病い風、昏い道(後編)

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「……逃げて!!」

かすかな電子音。その意味を理解するより前に、結花は叫んだ。
刹那、鋭く放たれた光の槍が彼らの足元に突き刺さり、そのエネルギーによってアスファルトが砕け散る。
声をきっかけに、咄嗟に光が結花を、五代がハナをそれぞれ抱えて飛び退ったおかげで直撃は免れた。
激しい衝撃に思わず顔を背けた結花がはっと面を上げると、すぐ近くに上空を睨む光の顔があった。

視線を辿ると、灰色の建物を背に浮かび、鮮やかな色の大剣を構える人外のものの姿。
鳥のような頭部。きらびやかな装飾を纏い、小さく背中に見えるのは羽だろうか。姿から、結花は天使を連想した。
しかし血に汚れた禍々しい笑みに、瞬時にそのイメージは崩れ去る。異形は再び剣を構えた。

 ---Hyper Sting---

再びすぐ傍で大きな爆発音が結花の耳をつんざく。光に抱えられたまま、悲鳴を上げて頭を庇う。

「結花!」

そのまま身を縮こまらせていると、肩を掴まれて揺さぶられた。
顔を上げて光を見つめる。視界の端に小さく、ハナを庇いながら立ち上がる五代の姿が見えた。
至近距離に見る光の表情は険しい。
光は、イブキの音笛を持ったままの結花の手の上に手を重ねて握り、静かに言った。

「ハナと逃げろ。 路地に入って、どこでもいい、屋内に隠れなさい。 絶対に出て来ては駄目」

触れる掌が熱い。結花は黙って、光の言葉を聞いていた。
光たちと離れ離れになるのは本当は不安だったが、否を唱える事はできない。
光は結花のコートから白いデッキを取り出す。

「……これは借りておく。 ―――行け!」

手からぬくもりが消えると同時に、強く突き飛ばされて結花はその勢いのまま走り出した。
同じように駆け出したハナと共に建物の林立する住宅街へと入り込む。
一瞬だけ振り返ると、五代と並び立つ光が目に入った。
その背中がイブキと重なって見え、結花は痛む胸を押さえて、走り続けた。


鳥に似た異形は、余裕ぶってか嫌らしい笑顔を顔に貼り付けたままその場に残った光と五代を見下ろしている。
結花とハナを追う素振りが無いことに内心ほっとしながら、光は隣の五代に呟く。

「これがお前の言っていた“羽の生えた怪人”だな?」

五代は頷く。その手には同じようにハナから預かりうけたものだろう、黒いデッキが握られていた。
二人は同時に、路肩のショーウィンドウにデッキを翳す。
この怪人が橘の放送を中断させた者かどうかはともかく、今ここで倒しておかねばならないのは確かだ。

『変身!』

二人の声が重なり、動作が重なり、虚像が重なる。
仮面ライダーファム。
仮面ライダーナイト。
白き翼を持つものと、闇の翼を持つものが、狂った天使の前に現出した。

「行くぞ!」
「はいッ!!」

召喚機を構え、駆け出す二人の戦士を見て、異形は甲高く耳障りな笑い声を立てた。手にした剣身が赤く輝く。

 ---Hyper blade---

電子音声の後に剣を振りかざすと、巨大な光子の刃が二人に襲い掛かった。
ファム、ナイトは共に地面を素早く転がり、それを避ける。直撃を受けた道路は大きくえぐれ、その威力を物語っている。
もしまともに喰らえば無事では済まされない。
続けざまに閃光が地面を穿ち、巻き上がる瓦礫と砂塵の中で、ナイトはダークバイザーにカードを装填した。
このまま攻撃を受け続ければジリ貧である。上空を飛び回り、遠距離から攻撃を加えてくる相手にはこれしかない。

 ---ADVENT---

鏡面から漆黒の翼が弾丸のように現れ、異形に体当たりを喰らわせる。
衝撃にやや体制を崩した怪人は、わずらわしげに剣を振り回してダークウィングを追い払う。
それを見てナイトは気付いた。以前戦った時に比べて、敵の動きは精彩を欠いている。
疲労やダメージから来るものなのか、制限から来るものなのかは解らないが、チャンスには違いない。

