希望と絶望と偽りの顔(後編)

最終更新:

匿名ユーザー

- view
だれでも歓迎! 編集

希望と絶望と偽りの顔(後編)


音撃棒を探し回る響鬼。その間にグレイブはこちらへと近づき、途中でどういうわけか志村の元へと近づき、首を持ち上げながら絞めている。
手塚は自分にできることを咄嗟に考え、ライアのデッキを再び小雨へと振りかざす。
しかし何の反応も返さない。何度変身と叫んでも、変わらない。
他にできることといえば響鬼をサポートする事だ、と判断しデイパックの中に埋もれた剣を響鬼に手渡そうと掴む。
と、掴んだ手にまるで待っていたかのように小さな影が手塚の腕にしがみ付いてきた。

「なっ!?」

咄嗟に腕をぶんぶんと振るうが、その影は離れることなくしがみつき、右手に握られた剣へと近づいていく。
冷静に見てみればそれは機械で作られた…ザリガニ?と思ったが今こうして右手をつねっている所を考えるにサソリらしい。
今度は正解だったらしく機械の紫サソリは尻尾と両手のハサミを振り上げ、何かを手塚に伝えようとしている。
よくよく見れば今握り締めている紫の剣とこのサソリはどこか似たような作りに見える。もしかしたら…だが。
手塚は紫サソリ、いやサソードゼクターを掴み、剣の持ち手の収まりが良さそうな所に取り付けようとして…止まる。

「…いいのか?俺で」

左手でもがくサソードゼクターは何も答えない。だが逃げようとしない所を見て、肯定と受け取る。

「…すまん、力を借りる」

今この場で戦える力がまだある事を、手塚は素直に嬉しく思う。

「運命は、俺が変える!変身ッ!」

―――HENSHIN―――

ライアの変身とは違う、細かな粒子が重厚な鎧を作り出し、手塚の身体を覆っていく。
その様子に気付いた響鬼は素直に驚いていた、それと同時に、まだ自分達は戦えるという意思が燃え上がってくる。

「ヒビキさんはトドメを!足止めは俺がやります!」
「手塚…オッケー!任せろ!」

サソードは紫の鎧とオレンジ色に光るチューブをギシギシと軋ませながらグレイブの元へと駆けて行く。
いつのまにか志村は地面に倒れこんでおり、グレイブは黄金の剣を振り上げていた。
間に合え、間に合え…手塚は心で祈るように呟き、その呟きは声になる。

「間に合え!」

――ガキィン――

金属と金属がぶつかり合う音が辺りに響く――

          *   *   *

ギリギリと、グレイブとサソードの鍔迫り合いは続く。
だがサソードは寝そべっており、体勢はあまりにも不利と言える。
あのまま普通に走れば間に合う事はできなかったろう。
サソードは咄嗟に野球のヘッドスライディングのように飛び込み、本当のギリギリでグレイブの剣を受け止めたのだ。
こうして志村も自分も無事な事を素直に喜ぶべきなのだが…

「そっか…君はあの鞭のライダーの方だね。つまんない奴かと思ってたけどそんな切り札があるなんてね」

グレイブはギリギリと力を増し、押し込んでくる。サソードは力でなら負けていない、或いは勝っていたかもしれないが…
体勢が不利な事、手塚が右腕に深い傷を追っている事等、悪い要素が重なり、少しずつではあるが確実に押されていた。
だがサソードにとって今重要なのはほんの少しでも長持ちさせることだ。ともかく時間を――

「手塚、待たせた!」

グレイブの右半身に再び巨大な火炎鼓が現れ、その身を拘束させる。
ようやく音撃棒を探し当てた響鬼が再び清めの音を叩き込まんとグレイブへと迫る。
グレイブが驚き、一瞬緩んだ隙にサソードは転がるように抜け出し、志村を抱えて少しでも遠くへと…歩き出す。
右腕から流れ出す血は決して無視できる度合いではなく、確実に手塚の体力を消耗させていた。
その消耗した状態でギリギリの鍔迫り合いを行い、手塚の身体は限界に間近。
それでも巻き込まれないよう、志村を抱え必死に歩く。

あとほんの数センチ…響鬼は手塚達が安全な距離まで離れるまで、時間にしてほんの数秒だけ、グレイブへの音撃が遅れた。
グレイブはその数秒の間にダメージを最小限に済ませる方法を探し出し、辺りに散らばったラウズカードを目だけで見やる。

