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翠「蒼星石~。待つです~。」
遥か遠くから小さくなった翠星石の叫び声がする。
蒼「翠星石。だらしないよ。」蒼星石は翠星石の方へ駆け寄る。
翠「蒼星石~。戻って来たら、また距離が伸びるですよ~。」
疲れきり上手く喋れない翠星石は、語尾が不必要に延びている。
今、体育の授業でマラソンの最中なのだ。
蒼「僕なら大丈夫だよ。鍛えているからね。」蒼星石は平然と答える。
翠「蒼星石は鍛えすぎです~。よく平気で居られるですね~。」
翠「もう3kmも走ったです~。時速に直すとマッハ3です~。」
翠星石は脳まで酸素が回っていないらしい。
蒼「全然違うよ、翠星石。」蒼星石は翠星石の傍に腰を下ろす。
翠「それにしても蒼星石は体育の時、普段着なんですね。」
少しは回復したらしく、語尾が元に戻る。
蒼「そうだよ。でも先生に許可は取ってあるから。」
蒼星石は、いつもの服にいつもの帽子。完全に普段着だ。
翠「そうなんですか。」
蒼「トレーニングになるんだよ。」
翠「言ってる意味が分からないです。」首を傾げる翠星石。
蒼「ところで、翠星石はもう限界?」ふぅと息を吐く翠星石。
翠「当然です。翠星石は普通なんです。」
蒼「だらしがないなあ。」蒼星石の言葉に翠星石がむっと膨れる。
翠星石は、おもむろに立ち上がると辺りを見回した。
自分と比較対象にするダメ人間を探しているのだ。
翠「こう見えても翠星石だってマシな方です。」ダメ人間を見つけ、急に得意げになる翠星石。
翠「あれを見るです。」

翠星石が指差す方には、雛苺と金糸雀が居る。
雛苺は地面に伏し、目を回しているようだ。
雛「うにゅ~、もうダメなのー。」
金糸雀「雛苺が、うにゅ~になってしまったのかしらー?」
倒れて丸く伸びきった雛苺の周りを、金糸雀がぐるぐると回っている。
蒼「雛苺、大丈夫かな?」
翠「雛苺では無理に決まっているです。」尚も得意げな翠星石。
蒼「ちょっと辛いかもね。」
金「この薔薇乙女一の策士が、必勝の策を閃いたかしらー。」
金「この柵を乗り越えてショートカットかしらー?」
倒れた雛苺を諦めたのか、金糸雀は露骨に柵を乗り越え近道しようとする。
それを発見した近くの教師が注意をする。
翠「相変わらず金糸雀は馬鹿です。教師に見つかってやがるです。」
蒼「微笑ましいけどね。」雛「うにゅ~が食べたいの~。」
蒼星石は楽しそうに雛苺と金糸雀のやり取りを見ている。蒼星石の様子に翠星石が更に膨れる。
翠「もっとダメな奴を探さないと、です。」
翠星石は再び辺りを見回すと、ダメ人間を探した。さながら、ダメ人間レーダーである。
翠「蒼星石、次はこっちを見るです。」
蒼星石「こっち?」

翠星石が指差す方にはJUM、水銀燈、それに真紅が居る。
水銀燈はJUMに張り付き、真紅はティーセットを広げ優雅に紅茶を啜っている。
別の教師が怒鳴りつけている様だが、三人が応じる気配はない。
諦めて去る教師。三人の前では教師とて形無しである。
紅「JUM、紅茶を淹れなさい。それとお湯を切らしてしまったのだわ。」
真紅がカップに残った最後の紅茶を啜る。
紅「沸かして、ここまで運んで頂戴。5分以内よ。」
JUM「紅茶なんか飲んでいる場合じゃないだろ!それに5分で来れる距離じゃない!」
水銀燈に纏わり着かれたJUMが、何とか顔を出して答える。
紅「全く、使えない下僕ね。」
カップを置くと、真紅は愛用のステッキを水銀燈に向ける。
紅「それから、水銀燈。私の下僕から離れなさい。」
JUM「僕はお前の下僕なんかじゃ・・・・・・。」
JUMの顔が水銀燈に包み込まれ、言葉を遮られる。
銀「JUMは私の愛の奴隷よぉ。下僕より奴隷の方が所有しているって感じがするでしょぉ。」
銀「だから、私の勝ちなのよぉ。」JUMの代わりに水銀燈が答えた。