ダークウィングは闇雲に振り回される剣を躱すとすぐさま旋回して、ナイトの背中に合体し彼に飛行能力をもたらした。
素早くもう一枚カードを取り出し、召喚機に読み込ませる。降り来る騎士の槍を手に、ナイトは空へと舞い上がる。
ダークバイザーのような細身の剣では大剣相手には力不足との判断であった。
短期で決着を付けるつもりである事を察したファムも、彼をサポートすべく白き翼を召喚した。

 ---ADVENT---

ブランウィングを伴いナイトは飛翔した。標的めがけてウィングランサーを振るう。
金色の剣身とぶつかり合い、激しい火花が散った。
後ろからブランウィングが鳴き声を上げて突進するが、異形は素早く身をかわして距離を取り、再び剣を構えて攻撃を放つ。
伸びるエネルギーの束を避けて飛びながら、隙をうかがうナイト。異形の背後の鉄塔が視界に入る。そこには―――

(―――人!?)
「五代ーーーッ!!」

思わぬ場所に見た人影によってそらされた意識が光の声によって一瞬で引き戻される。
はっとして見返すと、異形がさながら銃器のように剣を構え、その剣身には燐が集まり今にも解き放たれようとしている所だった。

 ---Hyper Cannon---

目の前が一瞬真白に輝き、あまりの眩さにナイトの思考がほんの数秒途切れる。
覚醒した時には世界がさかさまに映り、自分が墜落している事に五代は気がついた。
まずい、と思った瞬間、純白の影がよぎり、フワリとナイトの体を支える。正体はブランウィングだ。
ナイトを地面に下ろすと、間もなくブランウィングは粒子となって消え去った。

「何をしている!」

怒気も露わに、ファムはナイトの元に駆け寄る。
敵の砲撃を受ける寸前、ブランウィングよりやや早く召喚されたダークウィングは消滅し、そのため直撃を免れたが結果落下することになったのだろう。
その時である。異形は体をそらし、一際大きな声で笑い声をあげた。
二人を見下ろして、彼は冷嘲のこもった声で告げる。

「翼を失っては風に追いつけまい―――ありうべからざる者どもよ。 お前たちに用はないのだ」

そう言い捨てると、二人を掠めて住宅街へと飛び去る。
思惑に気が付いた光は、しまったと呻いた。
最初から違和感は感じていたのだ。
結花の咄嗟の声で避ける事ができた最初の一撃のみならず、結花とハナを庇い思うように動けない自分たちが何故あの威力の攻撃を躱せたのか。
最初から分断させ、時間を稼ぐ事が目的だったのなら、合点が行く。
ようやくたどり着いた目的地を前にしたせいか、全員で余力を残したまま逃走するという選択肢を作らなかった事が悔やまれる。

ファムは踵を返して異形を追うべく走り出した。ナイトもそれに続く。
間に合え、と念じながら―――


状態表


【F-3 南部・放送局へ続く道路上】
【1日目 午後】

【城光@仮面ライダー剣】
[時間軸]:40話、トライアルについて知った後
[状態]:膝などに軽い擦り傷。腹部に裂傷(中程度:応急手当済み)。各部に中程度の打撲。ファムに変身中。30分アンデッド化不可。
[装備]:カードデッキ(ファム)
[道具]:基本支給品・トランシーバーA・ラウズカード(スペードQ/K)
[思考・状況]
基本行動方針:このゲームから脱出する。主催にはバトルファイトを汚した罰を与える。
1:ハナ、結花の保護。鳥の怪人を倒す。
2:北條奪還のため、まずは『青いバラ』『首輪』の入手、『放送』の指令を遂行。
3:他の参加者とは必要以上に関わる気はない。邪魔ならば排除するが基本的に放置。
4:剣崎の死、北條の言葉、乃木との戦闘から首輪制限下における単独行動の危険性を認識。
5:五代の態度に苛立ちつつ、僅かに興味。 志村に違和感。
6:イブキの代わりに、結花の面倒を見る
7:首輪探知手段の支給という行為に疑問
【備考】
※トランシーバーの有効範囲は周囲一マスまでです。
※以下の様に考えています
青い薔薇は首輪と関係がある
ライダーの強化フォームはなんらかの制限が掛かっている。