(あれなら、あのカードならきっと…)

カードは裏になっていた物も当然あるが、目当てのカードは表になっておりすぐに見つけることができた。
グレイブは自由な左足を地面に叩き付け、その衝撃でラウズカードを宙に浮かせる。

「音撃打・爆裂強打の型ぁっ!!!」

同じく自由な左手で目当てのカードを掴み、すぐさまラウズさせる。身体を包み込むように広がる異質な感覚。
その感覚のさらに上から、強烈な清めの音が繰り出された――

ドォンッ!!

「っ!」

響鬼の両手に伝わる異質の感触。生身の身体相手にこのような手ごたえはありえない。
見ればグレイブはその衝撃に吹き飛ばされ…ていない。拘束された体勢のまま、1メートルほどずれたように動いただけだった。
金色の鎧は光沢を増したかのように輝き、明らかに何かが変わっている。

「青い仮面ライダーも…使ってたなぁ、このカード…ふふ」

グレイブがラウズしたカードは、スペードの7『トリロバイトメタル』。このカードでグレイブのボディを金属に変え硬度を上げた。
清めの音が金属に対して効果が薄いのかどうかはわからないが、結果としてグレイブはほとんどダメージを受けることなくこの場を凌ぎきったのだ。

「せっかくだから…これも使っちゃおう」

必殺の一撃を簡単に受け流され、呆然としている響鬼の前で、散らばったカードを悠々と拾い上げ、その中から3枚のカードをラウズする。

――KICK――
――THUNDER――
――MACH――

――Lightning Sonic――

3体のアンデッドの力がグレイブへと蓄えられ、その身体からは青い稲妻が放電している。
グレイブラウザーを地に刺し、右足を後ろに下げ、両手を広げながらゆっくりと腰を沈める。

「ふふ…ライダーキック」

響鬼へとグレイブは駆け出す。
そして勢いよく飛び上がり、蹴りこむ体勢は緑のリントの戦士と同じ構え。
自らに蹴りこんだ3人の仮面ライダーそれぞれのキックをグレイブなりに複合させた物を…響鬼に蹴りこむ。

逃げ切れないと悟った響鬼は咄嗟に両手に持った音撃棒を交差させ、少しでも防御しようとしたが…
折れた音さえ響く事はなく、あっけなく音撃棒は仲良く割れるように折れた。
遮る物が何も無くなったグレイブの右足は響鬼の胸に突き刺さり、衝撃や青い稲妻…全てを注ぎ込み、その身を吹き飛ばしす――
先ほどまで手塚が座り込んでいた木の隣の木に、突き刺さるように響木は叩き込まれていた。
意識を失ったかのように前のめりにどしゃりと倒れこむ。泥が跳ね、未だ降り続ける小雨が響鬼を濡らす。

「…壊れちゃったかな?」

変身が解けていない所を見ると恐らくはまだ意識はあるのだろう。だがそれでも響鬼が立ち上がる事はない。

「…ま、今はそれよりも…」

グレイブは地面に突き刺したグレイブラウザーに手をかけ――

「こっちだね」
「っ!」

素早く引き抜き迫ってきていたサソードの刃を受け止める。

「遅いよ。疲れちゃったの?やっぱり君はつまらないね」
「くぅっ!」

事実、サソードは遅かった。体力は消費していたし、慣れない変身の姿というのもある。
だが何よりも鎧のようなものが無駄に重かった。これさえなければまだまともに動けるはずなのだが。
身を守るという意味では頼もしいが攻める事に関して言えば邪魔としか言えない。取れそうな所がまた憎らしい。
しかしそれでもサソードがやるしかなかった。自分しかいないのだから。
本当なら響鬼がやられる前にこうして妨害できればよかったのだろうが…
響鬼の劣勢に気付き、駆け出した時には既にグレイブはキックの体勢に入っていたのだった。
重い体が憎らしい。鎧が脱げれば、もっと早く動ければ…
そんな思いが目を曇らせたのだろうか?グレイブが新たなカードを取り出しラウズする事を見逃してしまったのは。

