車は殺し合いを破綻させることができる最大の武器だ。  牙王から聞いた限り、ハイパーゼクター以上に都合のいい性能を持つ時の列車を奴らが放っておくとは考えにくい。  時の列車の行方は、スマートブレインが奪ったのか、もしくは…… (破壊だな。持ち主ごと。牙王によれば、神の列車を持つ牙王とゼロライナーと呼ばれる列車の持ち主はここにいる。 時の列車の持ち主が三人の内二人がそろっているのに、たった一人仲間外れになるのはおかしい。 だが、現実にデンライナーと呼ばれる列車の持ち主は呼ばれていない。 ならば、答えは一つ。デンライナーの持ち主、そやつは殺されている)  死神の冷酷な思考がそう結論付ける。  他にも根拠はあった。風間と真司の仲間ハナの存在である。  ハナなる人物はデンライナーの乗員であった。彼女と同じく、モモタロスという第一回放送前に死んだ男もそうだ。  つまり、スマートブレインは『時を超越できる列車』からその乗員を『いつの間にか』連れ出したのである。  時の列車の干渉を上回る干渉能力を持つ組織が、時の列車を見逃しておくと見るのは難しい。  おそらく時の列車は破壊、およびスマートブレインの手駒として保管のどちらかだろう。  そして、この殺し合いに参加者としてもれたということなら、最初の見せしめの二人のライダーと同じく、始末された。  そう見るのが自然だ。 (デンライナーなる時の列車の運行人による手助けは期待できないな。まあ、我らショッカーの幹部は助けを求める柄ではないから、どうでもよいが)  デンライナーを始め、時の列車を戦力としてみるのはおろかな行為だ。  死神はそう結論つけて、立ち上がる。 「どこに行くんですか?」 「影山。ワシは風間と城戸に話がある。お前にはここの見張りの引継ぎを任ずる」 「あいつらのところにですか?」 「そう不快な顔をするでない。我々は生き残らねばならぬ。 そのためにハイパーゼクターの解析は必須。少し貸してもらうよう交渉してこよう」 「……そういうことなら」  影山が少し不服そうに了承するが、死神は気づかない振りをして踵を返す。  ハイパーゼクターもそうだが、風間や真司といった男たちがどの程度戦力になるのか、見極めるために。 □ 「……まったく馬鹿げている」  風間はベッドに腰をかけながら、いびきをたてて眠る真司を見つめ、ため息を吐いた。  窓を見ると空はどこまでも青く、もし変身で空を飛ぶことができるのなら気持ちいいだろうなと感想をいだいた。  首にかかる鉄の感触を感じ、風間はもう一度ため息を吐く。  風間は真司の暢気さに呆れ、死神とか言う明らかに怪しい雰囲気の老人の言葉を信じる人のよさにさらに呆れていた。  最初であった時からやかましく、お人好しだと感じていた相手だが、ここまでとは。  結構厄介な相手と組んだものだと風間は思う。  もともと風間は影山と組んでいる死神を前にして、別れることを提案するつもりだった。  ゴンを人質にするような卑怯者と組む怪しげな老人を信用する気など、風間にはない。  その風間の思惑を超えてとりあえず一緒になったのは目の前でいびきをかいている真司が大きい。  曰く、『仲間は少しでも多いほうがいい』『俺たちがまず信頼を示さないで、仲間を増やせない』とか。  お人好しにふさわしい多彩な意見で押し切られてしまった。流されている現状は非常にまずい。  かといって真司を一人にして出て行くほど冷血漢ではない。  何より、ハナはここに来る。  影山のような奴と合流することになるのは仕方ないとしても、接触する機会は減らしてやりたい。  影山は全女性の毒だ。ハナを近づけるわけにはいかない。 「いてっ!」  そう思考している風間の前で、真司がベッドから転げ落ち、目を覚ます。  どこまでも暢気な真司に対して、風間は毒気を抜かれた。  コンコン、とドアからノック音が聞こえてくる。  死神の入る許可を求める声を聞き、特に断る理由のない風間は承知する。 「どうしました? もう見張りの交代ですか?」 「いいや、少し二人に話があってな」 「どうぞ、死神さん。本郷さんの知り合いの方の話なら、大歓迎ですよ。あ、お茶入れましょうか?」 「先ほど紅茶を飲んできた。城戸くん、気を使わなくて結構だ」 「あ、そうっすか」  和やかな会話をするごく普通の青年と怪しげな老人。シュールな組み合わせに風間は頭痛が起きる。  少なくとも常識人を自負する自分としては、見ていてため息しか出ない。 「ところで、先ほどの情報交換の際に君たちの持ち物で興味をもってな」 「へえ、何にです?」 「銀色のカブトムシを模したアイテムがあっただろう。あれは影山曰く、ハイパーゼクターというアイテムらしい」 「ほう、影山がね。と、いうことはこれはZECTの開発したアイテムだということでしょうか?」 「そのようだ。