翠「何所に行っても成長しない奴らです。」
蒼「ははは・・・・。」蒼星石が乾いた笑みを浮かべる。
もうダメ人間は居ないらしく、蒼星石の隣に腰掛ける翠星石。
翠「この時ばかりは、普段ダメ人間なベジータの方がマシに見えるです。」
蒼「そうかもね。」すると遠くから誰かが叫ぶ声が聞こえる。
ベ「俺の走りは止められないぜぇぇぇ!!」
他の生徒が休憩を取っているにも拘らず、一人で走り続けるベジータ。
翠「さすが、脳みそまで筋肉男です。」
蒼「彼も、こういう時だけは凄いね。」
これに限っては、さすがの蒼星石も一目置いている。
しかし他のことになると最低クラス、他人の参考書を古本屋に売るような男だ。
翠「蒼星石と比べたら、どっちが凄いですかね。」
蒼「どうだろうね。」
翠星石もベジータの走る、もとい暴走する姿を呆れた目で見ている。
ベ「パラリラ、パラリラーーーー!」
蒼「彼は男子だし、僕じゃ勝てないのかも。」
翠「そんなことねーです!蒼星石が勝つに決まってるです!」
蒼星石の方を見て、思わず声を荒げる翠星石。
蒼「どうかな。」いきなり翠星石は立ち上がる。
翠「分からないのなら勝負してみれば良いです!」
そして、ビシッと蒼星石に人差し指を向けると・・・・・・。

翠「闘うことは、生きることですぅ!」
突如ヒュンという空気を裂くような音が鳴る。
空気を裂くものの正体、黄色い閃光が翠星石の脳天を直撃する。
翠「あうっ。」
紅「翠星石、それは私の台詞なのだわ。」地獄耳な真紅であった。
紅「それにしても水銀燈。いい加減離れないと、私の下僕が失血死するのだわ。」
余りの失血に、JUMはもはや虫の息だった。
翠「真紅の奴、いい場面に茶々入れやがって!ですぅ!!」
気を取り直し、体勢を整えた翠星石。
ビシッと人差し指を向けたまま、蒼星石を見つめる。
蒼「これは、もう逃げられないかな。」視線を逸らす蒼星石。
翠「何を言ってるです蒼星石!はっきりとこの場で決める!ですぅ!!」
翠「生きるか、死ぬかをです!」翠星石の目は本気だ。
翠「と思ったけど、やめるです。」危うく難を逃れた蒼星石は安堵の息を漏らす。
翠「蒼星石に決めさせることは、です。」
蒼「えっ?」拳を握り締め、太陽の方を見やる翠星石。
翠「蒼星石VSベジータ、ぶっちぎりの凄い奴決定戦ですぅ!」翠星石の目が燃えている。
翠「そうと決まったら、果たし状を用意するです!」
翠「でも、どうやってベジータのヤローに渡すか難しいです。」
翠「下手に渡して、誰かにラブレターと勘違いされたら困るです。」
腕を組み首を傾げる翠星石。
蒼「携帯でメールがあるじゃないか。」こんな時でも真面目に返す蒼星石。
翠「それじゃダメです。決闘という雰囲気が出ないです。」
翠「まさにドゥエルヴァルツァ!ですぅ!!」翠星石はもう止まりそうにない。
翠「とにかく果たし状を書きに帰るです!」
蒼「ははは・・・・・・。」翠星石に手を引かれ、蒼星石は事態に流されるしかなかった。