――MIGHTY――

黄金の光がグレイブラウザーに纏わりつき、発生した重力場の影響でサソードの力がガクンと抜ける。
抵抗の弱くなったサソードをグレイブが乱暴に斬りつける。胸に赤い一文字が描かれ、手塚はその場に前のめりに倒れこんだ。
変身が解除されサソードゼクターは手塚の周りをおろおろと動き回る。その間にも少しずつ、赤い水溜りが手塚を中心に広がっていく。

――サソードゼクターは震えた――
――鎧を脱ぎ去る事も、誰よりも速く動く事も自分には可能だったのに――
――その方法を自らの主に伝える事ができず、良いようにやられる主の姿に――
――悔しさともどかしさから、サソードゼクターは人知れず震えた――

グレイブはふと空を見上げた。そろそろ止まないかなぁ、この雨。そんな事を考えて。
もはやこの場には自分に敗れた3人のライダーだけ。少し楽しめたが…本当に少しだ、楽しみ足りない。
どうするか考え…とりあえず自分を嘗めたリントではないライダーを殺そうとグレイブは動こうとして、止まる。

小雨は止み、ほんの少しだけ覗いた晴れ間が、彼を…仮面ライダー響鬼を照らしていた。

「しつこいね…そういうしつこさは嫌いだよ」

グレイブはグレイブラウザーを地面に刺し、杖のようにして両手を乗せる。
響鬼は何も答えず、荒い息を吐きながら短い不恰好な短剣を両手で構えている。

「はぁ…もういいよ。君は結構楽しめたし。そこのライダーも見逃してあげるよ。殺すのは奥のちょっと焦げてるのだけ」
「させない…」

グレイブは大げさに空を見上げ、そしてため息と共に顔を伏せた。

「…じゃ、さようなら」

グレイブはグレイブラウザーを引き抜き、響鬼へと走る。
朦朧とした意識の中で、響鬼は夢を見た。ほんのつかの間の夢を。

          *   *   *

「ヒビキさん」

夢の中で少年が自分の名を呼んでいる。見覚えはないはずなのに、どこかで引っかかる。

「君は…」

少年は答えず、ただ自分を見つめている。知らないはず名前が口からこぼれた。

「たけ…し…猛士…猛士!」

少年が微笑んだような気がした。

「それ、響鬼さんの為に…使ってくれますか?」
「あぁ、ありがたく使わせてもらう、サンキュー!猛士!」
「…はい!」

          *   *   *

「へぇ…本当に…リントの戦士は面白いね」

グレイブの目の前で不思議な事が起こっている。見てくれの悪い短刀が光を発し、刀身が伸びているのだ。
見てくれも引き締まり、赤と銀で構成された刀は素直に美しいと言える。

「…アームド…セイバーだ…」

響鬼自身も驚いている。先ほどの夢が関係しているのだろうか?ただの短刀がこうしてアームドセイバーへと変化している。
超能力や催眠術でも掛けられてるのか、と一瞬疑いたくなるが、そんな次元の話じゃない。
猛士がくれた希望なのだ。猛士の事は知らない。だが、知っている。そんな矛盾。
しかしそれでも尚、繋いでくれた希望なら自分が引き継ぐしかない。
アームドセイバーを口元に寄せ、呟く。

「響鬼、装甲…っ!」

両手でアームドセイバーを構え、流れ出す力を直に感じる。
この場全てを清めるかのような音が鳴り響き、自分の身体を――


――バチッ――


場違いな音が小さく鳴った。

それが自分の首輪から鳴ったものだと響鬼が気付いたとき、アームドセイバーから流れ出す力が自分を弾き飛ばした。
以前にも似たような出来事はあった。初めてアームドセイバーに使おうとした時、力に拒まれ同じように弾き飛ばされた。
だが今の自分はあの時とは違い、更に鍛えられている。なのに、何故?響鬼は呆然と足元に転がるアームドセイバーを見つめている。

――参加者が知りえない首輪の制限に、上位フォームへの制限というものがある――
――クウガのライジングやアメイジングマイティへの変身等が主な対象だ――
――つまり道具を用いずにより強力な姿へと変身する者への制限。それはつまり、響鬼の紅への変身も制限していた――
――響鬼の装甲響鬼への変身を塗装に例えるならば…響鬼という素材はあり、アームドセイバーというトップコートもある――
――だがベースとなるべく響鬼紅が制限され…素材に直接トップコートを施してもそれはすぐに剥がれ落ち、無意味に終るのだ――
――例え話なので剥がれ落ちるという表現を用いたが実際には変身すら行なえずに響鬼は弾き飛ばされた――