その能力が特殊なのだ。そう、影山から伝えによると、時を超える能力を持つという」 「時を越える……クロックアップの応用でしょうか……?」 「分からない。しかし、その技術を調べることはワシにも君たちにも充分利益がある行為だと思うが?」  いいながら、死神は首輪を指差した。風間はすぐに察しが付き、疑問符を頭に浮かばせている真司を突っついて耳打ちする。  おそらく、死神は首輪の解析をするため、未知の技術を調べたいということなのだろうと。  声に出さなかったのは、何らかの手段で監視されていることを示している。  耳打ちを終えて、風間は死神を見つめる。果たして、信頼に足る人物かどうか?  影山と一緒に行動しているところを見ると、信用できるとはいい難い。怪しげな風貌も不信に一役買っている。  簡単にハイパーゼクターを渡していいのか?  風間の答えはでなかった。 「いいっすよ。どんどん借りていってください」 「ちょっと、勝手に……」 「いいじゃないか。こいつを何とかするためだぜ。死神さんは本郷さんの知り合いだって言うんだから、信用できるって」 「あなたという人は……」  風間は頭痛を抑えるような仕草をしながら、真司を見つめる。  真司の瞳に自分が正しいと確信している人間の色があった。  その態度に誰かを思い出す。騒がしい、天道の傍にいるあの男。  風間は加賀美新を、真司に重ねた。この手の人間のあしらい方は心得ているはずだが、死神と出会ってからは真司のペースだ。  自分の本領発揮できる相手、女性もいないことだとやや自棄になりながら、風間は死神にハイパーゼクターを差し出す。 「好きにしてください。ただし、私たちの手助けもしてもらいますよ」 「ふふふ、当然だ。我々は同志なのだからな」  風間はこれ見よがしに首輪を指差した。  死神が頷き返し、離れていくのを見つめ、盛大にため息をつく。  その原因は…… 「やっぱり死神さん、貫禄あるよな。年の功……なんてな」  どこまでも能天気であった。 □  真司と風間がいる一室から移動をし、死神は一人黙考する。  容易にハイパーゼクターが手に入ったのはありがたいが、死神に逆に不安が訪れる。 (あやつ……城戸真司は期待できないな……)  冷酷な評価を死神はくだす。風間はまあ、合格点だといってもいい。  それほど頭がよさそうに見えないのは二人とも一緒だが、賢すぎると死神の障害となるゆえ、そこは構わない。  むしろ影山や風間のような凡庸な人間の方が扱う側としてはありがたい。  そこそこの思考が回り、それでいて腕が立つ。  駒としてはちょうどいい。  問題は、逆に考えが足りない真司のような人物だ  真司は死神から見れば、おろかすぎる。風間や影山なら矮小な疑心を持って黙する場面でも盲目的に人を信じ、口にする。  こちらの仕草で察せず、風間の耳打ちで目を輝かせた瞬間、死神は真司を切り捨てる覚悟を決めた。  善良すぎる。こちらに引き込もうとも、周りを信じすぎるゆえ扱いにくい。  真司はこちらの言葉を容易に信じるように、悪意を持って近づく者の言葉も信じるであろう。  一人にさせるならのたれ死ねばいいが、集団として紛れ込んでいるとなると厄介だ。  こちらの集団が崩壊する隙を作りかねない。 (戦いのドサクサにまぎれて殺し、首輪を確保する。その程度の使い道しか見えぬな)  死神の冷徹な判断が降りる。  何事もすぎたるは及ばざる如し。信頼は必要だか、だれかれ構わず信頼しすぎる奴は要らない。  彼の行く道は常に、屍が築かれていた。 **状態表 【死神博士@仮面ライダー(初代)】 【1日目 現時刻:午前】 【現在地:G-4 病院】 【時間軸】:一号に勝利後。 【状態】:若干疲労、擦り傷程度の傷多数  【装備】:鞭 【道具】:基本支給品一式、デスイマジンの鎌@仮面ライダー電王、ハイパーゼクター 【思考・状況】 基本行動方針:打倒本郷、及び一文字(保留)。この殺し合いをショッカーの実験場と化す。 1:ダブルライダーと一時休戦をする。 2:集団を結成し、スマートブレインに対抗する。 3:影山、風間を利用して戦いを有利に進める。 4:首輪を外す方法を研究する。その為にも研究施設へ向かう。首輪のサンプルが欲しい。 5:未知のライダーシステムおよびハイパーゼクターの技術を可能な限り把握する。 6:影山をショッカーライダーとして導く……? 7:利用できそうな人物を集める、障害となりうるのであらば排除。 8:真司はいずれ切り捨てる。 ※一文字隼人(R)の事を一文字隼人(O)だとは信じていません。 また、第一回放送で呼ばれた一文字隼人(O)は一文字隼人(R)だと思っています。 ※流れ星は一戦闘に六発まで使用可、威力はバイクがあれば割と余裕に回避できる程度。  尚、キック殺しは問題なく使えます。 ※変身解除の原因が、何らかの抑止力からではないかと推測しています。 ※風間と城戸の所持品、カブト世界、 龍騎世界について把握しました。 ※ハイパーゼクターはジョウント移動及び飛行が不可能になっています。マニュアルはありません。 【考察まとめ】 1.首輪の100%解析は不可だが、解除することは可能。 2.首輪を外せるのは罠で、タイミングが重要。 3.時空を超越して逃げても、追跡される。 4.会場に時の列車はない。あるとしてもスマートブレインの手の中。 5.ガオウから聞いた、デンライナーの持ち主は干渉を避けるために既に死んでいる可能性が高い。 【影山瞬@仮面ライダーカブト】 【1日目 現時刻:午前】 【現在地:G-4 病院】 【時間軸:33話・天道司令官就任後】 【状態】:全身に若干の疲労。背中に軽い裂傷。 【装備】:ザビーゼクター、ブレス 【道具】:支給品一式×2、ラウズカード(◆J)、不明支給品0~2(確認済) 【思考・状況】 基本行動方針:生き残り、脱出する。 1:取り敢えず死神博士に協力する。 2:天道総司を倒した参加者、牙王は自分の手で倒す。 3:自分に使用可能な武器・変身ツールの確保。 4:木場とは出来れば会いたくない……。 5:仲間を集める。 ※午前1時過ぎの時点でG-2のガソリンスタンドに乗り物はありませんでした。 ※不明支給品は彼に戦力として見なされていません。 ※風間と城戸の所持品、龍騎世界について把握しました。 【風間大介@仮面ライダーカブト】 【1日目 現時刻:午前】 【現在地G-4 病院】 [時間軸]:ゴンと別れた後 [状態]:鼻痛(鼻血は止まっています) [装備]:ドレイクグリップ、ドレイクゼクター [道具]:支給品一式、オロナミンC2本(ぬるめ) 【思考・状況】 基本行動方針:戦いはなるべく回避し、できるだけ早く脱出する。 1:都市部の探索。仲間との合流。 2:協力者を集める(女性優先) 3:謎のゼクターについて調べる。 4:あすかがどうなったのか心配。 5:移動車両を探す。 6:影山瞬に気をつける ※変身制限に疑問を持っています。 【城戸真司@仮面ライダー龍騎】 【1日目 現時刻:午前】 【現在地:G-4 病院】 [時間軸]:劇場版、レイドラグーンへの特攻直前 [状態]:全身に軽度の痛み、芝浦の死に悲しみ [装備]:カードデッキ(龍騎) [道具]:支給品一式 【思考・状況】 基本行動方針:早期に殺し合いを止めた上でのスマートブレイン打倒 1:仲間を集めて主催者打倒 。 2:金色の仮面ライダー(グレイブ)に注意する。茶髪の男?まさか…? 3:本郷ともできれば再度合流したい。 4:志村の後を追い、長田結花との合流を目指すついでに話を紐解く。 5:手塚に似てるなぁー。 [備考] ※不信感を多少持ちましたが、志村をまだ信用しています。 ※名簿に手塚、芝浦、東條、香川の名前がある事から、スマートブレインが死者蘇生の技術を持っていると考えています。 ※連続変身出来なかった事に疑問を感じています。 ※志村について話していません。 ※カブト世界について把握しました。 [共通備考] ※死神博士を除く三人は互いに所持品、行動方針、出身世界程度の情報交換をしました。 |072:[[感情(前編)]]|投下順|074:[[Weak and powerless]]| |072:[[感情(前編)]]|時系列順|074:[[Weak and powerless]]| |066:[[ちぐはぐな仲間たち]]|[[死神博士]]|000:[[後の作品]]| |066:[[ちぐはぐな仲間たち]]|[[影山瞬]]|000:[[後の作品]]| |066:[[ちぐはぐな仲間たち]]|[[風間大介]]|000:[[後の作品]]| |066:[[ちぐはぐな仲間たち]]|[[城戸真司]]|000:[[後の作品]]|
*恐怖!死神ショッカーライダー大部隊結成作戦!! 「死神博士、少しお話が……」  影山の声が死神にかかる。白髪の老人に、黒いマントを羽織る死神博士は用意した紅茶を一口飲んで、影山に振り返った。  病院の一室、受付ロビーの並んでいるプラスチック製の椅子は座り心地がいいとはいえないが、それでも疲れを取るには充分である。  死神はここに合流する予定のヒビキを始め、風間らの仲間なる人物をロビーで影山と共に待つ。  襲撃者がいれば、ご丁寧に入り口から進入するとも思えないが、合流する連中はここを必ず通る。  だからこそ、ここは見張りに最適な場所なのだ。死神の目的、ヒビキたちとの接点を作る、という一点において。  彼らと交代で仮眠をとることに決め、こうして影山といる。  城戸たちとの情報を整理しようとしていた死神の思考を中断する結果となったが、影山の表情を見るに何か重大なことを気づいた様子が伺えた。  影山自身にはあまり期待でいないが、ZECTなる組織の技術には興味がある。  