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それぞれの場合/NEXT STAGE」(2009/07/02 (木) 20:13:44) の最新版変更点

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*それぞれの場合/NEXT STAGE ***ケース1 東條悟と金居の場合 空も既に白み始めてきた頃に、その世界は本来の顔を見せ始めた。 朝焼けに煌く木々、磯の香りが漂う海。作り物か本物かはさて置き、その光景には誰しもが思わず見惚れてしまう物があった。 だというのに、その中で薄気味悪い笑みを浮かべ、ただただ整備された道路を進む青年が一人。 彼の頭には景色など微塵も入っていない、むしろ目障りなだけだ。彼の望みは、たった一つ。 参加者を皆殺しにする。自分がただ一人、本物の英雄として生きる事。 その望みを叶えられるのならそれ以外の物ははっきり言ってどうでもいいし、意に介する必要はない。 『一人の命と、十人の命。どちらかだけを助けられるとしたらどちらを助けるか。』 かつて恩師が聞かせてくれた問い。ある意味、自分の進む道を照らしてくれた問いだ。 だからこそ、――――――その問いの答えとして、今、自分がここに立っている。 故に、東條悟は進む。英雄になるために、歪んだ自分に気付かぬまま。 そして、その後ろから後をつける人影がもう一人――――金居。 彼は今、迷っていた。目の前の相手を殺すか、否かを。 殺すのは、割と簡単に出来る。変身すればすぐ終わるだろうし、ここからの位置でもライフルで頭を打ちぬくことなど容易い。 ただ、殺さずとも利用することは出来る……但し、対象が利用できるような人物ならば、の話だが。 利用できる可能性がある以上は、迂闊に手を出せない。代償は少なく、見返りは大きく、ギブ&テイクというものだ。 どう身を振ろうか考えながらちらりと東條を見、その瞬間、金居の表情が驚愕に染まる。 相手はこちらに体ごと向き、真っ直ぐこちらを見つめていた。あの位置からは見えていない、見えるはずないのに。 「早く出てきてよ、僕はいつでも準備は出来てるんだ。」 ……多少順番が前後してしまったが、気付かれてしまった以上仕方がない。 「……君は、この戦いについてどう考える?」 ---- 「――――分かりました。では、手筈通りに」 「うん、」 互いに会話を終え、歩みを進める。 しばらく歩いていると、三人の人影を見つけた……どれも異形の姿を持つ人外の存在ばかり。 こんなのがゴロゴロいるのかと少し頭を悩ませるが、自分の存在に気付いて思わず苦笑する。 最後にもう一度目線を交わす。双方とも用意は完了、残りは時を待つのみ。 ――――3、2、1。開始。 ◆ ***ケース2 橘朔也とゾル大佐の場合 ごそごそ、ごそごそ。もぐ、んぐ、ごくん。 狭いコンビニに物を漁る音と食べ物を咀嚼する音、そして飲み込む音が響く。 傍らには幾つものコンビニ弁当の箱、惣菜パンの袋、飲み物の入っていないペットボトル。ついでにデザートのカップまで転がっている。 ……ちなみに、弁当のパックには寿司とかかれた物が特に多かったことを記しておく。 この状態で、大の男が二人も――しかも片方はサングラスに黒服、もう片方は隻眼に軍服の――座り込んでいるのは些か奇妙かもしれない。 だが、当人に言わせればいたって大真面目なのだ、多分。 「つまり、この携帯というのは持ち運び出来る電話で、且つこの殺し合いの名簿も兼ねている訳だな。」 「ああ……んぐ……名簿に知り合いの名前が……もぐ……あるかどうか確認してみろ……ふぅ。」 説明しながら物を食べる手を止めない橘に一種の驚きと非難を抱きながら、ゾル大佐は名簿に眼を通した。 橘から聞いた名前、剣崎一真と志村純一。それぞれ彼の後輩と部下、聞いた限りではこいつも仮面ライダーとの事、油断は禁物だ。 続いては金居、城光。どちらもアンデッドとかいう怪物らしいが、ショッカーの科学力の前では恐れるに足らんな。 そして見知った名前が掠めていく。本郷猛と一文字隼人、忌々しい二人の仮面ライダー……何故か名前が二つある、表記ミスか。 死神博士……ヨーロッパ支部での活躍は耳にしている。本郷猛と互角に渡り合っている所を見ると、無能という訳でもないらしい。 ……最後の懸念はこの橘という男。自分の知らない時代から来たとは言え、仮面ライダーであることには変わりない――――……。 ---- ――――少しだけ時は巻き戻り、場面は二人がコンビニに入った時点まで遡る。 アンデッド。それは太古の昔、地球上に君臨していた不死の生命体の総称である。 それぞれの生命体の始祖である五十二体と、どの生命体の始祖でもないジョーカーが二体。 総勢五十四体のアンデッドによる種の繁栄をかけた戦い、それがバトルファイト。 そして開放されたアンデッドと戦う戦士、それが橘の言う仮面ライダー達。 「……と、おおむねこんな感じでよかったか。しかし……腑に落ちんな。」 「何がだ?」 顎に手を当て考えるゾル大佐とは対照的に、両手に御握りを持っている橘というのは思わず力が抜けてしまう光景だ。 「配られた携帯やこのコンビニという場所、それに先ほどのバトルファイト……どれも私の与り知らぬ物だ。」 そういって、遠くを見つめるゾル大佐。だが、違和感は橘も感じていた。 このゾル大佐がとんでもない田舎者だとしても、それだけではどうしても説明がつかない。 「バトルファイトについては知らなくても無理はないが……このご時世に携帯やコンビニを知らないというのは少しばかりおかしいな。」 「いや、仮にそのバトルファイトとやらが本当にあったなら、我がショッカーが把握していないはずはない。  幹部クラスの私なら尚更だが……いや、ちょっと待て。今なんと言った?」 橘の発言に反応を見せるゾル大佐。 「……このご時世に携帯やコンビニを知らないのはおかしい、と。」 「つかぬ事を聞くが、橘。貴様が来た時代は、西暦何年だ?」 ……は? 橘は口には出さないものの思わず心の中で呟いた。まさか西暦も分からないのか。 と、ここで彼は思い出す。先ほど自分が感じた違和感を。 ――――…なんだこいつ、いつの時代から来たんだ…―――― 漸く、ゾル大佐が抱いている仮説を理解する。 「2008年だ。そっちはどうなんだ?」 「……1971年。」 「……やはりそういうことか。」 「ああ、どうやら我らには、多大なる時代のズレがあるようだな。」 そういうことだ。参加者は別々の時間からそれぞれつれて来られているという事……つまり、スマートブレインは、時間の流れに干渉する力がある。 俄かには信じがたいが、そうとしかいえない。ならば剣崎や志村も、自分の知る剣崎や志村ではないかもしれないということ。 「時代のズレがあれば互いの認識にもズレが生じる……どうしてこんな簡単な事に気付かなかったんだ。」 「仕方あるまい。時間を越えるなど、それこそショッカーの科学力でも難しい。」 「……さっきから言っている、ショッカーとは?」 「む、ショッカーを知らんのか!?ショッカーとは……」 ゾル大佐が、ショッカーの概要を橘に説明しようとしたそのとき。 ぐぅ~~~~~~~~~~~~~っっ。 と、ほぼ揃って二人は腹の虫が声を上げた。考えるのもいいが、それよりやることがあるのではないかと。 「……腹が減ったな。」 「……うむ。ショッカーの兵士たる物、常に万全の状態でいなければなるまい。」 どちらが先に動き出したか、二人は我先にとコンビニ内の食べ物を漁りだした。 ---- ――――そして、冒頭の場面へとつながる。 「どうだ、知り合いの名前は居たか?」 どうやらそろそろ満足したのか、橘が食事の手を止める。それでもレトルトカレーをデイパックに詰めている辺り、まだ懲りない様子だ。 「……ああ、ショッカーにいる幹部と、敵対する相手が二人だ。」 「そうか……さっきも言ったが、そのショッカーとは何だ?」 橘の言葉に大佐は訝しげな顔をした。 「貴様、本当に聞き覚えがないのか?」 「すまない、全く。」 その答えにゾル大佐は落胆した。三十年近くの月日が経過していながら征服が完了していないという事は――――ショッカーの日本征服が失敗した事に他ならない。 自分も、名誉の戦死を遂げたのだろう。だが、軍人にとって恐れるのは死ではない。組織としての目的を果たせぬ事だ。 …………ならば、その死は無駄死にだッ!! 「決めたぞ、橘。私は……この地より必ず帰還し、ショッカーを復興させて見せる!!」 立ち上がり、瞳を輝かせ、右の拳を握ってゾル大佐は決意した。 その決意を聞いて、橘はこの男が強いと確信した。自分でさえ部下を失っていたのに、彼は組織の未来を知りながらそれに抗おうとしている。 ……内心、ショッカーとはなんなのかと聞けなくなった事を毒づいてはいたが。 「では行くぞ橘。」 「行くって?」 「決まっているだろう、生き抜くためには集団、つまりは自由に動かせる兵士が必要不可欠。それを探しに行くのだ。」 