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*顔 ファイズギアが入ったデイパックをしっかりと胸に抱え、桐矢京介は川沿いの道を進んでいた。 いつのまにか汚れてしまった、ブランド物のスニーカーが小石を蹴る。 最初は住宅街を隠れるようにして移動していたのだが、敵が物陰に潜んでいるのではないかという不安に耐えられず、迷った末に前方が見渡せる比較的広い道を進む事にした。 極限状態の京介にはもう、どちらがより安全で、危険であるのか判断できない。 ただ、存在するかしないかわからない恐怖に怯えるよりは、目視した危険から速やかに逃げられるようにと思ったのだった。 後ろ向きではあるものの、本来の負けず嫌いな性質がそうさせたのかもしれない。 一歩歩くたびに、デイパックの中でファイズギアがカチャリ、と小さな音を立てる。 警戒心から普段以上に神経質になっている事を考えても、そんな音が聞こえる程の不気味な静けさである。 本来雑多な音で満ち溢れているはずの街中でなら、尚更だ。 京介はもう一度周囲を見回す。何の変哲も無い住宅地。 生垣越しに民家の庭を覗き込むと、カーテンの開けられた窓の向こうの室内は暗く、やはり無人。 外観も玄関先が妙に砂っぽいのを除けば、芝生もきれいに整えられ、荒れた様子は全くない。 それが京介の目にはよりいっそう異様に映った。 「……まるでマリー・セレスト号みたいだな」 京介は呟く。その声も、自分以外の誰の耳にも届かず消えていくのだと思い、心細さに京介は身を竦ませた。 無論、巷で言われるようなオカルティックな要因で、かの船から乗客が消え失せたのではないと知っている。 だが、都市伝説としてまことしやかに囁かれている状況に、今のこの島はあまりにも似ていた。 その時、不意にデイパックの中から振動を感じ、京介は飛び上がらんばかりに驚いた。 半ばパニックになりながらも、定時放送の時間だと気付き、震える手で携帯電話を開く。 内容を慌ててメモに取り―――女の声で、『海堂直也』の名が呼ばれた時、手が止まった。 (海堂って人……やっぱり殺されたんだ……) どれだけ北崎に叩きのめされても立ち上がり、向かって行った姿を思い出し、罪悪感が湧き上がる。 しかしすぐに気を取り直して、放送の続きを書き取る。 やはり逃げて正解だった、と京介は思う。もし自分があの場に留まったとしても、海堂を助けることは出来なかった。 歌舞鬼と三田村はやはりまだ北崎と行動を共にしているのだろうか? 名前が呼ばれなかった事から生きてはいるのだろうが、どちらにせよわざわざ会いに行くつもりもない。 京介が探すのはヒビキ。他の参加者はあまり信用できそうもないと、今までの経験から断定する。 ―――でももし、ヒビキに会えないまま危険な参加者と遭遇してしまったら? 京介はデイパックを見つめる。いざという時、このファイズギアを使えば、自分も戦えるのではないか。 そう思うものの、踏ん切りがつかない。 明日夢やあきらの前で虚勢を張るのとは訳が違う。 自分の命を懸けて敵と戦う勇気は、今の京介にはなかった。 不安な気持ちのまま、京介は再び歩き出す。静寂がそれを見守っていた。 ※※※ 木場は葦原の後ろで、スピードに乗って流れていく景色をじっと見ていた。 握った地図の端が風に煽られて激しく震える。 建物の白、木々の緑、看板のオレンジや赤が目に飛び込んできては一瞬で通り過ぎていく。 その様子に、木場は今日の出来事をぼんやりと思い出す。 突然この島に連れて来られて、殺し合いを強いられた。 様々な人と出会い、戦い―――たった半日の出来事が、恐ろしく長く続く、悪い夢のように思えた。 (……いや、夢なんかじゃない……) 伏せた瞼の裏に、永遠に会うことの叶わなくなってしまった友人の顔が浮かぶ。 海堂を失った悲しみと後悔が蘇り、暗く冷たく沈んでいきそうな心を、目の前の背中を見つめる事で押し止める。 葦原は、自分自身を信じると言った。どんな現実にも逃げずに戦うと。 お互い言葉の多い方では無いため、交わした会話といえば些細なものだ。 だが木場は葦原の言葉の端々に、彼の例えようもない孤独と、それを超える心の強さを感じ取っていた。 交差点に差し掛かると、葦原はカブトエクステンダーを止めた。後ろを振り返って、木場に降りるよう促す。 素直に従うと、葦原もエンジンを切ってスタンドを下ろし、ヘルメットを外して息をついた。 「これでこのエリアは一回りしたって事になるな」 「はい、ざっとですけど」 褪せたような色の前髪をかき上げながら言う葦原に、地図を眺めながら木場が答える。 動物園から出発した二人は、南下を始める前にお互いの探す相手が居ないかエリアを回ってみる事にした。 とはいえ、1エリアにそれなりの広さがあり、建物の中や狭い路地などに隠れられていては見つけようがない。 しかし、それ以外に当てもないので、地図を頼りにエリア内を一回りしていたのだった。 「もう少し探してみますか?」 「……俺の探す相手はバイクを持っていた。もうこの近くにはいないんだろうな。 あんたがもう少し探したいんなら―――」 「いや、葦原さんに従います。そういう約束でしたし……少ししたら、移動しましょう」 そう言った木場を、葦原がじっと見返す。強い眼差しに、思わず目を逸らしてしまう。 葦原は何も言わずに目線を外し、ガードレールにもたれてペットボトルの水を飲んだ。 彼はきっと解っているのだ、木場が再会を果たす事を恐れているのを。 会って話し合いたい、誤解があるならそれを解きたいと願っているのは本心だが、やはり心底では自分の強さを信じきれないのだ。 「葦原さんは……怖くなかったんですか?」 小さく尋ねる木場に、葦原は意図を問うような視線を投げかける。 葦原が語った境遇は、木場から見ても決して恵まれたものではなかった。 自分と同じく、ある日突然異形と化し、大切な人たちは遠ざかり、他の者には敵対視される。 孤独に戦い続けてなお、『現実』から目を逸らす事なく自分を信じられる強さは、一体どこから来るのか。 出会った時に感じた疑問を、思わず口にしていた。 