【五代雄介@仮面ライダークウガ】
[時間軸]:33話「連携」終了後
[状態]:全身打撲、負傷度大(応急手当済み)、強い自己嫌悪。ナイトに変身中。クウガに30分変身不能。
[装備]:カードデッキ(ナイト)警棒@現実、コルトパイソン(残弾数5/6:マグナム用通常弾)
[道具]:警察手帳(一条薫)
[思考・状況]
基本行動方針:絶対に殺し合いを止め、みんなの笑顔を守る
1:ハナ、結花の保護。鳥の怪人を倒す。
2:北條を救出するために、乃木の命令を可能な限りで遂行する。
3:白い未確認生命体(アルビノジョーカー)、ダグバ、ガドル、牙王を倒す。
4:金のクウガになれなかったことに疑問。
5:剣崎の分まで頑張って戦い、みんなの笑顔を守りたい。
6:屋上の人影が気になる。
【備考】
※第四回放送まで、ライジングフォームには変身不能
※ペガサスフォームの超感覚の効果エリアは1マス以内のみです。また、射撃範囲は数百メートル以内に限られます。
※ドラゴン、ペガサス、タイタンフォームには変身可能。ただし物質変換できるものは鉄の棒、拳銃など「現実に即したもの」のみで、サソードヤイバーやドレイクグリップなどは変換不能。
※葦原涼の「未確認生命体事件」の終結を聞き、時間軸のずれに疑問を持ちました。
※葦原涼のギルスへの変身能力について知りません。


※※※


灰色の路地を縫うように、少女たちは駆けていた。手を繋ぎ、決して離れないように、なるべく急いで。
背後に聞こえる爆発音に何度も足が竦む。その度にぎゅっと唇を噛んで、ハナと結花は走った。
やがて音は聞こえなくなり、二人は足を止めた。振り返っても建物の影に隠れて、放送局の前は見えない。

「このあたりでどこかに隠れよう、結花ちゃん」
「……はい」

肩を上下させつつ、結花が従う。ハナは周囲に目を配り、隠れられそうな建物を探した。
光と五代のことは気がかりだったが、今は言われたとおりに身を潜めているしかない。
そう思いながら結花の手を引くが、抗うような仕草をされてふと顔を見返すと、その瞳が恐怖に見開かれているのに気がついた。

「……見つけた」

喉の奥に笑いを含んだ、低い呟きがハナの耳に飛び込んでくる。
はっとして目をやると、同時に路地の向こうに、先刻の鳥の異形の姿があった。
その瞬間、二人は再び走り出した。五代たちのいるであろう放送局からは遠ざかってしまうが、今はそんな事を言っていられない。
幸いなるかな、相手の飛ぶ速度は手にした剣が重いのか、それほど速くはない。
だがいつまでも逃げ続けられるとも思えず、ハナは何か策はないかと考えをめぐらせながら、残る力を振り絞って走り続ける。
けたたましい、狂気の滲む笑い声が聞こえる。腕に下げたデイパックがずしりと重たく感じた。
ハナはある事を思いつき、走り続けつつ結花に言った。

「結花ちゃん、これ、こっち持って! それで、せーので離すの。 いい!?」
「……え!?」

戸惑う結花の手に『それ』を握らせ、家と家の隙間にあるより狭い路地に駆け込んだ。
一気に走り抜け、ほんの少しだけ振り向く。怪物がそのまま付いて来ている事が確認できた。

「いくよ……せーの!」

振り向くと、すぐ背後にまで異形が迫っていた。二人の手を離れた『それ』は広がって、怪物の顔や体に纏いつく。
ハナがここへ来た時に身に着けていた、絢爛たる絹の着物を目隠しに使ったのだ。
驚愕に動きを止めた怪物に、その試みが成功した事を悟り、ハナは結花と共に再び駆け出そうとした。

「―――きゃあッ!」
「結花ちゃん!?」

綾織の打掛は真ん中から二つに切り裂かれ、その間から血まみれの腕が伸びる。
長い黒髪を掴まれ、そのままひきずり倒された結花が痛みと恐怖に悲鳴を上げた。
結花を捕らえ、邪悪な笑顔を浮かべる鳥の怪物。ハナはデイパックから斧を取り出した。
異形は今にも崩れ落ちそうに震え、怯える結花の顔をぐいと覗き込む。
泣き出しそうなその顔に、ほんの一瞬だが、灰色の影が浮かび上がって消えた。

(え……!? 今のは……?)