言うが早いかゾル大佐はテキパキと荷物を取り、橘を残して外へ出て行った。 「ま、待て!」 橘が急いで荷物をまとめて後を追う。そして……そこには誰もいなくなった。 ◆ ***ケース3 ダブルライダーとゴ・ガドル・バの場合 その頃、橘達から少し離れた小道、風をを駆けぬけ走り去る異形の影が三つ。 一つ――――仮面ライダー一号。人類の平和を守るため、その身を捧げた技の戦士。 一つ――――仮面ライダー二号。瞳に悪を許さぬ誓いを、紅き拳に魂込めた力の使者。 一つ――――ゴ・ガドル・バ。戦いに身を投じ、己を高める事を悦びとする古代の闘士。 「トォ!」 「フンッ!!」 放たれた一号の蹴りが、ガドルの持った杖によって阻まれる。これは戦いが始まった当初、ガドルが胸の突起物を変化させたものだ。 そのまま杖を振るって、一号を地に叩きつけようとするが、そこに二号の拳が飛んでくる。 「ライダーパァンチ!」 放たれた拳は左右両方。先に来た左の拳は勢いをずらして避けるが、続く右の拳は杖の所為で対応できずに直撃する。 腹部に流れてくる衝撃にガドルが顔をしかめ、その隙に二号が一号を助け出して距離をとった。 それを見て、ガドルは即座に次の行動に入る。杖を投げ捨て、新しい突起物を引き抜いて力を込める。 すると、両の瞳が緑色に変わり突起物が歪んでボウガンの姿をとる。ガドルの射撃体だ。 「なっ!?」 「拙い!」 二人が対応する前に引き金を引き、高出力のエネルギーをまとって矢が放たれる。 ダブルライダーは即座に逆反対に飛び退くが、僅かにタイミングが遅れて、一号の掌を貫いた。 「グァッ!」 「その程度なのか、リントの戦士とはッ!」 一号が苦悶の声を上げるが、今はこれしきの事に構っていられない。嫌がる体に鞭打ち、ガドルに向かって走り出す。 対するガドルは眼を紫色に変え、剛力体として一号と向き直る。手に持ったボウガンが大剣へと姿を変え、天高く振り上げられた。 その剣は、真っ直ぐ一号めがけて振り下ろされ、その仮面を叩き割―――― 「オオオオオ……ッ!?」 「仮面ライダーはそう簡単に負けん!」 ――――らなかった。一号は瞬時に先ほどの杖を取り、剣での攻撃を防いでいたのだ。 金属音が響く。攻撃を防がれるとは思っていなかった所為だろうか、その眼は大きく見開かれていた。 「残念だったな!」 ガドルが振り返る前に後ろからのライダーパンチが彼を捉えた。メキィ、と嫌な音が腹から漏れる。 その隙に再び距離をとり、一号は力の限り大地を蹴って飛び上がった。 「ライダー――――――」 空中で体を捻り、さらに前方一回転。マフラーが風に棚引き、星空に映える。 狙いを定められたガドルはそれを避ける様子もなく、寧ろ正面から受け止めようとしていた。 「――――――キィィィィィィィィィィッック!!」 急降下、銀色の風を切って数多の怪人を葬ってきた必殺キックが構えているガドル目掛けて突き進む。 「ウオオオオオオオッ!!」 紫色の眼を赤色に染め、格闘体となったガドルが真っ向から一号のライダーキックを掴む。 その力は決して止められるものではないが、捌ききれない訳でもない。 掴んだ足に捻りを加えて、反動をつけて空へと弾き飛ばす。 「グゥッ……!」 「本郷!」 飛んできた一号を二号が受け止め、多少足が地面にめり込む。つまり、それほど投げ飛ばされた際の衝撃が強いという事。 「一文字……すまん。」 「気にするな。それよりも、あのガドルとか言う怪人……」 「ああ……今までの怪人と比べ物にならないほどに、強い……ッ!」 本郷らしくない弱気な言葉に、一文字は軽く笑みを浮かべて肩に手を置いた。 「もっと自信を持て本郷。俺たちは改造人間、仮面ライダーじゃないか!」 「……そうだな!」 一文字の言葉で眼が覚めた。自分は、一人ではないのだ。 一人で足りないのなら――――一人で足りないのなら、二人でもう一度やればいい。 「そろそろ決着を着けるぞ……リントの戦士達よ!」 構えを取り、助走をつけてガドルは二人の下へと駆け出していく。 『行くぞ一文字!』 『あれだな、分かった!』 二人で顔を見合わせ極めて短時間で互いの意思を疎通する本郷と一文字。口には出さない電子頭脳による通信だが、互いの意思は強く伝わった。 一号、二号、ガドル。三者が全く同時に地を蹴り、闇夜の空に交差する。その影が形作るは、最早語るまでもない技の型。 「ハァァァァァァァァッ!!」 「「ライダーダブルキィィィィィィィッック!!」」 ガァンッッ!! カブトムシの力で打ち出される蹴りと超科学の生み出した両の蹴り、二つの蹴りが重なって爆発的な衝撃が双方を襲い、暴発した。 やがて、爆風と砂煙が辺りを覆い、何も見えなくなった――――。 ***ケースEX そして全ては一つに繋がる ダブルライダーとガドルの放った全身全霊の蹴り。 その波動と轟音は遠く響き渡り、この場に二組の新たな参入者を呼び込む事となる。 これは必然ではなくあくまでも偶然。ただ、この二組が近くにいただけ。 しかし、偶然といえど起こった出来事は噛み合った歯車のように回りだし、動き出す。 そして、在るべきことが起き、在るべき結果になり――――在るべき形へと戻る。 そこに立っているのが誰か。そこで倒れたのは誰か。それは終わるまで、誰にも分からない。 違いはたった一つ、生者か死者かの違いのみ。その違いは小さいように見えて、本当は果てしなく大きい。 ただ分かるのは、もうすぐ新たな戦いが始まり、そして終わりを迎えようとしている事。 ――――そして、全ては一つに繋がる。 ***ケース4 精密機械 砂煙が晴れ、視界が開けていく。 キックの激突から立つ事一分――――立っていたのは三人ではなく二人。 片方は一文字隼人。肩で息をしている彼の脇には、常に彼と共に激戦を潜り抜けてきた相棒が倒れていた。 「……ッ!」 ゴ・ガドル・バ。この場には、本郷ではなく彼が立っていた。全身の鎧がひび割れている物の、眼からまだ闘志は失われていなかった。 杖、ボウガン、大剣。どれも手元にないが、それなら作り出せばいい。そう思いまた突起に手を伸ばしたとき、状況が動く。 「ハッ!」 一切の無駄を廃した動きで放たれる満身創痍のワンツーパンチ。仮面ライダー二号の拳が風を切る。 ガドルはそれぞれの手で拳を受け止めるが、直後に膝蹴りを受け軽く怯んでしまう。 その勢いで二号は跳躍、手刀を構えて再び向かってきた。その隙にガドルは大剣を作り出し、両手で構えた。 キン、と金属が触れ合う音がする。だがガドルの持つ大剣と競り合っているのは二号の手刀が嵌めている赤いグローブ。 それほど二号の拳が研ぎ澄まされている事だろう――――事実、次の瞬間にはガドルの手から剣を奪い取っていたのだから。 「何!?」 「仮面ライダーを嘗めるな!」 奪い取った剣を地面に突き刺し、それを支えとして再び宙へと飛び立ち、空中で回転し右足をガドルめがけて突き出す。叫ぶのは勿論あの必殺技の名前。 「ライダーキック!」 ライダーパンチ、ライダーダブルキックと合わせて通算三つ目の必殺技を繰り出した。だが、まだ足りない。 先ほど本郷が言ったとおり並の怪人とは比べ物にならないほど強い。出し惜しみをしていたらこっちが負けてしまう。 相手もまだ勝つ気でいる。ならば、それと正面からぶつかり、勝って見せる。 「ウオォォォオオォッ!!」 咆吼を上げ、体中のエネルギーを足に込め、突きつけた。 少しだけ、足が前に進んだ気がする――――今は、それだけで十分だ。力の二号の名は伊達じゃないッ!! ガドルの装甲が少しづつ剥がれ、ひび割れていく。驚愕に眼を見開いているが、今更もう遅い。 「――――ッ!!」 最後の最後で体をずらし、胸部にあった足を無理やり左腕に持っていく。ベキリ、と嫌な音が響き渡る。 二号の紅いブーツが、ライダーキックがガドルの左腕を蹴り砕いた。それは放物線を描いて飛び、切断面からは止め処なく血を流している。 左腕を失い、意識が消え失せそうになっていたが、ガドルはまだ生きていた。 落ちた腕をワンアクションで咥え、残った右腕で二号を倒そうと拳を握る。だが、その願いは届く事がない。 「……何、だと!?」 体を覆う黒い装甲が軋み、僅かな脈動の後一瞬で人間の姿へと戻ってしまう。 この時のガドルには知る由もなかったが、首輪の制限により変身、及び全力での戦闘が出来るのはたった十分間のみ。 激戦は、十分程度で決着が着く物ではなかったのだ。元よりダブルライダーのスペックはそれぞれガドルと同程度、それを切り抜けるのは至難の業ではない。 但し、首輪の制限を受けているのは二号も同じ事。元の手に戻った体を見て、一文字が驚愕している。 その隙に全力で走る。逃げるのは多少忍びないが、それ以上に抵抗をしないリントを襲わないという彼のゲゲルに反するからだった。 そして何より――――自分から腕をもぎ取るほど強いリントの戦士がいるとは! ガドルの心は歓喜で溢れていた。 ここにはクウガや究極の闇以外にも自分を満足させてくれるリントがいる。そう思うと自然と足取りは軽くなった。 故に心の中で、彼はあの二人と再戦を誓う。