ZECTの技術についての情報か期待をして、影山を促した。 「いってみろ」 「はい。風間に支給されたハイパーゼクターについてです」 「ふむ……」  影山の幼い印象を抱いてしまう顔を見つめ、期待していた答えが返ってきたことに内心ほくそ笑む。  黒い高級そうなスーツとは不釣合いの印象を持つ影山の器にふさわしく、表情は緊張していた。 「はい。風間が持っているハイパーゼクターは、我らZECTの開発した新たなゼクターです。 機密のために詳しくは聞かされなかったのですが……何でもその力は時間を超越するとか」 「ほう、時間を」  機密保持のために聞かされていないということは、影山が信用できないのか、聞かされる地位にないのか。  仮面ライダーとしての力があるため、前者、あるいは両方である可能性が高い。  それはさておき、時間を超越する力、ということに聞き覚えがある。  牙王から聞かされた、『時の列車』である。 「ふむ、ご苦労だった。何か他に気づいたことがあるなら、また報告するがいい」 「はい! もちろんですよ!! 任せてください!!」  適当に相槌を打ちつつ、死神は調子に乗りやすい影山を醒めた目つきで見つめる。  機嫌よく離れていく影山を思考の隅に追いやり、改めてハイパーゼクターと牙王のいう『時の列車』について考える。  時間軸……周りとは自分の常識が大きくかけ離れていることはもちろん気づいている。  牙王のコンビニや、さまざまな機能を持つ小型電話。  明らかに自分たちがいた時代にない機能だ。影山、牙王、城戸、風間と話をしたところ、それぞれ2000年代出身という情報を聞き出した。  もっとも、牙王から聞いた『時の列車』の存在を考えれば自分たちをさまざまな時代から集めることが可能だろう。  そして、影山よりたった今入った情報、『ハイパーゼクター』について思考をまわす。  影山の情報は『時を超越』することが可能だということだ。そのようなアイテムが簡単に支給されたことに疑問を持つ。  もっとも、『時を超越』する能力は自分達の身体能力、変身能力に課せられたと同じように制限によって使えないのだろう。  これらを使い物にするには、まず制限を解除しなければならない。  制限自体は、改造されてリミッターがつけられた事実があれば死神は即見破っている。  そして、人間である影山のように制限がかかっているものもいた。  変身アイテムに手を加えた、と考えるにはその手のアイテムが多すぎる。  影山や影山と最初に組んでいた男、自分に支給されたカードデッキや牙王のマスターパス、技術も出自も違うそれらのアイテムに手を加えるのに、どれほどの時と手間が必要か科学者の死神は理解している。  何より、それらに手を加えて弱体化するより、手駒にして使った方が効率がいい。  となれば、一括で参加者に制限を加えるもの。 (首輪か……)  身体を灰化するだけでなく、身体能力を制限する。  重要な機能を目に入るところに置くスマートブレインに死神は呆れるが、同時に解除の道が極めて困難だと知る。  参加者に本郷や自分がいる。ショッカーの科学者やIQ600を越える天才を参加しても解除されないという自信。  その自信があるからこそ、自分たちを参加者と選んだのだろう。  首輪を解除しかねない自分たちが参加させら手理由は何通りか考えられる。  たとえばスマートブレインが自分たちを侮っているか。 (いや、それはない)  この殺し合いに参加させる際に、人選は厳選するはずだ。少なくとも、自分が主催者ならそうした。  それに、『侮ってくれている』に期待するなど、宝くじに当選することを視野に入れて高級マンションを購入するようなものだ。  科学者である自分がするべきことではない。 (なら、この首輪が解析不可能なのか……)  すべての機能を通常ではありえない技術を積み込み、並みの科学者では理解ができない構造という可能性を考慮してみる。  この世界に来てさまざまな未知の技術に出会った今では、ありえなくもないと唸る。  だが、解除となると話は別だ。首輪を外すなら、現物を手に入れて分解すればある程度道は開ける。  何も首輪に詰め込まれた技術を100%理解する必要はない。  外れない首輪を作るなど、死神を前にしては無理としか言いようがなかった。  死神はショッカーの誇る科学者だ。未知の技術だろうが、そんなものは無視して『外す』ことに一点集中して首輪の構造を理解することはできる。 (考えるに、首輪の解除は可能……)  そう、首輪を外すだけなら、決して不可能ではないだろう。  つまり、この制限と離れることもできるのだ。  そこで、先ほどの疑問が蘇る。  なぜ、ハイパーゼクターを支給したのかということ。  制限が解け、条件がそろうのなら一人でノーリスクで脱出する参加者がいないとも限らない。  