ひさしぶりに帰ってきた町。といっても飛び出したのは僕なのに
始めてきた場所のようにずいぶんと様変わりしていた
しかし吹く風は同じ昇る日は同じ
そう思うと寂しくない
おそらくあるだろう家に向かう道
こっちであってたっけ?
自問自答しながら歩く
懐かしい風景が広がる
彼女達の思い出がよみがえる
一緒に歩いた道
金「しっかり歩くかしら!」
待ち合わせした公園
銀「ゴメン遅れちゃったわぁ」
一緒に行った喫茶店
薔「………アッガイ(///)」
こんな所ばっかり変わってねぇや
気が付くと家の前
表札は…………変わってないな
家に帰ってきただけなのに躊躇する
五分。いや三分ぐらいか?
ずっと迷っていた
心配させたのに迎えてくれるだろうか?
迷っていては始まらない
思い切ってドアを開けた
事の始まりは2年くらい前になるかな
くだらない事がきっかけ
真「ジュン!!紅茶は5分でって何度言えばわかるの!!!」
J「うるせー!紅茶ぐらい一人で入れろ!!!」
銀「じゅん?ヤクルトが切れたんだけどぉ?買ってきてくれるわよねぇ?」
J「自分の事は自分でしろ!!!」
雛「ヒナは、ヒナはうにゅーが買ってきてほしいのー」
J「だから行かないって(怒)!!!」
薔「………アッガイ…………」
J「だから!!!!行かないって(怒)!!!!」
いつもならこれが普通の事だったんだけど
思春期特有の反抗期。それに今日は虫の居所が悪かったらしく切れてしまったんだ
J「もういい!!!こんな家出てく(激怒)!!!!」
そんな事言って部屋に戻って荷物をまとめた
なにやってんだろとか思ったけど引っ込みがつかなかった
J「お世話になりました」
真「ちょっと………ジュン!!!待ちなさい!!!」
ここで出て行くのを止めればよかったんだけど
かっこわるいなぁって思えてさ
変にプライドが許さなくて・・・
家、飛び出したんだ
とりあえずどこか遠くに行こう
とか思って財布を見ても入っているのは
なけなしの5000円札一枚だけ
これだけあればってその頃思ってたけど全然少ないなぁ
行く当てもなかったしとりあえず電車に乗ろうと思って
向かった先は一番近い駅
バイクスーツ姿の銀姉がいた
ごめん………銀姉……
見つからないように切符を買う
どこに行くのかわからないが一番高い切符を買った
この町とも今日でお別れか………
そう思いながら電車を待つ
ようやく来た電車に乗り込むとき、蒼姉が僕を見つけた
蒼「あれジュン君じゃない?ほら電車の中!!!」
翠「ジュンー待ちやがれです!!!」
J「バイバイ」
ドアが閉まる前。
ここからでも十分聞こえるぐらい大きな声で別れを告げた
駅員「お客さん!終点ですよ!」
駅員に起こされた。
荷物は………!見事にすられていた
とりあえず電車を降りて改札を抜ける
見た事のない町に戸惑う
ふあんになって自分のいる場所を確認した
昨日までいた場所から27駅も離れている
ずいぶん遠くまで来たもんだ
あらためて実感したよ
J「そんなことよりこれからどうしよう………」
日雇いのバイトを探すべきか?
とりあえず履歴書を書こう………
ポケットの中にはスリから逃れた切符のおつり
決して無駄使いはできない
店員「ありがとうございました~」
コンビニのバイトもいいかもしれない
ボールペンと履歴書を購入
のこりはは513円か………
駅前で証明写真を取り、歳をごまかして履歴書の完成
よくばれなかったものだ
それもいまではいい思い出
向かった先はお好み焼き屋
居酒屋の方が雇ってくれる気がしたから
べ「すみません今は準備中で………」
J「アルバイト募集の紙見たんですけど………」
べ「そうですか。でしたらこちらに」
促されるまま奥の部屋に
フ「ホホホよく来ましたね?ここで働きたいんですか?」
そういって履歴書を渡す
J「はい!よろしくお願いします!」
軽く目を通す
フ「元気がいいですね。採用!」
J「えっ?ありがとうございます!!!!」
フ「詳しい事はそこにいるベジータさんに聞いて下さい
ベジータさん!ちょっと来て下さい!」
べ「何ですか店長?」
フ「さっき採用した桜田君です仕事を教えてあげて下さい」
べ「なんで俺が!」
フ「店長命令です!では頑張って下さいね?ホホホ」
べ「くっ!わかりましたよ」
J「よろしくお願いします………えっとー」
べ「ベジータだ!!」
こうして僕のアルバイト生活が始まった
店員1「フリーザさん?いいんですか?どうみても履歴書がグチャグチャですよ?」
フ「いいんですよ。彼を見てると昔の自分を見てるみたいで。
そのとき採用してくれた店長の気持ちがわかりましてね」
J「ありがとうございました~またお越し下さい」
最後の客が帰っていく
べ「初日にしてはよくやるじゃねぇか?」
J「ありがとうございます!」
店長の賄い飯を食べながらの事
べ「お前筋がいいからすぐに俺をこすだろうよ」
J「まだまだですよ~」
食べた皿を洗って店を出る
J「お疲れ様でした~」
そこで気づいた!帰る場所がないと!