まずは傷を癒してから――――闘争は、始まったばかりなのだから。 *状態表 【黎明】【G-2】 【ゴ・ガドル・バ@仮面ライダークウガ】 【時間軸:ゴ・ジャーザ・ギのゲゲルを開始後】 【状態:二時間怪人体に変身不可、左腕の肘から先を破損。】 【装備:なし】 【道具:破損した左腕】 【思考・状況】 1:リントの戦士を倒す。 2:再びあの二人と戦う。 備考 ※ガドルは自分にルールを課しているため、抵抗しないただのリントには攻撃しません。 「……グゥッ!」 ガドルを逃してしまった事に憤りを隠せない一文字。 変身が解けてしまった事も疑問だが、それよりもガドルを追いかけられない自分が憎い。 ちらりと本郷を見やる。よほどダメージが大きかったのだろう。一先ず、安全な場所へ―――― ダキュン! 刹那、一文字の頬を掠めて鉛の玉が飛んできた。 身を翻して構えるも、追撃がやってくる気配はない。だが振り返る事もなく感覚を研ぎ澄ませた。 頬を伝う血を拭わずに地面の弾を確認した。弾の口径から見て相手の獲物は恐らくライフルだろう。 そして、物陰から狙撃しているという事は殺し合いに乗っているという事だ。怒りを込めた瞳で、弾が飛んできた方向へと振り返った、その瞬間。 「待てッ! 大丈夫か!!」 それを吹き飛ばすほどの大声が、その場に駆け込んできた。 ◆ 再び時は巻き戻り、キックの激突が起こった直後。 キックの轟音は周囲のエリアほぼ全域に響き渡り、それは橘とゾル大佐の耳にも届いていた。 「大佐!」 橘の言葉に頷く暇もなく、ゾル大佐の足取りは加速する。まるで何かを探しているかのように。 置いていかれまいと必死に追いかけているが、訓練を受けているとは言えそこは常人と幹部クラスの改造人間。大なり小なり、違いが出るというものだ。 「……む?」 それには例えば、人並みはずれた視力などが上げられる。 ゾル大佐の目が路肩に転がっているデイパックを見つけた。駆け寄って確認してみるが中に入っていたのは奇妙なカード一枚。 それに気付いた橘が自分のデイパックからそれと同種類のカード――ラウズカード――を七枚、つまり持っているだけ取り出す。 ……おかしい。 初めに橘の頭を掠めたのは疑問。それもそのはず、彼のいた世界ではまだスペードのジャック、イーグルアンデッドは封印されていないのだから。 だがすぐにその謎は氷解する。先ほどゾル大佐と共に解き明かした時間軸の違い、恐らくこれは以前封印されていたカードか遠くない未来で封印されたカードだろう。 すぐさま回収し、再び走り出す。幸いにも、戦いの場所はそこからそう遠くはなかった。 これだけ走っても息一つ乱さないゾル大佐の体力に思わず橘は身震いした。 「やはりか!」 到着してまず聞こえたのはゾル大佐の言葉。あたかもそこにいるのがあの二人だと確信していた様子だ。 「大佐、その言い草だとあれが誰だか分かっていたみたいだな?」 「当たり前よ、あれほどの力を持つのは仮面ライダーしか居らん!」 仮面ライダーという単語に橘の目が光る。 「あれも仮面ライダーなのか! つまりあのショッカーと対立している二人か!?」 「ああそうだ、我らショッカーの行く手を阻むにっくき敵、本郷猛と一文字隼人!!」 ゾル大佐が叫んだかと思うと、銃声と共にその一文字から血が零れ落ちる。 ここぞとばかりにゾル大佐は飛び掛ろうとするが、それを背後から橘が静止させる。 「待った大佐! 今彼らを襲うのは拙い!」 「離せ橘!! ショッカー最大の敵が隙を見せている、またとないチャンスなのだ。逃す訳にはいかん!!」 「ショッカーの敵はショッカー自身で倒してこそだ! 自分の敵を誰かに取られてもいいのか!? いまは癪でも彼らを助けるんだ!」 橘の言い分にしては筋が通っていた。故にこれもショッカーの名誉のため、そう自分に言い聞かせゾル大佐は渋々了解した。 それを確認し、もう障害はないと橘は確信し、叫んだ。 「待てッ! 大丈夫か!!」 ◆ 金居は目の頭を押さえ、険しい顔をした。 まさか策に引っかかったのが自分のよく知る敵、橘朔也だったとは全く持って予想外だった。 リスクを少なくするのが最優先だったが、この時点で自分が危険人物だと脇の軍服男に気付かれるのはまずい。 だが既に手遅れ。橘が自分に向かって静止をかけてきた事で自分が何かしらの面識があることを知らせてしまった。 ならば……荒っぽい事は好みではないが、致し方ない。口封じだ。 結論を決めると、体から二本の大剣、ヘルターとスケルターを取り出し――――東條を丘から突き落とした。 次の瞬間、橘は誰よりも早く走り出し、丘の下で東條を受け止めた。 「君! 大丈夫かッ!」 橘は東條を抱きかかえて呼びかける。意識もあるし、まともに動けるようだ。 「一文字よ! さっさとその小童と本郷を連れて行け!!」 眼を合わせずにゾル大佐は一文字に命令する。恐らく、一文字の顔は驚愕で染まっているだろう。 「勘違いするな! お前を助ける訳ではない!!」 ショッカーの名誉のためだ……と心の中で付け加える。やがて一文字が本郷を抱え、東條がそれについていく形でその場から離脱した。 そして残りは三人。改造人間と、アンデッド、仮面ライダー。 ***ケース5 改造人間×アンデッド×仮面ライダー 「変身。」 ギャレンバックルのレバーを引き、オリハルコンエレメントを展開、それを潜り抜ける。橘の体が紅い鎧に包まれ、その手には銃が握られていた。 ゾル大佐は初見の、橘自身と金居に取ってはもう見飽きたその姿。仮面ライダーギャレン。 「ウゥ―――――ァォォォォォォォォォォンッッ!!!」 ゾル大佐が雄叫びを上げると同時に、全身が毛皮に覆われた。その姿、狼の如し。 古くは中世に伝承が残る怪物の名を冠した、黄金の毛並みを持つショッカーの改造人間。黄金狼男。 「フン……下らないな。」 嘲笑とも取れる笑みを浮かべた金居が降りてきた。地面に着くときには既に装甲に覆われ、元の面影をなくしていたが。 文明が始まる以前から地球上に存在していた、ギラファノコギリクワガタの始祖。ギラファアンデッド。 本来ならこのような場に来るはずがなかった三人の闘争が――――始まった。 「ハッ!」 先手はギャレン。ギャレンラウザーでギラファを狙撃するが、弾は体に届く前にバリアで防がれてしまう。 「そのような攻撃は効かない!」 続いて狼男が跳躍し、バリアのない近距離からの攻撃を打ち込む。しかし、ヘルターとスケルターでいなされ、弾き返された。 「橘! こやつが貴様の言ったアンデッドか!?」 「ああそうだ! しかもコイツはカテゴリーキング、並みの強さじゃない!」 会話をしながら三枚のカードをラウズする。中身はファイア、パレット、ラピッド。 ギャレンはギラファめがけて駆け出し、射程距離内に入ったところで地を蹴り、空中からの狙撃を加えた。 「効かないと言っているだろう!」 スケルターを振りかざして炎を振り払い、腰につけた手榴弾にもなる鋏を投擲する。それはきれいにギャレンの顔に命中し、仮面にひびが入った。 ――……sion―― 電子音声が鳴るが、それは別の声によってかき消される。 「ッ!?」 それは驚愕にも似た声――――但し、上がったのはギャレンからではなくギラファのほうである。 背中に走る衝撃は、狼男につけられた引っかき傷だ。ギャレンに気を取られすぎて背後に隙が出来てしまった。 しかも本当の驚きはそれだけではない、ここからがギャレンと狼男の真の狙いだ。 「ギャレンが……二人ッ!?」 爆発の煙を超えて出てきたのは、二人のギャレンの姿だった。思わず身動きを止めてしまい、後悔した。 ギャレンの技には分身したまま爪先蹴りをする「バーニングディバイド」があったのだ……だが、まだ腑に落ちない点がある。 バーニングショットとバーニングディバイド、その二つのコンボ技を発動するにはギャレンラウザーのAPが足りない。 どうしても出すには、何かのカードでAPを回復させなくては……回復、そうか。思わず解けた謎に手を打ちたくなる。 答えは、先ほどの電子音声。ギャレンはフュージョン、カテゴリージャックのカードでAPを回復させたのだ。 どちらにせよ、この距離ではバリアは展開できない――――そんな事を考えながら、眼前に迫る炎の蹴りが容赦なくギラファの意識を奪っていった。 戦いが終わった後、橘は自然に変身が解けた後倒れこんでしまった。 駆け寄った狼男も程なくしてゾル大佐の姿に戻り、腕を見る。 「チッ、制限時間か。忌々しい。」 取りあえず、指揮系統がない鬱憤を晴らせたことには満足したが、新たなイライラが出来てしまったようだ。 このストレスは、何処で発散すればよいのやら。 【黎明】【G-3】 【橘朔也@仮面ライダー剣】 【時間軸:Missing Ace世界(スパイダーUD封印直後)】 【状態:疲労、気絶、二時間変身不可(ギャレン)】 【装備:ギャレンバックル】 【道具:基本支給品一式、ラウズカード(スペードJ、ダイヤ1~6、9)、レトルトカレー、特殊支給品×?】 【思考・状況】 基本行動方針:とりあえず生き残る 1:金居を封印する。 