参加者を逃がすなど、企画者であるスマートブレインからすれば痛手だ。  そういう事態を避ける方法は三つ。  一つは逃げた参加者を追撃する手段をスマートブレイン側が保持しているということだ。  ハイパーゼクターを解析し、時を超える能力を持っているゆえに、ハイパーゼクターを用なしと判断して純粋に殺し合いの道具として支給した。  どの道、ハイパーゼクターを手に入れて『時を超越』する能力を使える条件を整えてもスマートブレインを倒さねば参加者に安息の時は来ない。  つまり、スマートブレインはハイパーゼクターを手に入れた参加者が向かってくることを計算に入れている。  この線は妥当だろう。  二つ目は時を越えることが、この島に限り『時を超越』する能力を行えない可能性。  自空間を移動する門のような存在があるなら―― 事実、時の列車はパスと列車を通してしか時間移動できないと聞いた ――その門たる存在をスマートブレインが握っている。  ハイパーゼクターも能力を行使するなら、その門を通る必要があり、抑えるのはそこだけでいい。  もっとも、時の門などの仮説に意味はない。単純に時間移動の手段をすべてスマートブレインに握られている。  その可能性の考慮だ。  そして三つ目は、制限が決して解けないものだという可能性だ。  首輪を外すことは、先ほどの思考で確認したとおり、可能だと死神は推察している。  つまり、その上で制限が解けないということは、 (首輪を外すこと自体が罠)  という可能性が高くなる。最悪の結論が死神に訪れた。  首輪が外れないようにスマートブレインは厳重に警戒をしているはずだ。  首輪を外せば死体が灰化する、も首輪を解析させないための一手にすぎない。  幾重にも首輪を分解できないようにする手を仕掛けて、それでも解除した結果残ったのが罠という絶望を突きつける。  たとえば、首輪を解除した瞬間、バトルロワイアルのルールを無視して、スマートブレインが大部隊を投入してこないとも限らない。  あるいは、首輪を解除した参加者を確認した瞬間、ミサイルの雨をこの島に撃ち込みかねない。  あるいは、首輪が外れた瞬間、上空から強力な毒ガスをばら撒くのかもしれない。 (つまり、スマートブレインの目的を探り、大人数の首輪を同時に解除できる状況にならない限り、首輪を外すのはむしろ自殺行為というわけか)  辿り着いた結論に、死神は忌々しげに顔をしかめる。  スマートブレインがどれほどの規模の組織を持っているかは知らないが、もしショッカー並みの組織力を持つなら厄介だ。  首輪を解除した瞬間、殺し合いを放棄して上にあげた手段をもってして現メンバーを全滅、同じバトルロワイアルを他のメンバーで繰り返すであろう。  つまり、死神は首輪の解析を進めると同時に、スマートブレインの目的を探り、集団を結成し、叩き潰さねばならない。  そのためには必要な手がある。 (本郷猛、そして一文字隼人と同盟を組まねばならまい)  きりきりと胃が痛むが、死神はどうにか堪える。思考するだけで泥を吐きそうな気分になるのに、実際目の前にすればこれ以上の苦痛が生まれるだろう。  だが、そう贅沢は言っていられない。  実際、両名にあったことがある城戸や風間がいる。  容姿の説明をしようとした二人を遮り、見張りを買って出たのはダブルライダーとの同盟を持ち込むためでもある。  現状では正直、死神に戦力が足りない。  制限が厄介な現状、たとえ宿敵でも力を借りたい。何より、一番戦力を把握でいるのはダブルライダーだ。そうなると、連携を組みやすいのはゾル大佐かダブルライダーかである。  何より、二人……特に本郷猛の持つ『カリスマ』を死神は期待した。  スマートブレインとの決着は集団を結成できなければ厳しい。  その点、本郷なら立花藤兵衛や多くの協力者を得て、アンチショッカー同盟に見込まれ、ショッカーを裏切ってから僅か数ヶ月で日本だけでなく、世界にも仮面ライダーの名を轟かせたほどのカリスマがある。  結成した大集団が烏合の衆では困るのだ。仮面ライダーに力を持たせるのはなるべく避けたいが、そんな余裕はない。  それに、奇妙な話だが同盟を確約した時、こちらの約束を守る確信があるのはダブルライダーなのだ。  他のライダーおよび人間はバトルロワイヤルの恐怖にいつ気が触れるか信用が置けない。  いつ約束を反故にして襲い掛かるか気が気ではない。  精神の強固さと、誠実さ両方に信頼が置けるのはよりにもよって宿敵のダブルライダーだ。  たとえ一時的であっても、手を組まざるを得ない。 (いずれ本郷猛と組む日に備えて、影山のような戦力を増やしていかねばな。そう、この死神が指揮するショッカーライダー部隊を!!)  大きな組織を待つのは派閥による争い。  