「自分が人と違うものになってしまったと知って、その姿のように、人の心まで失くしてしまうんじゃないかと思ったことはないんですか?」 葦原の隣に腰を下ろして、横顔を見る。削げた頬に意志の強そうな眉。 その下の瞳は過去を懐かしむのでも、悔いるのでもなく、『今』を見ているのだ。 「俺は、俺のままだ」 葦原は静かに、だがきっぱりと、そう呟いた。 木場は俯く。以前なら自分も同じ答えを返しただろう。だからこそ、悩む巧の背中を押したりもできた。 だが他者を信じられず、守る価値を疑ってしまっている今は? 木場の目の前に飲みかけのペットボトルが突き出される。 葦原の差し出したそれを受け取ると、表面に自分の顔が丸く歪んで映っていた。 薄く被さる灰色の影を見つめながら木場は思う。 自分は、彼のようになれるだろうか……。 ※※※ 市街地を抜けると、京介の目の前には海が広がっていた。 きらきらと光を反射する水面に目を細める。春の日差しに暖められた風が、潮の匂いを運んで来る。 地図を確認すると、島の端まで来てしまったようだ。 急に開けた視界に、誰かいないかと期待と緊張が入り混じった感情を覚える。 辺りを見回すが、コンクリートの波止場にも、砂浜にも、動くものは見当たらない。 ―――いや、砂浜に何かある。ぽつんと小さく横たわる何かが。 最初は流木か何かかと思った。確かめようと近づいて、京介は息を呑んだ。 「アマ――ゾン――さん!」 そこにあったのは以前自分と行動を共にしていたアマゾンの遺体だった。 瞳は固く閉じられ、口の端には赤黒く血がこびりついている。 京介が見ていたような屈託のない表情はすっかり消えうせていたが、確かにアマゾンだ。 一目見て命はないと分かる、血まみれの四肢、胸に開いた大きな穴。 「う……っ」 初めてこの目で見る、人間の死体。あまりの凄惨さに京介は砂浜にへたり込み、こみ上げる吐き気に口を塞ぐ。 目を背けて弱々しく後ずさり、最初の衝撃をなんとかやり過ごすと、次に京介の脳裏に浮かんできたのは疑問だった。 一体誰が、こんな事を。 アマゾンは何者かを追って飛び出して行ったように思えた。もしかして、その相手に? そう思い当たって、自分の血の気が引くのを感じた。 (まだ近くに、そいつが潜んでいるかもしれない!) アマゾンの傷の状態から見て、その相手が人間だとは思えなかった。 灰色の巨体で海堂を一捻りにした北崎や、一瞬で相手を焼き殺すあの白い怪物のような奴に違いない。 幾度も感じた命の危険が蘇る。京介は慌てふためいて立ち上がり、砂を蹴ってその場から走り去った。 物言わぬアマゾンの体の上で、二つの腕輪が小さく光っていた。 ※※※ 歌舞鬼は何度目かに見る海岸線に顔をしかめた。 目的地に向かって移動しているつもりでも、不慣れな乗り物の操作に気をとられて周囲の確認は疎かになる。 しかも、歌舞鬼にとって住宅街の建物はどれも似たり寄ったりで、迷ってしまうのも無理はなかった。 どうやらまた、角を何度も曲がるうちに元の道へ逆戻りしてしまったらしい。 溜息をついて足をつくと、バイクに寄りかかる。気付けばそのボディは、随分とすり傷だらけになっていた。 「やれやれ、どーしたモンかねぇ……」 白く光る水平線を眺めながら呟く。 収穫がなかった訳ではない。住宅街の外れに、デイパックが一つ落ちていた。 持ち主らしき人物、あるいはその死体は見当たらなかったので、拝借した。 中身はざっと確認しただけだが、邪魔になるものでもないし、いずれ役に立つ事もあるだろう。 歌舞鬼が気を取り直し、エンジンを掛けようとすると、僅かな叫び声が耳に届いた。 あれからしばらく経っていたが、他の参加者には会っていない。 何よりもその声に妙に心がざわつき、バイクから降りて声のした方向へ向かった。 物陰からそっと様子を伺う。遠目にはしかとは判じかねたが、自分が殺したアマゾンの傍らに人影が見えた。 (……京介) 歌舞鬼が見ていると、京介はしばし呆然とした後、慌てて走って行った。 おそらく恐怖に駆られて逃げ去ったのだろう。 京介の姿が見えなくなると、歌舞鬼はアマゾンの亡骸にゆっくりと歩み寄った。 京介は気付いただろうか、アマゾンを殺したのが自分だと。 そんなはずはないのだが、何となく胸が苦しいような、そんな気持ちがした。 アマゾンの顔を見下ろす。血の気が失せて白っぽくなった頬を、明るい陽の光が照らしている。 激しい苦痛と殺意によって、まさに修羅のような表情を宿していたアマゾン。 自分がこの手で体を貫いた瞬間、それらから開放され、今はこうして穏やかな顔をしている。 子供たちが浮かべる無垢な笑顔。それがこの殺し合いによって失われるなら――― 歌舞鬼は踵を返し、再びバイクに跨ると、顔のない街に消えた。 ※※※ (オルフェノク、か) 街を駆けながら、葦原は思案する。 木場が言うには、ヒトが一度死を迎えた後蘇り、異形の力を得たものだと言う。 自分自身の境遇との奇妙な符合にも驚いたが、この殺し合いを仕組んだスマートブレインがそうだという話にも驚いた。 ここで遭遇したアンノウン、未確認生命体四号のみならず、未知の存在が噛んでいる。 その事が一体何を意味するか……細かい事は解らないが、事態は思っていたよりも複雑そうだと葦原は思う。 だが、これで自分の何が変わるという訳でもない。救いを求める者は救い、戦いを望む、危険な者とは戦う。 (命を懸けて、必ず倒す……この手で!) 今までもこれからも、それは変わらない。 ハンドルを握る手に力がこもる。ヘルメットのバイザー越しに、前を見据える眼光が一層輝きを増した。 視界の端に葦原が人を捉えるのとほぼ同時に、同乗者が声を漏らした。 川を挟んだ道を、建物の影に隠れるように進んでいる若い男である。 カブトエクステンダーを止め、バイザーを上げて背後の木場を伺うと、険しい表情で男を見つめていた。 「探していた奴か」 察した葦原が尋ねると、木場は小さく頷いた。 聞いた話からすると、あれは桜井侑斗という人物のようだ。 川沿いに植えられた桜の並木に遮られてか、あちらはまだ自分たちに気付いていないらしい。 「どうする。あいつがあんたの思うような答えをくれるとは限らないぞ」 木場の瞳が一瞬揺らいだ。変わった男だ、と葦原は思う。 