2:ゾル大佐と行動を共にする。 3:余裕があれば剣崎、志村との合流。 備考 ※ゾル大佐の体力に敬意を払っています。 ※部下の死は、とりあえず眼前の状況に対処するために忘れています。 ※参加者が別々の時間軸からつれて来られている事に気付きました。 【ゾル大佐@仮面ライダー(初代)】 【時間軸:三十九話開始直後】 【状態:健康、文明による精神的ショック。二時間変身不可(黄金狼男)】 【装備:なし】 【道具:基本支給品一式、特殊支給品×?】 【思考・状況】 基本行動方針:生き残ってショッカーを再興させる 1:金居を追いかける。 2:後ほど一文字と本郷を倒しに行く。 3:橘に『ケイタイ』や『コンビニ』についてもっと教えてもらう。 備考 ※基本支給品の携帯電話の使用方法を知りません(昭和の人ですので)。 ※参加者が別々の時間軸からつれて来られている事に気付きました。 ※変身制限に気付きました。 ※剣世界について大まかな知識を得ました。 ◆ 一方、金居は森の中へと吹き飛ばされていた。 体のあちこちが悲鳴をあげ、緑色の血液が止まる事を知らず溢れていた。 メガネはずれ、着衣は乱れ、おまけに鼻血まで出している――――およそ人には見せられない、小汚い姿だ。 だがこんな姿になっても彼は生きることを諦めなかった。アンデッドとしてではなく、一生命体としての生を。 不意に東條の事を思い出す。彼は自分の言った事をうまく果たしているだろうか。 ――――先ほど金居が東條と交わした契約は『ある程度の力を持つ参加者を一人でも多く間引く事』。 とは言え、脱出に必要な人材まで間引かれても支障が出る。故に間引く対象はある程度の力を持つ者、つまり自分のような異形の存在や仮面ライダーのみに絞った。 元より東條の目的は優勝だった事もあってか、すんなりと話が纏まった。一人で殺していくより、複数で殺していったほうが効率がいいと悟ったのだろう。 但し、東條の方からは『香川英行は殺さず見つけたら生かして置くように』との事だ。約束を破る気はないが、少しばかり興味もわく。 だからこそ橘と出会った時、わざと『初対面で、かつ自分が東條とあの男を襲っている』という三文芝居を売ったのだ。 ……現れたのが橘でなければ、もう少し疑りを持ったかもしれない。だが橘でなければ、このような醜態を晒す事はなかっただろう。 まぁ、全ては後回しだ。 力なく木にもたれこみ、意識が落ちる寸前に思う。願わくば、もうギャレンとは会いたくないと。 【黎明】【F-3】 【金居@仮面ライダー剣】 【時間軸:45話終了後。】 【状態:鼻血、気絶、二時間変身不可(ギラファUD)】 【装備:神経断裂弾が発射可能なライフル】  【道具:基本支給品×2、煤けた首輪、特殊支給品×?】 【思考・状況】 1:可能な範囲で殺し合いの内幕をさぐる。 2:橘とは会いたくない、というか知り合いに会いたくない。 3:東條が参加者を減らしてくれる事に期待。 4:利用できる参加者は利用し、障害となる参加者は状況によっては殺害する。 5:香川秀行に僅かな興味。 備考 ※神経断裂弾の残りの弾数、首輪の損傷具合は不明です。 ***ケースNEXT 猛獣に心はなく――― 「ゴホッ、グフゥッ」 「起きたか、本郷。」 やけに激しい咳をしながら、本郷の意識が覚醒する。 あの怪人はどうしたのか……と聞こうとするが、自分や一文字がこうしている以上危機は去ったのだろう。 ふと、一文字の背後にいる青年が眼に留まる。見かけは自分達と同年代、若しくは少しばかり若く見えた。 その視線に気付いたのか、一文字が青年を指差して説明する。 「彼は東條悟君。気絶したお前をここまで運んできてくれたんだ。」 「そうか……ありがとう。俺は本郷猛だ。」 本郷の名乗りに対して東條は軽く会釈をする……本郷は、東條の瞳の中に何か暗い物を感じた。 その光景を見て、一文字はようやく忘れていた物を思い出した。 「そういえば、まだ名乗ってなかったな。俺は一文字隼人、よろしくな。」 言葉と共に右手を差し出す一文字。口元には笑みを携え、真っ直ぐ東條を見つめている。 東條は軽く戸惑ったが、やがてその手を握ってこう呟いた。 ……さよなら、と。 ドスッ。 「……?」 突如耳に届いた、肉を裂くような嫌な音。 何事かと振り返ろうとするが、首が動かない、体が言うことを聞かない。 唯一動かせた目線を下に向けると、黄金色の金属――――角らしきものが見える。自分の体から。 痛みを知覚する前に理性が否応無しに理解する。ああ、自分は刺されたのだと。 相手を倒そうと体を動かすが……全く力が入らない。体から熱が消えていくのが手に取るように分かる。 重力に引き込まれるように体が地に伏せる。自分を呼ぶ声が……戦友の声が聞こえてくる。 気がかりは本郷と東條君……だが……どうやら俺は、ここで終わりらしい。一度理解すれば、意識が閉じるのは本当に早かった。 「本郷……人類の平和を……東條君のことを……」 必死に唇を動かして言葉を紡ぐが、どんどん声は消え入りそうになっていく。もう少し、もう少しだけ待ってくれ。 「……頼、む。」 最後の言葉は、ちゃんと伝わっただろうか。俺は駄目だが、きっとその後は本郷が、仮面ライダーが継いでくれる。 そう考えると、幾分か気が楽になってきた。視界が白に染まり、やがて何もかもが消えていく――――――。 「一文字イイイイイイ!!」 それが、彼の、仮面ライダー二号、一文字隼人の――――この世で迎えた、最後の思考となった。 &color(red){【一文字隼人@仮面ライダー 死亡】} &color(red){【残り46人】} 「何故だ……何故一文字を殺した!?」 本郷は叫ぶ。戦友を殺した仇……東條悟に対して。 彼は見てしまったのだ。東條がデッキを取り出した瞬間、サイの姿をした怪物が川から飛び出してくるのを。 「お前は……どうしてこんな戦いに……」 「変身。」 本郷の会話の途中で東條がデッキを翳す。いや、そもそも言葉すら聞いていないといった方が正しいか。 瞳に映されたデッキと共にベルトが現れ、そこから装甲が重なり銀色の姿を現す。 きっと一文字は最後まで東條の闇に気付かなかったのだろう。それを哀れむ事は出来ないし、滑稽と笑う事も出来ない。 「へぇ、少し重たいけど、悪くない。」 現した姿は装甲を持つ仮面ライダー……違う、コイツは仮面ライダーじゃない。コイツは仮面ライダーの皮をかぶった怪人だ。 そうか。さっき感じたのはこの本性だったのか。瞳の中に見た闇は幻でもなんでもなく、紛れもない真実だったのだ。 一文字、コイツだけは、俺が倒す。決意を込めた拳で本郷はガイに立ち向かう。一文字のためにも、ここでコイツを倒すと。 だが、きっと、彼の言葉は届かない。なぜなら―――― 「さあ、僕が英雄になるために――――死んで。」 ――――彼は既に心を捨て去り、英雄を目指す歪んだ猛獣なのだから。 【黎明】【G-3 川沿い】 【本郷猛@仮面ライダー】 【時間軸:ガラガランダ戦後。ショッカー首領からショッカーの壊滅を聞いた後】 【状態:疲労(極大) 二時間変身不可(一号)】 【装備:無し 】 【道具:ラウズアブゾーバー】 【思考・状況】 1:ガイを倒す。 2:おやっさんの捜索 3:この狂った戦いを止めさせる。 備考 ※本郷は参加者達(少なくとも自分達)は違う時間軸から集められたことに気付きました。 ※V3ホッパーは一文字の遺体の傍に放置されています。 ※ライダーダブルキックの轟音が周囲エリアに響き渡りました。 【東條悟@仮面ライダー龍騎】 【時間軸:44話終了後。】 【状態:疲労大。1時間変身不能(タイガ)、仮面ライダーガイに変身中。】 【装備:タイガのデッキ、ガイのデッキ】 【道具:基本支給品×2、特殊支給品(未確認)、サバイブ烈火@仮面ライダー龍騎、芝浦の首輪】 【思考・状況】 基本行動方針:全員殺して勝ち残り、名実共に英雄となる 1:『ある程度の力を持つ参加者を一人でも多く間引く』。 2:できれば最後の仕上げは先生(香川)にしたい 3:殺した奴の首輪をコレクションするのも面白い 備考 ※東條はまだ芝浦の特殊支給品(サバイブ烈火)を確認していません |027:[[笑顔と君と(後編)]]|投下順|029:[[駆ける海堂]]| |027:[[笑顔と君と(後編)]]|時系列順|029:[[駆ける海堂 ]]| |020:[[ダブルライダーVSカブトムシ男!!]]|[[ゴ・ガドル・バ]]|042:[[暗雲]]| |020:[[ダブルライダーVSカブトムシ男!!]]|[[本郷猛]]|036:[[本郷猛変身不可能!!]]| |020:[[ダブルライダーVSカブトムシ男!!]]|&color(red){一文字隼人}|| |015:[[蠢く甲蟲]]|[[金居]]|037:[[渦]]| |010:[[犀虎の十分間]]|[[東條悟]]|036:[[本郷猛変身不可能!!]]| |005:[[歪んでいる時間の道]]|[[橘朔也]]|043:[[Hypothesis and reality]]| |005:[[歪んでいる時間の道]]|[[ゾル大佐]]|043:[[Hypothesis and reality]]|