ショッカーとて例外ではない。死神にとっては未来の話だが、ショッカーがゲルショッカーへと代変わりした際、旧ショッカーの怪人および戦闘員は始末している。  これはショッカーを一枚岩にするための、手段である。もっとも、乱暴な手段であるが。  それはともかく、死神が本郷と組むにあたってしなければならないのは己の味方を増やすこと。  影山は既に丸め込んでいる。残り二人、風間と真司に本郷は警戒を呼びかけるだろう。 (それだけは避けなくてはな)  本郷の声をも退ける『信頼』が彼らとの間に必要だと、死神は悟った。 (そして、牙王の言っていた時の列車。あやつはどこかに時の列車……神の列車といっていたな。 それがあると考えていたが……ないだろう)  もし時の列車があるとしても、スマートブレインの手元以外には考えられない。  時の列車は殺し合いを破綻させることができる最大の武器だ。  牙王から聞いた限り、ハイパーゼクター以上に都合のいい性能を持つ時の列車を奴らが放っておくとは考えにくい。  時の列車の行方は、スマートブレインが奪ったのか、もしくは…… (破壊だな。持ち主ごと。牙王によれば、神の列車を持つ牙王とゼロライナーと呼ばれる列車の持ち主はここにいる。 時の列車の持ち主が三人の内二人がそろっているのに、たった一人仲間外れになるのはおかしい。 だが、現実にデンライナーと呼ばれる列車の持ち主は呼ばれていない。 ならば、答えは一つ。デンライナーの持ち主、そやつは殺されている)  死神の冷酷な思考がそう結論付ける。  他にも根拠はあった。風間と真司の仲間ハナの存在である。  ハナなる人物はデンライナーの乗員であった。彼女と同じく、モモタロスという第一回放送前に死んだ男もそうだ。  つまり、スマートブレインは『時を超越できる列車』からその乗員を『いつの間にか』連れ出したのである。  時の列車の干渉を上回る干渉能力を持つ組織が、時の列車を見逃しておくと見るのは難しい。  おそらく時の列車は破壊、およびスマートブレインの手駒として保管のどちらかだろう。  そして、この殺し合いに参加者としてもれたということなら、最初の見せしめの二人のライダーと同じく、始末された。  そう見るのが自然だ。 (デンライナーなる時の列車の運行人による手助けは期待できないな。まあ、我らショッカーの幹部は助けを求める柄ではないから、どうでもよいが)  デンライナーを始め、時の列車を戦力としてみるのはおろかな行為だ。  死神はそう結論つけて、立ち上がる。 「どこに行くんですか?」 「影山。ワシは風間と城戸に話がある。お前にはここの見張りの引継ぎを任ずる」 「あいつらのところにですか?」 「そう不快な顔をするでない。我々は生き残らねばならぬ。 そのためにハイパーゼクターの解析は必須。少し貸してもらうよう交渉してこよう」 「……そういうことなら」  影山が少し不服そうに了承するが、死神は気づかない振りをして踵を返す。  ハイパーゼクターもそうだが、風間や真司といった男たちがどの程度戦力になるのか、見極めるために。 □ 「……まったく馬鹿げている」  風間はベッドに腰をかけながら、いびきをたてて眠る真司を見つめ、ため息を吐いた。  窓を見ると空はどこまでも青く、もし変身で空を飛ぶことができるのなら気持ちいいだろうなと感想をいだいた。  首にかかる鉄の感触を感じ、風間はもう一度ため息を吐く。  風間は真司の暢気さに呆れ、死神とか言う明らかに怪しい雰囲気の老人の言葉を信じる人のよさにさらに呆れていた。  最初であった時からやかましく、お人好しだと感じていた相手だが、ここまでとは。  結構厄介な相手と組んだものだと風間は思う。  もともと風間は影山と組んでいる死神を前にして、別れることを提案するつもりだった。  ゴンを人質にするような卑怯者と組む怪しげな老人を信用する気など、風間にはない。  その風間の思惑を超えてとりあえず一緒になったのは目の前でいびきをかいている真司が大きい。  曰く、『仲間は少しでも多いほうがいい』『俺たちがまず信頼を示さないで、仲間を増やせない』とか。  お人好しにふさわしい多彩な意見で押し切られてしまった。流されている現状は非常にまずい。  かといって真司を一人にして出て行くほど冷血漢ではない。  何より、ハナはここに来る。  影山のような奴と合流することになるのは仕方ないとしても、接触する機会は減らしてやりたい。  影山は全女性の毒だ。ハナを近づけるわけにはいかない。 「いてっ!」  そう思考している風間の前で、真司がベッドから転げ落ち、目を覚ます。  どこまでも暢気な真司に対して、風間は毒気を抜かれた。  コンコン、とドアからノック音が聞こえてくる。  死神の入る許可を求める声を聞き、特に断る理由のない風間は承知する。 