顔の変身が解け、身体に漲る鬼の力が弱まっていく事もヒビキは感じていた。
なんだこれは?希望と思い掴んでいった、手繰り寄せていったものは全て無意味に終る。
何から間違えたんだ、俺は?装甲響鬼に変身しようとしたから?あのタックルの時に、音撃棒を落としたから?
さらに遡れば…手塚の占いを聞いて即座に動かなかったから?いや、そもそも俺の決断がもっと早ければ…
どうしてこうなるんだ…熱い力も冷めていき、心の水も津波が起こったかのようにゆらゆらと揺れている。
妙に寒いと思えば、小雨が身体を湿らせ体温を奪っていっていた。変身が解けて全裸になって、晴れたと思った小雨もいつの間にかまた降りだした、か。
ハハ…とヒビキは笑っていた。小雨のせいなのか絶望の涙なのかも判らない水で頬を濡らし、笑っていた。

グレイブ…いや、既にダグバは変身を解いていた…ダグバもまた、小雨に濡れながら笑う。
目の前のあまりにも惨めなリントの姿に、絶望に打ちひしがれ、おまけに全裸だ。笑わない方がおかしい。
その笑みはヒビキとは違い、嘲笑と呼べるが、ヒビキもダグバも気にしない。お互いただ笑っていた。

「ふふ…ねぇ、なんて名前なの?鬼のリント」
「リントぉ…?俺は…俺はヒビキって言うんだ…」

よろしく、と小声で呟き、右手を弱く敬礼のように振る。

「残りは…?志村と…」
「手塚、だ。もう好きにしろよ…」

ハハと笑いながら、ヒビキはちらりと視線を横にずらす。先ほどまで手塚が倒れこんだ近く。
開けっ放しのデイパックには何か銃のような瓢箪のような物が…その近くには赤いカードデッキが泥にまみれて濡れていた。

(あれも同じなんだろうなぁ…)

もしかしたらあれを使えばダグバを倒せるかもしれない、そんな希望。
だがその希望も掴んでしまえば無意味に終るのかもしれない。それならばいっそ…

『響鬼さん』

少年の、猛士の声が聞こえた気がした。ほんの少しだけ熱がこもり、心も落ち着きかける。

(ちょっとちょっとちょっと、どうしちゃったんだよ俺…俺は鬼なんだぞ!人を守るのが鬼の仕事だろ!
 それなのにもう好きにしろだの…希望がすぐ絶望に変わるって…おかしいって絶対!
 そりゃ…そうなるかもしれないけれど…それでもやらないよりかは!そうだ、仮に変身できなかったとしてもあの銃を使えば!
 使い方?銃なら引き金があるはず、それを探し出せれば!)

ようやくヒビキの目に力が戻りはじめる。後はダグバの隙をつけたら、だが…
そのダグバは既に自分に背を向け、歩き始めていた。

「なっ…!?」

ヒビキは迷う。これはチャンスなのか、それとも罠なのか。
迷う間にもダグバは離れていき、手塚の側を何もせずに通過し、振り返る。

「ねぇヒビキ。クウガに伝えて。君の友達の青いライダーの力は僕が大事に使ってあげるって!」
「クウガ…!?」

聞きなれない名前。名簿にも載っていなかったと思う名前。再びヒビキは悩みだす。
再びダグバは背を向け歩き出す。ヒビキは声を上げようとするが、声が出ない。
もしかしたらこのまま全員見逃してくれるのかもしれない、そんな甘い考えのせいで。
今、この状況で変身できれば勝てるかもしれないのに、その希望も、自らの甘い考えへの僅かな執着心で無くなりつつある。

(今を見逃したら…次はない…)

なんとなくそう感じている。動け、動け。冷えた身体に命令し、立ち上がろうとして、再びダグバが振り返る。

「それと…志村が起きたら伝えて。次は本気でやれって。君もリントならね…リントなら…って。ふふ」

そう言い残してピクリとも動かない志村の側を通り過ぎ…いつしかダグバは見えなくなっていた。

          *   *   *

ダグバが去ってしばらくの間、ヒビキは動けなかった。小雨がヒビキの身体をずぶ濡れにしていく。
ふと足に痛みを感じ、頭を動かす。紫色の機械のサソリが、脹脛を小さなハサミでつねっていた。