時に頑固で、驚くほど真っ直ぐなものの見方をするかと思えば、こうして迷いを覗かせる。 無論、葦原は木場の心の揺らぎが、必ずしも悪いものではないと思っている。 それでも確認をするのは、現実が彼らの想像するより残酷な答えを用意しているかもしれないからだ。 「行ってください―――俺はその答えを聞かなければいけない。どんな答えでも」 「……だが、俺はあんたが間違っていると思ったらあんたを止める。忘れるなよ」 「わかっています」 唇を噛んでこちらを見返し、言葉に決意を乗せて木場が言う。 その答えを聞いた葦原は黙ってバイザーを下ろした。 ※※※ 少し道を戻り、川に掛けられた橋を渡る。 川幅は対岸の人の姿が大体確認できるほどで、そう広くもないため、すぐに追いつく事になった。 排気音に気付いたのか、残り数十メートルという所で青年がこちらを振り返る。 「桜井君!!」 木場が大きな声で青年を呼ぶ。 その途端、青年は脱兎の如く走り出した。葦原はバイクの速度を上げ、必死に逃げる青年を追う。 細い道に入ろうとして角を曲がった時、足がもつれたのか、青年が転倒した。 バイクを止め、退路を断つ形で木場と二人青年を囲む。 ようやく起き上がった青年は、怯えたような目でこちらを見上げている。 「桜井君、俺は……」 木場が何か言いたげに一歩歩み寄る。葦原はただ黙って、二人の様子を眺めていた。 「く、来るな! 何なんだ、あんたたち……どうして皆、俺の事を桜井なんて呼ぶんだ!」 パニック状態の青年が喚く。木場は眉をひそめて、尚も言いつのる。 「何を言っているんだ、君は桜井侑斗だろう? 俺と一緒にいたはずだ、ショッピングセンターで―――」 「違う! 俺は桜井侑斗なんかじゃない!」 葦原が視線を投げかけると、木場は戸惑いの表情を浮かべたまま見返した。 木場の様子からすれば、確かにこの青年が『桜井侑斗』なのだろう。 だが、本人はそれを否定している。しらを切るにしても、そういった問題ではないような気がする。 木場もそう思ったのか、でも、まさか、などと呟きながら青年の顔を見つめていた。 「そんなはずは……桜井君、信じてくれ! 俺はあの時君を守ろうとして……」 「う、うわあああ!! く、来るなああ!!」 困惑のあまり思わずといった様子で木場がさらに近づくと、恐慌状態に陥った青年が腕を振り回す。 青年がデイパックから何かをつかみ出すのを見て、葦原も前へ進み出る。 その時、何かが割れるような、倒れるような、大きな物音が辺りに響いた。 「―――!?」 音のした方向へ振り返るが、人影はない。ややあって、バイクの走り去る音も聞こえた。 葦原と木場の注意が逸れた隙を突いて、青年が走り出す。 二人が気付いた時には背を向けて入り組んだ路地へ駆け込む所だった。 (このタイミングで物音を立てるって事は……仲間がいたのか) 葦原はカブトエクステンダーに向かって歩き出す。 木場は呆然と立ち尽くしたままだ。拒絶され、ショックを受けただけにしては反応がおかしい。 訝かしむ葦原が声を掛けた。 「おい、どうした」 「葦原さん……あれは―――あのベルトは―――」 『桜井侑斗』らしい青年が取り出したもの。 葦原からはよく見えなかったが、木場には覚えのあるものだったらしい。 「俺が海堂に預けたものです……!」 振り向いて、震える声でそう告げた木場の顔は、月光を浴びたように蒼白である。 これで彼が『桜井侑斗』本人なのか、別人なのかに関わらず、海堂の最後に居合わせた可能性がある事が解った。 「……乗れ。追うぞ」 短く言うと、バイクのスタンドを外し、エンジンを掛けた。 **状態表 【葦原涼@仮面ライダーアギト】 【1日目 日中】 【現在地:G-6 中央部】 [時間軸]:第27話死亡後 [状態]:全身に中程度の負傷、中程度の疲労、腕部に小程度の裂傷、変身の後遺症(やや回復)、仇を討てなかった自分への苛立ち [装備]:フルフェイスのヘルメット、カブトエクステンダー@仮面ライダーカブト [道具]:基本支給品×2、ホッパーゼクターのベルト、デルタギア 【思考・状況】 基本行動方針:殺し合いには加担しない。脱出方法を探る。 1:『桜井侑斗』らしき青年を追い、話を聞く。 2:立花を殺した白い怪物(風のエル)、あすかを殺した白いライダー(ファム)未確認生命体4号(クウガ)に怒り。必ず探し出して倒す。 3:立花藤兵衛の最後の言葉どおり、風見の面倒を見る? 4:黒いライダー(カイザ)を探してみる。 5:五代雄介の話を聞き、異なる時間軸から連れて来られた可能性を知る。 6:白い怪物(ダグバ、ジョーカー)を倒す。 7:木場が間違いを犯した場合全力で止める。 8:デルタギアを誰か、はっきりとこの殺し合いに反抗する者に託す。(今の所木場が有力) 【備考】 ※五代の話を聞き、時間軸のずれを知りました(あくまで五代の仮説としての認識です)。 ※剣崎一真の死、ダグバの存在、ジョーカーの存在などの情報を五代から得ました。 ※ホッパーゼクターが涼を認めました。(資格者にはすぐにでも成り得ます)また、デイバックの中に隠れています ※カブトエクステンダーはキャストオフできないため武装のほとんどを使えません。  今の所、『カブトの資格者』のみがキャストオフできます。 ※デルタギア装着によるデモンズストレートによる凶暴化などは知りません。(デルタギアの使い方は知っています) 【木場勇治@仮面ライダー555】 【1日目 現時刻:日中】 【現在地:G-6 中央部】 【時間軸】:39話・巧捜索前 【状態】:全身に中程度の打撲。他人への不信感。中程度の疲労、背中等に軽い火傷。30分変身不可(ホースオルフェノク) 【装備】:なし 【道具】:基本支給品×1、Lサイズの写真(香川の発砲シーン)、サイガギア、トンファーエッジ 【思考・状況】 基本行動方針:??? 1:『桜井侑斗』らしき青年を追い、話を聞く。 2:香川と侑斗と話し合う。その上で人間の真意を見極める。 3:葦原に憧れに近いものがある。 4:死神博士、ゴルゴス、牙王、風のエル(名前は知らない)、東條を警戒。影山はできれば助けたい。 5:事情を知らない者の前ではできるだけオルフェノク化を使いたくない。 