「どうしました? もう見張りの交代ですか?」 「いいや、少し二人に話があってな」 「どうぞ、死神さん。本郷さんの知り合いの方の話なら、大歓迎ですよ。あ、お茶入れましょうか?」 「先ほど紅茶を飲んできた。城戸くん、気を使わなくて結構だ」 「あ、そうっすか」  和やかな会話をするごく普通の青年と怪しげな老人。シュールな組み合わせに風間は頭痛が起きる。  少なくとも常識人を自負する自分としては、見ていてため息しか出ない。 「ところで、先ほどの情報交換の際に君たちの持ち物で興味をもってな」 「へえ、何にです?」 「銀色のカブトムシを模したアイテムがあっただろう。あれは影山曰く、ハイパーゼクターというアイテムらしい」 「ほう、影山がね。と、いうことはこれはZECTの開発したアイテムだということでしょうか?」 「そのようだ。その能力が特殊なのだ。そう、影山から伝えによると、時を超える能力を持つという」 「時を越える……クロックアップの応用でしょうか……?」 「分からない。しかし、その技術を調べることはワシにも君たちにも充分利益がある行為だと思うが?」  いいながら、死神は首輪を指差した。風間はすぐに察しが付き、疑問符を頭に浮かばせている真司を突っついて耳打ちする。  おそらく、死神は首輪の解析をするため、未知の技術を調べたいということなのだろうと。  声に出さなかったのは、何らかの手段で監視されていることを示している。  耳打ちを終えて、風間は死神を見つめる。果たして、信頼に足る人物かどうか?  影山と一緒に行動しているところを見ると、信用できるとはいい難い。怪しげな風貌も不信に一役買っている。  簡単にハイパーゼクターを渡していいのか?  風間の答えはでなかった。 「いいっすよ。どんどん借りていってください」 「ちょっと、勝手に……」 「いいじゃないか。こいつを何とかするためだぜ。死神さんは本郷さんの知り合いだって言うんだから、信用できるって」 「あなたという人は……」  風間は頭痛を抑えるような仕草をしながら、真司を見つめる。  真司の瞳に自分が正しいと確信している人間の色があった。  その態度に誰かを思い出す。騒がしい、天道の傍にいるあの男。  風間は加賀美新を、真司に重ねた。この手の人間のあしらい方は心得ているはずだが、死神と出会ってからは真司のペースだ。  自分の本領発揮できる相手、女性もいないことだとやや自棄になりながら、風間は死神にハイパーゼクターを差し出す。 「好きにしてください。ただし、私たちの手助けもしてもらいますよ」 「ふふふ、当然だ。我々は同志なのだからな」  風間はこれ見よがしに首輪を指差した。  死神が頷き返し、離れていくのを見つめ、盛大にため息をつく。  その原因は…… 「やっぱり死神さん、貫禄あるよな。年の功……なんてな」  どこまでも能天気であった。 □  真司と風間がいる一室から移動をし、死神は一人黙考する。  容易にハイパーゼクターが手に入ったのはありがたいが、死神に逆に不安が訪れる。 (あやつ……城戸真司は期待できないな……)  冷酷な評価を死神はくだす。風間はまあ、合格点だといってもいい。  それほど頭がよさそうに見えないのは二人とも一緒だが、賢すぎると死神の障害となるゆえ、そこは構わない。  むしろ影山や風間のような凡庸な人間の方が扱う側としてはありがたい。  そこそこの思考が回り、それでいて腕が立つ。  駒としてはちょうどいい。  問題は、逆に考えが足りない真司のような人物だ  真司は死神から見れば、おろかすぎる。風間や影山なら矮小な疑心を持って黙する場面でも盲目的に人を信じ、口にする。  こちらの仕草で察せず、風間の耳打ちで目を輝かせた瞬間、死神は真司を切り捨てる覚悟を決めた。  善良すぎる。こちらに引き込もうとも、周りを信じすぎるゆえ扱いにくい。  真司はこちらの言葉を容易に信じるように、悪意を持って近づく者の言葉も信じるであろう。  一人にさせるならのたれ死ねばいいが、集団として紛れ込んでいるとなると厄介だ。  こちらの集団が崩壊する隙を作りかねない。 (戦いのドサクサにまぎれて殺し、首輪を確保する。その程度の使い道しか見えぬな)  死神の冷徹な判断が降りる。  何事もすぎたるは及ばざる如し。信頼は必要だか、だれかれ構わず信頼しすぎる奴は要らない。  彼の行く道は常に、屍が築かれていた。 **状態表 【死神博士@仮面ライダー(初代)】 【1日目 現時刻:午前】 【現在地:G-4 病院】 【時間軸】:一号に勝利後。 【状態】:若干疲労、擦り傷程度の傷多数  【装備】:鞭 【道具】:基本支給品一式、デスイマジンの鎌@仮面ライダー電王、ハイパーゼクター 【思考・状況】 基本行動方針:打倒本郷、及び一文字(保留)。この殺し合いをショッカーの実験場と化す。 1:ダブルライダーと一時休戦をする。 