教室。白紙の紙を前に悩む翠星石。
翠「いざ書いてみるとなると、難しいもんです。」
翠星石は、とりあえず思いつくまま書いてみた。
翠「放課後、体育館裏に来やがれ!ですぅ!と。」
蒼「体育館裏って何をするつもりなんだい?翠星石。」
蒼星石に指摘され、顔を引きつらせる翠星石。
蒼「スピードの勝負をつけるなら校庭じゃないかな。」
翠「言われなくても、気づいていたですぅ。」慌てて書き直す翠星石。
翠「放課後、校庭に来やがれ!ですぅ!!と。これで良いですか?蒼星石。」
考え込む蒼星石。
蒼「時間も指定した方がいいね。」
蒼「ベジータ君が、いつ校庭に行けば良いのか分からないよ。」淡々と答える蒼星石。
翠「律儀な奴です。蒼星石は何時にしたいですか?」
蒼「園芸部の活動前がいいかな。」
翠「それも書き込んでおくです。」
蒼「勝手に決めない方がいいよ。ベジータ君とも相談しないとね。」
翠「どこまでも律儀な奴です!ベジータとデートするんじゃないんです!!」
その声に反応し・・・・・・

ベ「呼んだか!翠嬢!!」突如翠星石の机の下から湧き出るベジータ。
蒼「ベジータ君、君って人は・・・・・。」
翠「何所から出てきやがる!ですぅ!!」翠星石は渾身の力でベジータの顔を踏みつける。
ベ「うはwwwいいもの見せてもらったぜwwww。」
踏みつけられたベジータの視線は翠星石のスカートの奥。
翠「この変態!早くどこかに消えろ!ですぅ!!」翠星石がベジータの頭を蹴り飛ばす。
べ「今日のところは俺の勝ちだな!はーっはっはっは!!」
そう叫ぶとベジータは、高笑いと共に逃げ出した。
蒼「行っちゃったね。果たし状を渡すチャンスだったのに。」
翠「そうだったです。どうせまた会うから、いつでも渡せるです。」
その時、授業開始の合図が聞こえた。

ガラガラと教室の扉が開く。梅岡が教室に入り、入れ替わりで笹塚が廊下に出る。
梅「授業を始めるぞ!みんな席に着け!」しぶしぶと皆がそれぞれの席に着く。
しかし翠星石だけは、後ろ側の扉の前に立ったままだ。
ベ「はーっはっはっは!!」翠星石の背後から、ベジータの高笑いが聞こえる。
そして背後の扉が開きかけた瞬間、翠星石は地面に倒れこむ。
翠「きゃああ!近寄るな!ですぅ!!」
扉を開けたベジータを怯えた目で見詰める翠星石。
ベ「なんだ?」状況を飲み込めないベジータ。
翠「この男、扉を開けると見せかけて翠星石の体を触った!ですぅ!!」涙目になる翠星石。
ベ「俺は何もしてないぞ?」
翠「犯罪者は全部そう言うですぅ!」
翠星石は涙を武器に教室を見回し、群衆を味方に付けようとする。
翠「梅岡!何でボーっとしてるですか!?」突然の出来事に朦朧としていた梅岡。
翠「早くこの変態を、廊下に追い出すです!!」翠星石の大声に梅岡は圧倒され、
梅「ああ・・・・・・。」頼りない返事をする。
翠「ベジータ!おめーもボーっとするなです!」
翠「梅岡の命令です!さっさと教室から出てけ!ですぅ!」
すっと立ち上がり、ベジータを教室から蹴りだす翠星石。
ベジータが居なくなると、有無を言わさず教室の扉を閉め始める。
閉め切る直前に廊下に手を出し、
翠「これ読んでおくですぅ。」こっそりとベジータに果たし状を手渡した。
べ「うはwwwフラグwwwww」ベジータの反応を無視して教室の扉を閉め切る。
そのまま何事もなかったかの様に、自分の席に着く。
翠「全部片付いたから、ぼーっとしてねーで梅岡は仕事を始めるです。」
翠「どうせ誰も聞かねーですが。」呆気に取られ状況をイマイチ掴めない梅岡は、
翠星石に指摘され授業を再開する。その後姿に教師としての威厳は欠片も無い。
状況が落ち着くと、蒼星石が翠星石に話し掛ける。