【備考】 ※香川から東條との確執を知り、侑斗から電王世界のおおまかな知識を得ました。(赤カードの影響で東條の情報だけが残っています。)  また、第一回放送の内容も二人から知りました。 ※香川を赤カードの影響で危険人物として認識したままです。 ※桐矢が『桜井侑斗』なのかそうでないのか、半信半疑の状態です。 ※自分を信じるが、自分さえも信じられなくなったらその時は…? 【共通事項】 ・情報交換により、お互いの境遇・世界の事をおおまかに知りました。  また、それによってお互いの捜す相手・敵対する相手も共通して認識しています。 ※※※ 京介が逃げるのを見届けると、歌舞鬼は再び鉄騎を走らせた。 最初は様子を見るだけのつもりだった。 だが、二人の男に詰め寄られ、怯える京介を見ているとたまらない気持ちになった。 そこで思わず、道端のゴミ箱を蹴り飛ばして二人の注意を引きつけたのだった。 怯えきって、瞳を見開き、震えている様子は歌舞鬼の哀れみを誘った。 頬をなぶる風を感じながら、思い出す。 今までにあの顔を何度見てきた事か。 魔化魍に襲われた村で、めちゃくちゃになった家の隅に隠れている子供たち。 自分を置いて、我先にと逃げ出した両親を必死に探す姿。 村の為と言い含められて、生け贄に捧げられるのをただ待つだけの少女―――皆、同じ顔をしていた。 (そんな顔は、もう二度と見たくない) 京介はすぐに見つかった。今までの印象から、体ばっかり育った割にあまり体力があるとは思えない。 思った通り、そう遠くない路地に、息も絶え絶えといった様子で隠れていた。 「よう、京介。災難だったな」 軽い調子で声を掛けると、恐る恐るといった様子で顔を上げた。眉尻が下がって、なんとも頼りない。 「歌舞鬼……さん? もしかしてさっきのは、歌舞鬼さんだったんですか?」 「あぁ、そうだ」 辺りを見回す。まだあの二人組はこちらには来ていないようだ。 「この前は悪かったな、助けてやれなくって。おっかない目に遭わせちまったな……でも、もう大丈夫だからな」 やさしく言うと、京介の体から緊張が抜けるのが見て取れた。歩み寄って、ポンと肩を叩く。 その途端、京介は顔をくしゃくしゃにして、とうとう泣き出した。 「よかった……俺ッ、一人でどうしていいか解らなくて……怖くて……」 涙を零す京介の頭を、歌舞鬼はいつかのように乱暴に撫でてやった。 歌舞鬼の上着を掴む手は震え、泥で汚れてしまっている。 「おう、よしよし。泣くなよ、もうなんにも心配はいらねえ。この俺がいるんだからな」 「で……でも、あいつ等が追ってきたら……そ、それに……アマゾンさんも……」 消え入りそうな声で京介はそう言うと、恐怖を思い出したのかまた震えだした。 無理もない。ここは普通の人間、それも子供が子供らしく生きていくには相応しくない、狂った世界だ。 弱い者から、食い物にされていく。 (いや―――どこも同じ、か) 歌舞鬼が元いた世界もそう変わりはない。力を持たぬ人は魔化魍に怯えて暮らし、人の中でも弱い者は虐げられる。 だからこそ、歌舞鬼は戻って戦わなければならない。弱い者のために。 京介は落ち着かない様子で、歌舞鬼に背を向けて路地の外の様子を伺っている。 二人の男に詰め寄られている京介の姿を見た時から決めていた。 もし京介が酷い目に遭わされるようなら、助けよう。 ―――そして、この手で楽にしてやろう。 歌舞鬼は自分の顔が、能面を着けたように表情を失っていくのを感じた。 もう後戻りはできない。 京介の背後で、音叉剣が冷たくきらめいた。 **状態表 【歌舞鬼@劇場版仮面ライダー響鬼】 【1日目 現時刻:日中】 【現在地:G-6 中央部】 [時間軸]:響鬼との一騎打ちに破れヒトツミに食われた後 [状態]:健康 、バイク搭乗中、一時間変身不可能(インペラー) [装備]:変身音叉・音角、音撃棒・烈翠 [道具]:基本支給品×4(ペットボトル1本捨て)、不明支給品×1(風のエル・歌舞鬼確認済)、歌舞鬼専用地図     音撃三角・烈節@響鬼、GK―06ユニコーン@アギト、ルール説明の紙芝居、インペラーのカードデッキ@龍騎、KAWASAKI ZZR250 【思考・状況】 基本行動方針:優勝し、元の世界に戻って魔化魍と闘う。そして最後は…… 1:桐矢、三田村がつらい思いをしているならば楽にしてやりたい 2:E-6は人が集まるはず。まずは情報収集 3:北崎はいつか倒す。 【備考】 ※カードデッキの使い方は大体覚えました。 ※E-6を目指していますが、バイクの運転に不慣れの為目的地までたどり着けない可能性があります。 ※G-6エリアに放置されていた基本支給品+不明支給品×1を回収しました。 【桐矢京介@仮面ライダー響鬼】 【1日目 現時刻:昼】 【現在地:G-6 中央部】 [時間軸]36話、あきらに声を掛けた帰り [状態]:走り回った事による中程度の疲労、軽い擦り傷、僅かな人間不信、激しい動揺 [装備]:なし [道具]:基本支給品(食料紛失) ラウズカード(スペードの10、クラブの10) 、ファイズギア 【思考・状況】 基本行動方針:生き残る 1:歌舞鬼に守ってもらう。 2:激しい恐怖(特にダグバ、ゾルダ、ドラゴンオルフェノクに対して) 3:あの二人組が追ってこないか心配。 4:『桜井侑斗』はもしかしたら危険な人物なのかもしれない。 5:誰かにファイズギアの使用法を教え、その人物に保護してもらう。(出来ればヒビキが良い) 6:ヒビキが助けてくれることへの僅かな期待。 【備考】 ※自分を助けてくれた男性(水城)の生存の可能性は低いと予想 ※食料は移動中に紛失しました。 ※ファイズギアの装着者の条件は知りません。 |095:[[完璧の名の下に]]|投下順|097:[[Sturm und Drache]]| |095:[[完璧の名の下に]]|時系列順|097:[[Sturm und Drache]]| |091:[[信じるモノ]]|[[葦原涼]]|000:[[後の作品]]| |091:[[信じるモノ]]|[[木場勇治]]|000:[[後の作品]]| |083:[[EGO(後編)]]|[[桐矢京介]]|000:[[後の作品]]| |092:[[鬼³]]|[[歌舞鬼]]|000:[[後の作品]]|