2:集団を結成し、スマートブレインに対抗する。 3:影山、風間を利用して戦いを有利に進める。 4:首輪を外す方法を研究する。その為にも研究施設へ向かう。首輪のサンプルが欲しい。 5:未知のライダーシステムおよびハイパーゼクターの技術を可能な限り把握する。 6:影山をショッカーライダーとして導く……? 7:利用できそうな人物を集める、障害となりうるのであらば排除。 8:真司はいずれ切り捨てる。 ※一文字隼人(R)の事を一文字隼人(O)だとは信じていません。 また、第一回放送で呼ばれた一文字隼人(O)は一文字隼人(R)だと思っています。 ※流れ星は一戦闘に六発まで使用可、威力はバイクがあれば割と余裕に回避できる程度。  尚、キック殺しは問題なく使えます。 ※変身解除の原因が、何らかの抑止力からではないかと推測しています。 ※風間と城戸の所持品、カブト世界、 龍騎世界について把握しました。 ※ハイパーゼクターはジョウント移動及び飛行が不可能になっています。マニュアルはありません。 【考察まとめ】 1.首輪の100%解析は不可だが、解除することは可能。 2.首輪を外せるのは罠で、タイミングが重要。 3.時空を超越して逃げても、追跡される。 4.会場に時の列車はない。あるとしてもスマートブレインの手の中。 5.ガオウから聞いた、デンライナーの持ち主は干渉を避けるために既に死んでいる可能性が高い。 【影山瞬@仮面ライダーカブト】 【1日目 現時刻:午前】 【現在地:G-4 病院】 【時間軸:33話・天道司令官就任後】 【状態】:全身に若干の疲労。背中に軽い裂傷。 【装備】:ザビーゼクター、ブレス 【道具】:支給品一式×2、ラウズカード(◆J)、不明支給品0~2(確認済) 【思考・状況】 基本行動方針:生き残り、脱出する。 1:取り敢えず死神博士に協力する。 2:天道総司を倒した参加者、牙王は自分の手で倒す。 3:自分に使用可能な武器・変身ツールの確保。 4:木場とは出来れば会いたくない……。 5:仲間を集める。 ※午前1時過ぎの時点でG-2のガソリンスタンドに乗り物はありませんでした。 ※不明支給品は彼に戦力として見なされていません。 ※風間と城戸の所持品、龍騎世界について把握しました。 【風間大介@仮面ライダーカブト】 【1日目 現時刻:午前】 【現在地G-4 病院】 [時間軸]:ゴンと別れた後 [状態]:鼻痛(鼻血は止まっています) [装備]:ドレイクグリップ、ドレイクゼクター [道具]:支給品一式、オロナミンC2本(ぬるめ) 【思考・状況】 基本行動方針:戦いはなるべく回避し、できるだけ早く脱出する。 1:都市部の探索。仲間との合流。 2:協力者を集める(女性優先) 3:謎のゼクターについて調べる。 4:あすかがどうなったのか心配。 5:移動車両を探す。 6:影山瞬に気をつける ※変身制限に疑問を持っています。 【城戸真司@仮面ライダー龍騎】 【1日目 現時刻:午前】 【現在地:G-4 病院】 [時間軸]:劇場版、レイドラグーンへの特攻直前 [状態]:全身に軽度の痛み、芝浦の死に悲しみ [装備]:カードデッキ(龍騎) [道具]:支給品一式 【思考・状況】 基本行動方針:早期に殺し合いを止めた上でのスマートブレイン打倒 1:仲間を集めて主催者打倒 。 2:金色の仮面ライダー(グレイブ)に注意する。茶髪の男?まさか…? 3:本郷ともできれば再度合流したい。 4:志村の後を追い、長田結花との合流を目指すついでに話を紐解く。 5:手塚に似てるなぁー。 [備考] ※不信感を多少持ちましたが、志村をまだ信用しています。 ※名簿に手塚、芝浦、東條、香川の名前がある事から、スマートブレインが死者蘇生の技術を持っていると考えています。 ※連続変身出来なかった事に疑問を感じています。 ※志村について話していません。 ※カブト世界について把握しました。 [共通備考] ※死神博士を除く三人は互いに所持品、行動方針、出身世界程度の情報交換をしました。 |072:[[感情(前編)]]|投下順|074:[[Weak and powerless]]| |072:[[感情(前編)]]|時系列順|074:[[Weak and powerless]]| |066:[[ちぐはぐな仲間たち]]|[[死神博士]]|095:[[完璧の名の下に]]| |066:[[ちぐはぐな仲間たち]]|[[影山瞬]]|095:[[完璧の名の下に]]| |066:[[ちぐはぐな仲間たち]]|[[風間大介]]|095:[[完璧の名の下に]]| |066:[[ちぐはぐな仲間たち]]|[[城戸真司]]|095:[[完璧の名の下に]]|

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