蒼「さっきのは何だったんだい?」
蒼「翠星石が一人で全部進めるから、よく分からなくて。」
翠「ベジータに果たし状を渡したです。」
蒼「それだけ?」
翠「ついでに、さっきスカートを覗かれた仕返しもしておいたです。」
両手を腰に当て得意げに話す翠星石。
蒼「それで騒ぎを起こしたんだ。」半ば呆れたような顔をする蒼星石。
翠「蒼星石は、何も気にしないでいいです。」
翠「今のうちに眠って、放課後に備えるです。翠星石も今から休むです。」
蒼「その、今は授業中なんだけど。」
翠「翠星石が許すです。」
目を閉じ、机に突っ伏す翠星石。どうやら本当に眠るつもりらしい。
蒼「やれやれ。」黒板に目を向け、真面目に授業を受ける蒼星石。
しかし、他の人間はというと。
JUM「教科書が無いのに、どうやって勉強するんだ・・・・・。」
水銀燈「忘れたのぉ。私が見せてあげるわぁ。」
真紅「私が見せるべきなのだわ。下僕の失態は、主人である私が責任を取るべきなのだわ。」
水銀燈「真紅の席は遠いわぁ。無理して来なくてもいいのよぉ。」
真紅「他人から席を奪った貴女に言われたくないわ。」
口論を始める二人にJUMが大声を上げる。
JUM「お前らが僕の教科書を隠すからこうなったんだろ!!」
授業なんか誰も聞いちゃいなかった。

放課後の校庭。花壇に水を撒きながらベジータを待つ翠星石と蒼星石。
翠「伸びやかに~健やかに~。」
翠星石が水を撒く。その姿は、さながら花と戯れる可憐な妖精である。
翠星石が水を撒き終えると。
べ「はーはっはっは!!!」何所からともなくベジータの高笑いが聞こえる。
翠「ど、どこに居やがるです。姿を現すですぅ!」
声はすれども姿は見えず。辺りを見回しベジータを探す二人。
ガラガラガラと鈍い音が鳴り。花壇の前方。
眩い光と共にマンホールの蓋がはじけ飛ぶ。その穴から、ベジータがせり上がって現れる。
何とベジータが着ている服はタキシードだ。
蒼「ベジータ君・・・・・・。」蒼星石は呆気に取られ、開いた口が塞がらない。
べ「約束通り来てやったぞ!」
翠「ベジータ!ここで会ったが100年目ですぅ!」
蒼「さっき会ったばかりだけど・・・・・・。」ベジータと翠星石の視線が交錯する。
ベジータからは好意、翠星石からは敵意と完全に食い違う視線。
蒼「僕が完全に取り残されているなぁ。」展開についていけない蒼星石。
?「こっちらしいぞ。」
?「早く行きましょうよぉ。」
?「急ぐのだわ。」
不意に背後から、どこかで聞いたような声が聞こえてくる。翠星石が後ろを振り向くと、
翠「JUM!真紅!水銀燈!雛苺!おまけに金糸雀までいるですぅ。」
蒼「ベジータ君が、みんなに話したのかな・・・・・。」
翠星石「そうに決まってるですぅ!最低ですぅ!!」
べ「お前たちも、俺達を祝福してくれるのか!」
その後も人の波は続き、ついにはクラスメート全員が揃ってしまった。
蒼「・・・・・・。」蒼星石は文字通り石になっている。
翠「チビ人間!これはどういうことですぅ。誰から聞きやがったです!」
翠星石がJUMに掴みかかる。しかし、JUMから聞けたのは驚きの事実だった。