*顔 ファイズギアが入ったデイパックをしっかりと胸に抱え、桐矢京介は川沿いの道を進んでいた。 いつのまにか汚れてしまった、ブランド物のスニーカーが小石を蹴る。 最初は住宅街を隠れるようにして移動していたのだが、敵が物陰に潜んでいるのではないかという不安に耐えられず、迷った末に前方が見渡せる比較的広い道を進む事にした。 極限状態の京介にはもう、どちらがより安全で、危険であるのか判断できない。 ただ、存在するかしないかわからない恐怖に怯えるよりは、目視した危険から速やかに逃げられるようにと思ったのだった。 後ろ向きではあるものの、本来の負けず嫌いな性質がそうさせたのかもしれない。 一歩歩くたびに、デイパックの中でファイズギアがカチャリ、と小さな音を立てる。 警戒心から普段以上に神経質になっている事を考えても、そんな音が聞こえる程の不気味な静けさである。 本来雑多な音で満ち溢れているはずの街中でなら、尚更だ。 京介はもう一度周囲を見回す。何の変哲も無い住宅地。 生垣越しに民家の庭を覗き込むと、カーテンの開けられた窓の向こうの室内は暗く、やはり無人。 外観も玄関先が妙に砂っぽいのを除けば、芝生もきれいに整えられ、荒れた様子は全くない。 それが京介の目にはよりいっそう異様に映った。 「……まるでマリー・セレスト号みたいだな」 京介は呟く。その声も、自分以外の誰の耳にも届かず消えていくのだと思い、心細さに京介は身を竦ませた。 無論、巷で言われるようなオカルティックな要因で、かの船から乗客が消え失せたのではないと知っている。 だが、都市伝説としてまことしやかに囁かれている状況に、今のこの島はあまりにも似ていた。 その時、不意にデイパックの中から振動を感じ、京介は飛び上がらんばかりに驚いた。 半ばパニックになりながらも、定時放送の時間だと気付き、震える手で携帯電話を開く。 内容を慌ててメモに取り―――女の声で、『海堂直也』の名が呼ばれた時、手が止まった。 (海堂って人……やっぱり殺されたんだ……) どれだけ北崎に叩きのめされても立ち上がり、向かって行った姿を思い出し、罪悪感が湧き上がる。 しかしすぐに気を取り直して、放送の続きを書き取る。 やはり逃げて正解だった、と京介は思う。もし自分があの場に留まったとしても、海堂を助けることは出来なかった。 歌舞鬼と三田村はやはりまだ北崎と行動を共にしているのだろうか? 名前が呼ばれなかった事から生きてはいるのだろうが、どちらにせよわざわざ会いに行くつもりもない。 京介が探すのはヒビキ。他の参加者はあまり信用できそうもないと、今までの経験から断定する。 ―――でももし、ヒビキに会えないまま危険な参加者と遭遇してしまったら? 京介はデイパックを見つめる。いざという時、このファイズギアを使えば、自分も戦えるのではないか。 そう思うものの、踏ん切りがつかない。 明日夢やあきらの前で虚勢を張るのとは訳が違う。 自分の命を懸けて敵と戦う勇気は、今の京介にはなかった。 不安な気持ちのまま、京介は再び歩き出す。静寂がそれを見守っていた。 ※※※ 木場は葦原の後ろで、スピードに乗って流れていく景色をじっと見ていた。 握った地図の端が風に煽られて激しく震える。 建物の白、木々の緑、看板のオレンジや赤が目に飛び込んできては一瞬で通り過ぎていく。 その様子に、木場は今日の出来事をぼんやりと思い出す。 突然この島に連れて来られて、殺し合いを強いられた。 様々な人と出会い、戦い―――たった半日の出来事が、恐ろしく長く続く、悪い夢のように思えた。 (……いや、夢なんかじゃない……) 伏せた瞼の裏に、永遠に会うことの叶わなくなってしまった友人の顔が浮かぶ。 海堂を失った悲しみと後悔が蘇り、暗く冷たく沈んでいきそうな心を、目の前の背中を見つめる事で押し止める。 葦原は、自分自身を信じると言った。どんな現実にも逃げずに戦うと。 お互い言葉の多い方では無いため、交わした会話といえば些細なものだ。 だが木場は葦原の言葉の端々に、彼の例えようもない孤独と、それを超える心の強さを感じ取っていた。 交差点に差し掛かると、葦原はカブトエクステンダーを止めた。後ろを振り返って、木場に降りるよう促す。 素直に従うと、葦原もエンジンを切ってスタンドを下ろし、ヘルメットを外して息をついた。 「これでこのエリアは一回りしたって事になるな」 「はい、ざっとですけど」 褪せたような色の前髪をかき上げながら言う葦原に、地図を眺めながら木場が答える。 動物園から出発した二人は、南下を始める前にお互いの探す相手が居ないかエリアを回ってみる事にした。 とはいえ、1エリアにそれなりの広さがあり、建物の中や狭い路地などに隠れられていては見つけようがない。 しかし、それ以外に当てもないので、地図を頼りにエリア内を一回りしていたのだった。 「もう少し探してみますか?」 「……俺の探す相手はバイクを持っていた。もうこの近くにはいないんだろうな。 あんたがもう少し探したいんなら―――」 「いや、葦原さんに従います。そういう約束でしたし……少ししたら、移動しましょう」 そう言った木場を、葦原がじっと見返す。強い眼差しに、思わず目を逸らしてしまう。 葦原は何も言わずに目線を外し、ガードレールにもたれてペットボトルの水を飲んだ。 彼はきっと解っているのだ、木場が再会を果たす事を恐れているのを。 会って話し合いたい、誤解があるならそれを解きたいと願っているのは本心だが、やはり心底では自分の強さを信じきれないのだ。 「葦原さんは……怖くなかったんですか?」 小さく尋ねる木場に、葦原は意図を問うような視線を投げかける。 葦原が語った境遇は、木場から見ても決して恵まれたものではなかった。 自分と同じく、ある日突然異形と化し、大切な人たちは遠ざかり、他の者には敵対視される。 孤独に戦い続けてなお、『現実』から目を逸らす事なく自分を信じられる強さは、一体どこから来るのか。 出会った時に感じた疑問を、思わず口にしていた。 「自分が人と違うものになってしまったと知って、その姿のように、人の心まで失くしてしまうんじゃないかと思ったことはないんですか?」 