*それぞれの場合/NEXT STAGE ***ケース1 東條悟と金居の場合 空も既に白み始めてきた頃に、その世界は本来の顔を見せ始めた。 朝焼けに煌く木々、磯の香りが漂う海。作り物か本物かはさて置き、その光景には誰しもが思わず見惚れてしまう物があった。 だというのに、その中で薄気味悪い笑みを浮かべ、ただただ整備された道路を進む青年が一人。 彼の頭には景色など微塵も入っていない、むしろ目障りなだけだ。彼の望みは、たった一つ。 参加者を皆殺しにする。自分がただ一人、本物の英雄として生きる事。 その望みを叶えられるのならそれ以外の物ははっきり言ってどうでもいいし、意に介する必要はない。 『一人の命と、十人の命。どちらかだけを助けられるとしたらどちらを助けるか。』 かつて恩師が聞かせてくれた問い。ある意味、自分の進む道を照らしてくれた問いだ。 だからこそ、――――――その問いの答えとして、今、自分がここに立っている。 故に、東條悟は進む。英雄になるために、歪んだ自分に気付かぬまま。 そして、その後ろから後をつける人影がもう一人――――金居。 彼は今、迷っていた。目の前の相手を殺すか、否かを。 殺すのは、割と簡単に出来る。変身すればすぐ終わるだろうし、ここからの位置でもライフルで頭を打ちぬくことなど容易い。 ただ、殺さずとも利用することは出来る……但し、対象が利用できるような人物ならば、の話だが。 利用できる可能性がある以上は、迂闊に手を出せない。代償は少なく、見返りは大きく、ギブ&テイクというものだ。 どう身を振ろうか考えながらちらりと東條を見、その瞬間、金居の表情が驚愕に染まる。 相手はこちらに体ごと向き、真っ直ぐこちらを見つめていた。あの位置からは見えていない、見えるはずないのに。 「早く出てきてよ、僕はいつでも準備は出来てるんだ。」 ……多少順番が前後してしまったが、気付かれてしまった以上仕方がない。 「……君は、この戦いについてどう考える?」 ---- 「――――分かりました。では、手筈通りに」 「うん、」 互いに会話を終え、歩みを進める。 しばらく歩いていると、三人の人影を見つけた……どれも異形の姿を持つ人外の存在ばかり。 こんなのがゴロゴロいるのかと少し頭を悩ませるが、自分の存在に気付いて思わず苦笑する。 最後にもう一度目線を交わす。双方とも用意は完了、残りは時を待つのみ。 ――――3、2、1。開始。 ◆ ***ケース2 橘朔也とゾル大佐の場合 ごそごそ、ごそごそ。もぐ、んぐ、ごくん。 狭いコンビニに物を漁る音と食べ物を咀嚼する音、そして飲み込む音が響く。 傍らには幾つものコンビニ弁当の箱、惣菜パンの袋、飲み物の入っていないペットボトル。ついでにデザートのカップまで転がっている。 ……ちなみに、弁当のパックには寿司とかかれた物が特に多かったことを記しておく。 この状態で、大の男が二人も――しかも片方はサングラスに黒服、もう片方は隻眼に軍服の――座り込んでいるのは些か奇妙かもしれない。 だが、当人に言わせればいたって大真面目なのだ、多分。 「つまり、この携帯というのは持ち運び出来る電話で、且つこの殺し合いの名簿も兼ねている訳だな。」 「ああ……んぐ……名簿に知り合いの名前が……もぐ……あるかどうか確認してみろ……ふぅ。」 説明しながら物を食べる手を止めない橘に一種の驚きと非難を抱きながら、ゾル大佐は名簿に眼を通した。 橘から聞いた名前、剣崎一真と志村純一。それぞれ彼の後輩と部下、聞いた限りではこいつも仮面ライダーとの事、油断は禁物だ。 続いては金居、城光。どちらもアンデッドとかいう怪物らしいが、ショッカーの科学力の前では恐れるに足らんな。 そして見知った名前が掠めていく。本郷猛と一文字隼人、忌々しい二人の仮面ライダー……何故か名前が二つある、表記ミスか。 死神博士……ヨーロッパ支部での活躍は耳にしている。本郷猛と互角に渡り合っている所を見ると、無能という訳でもないらしい。 ……最後の懸念はこの橘という男。自分の知らない時代から来たとは言え、仮面ライダーであることには変わりない――――……。 ---- ――――少しだけ時は巻き戻り、場面は二人がコンビニに入った時点まで遡る。 アンデッド。それは太古の昔、地球上に君臨していた不死の生命体の総称である。 それぞれの生命体の始祖である五十二体と、どの生命体の始祖でもないジョーカーが二体。 総勢五十四体のアンデッドによる種の繁栄をかけた戦い、それがバトルファイト。 そして開放されたアンデッドと戦う戦士、それが橘の言う仮面ライダー達。 「……と、おおむねこんな感じでよかったか。しかし……腑に落ちんな。」 「何がだ?」 顎に手を当て考えるゾル大佐とは対照的に、両手に御握りを持っている橘というのは思わず力が抜けてしまう光景だ。 「配られた携帯やこのコンビニという場所、それに先ほどのバトルファイト……どれも私の与り知らぬ物だ。」 そういって、遠くを見つめるゾル大佐。だが、違和感は橘も感じていた。 このゾル大佐がとんでもない田舎者だとしても、それだけではどうしても説明がつかない。 「バトルファイトについては知らなくても無理はないが……このご時世に携帯やコンビニを知らないというのは少しばかりおかしいな。」 「いや、仮にそのバトルファイトとやらが本当にあったなら、我がショッカーが把握していないはずはない。  幹部クラスの私なら尚更だが……いや、ちょっと待て。今なんと言った?」 橘の発言に反応を見せるゾル大佐。 「……このご時世に携帯やコンビニを知らないのはおかしい、と。」 「つかぬ事を聞くが、橘。貴様が来た時代は、西暦何年だ?」 ……は? 橘は口には出さないものの思わず心の中で呟いた。まさか西暦も分からないのか。 と、ここで彼は思い出す。先ほど自分が感じた違和感を。 ――――…なんだこいつ、いつの時代から来たんだ…―――― 漸く、ゾル大佐が抱いている仮説を理解する。 「2008年だ。そっちはどうなんだ?」 「……1971年。」 「……やはりそういうことか。」 「ああ、どうやら我らには、多大なる時代のズレがあるようだな。」 そういうことだ。参加者は別々の時間からそれぞれつれて来られているという事……つまり、スマートブレインは、時間の流れに干渉する力がある。 俄かには信じがたいが、そうとしかいえない。ならば剣崎や志村も、自分の知る剣崎や志村ではないかもしれないということ。 「時代のズレがあれば互いの認識にもズレが生じる……どうしてこんな簡単な事に気付かなかったんだ。」 「仕方あるまい。時間を越えるなど、それこそショッカーの科学力でも難しい。」 「……さっきから言っている、ショッカーとは?」 「む、ショッカーを知らんのか!?ショッカーとは……」 ゾル大佐が、ショッカーの概要を橘に説明しようとしたそのとき。 ぐぅ~~~~~~~~~~~~~っっ。 と、ほぼ揃って二人は腹の虫が声を上げた。考えるのもいいが、それよりやることがあるのではないかと。 「……腹が減ったな。」 「……うむ。ショッカーの兵士たる物、常に万全の状態でいなければなるまい。」 どちらが先に動き出したか、二人は我先にとコンビニ内の食べ物を漁りだした。 ---- ――――そして、冒頭の場面へとつながる。 「どうだ、知り合いの名前は居たか?」 どうやらそろそろ満足したのか、橘が食事の手を止める。それでもレトルトカレーをデイパックに詰めている辺り、まだ懲りない様子だ。 「……ああ、ショッカーにいる幹部と、敵対する相手が二人だ。」 「そうか……さっきも言ったが、そのショッカーとは何だ?」 橘の言葉に大佐は訝しげな顔をした。 「貴様、本当に聞き覚えがないのか?」 「すまない、全く。」 その答えにゾル大佐は落胆した。三十年近くの月日が経過していながら征服が完了していないという事は――――ショッカーの日本征服が失敗した事に他ならない。 自分も、名誉の戦死を遂げたのだろう。だが、軍人にとって恐れるのは死ではない。組織としての目的を果たせぬ事だ。 …………ならば、その死は無駄死にだッ!! 「決めたぞ、橘。私は……この地より必ず帰還し、ショッカーを復興させて見せる!!」 立ち上がり、瞳を輝かせ、右の拳を握ってゾル大佐は決意した。 その決意を聞いて、橘はこの男が強いと確信した。自分でさえ部下を失っていたのに、彼は組織の未来を知りながらそれに抗おうとしている。 ……内心、ショッカーとはなんなのかと聞けなくなった事を毒づいてはいたが。 「では行くぞ橘。」 「行くって?」 「決まっているだろう、生き抜くためには集団、つまりは自由に動かせる兵士が必要不可欠。それを探しに行くのだ。」 言うが早いかゾル大佐はテキパキと荷物を取り、橘を残して外へ出て行った。 「ま、待て!」 橘が急いで荷物をまとめて後を追う。そして……そこには誰もいなくなった。 ◆ ***ケース3 ダブルライダーとゴ・ガドル・バの場合 その頃、橘達から少し離れた小道、風をを駆けぬけ走り去る異形の影が三つ。 一つ――――仮面ライダー一号。人類の平和を守るため、その身を捧げた技の戦士。 一つ――――仮面ライダー二号。瞳に悪を許さぬ誓いを、紅き拳に魂込めた力の使者。 一つ――――ゴ・ガドル・バ。戦いに身を投じ、己を高める事を悦びとする古代の闘士。 「トォ!」 「フンッ!!」 放たれた一号の蹴りが、ガドルの持った杖によって阻まれる。これは戦いが始まった当初、ガドルが胸の突起物を変化させたものだ。 そのまま杖を振るって、一号を地に叩きつけようとするが、そこに二号の拳が飛んでくる。 「ライダーパァンチ!」 放たれた拳は左右両方。先に来た左の拳は勢いをずらして避けるが、続く右の拳は杖の所為で対応できずに直撃する。 腹部に流れてくる衝撃にガドルが顔をしかめ、その隙に二号が一号を助け出して距離をとった。 それを見て、ガドルは即座に次の行動に入る。杖を投げ捨て、新しい突起物を引き抜いて力を込める。 すると、両の瞳が緑色に変わり突起物が歪んでボウガンの姿をとる。ガドルの射撃体だ。 「なっ!?」 「拙い!」 二人が対応する前に引き金を引き、高出力のエネルギーをまとって矢が放たれる。 ダブルライダーは即座に逆反対に飛び退くが、僅かにタイミングが遅れて、一号の掌を貫いた。 「グァッ!」 「その程度なのか、リントの戦士とはッ!」 一号が苦悶の声を上げるが、今はこれしきの事に構っていられない。嫌がる体に鞭打ち、ガドルに向かって走り出す。 対するガドルは眼を紫色に変え、剛力体として一号と向き直る。手に持ったボウガンが大剣へと姿を変え、天高く振り上げられた。 その剣は、真っ直ぐ一号めがけて振り下ろされ、その仮面を叩き割―――― 「オオオオオ……ッ!?」 「仮面ライダーはそう簡単に負けん!」 ――――らなかった。一号は瞬時に先ほどの杖を取り、剣での攻撃を防いでいたのだ。 金属音が響く。攻撃を防がれるとは思っていなかった所為だろうか、その眼は大きく見開かれていた。 「残念だったな!」 ガドルが振り返る前に後ろからのライダーパンチが彼を捉えた。メキィ、と嫌な音が腹から漏れる。 その隙に再び距離をとり、一号は力の限り大地を蹴って飛び上がった。 「ライダー――――――」 空中で体を捻り、さらに前方一回転。マフラーが風に棚引き、星空に映える。 狙いを定められたガドルはそれを避ける様子もなく、寧ろ正面から受け止めようとしていた。 「――――――キィィィィィィィィィィッック!!」 急降下、銀色の風を切って数多の怪人を葬ってきた必殺キックが構えているガドル目掛けて突き進む。 「ウオオオオオオオッ!!」 紫色の眼を赤色に染め、格闘体となったガドルが真っ向から一号のライダーキックを掴む。 その力は決して止められるものではないが、捌ききれない訳でもない。 掴んだ足に捻りを加えて、反動をつけて空へと弾き飛ばす。 「グゥッ……!」 「本郷!」 飛んできた一号を二号が受け止め、多少足が地面にめり込む。つまり、それほど投げ飛ばされた際の衝撃が強いという事。 「一文字……すまん。」 「気にするな。それよりも、あのガドルとか言う怪人……」 「ああ……今までの怪人と比べ物にならないほどに、強い……ッ!」 本郷らしくない弱気な言葉に、一文字は軽く笑みを浮かべて肩に手を置いた。 「もっと自信を持て本郷。俺たちは改造人間、仮面ライダーじゃないか!」 「……そうだな!」 一文字の言葉で眼が覚めた。自分は、一人ではないのだ。 一人で足りないのなら――――一人で足りないのなら、二人でもう一度やればいい。 「そろそろ決着を着けるぞ……リントの戦士達よ!」 構えを取り、助走をつけてガドルは二人の下へと駆け出していく。 『行くぞ一文字!』 『あれだな、分かった!』 二人で顔を見合わせ極めて短時間で互いの意思を疎通する本郷と一文字。口には出さない電子頭脳による通信だが、互いの意思は強く伝わった。 一号、二号、ガドル。三者が全く同時に地を蹴り、闇夜の空に交差する。その影が形作るは、最早語るまでもない技の型。 「ハァァァァァァァァッ!!」 「「ライダーダブルキィィィィィィィッック!!」」 ガァンッッ!! カブトムシの力で打ち出される蹴りと超科学の生み出した両の蹴り、二つの蹴りが重なって爆発的な衝撃が双方を襲い、暴発した。 やがて、爆風と砂煙が辺りを覆い、何も見えなくなった――――。 ***ケースEX そして全ては一つに繋がる ダブルライダーとガドルの放った全身全霊の蹴り。 その波動と轟音は遠く響き渡り、この場に二組の新たな参入者を呼び込む事となる。 これは必然ではなくあくまでも偶然。ただ、この二組が近くにいただけ。 しかし、偶然といえど起こった出来事は噛み合った歯車のように回りだし、動き出す。 そして、在るべきことが起き、在るべき結果になり――――在るべき形へと戻る。 そこに立っているのが誰か。そこで倒れたのは誰か。それは終わるまで、誰にも分からない。 違いはたった一つ、生者か死者かの違いのみ。その違いは小さいように見えて、本当は果てしなく大きい。 ただ分かるのは、もうすぐ新たな戦いが始まり、そして終わりを迎えようとしている事。 ――――そして、全ては一つに繋がる。 ***ケース4 精密機械 砂煙が晴れ、視界が開けていく。 キックの激突から立つ事一分――――立っていたのは三人ではなく二人。 片方は一文字隼人。肩で息をしている彼の脇には、常に彼と共に激戦を潜り抜けてきた相棒が倒れていた。 「……ッ!」 ゴ・ガドル・バ。この場には、本郷ではなく彼が立っていた。全身の鎧がひび割れている物の、眼からまだ闘志は失われていなかった。 杖、ボウガン、大剣。どれも手元にないが、それなら作り出せばいい。そう思いまた突起に手を伸ばしたとき、状況が動く。 「ハッ!」 一切の無駄を廃した動きで放たれる満身創痍のワンツーパンチ。仮面ライダー二号の拳が風を切る。 ガドルはそれぞれの手で拳を受け止めるが、直後に膝蹴りを受け軽く怯んでしまう。 その勢いで二号は跳躍、手刀を構えて再び向かってきた。その隙にガドルは大剣を作り出し、両手で構えた。 キン、と金属が触れ合う音がする。だがガドルの持つ大剣と競り合っているのは二号の手刀が嵌めている赤いグローブ。 それほど二号の拳が研ぎ澄まされている事だろう――――事実、次の瞬間にはガドルの手から剣を奪い取っていたのだから。 「何!?」 「仮面ライダーを嘗めるな!」 奪い取った剣を地面に突き刺し、それを支えとして再び宙へと飛び立ち、空中で回転し右足をガドルめがけて突き出す。叫ぶのは勿論あの必殺技の名前。 「ライダーキック!」 ライダーパンチ、ライダーダブルキックと合わせて通算三つ目の必殺技を繰り出した。だが、まだ足りない。 先ほど本郷が言ったとおり並の怪人とは比べ物にならないほど強い。出し惜しみをしていたらこっちが負けてしまう。 相手もまだ勝つ気でいる。ならば、それと正面からぶつかり、勝って見せる。 「ウオォォォオオォッ!!」 咆吼を上げ、体中のエネルギーを足に込め、突きつけた。 少しだけ、足が前に進んだ気がする――――今は、それだけで十分だ。力の二号の名は伊達じゃないッ!! ガドルの装甲が少しづつ剥がれ、ひび割れていく。驚愕に眼を見開いているが、今更もう遅い。 「――――ッ!!」 最後の最後で体をずらし、胸部にあった足を無理やり左腕に持っていく。ベキリ、と嫌な音が響き渡る。 二号の紅いブーツが、ライダーキックがガドルの左腕を蹴り砕いた。それは放物線を描いて飛び、切断面からは止め処なく血を流している。 左腕を失い、意識が消え失せそうになっていたが、ガドルはまだ生きていた。 落ちた腕をワンアクションで咥え、残った右腕で二号を倒そうと拳を握る。だが、その願いは届く事がない。 「……何、だと!?」 体を覆う黒い装甲が軋み、僅かな脈動の後一瞬で人間の姿へと戻ってしまう。 この時のガドルには知る由もなかったが、首輪の制限により変身、及び全力での戦闘が出来るのはたった十分間のみ。 激戦は、十分程度で決着が着く物ではなかったのだ。元よりダブルライダーのスペックはそれぞれガドルと同程度、それを切り抜けるのは至難の業ではない。 但し、首輪の制限を受けているのは二号も同じ事。元の手に戻った体を見て、一文字が驚愕している。 その隙に全力で走る。逃げるのは多少忍びないが、それ以上に抵抗をしないリントを襲わないという彼のゲゲルに反するからだった。 そして何より――――自分から腕をもぎ取るほど強いリントの戦士がいるとは! ガドルの心は歓喜で溢れていた。 ここにはクウガや究極の闇以外にも自分を満足させてくれるリントがいる。そう思うと自然と足取りは軽くなった。 故に心の中で、彼はあの二人と再戦を誓う。まずは傷を癒してから――――闘争は、始まったばかりなのだから。 *状態表 【黎明】【G-2】 【ゴ・ガドル・バ@仮面ライダークウガ】 【時間軸:ゴ・ジャーザ・ギのゲゲルを開始後】 【状態:二時間怪人体に変身不可、左腕の肘から先を破損。】 