JUM「笹塚から聞いたんだ。」
翠「笹塚ですか?笹塚はずっと教室に居なかったはずですぅ。」
銀「笹塚が、翠星石がベジータにラブレターを渡した現場を見たらしいのよぉ。」
紅「それで私たちは、ベジータの後をつけてきたのだわ。」
ようやく石から立ち直った蒼星石が、何かに気が付いたようだ。
蒼「教室に居なかったんじゃなくて、授業が始まる前にはもう廊下に立ってたんだよ。」
蒼「笹塚君が梅岡先生と入れ替わりで、教室から出たのに気が付かなかったのかい?」
翠「翠星石としたことが、迂闊だったです。」がっくりと俯く翠星石。
金「マンホールに逃げ込まれた時は、もうダメかと思ったかしらー。」
雛「翠星石、絶対幸せになるのー!」
べ「さぁ皆で二人の結婚式を祝おうではないか!!」
クラスメートは勝手に騒ぎ出し、もはや収拾が付かない。
蒼「翠星石、どうする気だい?」青ざめた蒼星石が助けを求める。
翠「今どうするか考えてるですぅ。」観念した翠星石はクラスメートの方を向き直る。
翠「みんな!黙るですぅ!」翠星石の発言に皆は大人しくなる。
翠「これから蒼星石とベジータが100m走で勝負するです!」
期待を裏切られたクラスメートからブーイングが巻き起こる。
銀「つまんなぁい感じぃ。」
紅「在り来たりなのだわ。」
JUM「怖気づいたのか?」
ますます加熱するブーイング、これにはさすがの翠星石もたじろいでしまう。
蒼「翠星石、どうする気だい?」蒼星石が二度目となる質問をする。再び考え込む翠星石。
少しして、何か思いついた翠星石は自分の手のひらに軽く拳を打つ。
翠「蒼星石!絶対に勝つですよ!」両手を蒼星石の両肩に置き、怪しく光る目を向ける翠星石。
蒼「う、うん。」その剣幕に思わず肯定してしまう蒼星石。押しに弱いのかも知れない。
そして、覚悟を決めた翠星石は群集に向き直り大声を上げた。

翠「勝った方には、賞品として翠星石をあげるですぅ。」クラスメートから歓声が上がる。
蒼「これは責任重大だね・・・・・。」予想外の発言に蒼星石が引きつった笑みを浮かべる。
べ「はーはっは!!そういうことか!」ベジータが高笑いをあげる。
べ「だが、この超ベジータ様が群衆の前で勝利する!」
べ「そして翠嬢蒼嬢、纏めて頂いてやる!!」
言い終わると同時に、ベジータがタキシードを脱ぎ捨てる。
すると全身青タイツ、上半身を覆う強化服(?)の普段着に変わる。
蒼「蒼嬢って・・・・僕まで巻き込まれているんだけど。」
翠「この際気にしねーです!蒼星石が勝てば全部丸く収まるです!」
ベ「二人で何を相談しているんだ!さっさと始めようぜ!」ベジータはやる気満々だ。
一人で走り出すと、普段の体育で使う100m走用スタート地点に立つ。
ベジータの後を追うクラスメートたち。
蒼「僕たちも行こうか。」
翠「分かったです。」蒼星石と手を繋ぐ翠星石は不安げだ。
翠「万が一蒼星石が負けたら、ベジータを毒殺する!ですぅ!!」
こうして蒼星石VSベジータ、ぶっちぎりの凄い奴決定戦の幕は切って落とされた。

雛「蒼星石VSベジータ、ぶっちぎりの凄い奴決定戦の倍率はこちらなのー」
蒼星石とベジータの配当倍率を書いたプラカード。
雛苺がフラフラしながら持ち歩いている。
配当の内容は、勝った方が負けた方に当番を押し付けるという仕組みらしい。
金「券の販売はこちらかしらー。」金糸雀が担当する販売所には、人だかりができている。
金「カナは策士だから予想屋もしようかしらー?」一人で盛り上がる金糸雀。
銀「JUMはどっちに掛けるのぉ?」
JUM「悩んでるんだ。真紅はどっちにしたんだ?」JUMの質問にそっぽを向き、
紅「レディは賭け事などしないのだわ。金糸雀にでも聞きなさい。」カップの紅茶を啜る真紅。
クラスメートの待つゴール地点は、まるでお祭り騒ぎだ。
翠「あいつら、馬鹿騒ぎしやがって!ですぅ!!」
翠「こっちの気も知らねーで!ですぅ!!」不安げな翠星石。
蒼「元気出そうよ翠星石!」準備運動をしながら必死に励ます蒼星石。
翠「翠星石が言ったこととはいえ、負けたら蒼星石までベジータの物になるんですよ。」
翠「可愛い妹があんなケダモノに奪われるかと思うと、もう不安ですう。」
翠「元はと言えば、翠星石が言い出したことです。」
翠「賞品にまで巻き込んじゃってゴメンです。」
翠「翠星石がもっとしっかりしてれば、蒼星石まで賞品に含まれることはなかったです。」
翠「もし負けたら、翠星石が髪切ってカツラかぶって二人分誤魔化すです。」
翠「そしてベジータを毒殺する!ですぅ!!」冗談(?)を言って気持ちを落ち着ける翠星石。
蒼「大丈夫だよ。翠星石。僕は必ず勝つからさ。」自信に満ちた凛々しく美しい蒼星石の顔。
翠「分かったです。蒼星石。」翠星石の不安げな表情が少し晴れた。
蒼「このままでも勝てる気がするんだ。」