「そうだ!手塚、志村!」

全裸のまま走り出し、志村と手塚の二人を雨が凌げそうな場所まで担いでいく。
疲れきった身体は悲鳴をあげているが、それでも動くしかない。ヒビキはともかくがむしゃらに動いた。
手塚のデイパックの中に救急箱があったのは本当に幸いだった。自分の予備の服や水等を用いて、二人の傷を治療していく。
どこもかしこも不恰好で見た目は非情に悪いが効果は少なくともあるはずだ。
手塚の傷は酷い。応急処置を済ませたとはいえ、胸の横一文字の傷や右腕の傷からの出血が酷く、輸血が可能ならすぐにでもすべき状況だろう。
志村の傷もまた酷い。全身に無数の傷があり、首に残る手の形をした痣も痛々しい。何よりも酷いのが腹部の火傷だ。
もはや炭化しているのでは、とも思えるほど酷く…ダグバの本気での炎の火力を物語っている。
そんな中所々目に付いた鮮やかな緑はなんだろう、と思ったが草の仕業だろうと考え気にしない事にする。
そして最後に、右腕にしっかりと握り締められた何かが気になった。
ヒビキはどうにかこうにかその手を広げ、中身を確認する。グレイブが使っていたカードのようで、ハートのKと描かれていた。

「志村…すまない…すまない…っ」

ぎゅっ、とカードを握り締め、志村に謝罪する。
志村はあの状況になってもそれでも少しでも自分達を助ける為に脅威となるであろうこのカードを密かに奪っていたのだ。
仮に戦いに乗っていたとしたら、こんな行為はしない。ばれればすぐにでも殺されてしまう、危険な行為なのだから。
手塚だってそうだ。傷だらけになっても、それでも希望を信じ、不慣れな姿で戦った。
サソードゼクターがキシキシと動き、手塚の頬や耳をつねっているが、目覚める気配はない。

「俺は…何をしているんだ…」

本来なら守るべき者であるはずなのに、守られてばかりだ。
何のための鬼なのだろうか、自分はなんのために…

再び足元に痛みを感じる。サソードゼクターが足の小指をつねっていた。

「…そうだな、このままじっとしていた所でしょうがない。二人を病院に連れて行くのが俺のやるべき事なんだ。
 悩むのはいつだってできる。…ありがとな、紫サソリ」

しゃがみ込んでサソードゼクターを撫でようとすると尻尾とハサミを振り上げ、威嚇された。

「ハハ…まぁ、そう嫌うなよ。お前がいなかったら俺やばかったかもしれないしな…」

よし、とヒビキは立ち上がり。ぱんぱんと頬を叩く。
いつのまにか小雨は再び止んでいた。相変わらず空には雲がいくつか健在でまた振り出すかもしれないが…

「二人は必ず俺が守る。いや、二人だけじゃない。皆、俺が…鬼が守ってみせる!」

ヒビキは決意を新たなに気を引き締める。右手には赤いカードデッキ。そして左手には――

「…移動の前に服着ようか」

――着替えの服。


状態表

【日高仁志(響鬼)@仮面ライダー響鬼】
【1日目 現時刻:お昼】
【現在地:D-5エリア北】
[時間軸]:最終回前
[状態]:全身に疲労、顔面に傷、腹部に中度の火傷、背中にダメージ、精神的に疲労、二時間変身不可(響鬼)
[装備]:変身音叉・音角、音撃増幅剣・装甲声刃、カードデッキライア
[道具]:基本支給品一式(着替え1着と元の服を含む)、野点篭(きびだんご1箱つき)、釘数本、不明支給品×1(確認済)折れた音撃棒×2
【思考・状況】
基本行動方針:出来るだけ多くの仲間を守って脱出
1:志村、手塚の治療の為、迂回しつつ急いで病院を目指す。
2:ダグバは放置できない。
3:真司と風間に対する心配。
4:もっと仲間を増やす。
5:あすか、どうしたのかな。
6:手塚と志村は信頼。志村を信頼したから一文字を疑うというわけでは無い。
7:猛士、紫サソリ、ありがとう。
※猛士の剣は音撃増幅剣・装甲声刃に変化しました。
※装甲響鬼に変身するには響鬼紅の制限が解除されないとできません(クウガ、ギルスと同じ制限)
※ン・ダグバ・ゼバを危険人物と認識しました。
※折れた音撃棒は木を使えば多少品質が落ちますが修理が可能です。
※変身制限に疑問を持っています
※志村から一文字(R)と志村に瓜二つな敵が闘っていたという話を聞き、半信半疑です