驚き、見間違いかと目を瞬かせるハナ。異形は短く吐き捨てた。

「お前もまた、人の子ではない」

そう言って結花を突き飛ばす。そのまま地面に転倒する結花にハナは駆け寄り、庇うように立つと斧を構えた。
歩み寄る怪人に、手にした斧で殴りかかるが、簡単に受け止められてしまう。
斧を怪人は放り捨て、なす術のない状況に身を竦ませるハナに手を伸ばした。
割れたガラスによって頬に付けられた、浅い切り傷にその指で触れられて、ぴりりとした痛みが走る。
異形は黒い鉤爪の先に、僅かに付着した血をうっとりと眺め、口に含んだ。
至近距離にあるその顔が引き歪む―――歓喜の表情を浮かべ、異形はハナに厳然と告げた。

「純然たる人の子よ、その涙より赤きもので、我が主に己が咎を明かせ」


状態表


【G-3 住宅街のはずれ】
【1日目 午後】

【風のエル@仮面ライダーアギト】
[時間軸]:48話
[状態]:頭部にダメージ。全身に大程度の負傷・行動原理に異常発生。左手首欠損。30分能力発揮不能。
[装備]:パーフェクトゼクター(+ザビーゼクター)
[道具]:なし
[思考・状況]
基本行動方針:優勝して帰る。 帰ったら…?
1:「仲間」を持つ「強き者」を殺す。容赦する気はない。
2:人を殺すことに、快楽を覚えた。
3:人間の血から、主の人間へ抱く感情の一端を知りたい。
4:パーフェクトゼクター(名前は知らない)の使用法を理解。有効活用したい。
[備考]
※デネブの放送、および第一回放送を聞いていません。
※首輪の制限時間に大体の目星を付け始めました。
※パーフェクトゼクターへの各ゼクターの装着よりも、基本的には各ライダーへの変身が優先されます。現在は資格者不在のザビーゼクターのみ装着されています。
※風間をオーヴァロードと勘違いしています。

【ハナ@仮面ライダー電王】
[時間軸]:劇場版・千姫と入れ替わっている時
[状態]:小規模の打撲、疲労ある程度回復、悲しみと強い決意。
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、洗濯ばさみ、紙でっぽう、ミニカー7台
【思考・状況】
基本行動方針:脱出する
1:仲間と行動。後ほどヒビキたちと合流
2:仲間を探して一緒に脱出する
3:イマジンに対する自分の感情が理解出来ない
4:危険人物に気をつける
5:モモタロス、デネブ、あすか、イブキら仲間達の分まで戦う
7:結花が人じゃない?どういう意味?
6:志村が妙に胡散臭い


※※※


怪人がハナを連れて飛び去った後、一人残された結花は冷たい地面の上でうずくまる。
枯れ果てたと思っていたはずの涙が後から後からこみ上げて、その頬を伝っていた。
恐怖と不安、無力感と絶望。
自己嫌悪と自己憐憫にまみれ、陽光の届かない路地の奥、引き裂かれた綾錦の中で、今だ飛び立てぬ鳥のように、泣き続けていた。


状態表


【長田結花@仮面ライダー555】
[時間軸]本編第41話終了直後(武装警官を一掃する直前)
[状態]小程度の負傷、人間への不信感(軽度) 、海堂・イブキの死に対する強い悲しみ。
[装備]変身鬼笛・音笛、音撃管・烈風、ディスクアニマル(アサギワシ)
[道具]ライダーブレス(ケタロス:資格者不明)、青い花びら 、トランシーバーB
[思考・状況]
基本行動方針:木場と合流する
1:イブキの死に深い悲しみ。自分の無力差を嫌悪。
2:「人間ではない」城光に若干の好意。「人間」の「警官」北條には強い警戒心。
3:仲間達に嫌われたくない。オルフェノクであることは極力隠す。
4:指令なんて、どうしたら……?
※イブキの亡骸がドラグブラッカーに捕食されたのを目の当たりにしています。
※トランシーバーの有効範囲は周囲一マスまでです。
※足元に冥府の斧@仮面ライダーアギトが落ちています。



105:病い風、昏い道(前編) 投下順 106:龍哭(前編)
時系列順 109:Traffics(前編)
五代雄介 110:tears memory
城光
長田結花
ハナ 113:Crisis(前編)
風間大介 113:Crisis(前編)
風のエル 113:Crisis(前編)
橘朔也 113:Crisis(前編)
志村純一 111:憎悪の声は歓喜する(前編)
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