翠「このまま?」ゆっくりと歩き、蒼星石がスタート地点に立つ。
蒼「ベジータ君、こっちは準備できたよ。」
べ「待ちくたびれたぜ!いつでもかかって来い!」ベジータもスタート地点に立つ。
蒼「ベジータ君、1回目は練習でいいかい?」
べ「構わないぜ。それでも俺が勝つことに変わりはないがな。」
べ「はーはっは!!」
蒼「そういう事で1回目は練習だからね。翠星石。」
翠「分かったです。翠星石が合図するから、合図が鳴ったらスタートするですよ。」
蒼星石がベジータが身構える。視線の先は栄光のゴール。
翠「よーい。」
翠「ドン。です!」
翠星石の合図で二人が同時に駆け出す。

雛「二人とも速いのー。」  紅「そうね。確かに速いわ。」
JUM「二人とも、なんてスピードなんだッ!」
金「薔薇乙女一の策士、金糸雀の見解ではベジータはボケてすっころぶかしらー。」
銀「うるさいわぁ。黙って見てないさいよぉ。」
両者のスピードは全くの互角。お互い一歩も譲らない死闘。
両者はスタート地点と同じく水平線のままゴールした。
べ「やるな!蒼嬢!」 蒼「君もね。ベジータ。」地面に腰を着き呼吸を整える二人。
べ「だが、次は必ず俺が勝つ!」ベジータが立ち上がり勝利のポーズを決める。
蒼「それは僕の台詞さ。」蒼星石も立ち上がる。
蒼「実は僕、まだ本気を出していないのさ。」

べ「何ッ!」ベジータが驚愕し思わず声を上げる。
蒼「僕には、もう一段階先があるのさ。」余裕の表情でスタート地点へ歩き出す蒼星石。
べ「ハッタリだ!そうに決まってやがる!」苛立ちを隠しきれないベジータが後を追う。
蒼星石がスタート地点まで戻ると翠星石が出迎える。
翠「お帰りですぅ。蒼星石。どっちが勝ったですか?」
蒼「同着だったよ。」またも不安げ表情に戻る翠星石。
翠「次は本番です。本当に大丈夫ですか?」
蒼「僕は絶対に勝てるよ。」依然余裕の表情をみせる蒼星石。
翠「そうですか。蒼星石がそこまで言うなら信じてやるです。」
蒼「ちょっと準備をしてくるから、10分ほど休憩をいいかな?」
翠「分かったです。ベジータには翠星石から言っておくです。」
蒼「すぐ戻ってくるね。」校舎に向かい駆け出す蒼星石。
その余裕は一体どこから来るのだろうか。少し遅れてベジータがスタート地点に着く。
翠「ベジータ。蒼星石は準備で校舎に戻ったです。」
べ「ハッタリに時間稼ぎか!そうに決まってやがる!」
更にイライラして怒鳴り散らすベジータ。
翠「大人しく待つです。カッコわりーですよ。」
べ「そうか!?」急に大人しくなるベジータ、現金な奴である。
蒼「お待たせー。」そこに蒼星石が現れた。驚くべきことにその姿は・・・・・・・・・・。