【手塚海之@仮面ライダー龍騎】
【一日目 現時刻:お昼】
【現在地:D-5エリア北】
[時間軸]:死亡直後
[状態]:胸に一文字の大きな傷。右上腕部に斬撃による傷。全身に疲労とダメージ。二時間変身不可(ライア、サソード)
[装備]:無し
[道具]:基本支給品、マシンガンブレード@仮面ライダーカブト、サソードヤイバー @仮面ライダーカブト、強化マスク
【思考・状況】
基本行動方針:運命を変えないように何としても城戸を守り抜く。
0:気絶中…
1:志村の力を借りて城戸の協力者のグループに参入し城戸の力となる。
2:自分にそっくりな男、一文字(R)への興味。出来れば本郷(R)の死を伝える。
[備考]
※城戸が自分と同じ時間軸から連れてこられたと思っています。
※その為、城戸が死ぬ事は運命を変えられなかったことに相当すると考えています。
※川は下流に向かって流れていきます。
※サソードゼクターに選ばれ、仮面ライダーサソードへと変身できます。
※仮面ライダーサソードのキャストオフ、クロックアップの方法を知りません。
※簡単な応急処置が施されていますが、ちゃんとした治療を行なわないと危険な状態です。
※本郷の言葉から一文字隼人、風見志郎、ハナ、志村純一、クウガ、ダグバの事を知りました。
※放送を聞き逃したため、スマートレディの言った参加者の蘇生に関しては知りません。
※携帯にデータがのこっていたため、死亡者と禁止エリアについては知っています。
※志村から一文字(R)と志村に瓜二つな敵が闘っていたという話を聞き、信じています。

【ン・ダグバ・ゼバ@仮面ライダークウガ】
【1日目 現時刻:お昼】
【現在地:D-5エリア北西】
[時間軸]:47話、クウガアメイジングマイティに勝利後。
[状態]:脇腹に刺し傷、胸部に蹴りによるダメージ、右肩に清めの音によるダメージ、二時間変身不可(戦闘体、グレイブ) 
[装備]:グレイブバックル
[道具]:基本支給品×3 ラウズカード(スペードA~9、ハートQ)、サバイブ『疾風』
【思考・状況】
基本行動方針:究極の闇を齎す。
1: 究極の闇を齎す。
2:強くなったクウガ、龍騎、響鬼、ライア(サソード)と再戦 。
3:『仮面ライダー』と思われる一文字隼人、風見志郎、城戸真司と戦う。
4: 志村は次も本気で来ないのならば容赦しない。
※自身の戦闘能力に制限がかかっていることを何となく把握。
※志村が人間でない事を知りました。
※ハートのKが無くなっている事に気付いていません。
※どこへ向かうかは次の方にお任せします。

          *   *   *

あの時、志村はダグバがラウズカードを使うのを見て、もしかしたら、と思ったのだ。
Kのカードがダグバの持つカードの中にあるかもしれない、無くても使えそうなカードを所持しているのは間違いないはず。
だが自分はまともに動けない身、とするならどうするか?不意を突く事も相手が相手なので難しい…

――ABSORB――

(Qのカード…っ!いや、Qならまだいい。だがKのカードがあるかもしれないんだ…今を逃す手はない!)