葦原の隣に腰を下ろして、横顔を見る。削げた頬に意志の強そうな眉。 その下の瞳は過去を懐かしむのでも、悔いるのでもなく、『今』を見ているのだ。 「俺は、俺のままだ」 葦原は静かに、だがきっぱりと、そう呟いた。 木場は俯く。以前なら自分も同じ答えを返しただろう。だからこそ、悩む巧の背中を押したりもできた。 だが他者を信じられず、守る価値を疑ってしまっている今は? 木場の目の前に飲みかけのペットボトルが突き出される。 葦原の差し出したそれを受け取ると、表面に自分の顔が丸く歪んで映っていた。 薄く被さる灰色の影を見つめながら木場は思う。 自分は、彼のようになれるだろうか……。 ※※※ 市街地を抜けると、京介の目の前には海が広がっていた。 きらきらと光を反射する水面に目を細める。春の日差しに暖められた風が、潮の匂いを運んで来る。 地図を確認すると、島の端まで来てしまったようだ。 急に開けた視界に、誰かいないかと期待と緊張が入り混じった感情を覚える。 辺りを見回すが、コンクリートの波止場にも、砂浜にも、動くものは見当たらない。 ―――いや、砂浜に何かある。ぽつんと小さく横たわる何かが。 最初は流木か何かかと思った。確かめようと近づいて、京介は息を呑んだ。 「アマ――ゾン――さん!」 そこにあったのは以前自分と行動を共にしていたアマゾンの遺体だった。 瞳は固く閉じられ、口の端には赤黒く血がこびりついている。 京介が見ていたような屈託のない表情はすっかり消えうせていたが、確かにアマゾンだ。 一目見て命はないと分かる、血まみれの四肢、胸に開いた大きな穴。 「う……っ」 初めてこの目で見る、人間の死体。あまりの凄惨さに京介は砂浜にへたり込み、こみ上げる吐き気に口を塞ぐ。 目を背けて弱々しく後ずさり、最初の衝撃をなんとかやり過ごすと、次に京介の脳裏に浮かんできたのは疑問だった。 一体誰が、こんな事を。 アマゾンは何者かを追って飛び出して行ったように思えた。もしかして、その相手に? そう思い当たって、自分の血の気が引くのを感じた。 (まだ近くに、そいつが潜んでいるかもしれない!) アマゾンの傷の状態から見て、その相手が人間だとは思えなかった。 灰色の巨体で海堂を一捻りにした北崎や、一瞬で相手を焼き殺すあの白い怪物のような奴に違いない。 幾度も感じた命の危険が蘇る。京介は慌てふためいて立ち上がり、砂を蹴ってその場から走り去った。 物言わぬアマゾンの体の上で、二つの腕輪が小さく光っていた。 ※※※ 歌舞鬼は何度目かに見る海岸線に顔をしかめた。 目的地に向かって移動しているつもりでも、不慣れな乗り物の操作に気をとられて周囲の確認は疎かになる。 しかも、歌舞鬼にとって住宅街の建物はどれも似たり寄ったりで、迷ってしまうのも無理はなかった。 どうやらまた、角を何度も曲がるうちに元の道へ逆戻りしてしまったらしい。 溜息をついて足をつくと、バイクに寄りかかる。気付けばそのボディは、随分とすり傷だらけになっていた。 「やれやれ、どーしたモンかねぇ……」 白く光る水平線を眺めながら呟く。 収穫がなかった訳ではない。住宅街の外れに、デイパックが一つ落ちていた。 持ち主らしき人物、あるいはその死体は見当たらなかったので、拝借した。 中身はざっと確認しただけだが、邪魔になるものでもないし、いずれ役に立つ事もあるだろう。 歌舞鬼が気を取り直し、エンジンを掛けようとすると、僅かな叫び声が耳に届いた。 あれからしばらく経っていたが、他の参加者には会っていない。 何よりもその声に妙に心がざわつき、バイクから降りて声のした方向へ向かった。 物陰からそっと様子を伺う。遠目にはしかとは判じかねたが、自分が殺したアマゾンの傍らに人影が見えた。 (……京介) 歌舞鬼が見ていると、京介はしばし呆然とした後、慌てて走って行った。 おそらく恐怖に駆られて逃げ去ったのだろう。 京介の姿が見えなくなると、歌舞鬼はアマゾンの亡骸にゆっくりと歩み寄った。 京介は気付いただろうか、アマゾンを殺したのが自分だと。 そんなはずはないのだが、何となく胸が苦しいような、そんな気持ちがした。 アマゾンの顔を見下ろす。血の気が失せて白っぽくなった頬を、明るい陽の光が照らしている。 激しい苦痛と殺意によって、まさに修羅のような表情を宿していたアマゾン。 自分がこの手で体を貫いた瞬間、それらから開放され、今はこうして穏やかな顔をしている。 子供たちが浮かべる無垢な笑顔。それがこの殺し合いによって失われるなら――― 歌舞鬼は踵を返し、再びバイクに跨ると、顔のない街に消えた。 ※※※ (オルフェノク、か) 街を駆けながら、葦原は思案する。 木場が言うには、ヒトが一度死を迎えた後蘇り、異形の力を得たものだと言う。 自分自身の境遇との奇妙な符合にも驚いたが、この殺し合いを仕組んだスマートブレインがそうだという話にも驚いた。 ここで遭遇したアンノウン、未確認生命体四号のみならず、未知の存在が噛んでいる。 その事が一体何を意味するか……細かい事は解らないが、事態は思っていたよりも複雑そうだと葦原は思う。 だが、これで自分の何が変わるという訳でもない。救いを求める者は救い、戦いを望む、危険な者とは戦う。 (命を懸けて、必ず倒す……この手で!) 今までもこれからも、それは変わらない。 ハンドルを握る手に力がこもる。ヘルメットのバイザー越しに、前を見据える眼光が一層輝きを増した。 視界の端に葦原が人を捉えるのとほぼ同時に、同乗者が声を漏らした。 川を挟んだ道を、建物の影に隠れるように進んでいる若い男である。 カブトエクステンダーを止め、バイザーを上げて背後の木場を伺うと、険しい表情で男を見つめていた。 「探していた奴か」 察した葦原が尋ねると、木場は小さく頷いた。 聞いた話からすると、あれは桜井侑斗という人物のようだ。 川沿いに植えられた桜の並木に遮られてか、あちらはまだ自分たちに気付いていないらしい。 「どうする。あいつがあんたの思うような答えをくれるとは限らないぞ」 木場の瞳が一瞬揺らいだ。変わった男だ、と葦原は思う。 時に頑固で、驚くほど真っ直ぐなものの見方をするかと思えば、こうして迷いを覗かせる。 