【装備:なし】 【道具:破損した左腕】 【思考・状況】 1:リントの戦士を倒す。 2:再びあの二人と戦う。 備考 ※ガドルは自分にルールを課しているため、抵抗しないただのリントには攻撃しません。 「……グゥッ!」 ガドルを逃してしまった事に憤りを隠せない一文字。 変身が解けてしまった事も疑問だが、それよりもガドルを追いかけられない自分が憎い。 ちらりと本郷を見やる。よほどダメージが大きかったのだろう。一先ず、安全な場所へ―――― ダキュン! 刹那、一文字の頬を掠めて鉛の玉が飛んできた。 身を翻して構えるも、追撃がやってくる気配はない。だが振り返る事もなく感覚を研ぎ澄ませた。 頬を伝う血を拭わずに地面の弾を確認した。弾の口径から見て相手の獲物は恐らくライフルだろう。 そして、物陰から狙撃しているという事は殺し合いに乗っているという事だ。怒りを込めた瞳で、弾が飛んできた方向へと振り返った、その瞬間。 「待てッ! 大丈夫か!!」 それを吹き飛ばすほどの大声が、その場に駆け込んできた。 ◆ 再び時は巻き戻り、キックの激突が起こった直後。 キックの轟音は周囲のエリアほぼ全域に響き渡り、それは橘とゾル大佐の耳にも届いていた。 「大佐!」 橘の言葉に頷く暇もなく、ゾル大佐の足取りは加速する。まるで何かを探しているかのように。 置いていかれまいと必死に追いかけているが、訓練を受けているとは言えそこは常人と幹部クラスの改造人間。大なり小なり、違いが出るというものだ。 「……む?」 それには例えば、人並みはずれた視力などが上げられる。 ゾル大佐の目が路肩に転がっているデイパックを見つけた。駆け寄って確認してみるが中に入っていたのは奇妙なカード一枚。 それに気付いた橘が自分のデイパックからそれと同種類のカード――ラウズカード――を七枚、つまり持っているだけ取り出す。 ……おかしい。 初めに橘の頭を掠めたのは疑問。それもそのはず、彼のいた世界ではまだスペードのジャック、イーグルアンデッドは封印されていないのだから。 だがすぐにその謎は氷解する。先ほどゾル大佐と共に解き明かした時間軸の違い、恐らくこれは以前封印されていたカードか遠くない未来で封印されたカードだろう。 すぐさま回収し、再び走り出す。幸いにも、戦いの場所はそこからそう遠くはなかった。 これだけ走っても息一つ乱さないゾル大佐の体力に思わず橘は身震いした。 「やはりか!」 到着してまず聞こえたのはゾル大佐の言葉。あたかもそこにいるのがあの二人だと確信していた様子だ。 「大佐、その言い草だとあれが誰だか分かっていたみたいだな?」 「当たり前よ、あれほどの力を持つのは仮面ライダーしか居らん!」 仮面ライダーという単語に橘の目が光る。 「あれも仮面ライダーなのか! つまりあのショッカーと対立している二人か!?」 「ああそうだ、我らショッカーの行く手を阻むにっくき敵、本郷猛と一文字隼人!!」 ゾル大佐が叫んだかと思うと、銃声と共にその一文字から血が零れ落ちる。 ここぞとばかりにゾル大佐は飛び掛ろうとするが、それを背後から橘が静止させる。 「待った大佐! 今彼らを襲うのは拙い!」 「離せ橘!! ショッカー最大の敵が隙を見せている、またとないチャンスなのだ。逃す訳にはいかん!!」 「ショッカーの敵はショッカー自身で倒してこそだ! 自分の敵を誰かに取られてもいいのか!? いまは癪でも彼らを助けるんだ!」 橘の言い分にしては筋が通っていた。故にこれもショッカーの名誉のため、そう自分に言い聞かせゾル大佐は渋々了解した。 それを確認し、もう障害はないと橘は確信し、叫んだ。 「待てッ! 大丈夫か!!」 ◆ 金居は目の頭を押さえ、険しい顔をした。 まさか策に引っかかったのが自分のよく知る敵、橘朔也だったとは全く持って予想外だった。 リスクを少なくするのが最優先だったが、この時点で自分が危険人物だと脇の軍服男に気付かれるのはまずい。 だが既に手遅れ。橘が自分に向かって静止をかけてきた事で自分が何かしらの面識があることを知らせてしまった。 ならば……荒っぽい事は好みではないが、致し方ない。口封じだ。 結論を決めると、体から二本の大剣、ヘルターとスケルターを取り出し――――東條を丘から突き落とした。 次の瞬間、橘は誰よりも早く走り出し、丘の下で東條を受け止めた。 「君! 大丈夫かッ!」 橘は東條を抱きかかえて呼びかける。意識もあるし、まともに動けるようだ。 「一文字よ! さっさとその小童と本郷を連れて行け!!」 眼を合わせずにゾル大佐は一文字に命令する。恐らく、一文字の顔は驚愕で染まっているだろう。 「勘違いするな! お前を助ける訳ではない!!」 ショッカーの名誉のためだ……と心の中で付け加える。やがて一文字が本郷を抱え、東條がそれについていく形でその場から離脱した。 そして残りは三人。改造人間と、アンデッド、仮面ライダー。 ***ケース5 改造人間×アンデッド×仮面ライダー 「変身。」 ギャレンバックルのレバーを引き、オリハルコンエレメントを展開、それを潜り抜ける。橘の体が紅い鎧に包まれ、その手には銃が握られていた。 ゾル大佐は初見の、橘自身と金居に取ってはもう見飽きたその姿。仮面ライダーギャレン。 「ウゥ―――――ァォォォォォォォォォォンッッ!!!」 ゾル大佐が雄叫びを上げると同時に、全身が毛皮に覆われた。その姿、狼の如し。 古くは中世に伝承が残る怪物の名を冠した、黄金の毛並みを持つショッカーの改造人間。黄金狼男。 「フン……下らないな。」 嘲笑とも取れる笑みを浮かべた金居が降りてきた。地面に着くときには既に装甲に覆われ、元の面影をなくしていたが。 文明が始まる以前から地球上に存在していた、ギラファノコギリクワガタの始祖。ギラファアンデッド。 本来ならこのような場に来るはずがなかった三人の闘争が――――始まった。 「ハッ!」 先手はギャレン。ギャレンラウザーでギラファを狙撃するが、弾は体に届く前にバリアで防がれてしまう。 「そのような攻撃は効かない!」 続いて狼男が跳躍し、バリアのない近距離からの攻撃を打ち込む。しかし、ヘルターとスケルターでいなされ、弾き返された。 「橘! こやつが貴様の言ったアンデッドか!?」 「ああそうだ! しかもコイツはカテゴリーキング、並みの強さじゃない!」 会話をしながら三枚のカードをラウズする。中身はファイア、パレット、ラピッド。 ギャレンはギラファめがけて駆け出し、射程距離内に入ったところで地を蹴り、空中からの狙撃を加えた。 「効かないと言っているだろう!」 スケルターを振りかざして炎を振り払い、腰につけた手榴弾にもなる鋏を投擲する。それはきれいにギャレンの顔に命中し、仮面にひびが入った。 ――……sion―― 電子音声が鳴るが、それは別の声によってかき消される。 「ッ!?」 それは驚愕にも似た声――――但し、上がったのはギャレンからではなくギラファのほうである。 背中に走る衝撃は、狼男につけられた引っかき傷だ。ギャレンに気を取られすぎて背後に隙が出来てしまった。 しかも本当の驚きはそれだけではない、ここからがギャレンと狼男の真の狙いだ。 「ギャレンが……二人ッ!?」 爆発の煙を超えて出てきたのは、二人のギャレンの姿だった。思わず身動きを止めてしまい、後悔した。 ギャレンの技には分身したまま爪先蹴りをする「バーニングディバイド」があったのだ……だが、まだ腑に落ちない点がある。 バーニングショットとバーニングディバイド、その二つのコンボ技を発動するにはギャレンラウザーのAPが足りない。 どうしても出すには、何かのカードでAPを回復させなくては……回復、そうか。思わず解けた謎に手を打ちたくなる。 答えは、先ほどの電子音声。ギャレンはフュージョン、カテゴリージャックのカードでAPを回復させたのだ。 どちらにせよ、この距離ではバリアは展開できない――――そんな事を考えながら、眼前に迫る炎の蹴りが容赦なくギラファの意識を奪っていった。 戦いが終わった後、橘は自然に変身が解けた後倒れこんでしまった。 駆け寄った狼男も程なくしてゾル大佐の姿に戻り、腕を見る。 「チッ、制限時間か。忌々しい。」 取りあえず、指揮系統がない鬱憤を晴らせたことには満足したが、新たなイライラが出来てしまったようだ。 このストレスは、何処で発散すればよいのやら。 【黎明】【G-3】 【橘朔也@仮面ライダー剣】 【時間軸:Missing Ace世界(スパイダーUD封印直後)】 【状態:疲労、気絶、二時間変身不可(ギャレン)】 【装備:ギャレンバックル】 【道具:基本支給品一式、ラウズカード(スペードJ、ダイヤ1~6、9)、レトルトカレー、特殊支給品×?】 【思考・状況】 基本行動方針:とりあえず生き残る 1:金居を封印する。 2:ゾル大佐と行動を共にする。 3:余裕があれば剣崎、志村との合流。 備考 ※ゾル大佐の体力に敬意を払っています。 ※部下の死は、とりあえず眼前の状況に対処するために忘れています。 ※参加者が別々の時間軸からつれて来られている事に気付きました。 【ゾル大佐@仮面ライダー(初代)】 【時間軸:三十九話開始直後】 【状態:健康、文明による精神的ショック。二時間変身不可(黄金狼男)】 【装備:なし】 【道具:基本支給品一式、特殊支給品×?】 【思考・状況】 基本行動方針:生き残ってショッカーを再興させる 1:金居を追いかける。 2:後ほど一文字と本郷を倒しに行く。 3:橘に『ケイタイ』や『コンビニ』についてもっと教えてもらう。 備考 ※基本支給品の携帯電話の使用方法を知りません(昭和の人ですので)。 ※参加者が別々の時間軸からつれて来られている事に気付きました。 ※変身制限に気付きました。 ※剣世界について大まかな知識を得ました。 ◆ 一方、金居は森の中へと吹き飛ばされていた。 体のあちこちが悲鳴をあげ、緑色の血液が止まる事を知らず溢れていた。 メガネはずれ、着衣は乱れ、おまけに鼻血まで出している――――およそ人には見せられない、小汚い姿だ。 だがこんな姿になっても彼は生きることを諦めなかった。アンデッドとしてではなく、一生命体としての生を。 不意に東條の事を思い出す。彼は自分の言った事をうまく果たしているだろうか。 ――――先ほど金居が東條と交わした契約は『ある程度の力を持つ参加者を一人でも多く間引く事』。 とは言え、脱出に必要な人材まで間引かれても支障が出る。故に間引く対象はある程度の力を持つ者、つまり自分のような異形の存在や仮面ライダーのみに絞った。 元より東條の目的は優勝だった事もあってか、すんなりと話が纏まった。一人で殺していくより、複数で殺していったほうが効率がいいと悟ったのだろう。 但し、東條の方からは『香川英行は殺さず見つけたら生かして置くように』との事だ。約束を破る気はないが、少しばかり興味もわく。 だからこそ橘と出会った時、わざと『初対面で、かつ自分が東條とあの男を襲っている』という三文芝居を売ったのだ。 ……現れたのが橘でなければ、もう少し疑りを持ったかもしれない。だが橘でなければ、このような醜態を晒す事はなかっただろう。 まぁ、全ては後回しだ。 力なく木にもたれこみ、意識が落ちる寸前に思う。願わくば、もうギャレンとは会いたくないと。 【黎明】【F-3】 【金居@仮面ライダー剣】 【時間軸:45話終了後。】 【状態:鼻血、気絶、二時間変身不可(ギラファUD)】 【装備:神経断裂弾が発射可能なライフル】  【道具:基本支給品×2、煤けた首輪、特殊支給品×?】 【思考・状況】 1:可能な範囲で殺し合いの内幕をさぐる。 2:橘とは会いたくない、というか知り合いに会いたくない。 3:東條が参加者を減らしてくれる事に期待。 4:利用できる参加者は利用し、障害となる参加者は状況によっては殺害する。 5:香川秀行に僅かな興味。 備考 ※神経断裂弾の残りの弾数、首輪の損傷具合は不明です。 ***ケースNEXT 猛獣に心はなく――― 「ゴホッ、グフゥッ」 「起きたか、本郷。」 やけに激しい咳をしながら、本郷の意識が覚醒する。 あの怪人はどうしたのか……と聞こうとするが、自分や一文字がこうしている以上危機は去ったのだろう。 ふと、一文字の背後にいる青年が眼に留まる。見かけは自分達と同年代、若しくは少しばかり若く見えた。 その視線に気付いたのか、一文字が青年を指差して説明する。 「彼は東條悟君。気絶したお前をここまで運んできてくれたんだ。」 「そうか……ありがとう。俺は本郷猛だ。」 本郷の名乗りに対して東條は軽く会釈をする……本郷は、東條の瞳の中に何か暗い物を感じた。 その光景を見て、一文字はようやく忘れていた物を思い出した。 「そういえば、まだ名乗ってなかったな。俺は一文字隼人、よろしくな。」 言葉と共に右手を差し出す一文字。口元には笑みを携え、真っ直ぐ東條を見つめている。 東條は軽く戸惑ったが、やがてその手を握ってこう呟いた。 ……さよなら、と。 ドスッ。 「……?」 突如耳に届いた、肉を裂くような嫌な音。 何事かと振り返ろうとするが、首が動かない、体が言うことを聞かない。 唯一動かせた目線を下に向けると、黄金色の金属――――角らしきものが見える。自分の体から。 痛みを知覚する前に理性が否応無しに理解する。ああ、自分は刺されたのだと。 相手を倒そうと体を動かすが……全く力が入らない。体から熱が消えていくのが手に取るように分かる。 重力に引き込まれるように体が地に伏せる。自分を呼ぶ声が……戦友の声が聞こえてくる。 気がかりは本郷と東條君……だが……どうやら俺は、ここで終わりらしい。一度理解すれば、意識が閉じるのは本当に早かった。 「本郷……人類の平和を……東條君のことを……」 必死に唇を動かして言葉を紡ぐが、どんどん声は消え入りそうになっていく。もう少し、もう少しだけ待ってくれ。 「……頼、む。」 最後の言葉は、ちゃんと伝わっただろうか。俺は駄目だが、きっとその後は本郷が、仮面ライダーが継いでくれる。 そう考えると、幾分か気が楽になってきた。視界が白に染まり、やがて何もかもが消えていく――――――。 「一文字イイイイイイ!!」 それが、彼の、仮面ライダー二号、一文字隼人の――――この世で迎えた、最後の思考となった。 &color(red){【一文字隼人@仮面ライダー 死亡】} &color(red){【残り45人】} 「何故だ……何故一文字を殺した!?」 本郷は叫ぶ。戦友を殺した仇……東條悟に対して。 彼は見てしまったのだ。東條がデッキを取り出した瞬間、サイの姿をした怪物が川から飛び出してくるのを。 「お前は……どうしてこんな戦いに……」 「変身。」 本郷の会話の途中で東條がデッキを翳す。いや、そもそも言葉すら聞いていないといった方が正しいか。 瞳に映されたデッキと共にベルトが現れ、そこから装甲が重なり銀色の姿を現す。 きっと一文字は最後まで東條の闇に気付かなかったのだろう。それを哀れむ事は出来ないし、滑稽と笑う事も出来ない。 「へぇ、少し重たいけど、悪くない。」 現した姿は装甲を持つ仮面ライダー……違う、コイツは仮面ライダーじゃない。コイツは仮面ライダーの皮をかぶった怪人だ。 そうか。さっき感じたのはこの本性だったのか。瞳の中に見た闇は幻でもなんでもなく、紛れもない真実だったのだ。 一文字、コイツだけは、俺が倒す。決意を込めた拳で本郷はガイに立ち向かう。一文字のためにも、ここでコイツを倒すと。 だが、きっと、彼の言葉は届かない。なぜなら―――― 「さあ、僕が英雄になるために――――死んで。」 ――――彼は既に心を捨て去り、英雄を目指す歪んだ猛獣なのだから。 【黎明】【G-3 川沿い】 【本郷猛@仮面ライダー】 【時間軸:ガラガランダ戦後。ショッカー首領からショッカーの壊滅を聞いた後】 【状態:疲労(極大) 二時間変身不可(一号)】 【装備:無し 】 【道具:ラウズアブゾーバー】 【思考・状況】 1:ガイを倒す。 2:おやっさんの捜索 3:この狂った戦いを止めさせる。 備考 ※本郷は参加者達(少なくとも自分達)は違う時間軸から集められたことに気付きました。 ※V3ホッパーは一文字の遺体の傍に放置されています。 ※ライダーダブルキックの轟音が周囲エリアに響き渡りました。 【東條悟@仮面ライダー龍騎】 【時間軸:44話終了後。】 【状態:疲労大。1時間変身不能(タイガ)、仮面ライダーガイに変身中。】 【装備:タイガのデッキ、ガイのデッキ】 【道具:基本支給品×2、特殊支給品(未確認)、サバイブ烈火@仮面ライダー龍騎、芝浦の首輪】 【思考・状況】 基本行動方針:全員殺して勝ち残り、名実共に英雄となる 1:『ある程度の力を持つ参加者を一人でも多く間引く』。 2:できれば最後の仕上げは先生(香川)にしたい 3:殺した奴の首輪をコレクションするのも面白い 備考 ※東條はまだ芝浦の特殊支給品(サバイブ烈火)を確認していません |027:[[笑顔と君と(後編)]]|投下順|029:[[駆ける海堂]]| |027:[[笑顔と君と(後編)]]|時系列順|029:[[駆ける海堂 ]]| |020:[[ダブルライダーVSカブトムシ男!!]]|[[ゴ・ガドル・バ]]|042:[[暗雲]]| |020:[[ダブルライダーVSカブトムシ男!!]]|[[本郷猛]]|036:[[本郷猛変身不可能!!]]| |020:[[ダブルライダーVSカブトムシ男!!]]|&color(red){一文字隼人}|| |015:[[蠢く甲蟲]]|[[金居]]|037:[[渦]]| |010:[[犀虎の十分間]]|[[東條悟]]|036:[[本郷猛変身不可能!!]]| |005:[[歪んでいる時間の道]]|[[橘朔也]]|043:[[Hypothesis and reality]]| |005:[[歪んでいる時間の道]]|[[ゾル大佐]]|043:[[Hypothesis and reality]]|

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