べ「どうした?」
J「何でもありません!それじゃあベジータさんお疲れ様でした」
そう言って走ったけど向かった先は24時間営業のファミレス
店員「いらっしゃいませ!ご注文はおきまりでしょうか?」
J「ドリンクバーで………(なさけねぇorz)」
そこで寝泊まりする生活が何日も続き残金がほぼ0になったとき
べ「ジュン!」
J「なんですか先輩?」
べ「これから俺の家に来い!」
唐突な強制。ありがたかったが
J「えっ?迷惑ですよ俺なんかが………」
べ「ファミレスよりはいいと思うが?どうだ?」
J「………知ってたんですか?」
べ「フリーザさんが教えてくれたよ。それに仕事の最中に倒れられても困るしな!」
J「ベジータさん(泣)!!!」
そこからベジータさんとの生活が始まった
ベジータさんはどこかの国の御曹司らしくてマンションなんだけど億ションと呼ばれるぐらいの所に住んでいた
なんでお金持ちなのに働くのと聞くと
決まって金には困ってないがフリーザさんには恩があってなとしか答えてくれない。
迷惑ばかりかけてられないと思い工事現場のバイトも始めたんだ
最初はきつかったけどそのぶん給料もよくて頑張れたんだけど
ある日フリーザさんの店で倒れちゃったんだ
軽い過労。目が覚めてからベジータさんにかなり怒られたなぁ(笑)
フ「ジュンさん?ちょっといいですか?」
いつもと違う雰囲気で呼び出される
あぁついにリストラか………とか考えてたよ
フ「仕事中に倒れるとは何事ですか!」
J「すみません………」
フ「金銭面で困っているならそう言って下さい!」
J「すみません………」
フ「今すぐもう一つのバイトは止めるんですよ!いいですね!」
J「…………はい」
フ「よろしい!では桜田君を正社員として雇用したいんですがよろしいですね?」
J「…………!!!!ありがとうございます!!!」
なんだかんだで正社員。給料は時給900円から月給28万まで跳ね上がった。
フ「過労で倒れるところまで昔の私にそっくりで………いいですねぇ」
J「じゃあベジータさん」
べ「ほんとにいいのか?俺はかまわないんだぞ?」
J「いつまでも甘えてるわけにはいかないので。じゃあ」
そう!いつまでもベジータさんのところに居候するわけにはいかなかった。
そう考えているときの昇格。部屋はもう決めてあった。
そりゃあベジータさんの部屋と比べると狭いかも知れないが
我が城。なかなかいい物である。
たまに銀姉達が恋しくなって電話するときもある
銀「はい桜田ですが?」
J「……………銀ねぇ………」
銀「ジュン?ジュンなの?ねぇどこにいるの?」
ブッ
なにを話していいのかわからない故に切ってしまう
こんな時はどんな顔したらいい?
笑えばいい(ry
なんて事を何回かしてしまってたよ
そんな生活が一年を過ぎたある日
翠「ここです!雑誌に書いてあった美味しいお好み焼きの店です!」
蒼「大きな声出さないでよ(///)恥ずかしいから」
翠「うるさいです!(///)とりあえず入るですよ!」
ガラガラ
J「いらっしゃいま……………蒼姉………翠姉………」
蒼・翠「「ジュン!」」
翠「今までなにしてたですか?こんなに心配させて!」
蒼「姉さん!店の中だし、落ち着いてよ」
翠「これが落ち着いていられるかです!もう会えないと思ってたのに・・・」
翠姉が泣き出してしまった
店の空気も凍ってしまう
フ「ジュンさん?ちょっといいですか?」
J「なんですかフリーザさん」
フ「最近のあなたは目に余ります!今日限りでクビです!」
突然の解雇に驚いた!仕事は雑ではない。むしろ丁寧なぐらいだ
フ「ここに今月分の給料と退職金があります!それを持って飛び出した家に帰って下さい。いいですね?」
べ「待っていてくれる人がいる。そんな人たちを悲しませちゃいけねぇよ」
ここでようやく気づいたんだ。
最初から店長やベジータさんは僕が家出した事や
帰る家が無い事、
そして待っている人がいる事。
みんなしってたんだ。
そんな親心に涙が出てきた
J「今までありがとうございました!」
蒼姉と翠姉を先に帰らせてアパートに戻る
部屋をまとめ、大家さんに引っ越すと告げ
電車に乗る
家具はみんな置いてきた。
帰れば必要ない物ばかりだから
ひさしぶりに帰ってきた町。といっても飛び出したのは僕なのに
始めてきた場所のようにずいぶんと様変わりしていた
しかし吹く風は同じ昇る日は同じ
そう思うと寂しくない
気が付くと家の前
表札は…………変わってないな
家に帰ってきただけなのに躊躇する
五分。いや三分ぐらいか?
ずっと迷っていた
心配させたのに迎えてくれるだろうか?
迷っていては始まらない
思い切ってドアを開けた
「「「「「「「おかえりなさい!」」」」」」」
fin