無論、葦原は木場の心の揺らぎが、必ずしも悪いものではないと思っている。 それでも確認をするのは、現実が彼らの想像するより残酷な答えを用意しているかもしれないからだ。 「行ってください―――俺はその答えを聞かなければいけない。どんな答えでも」 「……だが、俺はあんたが間違っていると思ったらあんたを止める。忘れるなよ」 「わかっています」 唇を噛んでこちらを見返し、言葉に決意を乗せて木場が言う。 その答えを聞いた葦原は黙ってバイザーを下ろした。 ※※※ 少し道を戻り、川に掛けられた橋を渡る。 川幅は対岸の人の姿が大体確認できるほどで、そう広くもないため、すぐに追いつく事になった。 排気音に気付いたのか、残り数十メートルという所で青年がこちらを振り返る。 「桜井君!!」 木場が大きな声で青年を呼ぶ。 その途端、青年は脱兎の如く走り出した。葦原はバイクの速度を上げ、必死に逃げる青年を追う。 細い道に入ろうとして角を曲がった時、足がもつれたのか、青年が転倒した。 バイクを止め、退路を断つ形で木場と二人青年を囲む。 ようやく起き上がった青年は、怯えたような目でこちらを見上げている。 「桜井君、俺は……」 木場が何か言いたげに一歩歩み寄る。葦原はただ黙って、二人の様子を眺めていた。 「く、来るな! 何なんだ、あんたたち……どうして皆、俺の事を桜井なんて呼ぶんだ!」 パニック状態の青年が喚く。木場は眉をひそめて、尚も言いつのる。 「何を言っているんだ、君は桜井侑斗だろう? 俺と一緒にいたはずだ、ショッピングセンターで―――」 「違う! 俺は桜井侑斗なんかじゃない!」 葦原が視線を投げかけると、木場は戸惑いの表情を浮かべたまま見返した。 木場の様子からすれば、確かにこの青年が『桜井侑斗』なのだろう。 だが、本人はそれを否定している。しらを切るにしても、そういった問題ではないような気がする。 木場もそう思ったのか、でも、まさか、などと呟きながら青年の顔を見つめていた。 「そんなはずは……桜井君、信じてくれ! 俺はあの時君を守ろうとして……」 「う、うわあああ!! く、来るなああ!!」 困惑のあまり思わずといった様子で木場がさらに近づくと、恐慌状態に陥った青年が腕を振り回す。 青年がデイパックから何かをつかみ出すのを見て、葦原も前へ進み出る。 その時、何かが割れるような、倒れるような、大きな物音が辺りに響いた。 「―――!?」 音のした方向へ振り返るが、人影はない。ややあって、バイクの走り去る音も聞こえた。 葦原と木場の注意が逸れた隙を突いて、青年が走り出す。 二人が気付いた時には背を向けて入り組んだ路地へ駆け込む所だった。 (このタイミングで物音を立てるって事は……仲間がいたのか) 葦原はカブトエクステンダーに向かって歩き出す。 木場は呆然と立ち尽くしたままだ。拒絶され、ショックを受けただけにしては反応がおかしい。 訝かしむ葦原が声を掛けた。 「おい、どうした」 「葦原さん……あれは―――あのベルトは―――」 『桜井侑斗』らしい青年が取り出したもの。 葦原からはよく見えなかったが、木場には覚えのあるものだったらしい。 「俺が海堂に預けたものです……!」 振り向いて、震える声でそう告げた木場の顔は、月光を浴びたように蒼白である。 これで彼が『桜井侑斗』本人なのか、別人なのかに関わらず、海堂の最後に居合わせた可能性がある事が解った。 「……乗れ。追うぞ」 短く言うと、バイクのスタンドを外し、エンジンを掛けた。 **状態表 【葦原涼@仮面ライダーアギト】 【1日目 日中】 【現在地:G-6 中央部】 [時間軸]:第27話死亡後 [状態]:全身に中程度の負傷、中程度の疲労、腕部に小程度の裂傷、変身の後遺症(やや回復)、仇を討てなかった自分への苛立ち [装備]:フルフェイスのヘルメット、カブトエクステンダー@仮面ライダーカブト [道具]:基本支給品×2、ホッパーゼクターのベルト、デルタギア 【思考・状況】 基本行動方針:殺し合いには加担しない。脱出方法を探る。 1:『桜井侑斗』らしき青年を追い、話を聞く。 2:立花を殺した白い怪物(風のエル)、あすかを殺した白いライダー(ファム)未確認生命体4号(クウガ)に怒り。必ず探し出して倒す。 3:立花藤兵衛の最後の言葉どおり、風見の面倒を見る? 4:黒いライダー(カイザ)を探してみる。 5:五代雄介の話を聞き、異なる時間軸から連れて来られた可能性を知る。 6:白い怪物(ダグバ、ジョーカー)を倒す。 7:木場が間違いを犯した場合全力で止める。 8:デルタギアを誰か、はっきりとこの殺し合いに反抗する者に託す。(今の所木場が有力) 【備考】 ※五代の話を聞き、時間軸のずれを知りました(あくまで五代の仮説としての認識です)。 ※剣崎一真の死、ダグバの存在、ジョーカーの存在などの情報を五代から得ました。 ※ホッパーゼクターが涼を認めました。(資格者にはすぐにでも成り得ます)また、デイバックの中に隠れています ※カブトエクステンダーはキャストオフできないため武装のほとんどを使えません。  今の所、『カブトの資格者』のみがキャストオフできます。 ※デルタギア装着によるデモンズストレートによる凶暴化などは知りません。(デルタギアの使い方は知っています) 【木場勇治@仮面ライダー555】 【1日目 現時刻:日中】 【現在地:G-6 中央部】 【時間軸】:39話・巧捜索前 【状態】:全身に中程度の打撲。他人への不信感。中程度の疲労、背中等に軽い火傷。30分変身不可(ホースオルフェノク) 【装備】:なし 【道具】:基本支給品×1、Lサイズの写真(香川の発砲シーン)、サイガギア、トンファーエッジ 【思考・状況】 基本行動方針:??? 1:『桜井侑斗』らしき青年を追い、話を聞く。 2:香川と侑斗と話し合う。その上で人間の真意を見極める。 3:葦原に憧れに近いものがある。 4:死神博士、ゴルゴス、牙王、風のエル(名前は知らない)、東條を警戒。影山はできれば助けたい。 5:事情を知らない者の前ではできるだけオルフェノク化を使いたくない。 【備考】 ※香川から東條との確執を知り、侑斗から電王世界のおおまかな知識を得ました。