自分にできる事は見っとも無く這いずる様に動くか、呻き声をあげることそれだけだ。
これでダグバの注意が引けなければそれでお終いだが…幸か不幸かダグバはその動きに気づき、締め上げるように自分を持ち上げてきた。
この体勢は正直願ってもいない体勢だ。あがくふりをしながらグレイブの腰に掛けられたカードホルダーを蹴り上げ、散らばるようにする。
ここまでは問題ないが、ここから先が難しい。まずダグバが自分を投げ飛ばしてくれるか、これが難しい。
そのためにはダグバを怒らせる必要があるが、いい加減呼吸も苦しくなり考えもまとまらない。

いっそジョーカーへと変身してしまおうか…そんな考えがよぎり、口が自然と動いた。

それがどう動いたのか、自分がどんな言葉を紡ぎ出そうとしたのかは知らないがダグバは自分を投げ飛ばそうとしているらしい。
力を振り絞り、右足でカードホルダーを蹴飛ばし、投げ飛ばされるのと同時にラウズカードも宙に浮かせる。
最後の最後。普通の人間では不可能な、アンデッドだから、ジョーカーだからこその動体視力で宙を舞うカードの絵柄を一枚一枚確認する。

(スペードの2…いらない。スペードの8…悪くは無いが却下。なんだこのカードは?パス。
 スペードの9…もう時間がない、ここらで妥協か?あれは…ハートの…!)

多少不自然だろうと、疑われようと構いはしない。
志村は両手を広げ、ハートのKへと手を伸ばす。手首を倒し、丁度ダグバの死角になった手の内でKを掴む。
掴んだ。後は地面に転がり込むだけ。指を倒し、Kを決して離さないようにして衝撃に備える。
鈍い衝撃が身体を揺さぶり、意識が朦朧とする。それでも手の内にはカードの…Kの感触。
誰かが近づいてくる気がしたがそれがダグバだとしてもどうしようもない。手塚やヒビキがなんとかしてくれると『信じて』やろう…
志村は新たなKが手に入った喜びで笑顔を浮かべた後に…意識を失った。

状態表

【志村純一@仮面ライダー剣・Missing Ace】
【1日目 現時刻:お昼】
【現在地:D-5エリア北】
[時間軸]:剣崎たちに出会う前
[状態]:腹部に重度の火傷、首に絞められた跡、全身に疲労とダメージ、二時間戦闘不可(グレイブ)
[装備]:無し
[道具]:支給品一式、ラウズカード(クラブのK、ハートのK)@仮面ライダー剣、蓮華のワイヤー内蔵型指輪@仮面ライダーカブト
【思考・状況】
基本行動方針:人間を装い優勝する。
0:気絶中…
1:移動して集団に紛れ込む。(市街地に拘らない)
2:橘チーフに合流。
3:『白い怪物と剣崎一真は共に殺し合いに乗り、尚且つ組んでいる』『桜井侑斗は危険人物』という情報を流す。
4:ヒビキ、手塚を利用する。一文字とは合流させたくない。
4:誰にも悟られず、かつ安全な状況でならジョーカー化して参加者を殺害。
5:他の参加者の戦力を見極めて利用する。自分の身が危なくなれば彼らを見捨てる。
6:『14』の力復活のために、カテゴリーKのラウズカードを集める。
[備考]
※デネブの放送について(長田が聞いた範囲で)知りました。 また桜井侑斗は危険人物(?)、デネブは生きていると考えています。
※志村は橘から『仮面ライダーブレイド』の存在は聞いていますが、ライダーシステム資格者が『剣崎一真』という事は知りません。
ですが、志村は此処に連れてこられる前に独自に調査を行い、剣崎一真がブレイドであるいう事、彼の顔なども知っています。
※城戸、本郷(R)に『白い怪物と剣崎一真は共に殺し合いに乗り、尚且つ組んでいる』『桜井侑斗は危険人物』と話しました。
※『自分の協力者、長田結花が東方の人間に協力を求めるために行った』と城戸と本郷に話してあります。
※長田結花は市街地の方へ向かったと思っています。
※手塚に一文字(R)と闘っていたのは自分ではなく自分に瓜二つな男だと話しました。
※簡単な応急処置が施されていますが、ちゃんとした治療を行なわないと危険な状態です。



071:希望と絶望と偽りの顔(前編) 投下順 072:感情(前編)
071:希望と絶望と偽りの顔(前編) 時系列順 076:キックの鬼
071:希望と絶望と偽りの顔(前編) 日高仁志 084:夢路
071:希望と絶望と偽りの顔(前編) 手塚海之 084:夢路
071:希望と絶望と偽りの顔(前編) 志村純一 084:夢路
071:希望と絶望と偽りの顔(前編) ン・ダグバ・ゼバ 094:Fatality-Cross(前編)

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

目安箱バナー