(赤カードの影響で東條の情報だけが残っています。)  また、第一回放送の内容も二人から知りました。 ※香川を赤カードの影響で危険人物として認識したままです。 ※桐矢が『桜井侑斗』なのかそうでないのか、半信半疑の状態です。 ※自分を信じるが、自分さえも信じられなくなったらその時は…? 【共通事項】 ・情報交換により、お互いの境遇・世界の事をおおまかに知りました。  また、それによってお互いの捜す相手・敵対する相手も共通して認識しています。 ※※※ 京介が逃げるのを見届けると、歌舞鬼は再び鉄騎を走らせた。 最初は様子を見るだけのつもりだった。 だが、二人の男に詰め寄られ、怯える京介を見ているとたまらない気持ちになった。 そこで思わず、道端のゴミ箱を蹴り飛ばして二人の注意を引きつけたのだった。 怯えきって、瞳を見開き、震えている様子は歌舞鬼の哀れみを誘った。 頬をなぶる風を感じながら、思い出す。 今までにあの顔を何度見てきた事か。 魔化魍に襲われた村で、めちゃくちゃになった家の隅に隠れている子供たち。 自分を置いて、我先にと逃げ出した両親を必死に探す姿。 村の為と言い含められて、生け贄に捧げられるのをただ待つだけの少女―――皆、同じ顔をしていた。 (そんな顔は、もう二度と見たくない) 京介はすぐに見つかった。今までの印象から、体ばっかり育った割にあまり体力があるとは思えない。 思った通り、そう遠くない路地に、息も絶え絶えといった様子で隠れていた。 「よう、京介。災難だったな」 軽い調子で声を掛けると、恐る恐るといった様子で顔を上げた。眉尻が下がって、なんとも頼りない。 「歌舞鬼……さん? もしかしてさっきのは、歌舞鬼さんだったんですか?」 「あぁ、そうだ」 辺りを見回す。まだあの二人組はこちらには来ていないようだ。 「この前は悪かったな、助けてやれなくって。おっかない目に遭わせちまったな……でも、もう大丈夫だからな」 やさしく言うと、京介の体から緊張が抜けるのが見て取れた。歩み寄って、ポンと肩を叩く。 その途端、京介は顔をくしゃくしゃにして、とうとう泣き出した。 「よかった……俺ッ、一人でどうしていいか解らなくて……怖くて……」 涙を零す京介の頭を、歌舞鬼はいつかのように乱暴に撫でてやった。 歌舞鬼の上着を掴む手は震え、泥で汚れてしまっている。 「おう、よしよし。泣くなよ、もうなんにも心配はいらねえ。この俺がいるんだからな」 「で……でも、あいつ等が追ってきたら……そ、それに……アマゾンさんも……」 消え入りそうな声で京介はそう言うと、恐怖を思い出したのかまた震えだした。 無理もない。ここは普通の人間、それも子供が子供らしく生きていくには相応しくない、狂った世界だ。 弱い者から、食い物にされていく。 (いや―――どこも同じ、か) 歌舞鬼が元いた世界もそう変わりはない。力を持たぬ人は魔化魍に怯えて暮らし、人の中でも弱い者は虐げられる。 だからこそ、歌舞鬼は戻って戦わなければならない。弱い者のために。 京介は落ち着かない様子で、歌舞鬼に背を向けて路地の外の様子を伺っている。 二人の男に詰め寄られている京介の姿を見た時から決めていた。 もし京介が酷い目に遭わされるようなら、助けよう。 ―――そして、この手で楽にしてやろう。 歌舞鬼は自分の顔が、能面を着けたように表情を失っていくのを感じた。 もう後戻りはできない。 京介の背後で、音叉剣が冷たくきらめいた。 **状態表 【歌舞鬼@劇場版仮面ライダー響鬼】 【1日目 現時刻:日中】 【現在地:G-6 中央部】 [時間軸]:響鬼との一騎打ちに破れヒトツミに食われた後 [状態]:健康 、バイク搭乗中、一時間変身不可能(インペラー) [装備]:変身音叉・音角、音撃棒・烈翠 [道具]:基本支給品×4(ペットボトル1本捨て)、不明支給品×1(風のエル・歌舞鬼確認済)、歌舞鬼専用地図     音撃三角・烈節@響鬼、GK―06ユニコーン@アギト、ルール説明の紙芝居、インペラーのカードデッキ@龍騎、KAWASAKI ZZR250 【思考・状況】 基本行動方針:優勝し、元の世界に戻って魔化魍と闘う。そして最後は…… 1:桐矢、三田村がつらい思いをしているならば楽にしてやりたい 2:E-6は人が集まるはず。まずは情報収集 3:北崎はいつか倒す。 【備考】 ※カードデッキの使い方は大体覚えました。 ※E-6を目指していますが、バイクの運転に不慣れの為目的地までたどり着けない可能性があります。 ※G-6エリアに放置されていた基本支給品+不明支給品×1を回収しました。 【桐矢京介@仮面ライダー響鬼】 【1日目 現時刻:昼】 【現在地:G-6 中央部】 [時間軸]36話、あきらに声を掛けた帰り [状態]:走り回った事による中程度の疲労、軽い擦り傷、僅かな人間不信、激しい動揺 [装備]:なし [道具]:基本支給品(食料紛失) ラウズカード(スペードの10、クラブの10) 、ファイズギア 【思考・状況】 基本行動方針:生き残る 1:歌舞鬼に守ってもらう。 2:激しい恐怖(特にダグバ、ゾルダ、ドラゴンオルフェノクに対して) 3:あの二人組が追ってこないか心配。 4:『桜井侑斗』はもしかしたら危険な人物なのかもしれない。 5:誰かにファイズギアの使用法を教え、その人物に保護してもらう。(出来ればヒビキが良い) 6:ヒビキが助けてくれることへの僅かな期待。 【備考】 ※自分を助けてくれた男性(水城)の生存の可能性は低いと予想 ※食料は移動中に紛失しました。 ※ファイズギアの装着者の条件は知りません。 |095:[[完璧の名の下に]]|投下順|097:[[Sturm und Drache]]| |095:[[完璧の名の下に]]|時系列順|097:[[Sturm und Drache]]| |091:[[信じるモノ]]|[[葦原涼]]|109:[[Traffics(前編)]]| |091:[[信じるモノ]]|[[木場勇治]]|~| |083:[[EGO(後編)]]|[[桐矢京介]]|~| |092:[[鬼³]]|[[歌舞鬼]]|~|

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