体操服にブルマ、それに何故か上履きを履いたままの蒼星石。
翠「体操服ですか?」
蒼「変かな。」蒼星石は大きく膨らんだ手さげ袋を持っている。
翠「別に変じゃないですぅ。それにしても綺麗な足してるです。」
黒に透き通るような白い肌がとても際立つ。蒼星石の足に見惚れる翠星石。
蒼「そんなに見られると恥ずかしいなぁ。」翠星石の視線に恥じらいを見せる蒼星石。
蒼「ベジータ君。お待たせ。」
べ「やっと来やがったか。」蒼星石の声に振り返るベジータ。
べ「遅かったな。蒼じょ・・・・・・ぅッッッwwwww」
赤いものを撒き散らしながら逆を向くベジータ。
ベ「生足wwwいいもの見せてもらったぜwwww。」
ベ「あれが最後の手段かwwwまさか、こんな大技を出してくるとはなwwww」
一人で納得するベジータ。
翠「蒼星石。何を持っているですか?翠星石が持ってやるです。」
翠星石が蒼星石の荷物を気にする。
蒼「さっきまで着てた普段着さ。」
蒼「ここに置いておくから大丈夫だよ。」
翠「それじゃ荷物が汚れるです。翠星石が持ってやるです。」
蒼「気にしないよ。」何故か拒む蒼星石。
翠「いいから言うこと聞くです。」翠星石は強引に蒼星石の荷物をひったくる。
蒼「あっ。」
翠「きゃああっ!です!」

荷物を支えきれず地面に落とす翠星石。
手さげ袋は、大きさから想像もできない様な鈍い音を立てた。
翠「これは一体なんです!」手提げ袋を漁り始める翠星石。
翠「この服、重すぎて持てねーです!」
蒼星石の上着を取り出そうとしても、取り出せない翠星石。
蒼「それは10Kgだからね。」
翠「な、何ですか!?」再度手提げ袋を漁る翠星石。
翠「みんな重すぎるです!」
蒼「靴は片方4Kg、ベルトは2kg。」
蒼「服の下に腕用のを着けているんだけど、それは片方1Kgだよ。」平然と言う蒼星石。
翠「蒼星石、恐るべき奴です!」
蒼「これが僕の奥の手さ。」ちょぴり自慢げな蒼星石。
翠「これなら絶対勝てるです!翠星石はできる妹を持って幸せです。」
強く抱き合う姉妹。突然の抱擁に蒼星石が赤くなる。
肝心の対戦相手とは言うと。
ベ「蒼嬢の生足wwwwwうはwwwwww」足しか見ちゃいなかった。

改めてスタート地点に立つ二人。
蒼「ベジータ君、こっちは準備できたよ。」
べ「うはwwwwwww」奇声を上げるベジータ。
蒼「僕の話、聞いているのかな。」
翠「放っておけばいいです。勝負は勝ったもんの勝ちです!」
蒼星石が身構える。ベジータは怪しく身構える。
蒼星石の視線、その先はゴール。ベジータの視線・・・・その先は・・・・。
翠「よーい。」翠星石の合図の前にベジータの理性のタガが外れた。
べ「蒼嬢~~wwwww」
蒼「うわあっ。」慌てて身をかわす蒼星石。
翠「何やってるです!ベジータ!!フライングです!!」
蒼星石に身をかわされ、地面に強く頭を打つベジータ。その衝撃でベジータに意識が戻る。
べ「はっ!俺は一体何を!!」
翠「おめーはフライングしたです!もう1回やったら失格です!!」
べ「そうか!俺は蒼嬢の生足を見た後、意識を無くしたんだ!」まさに大猿、ケダモノである。
蒼「大丈夫かい?ベジータ君。様子がおかしいけど。」心配してベジータに近づく蒼星石。
べ「まずい!」慌てて目を閉じるベジータ。
翠「こいつが変なのは、いつものことです。」
翠「ベジータ、合図が鳴ってからスタートするですよ。」
べ「おう。」
翠「それじゃ二人とも位置に着くです。」
べ「落ち着け、落ち着くんだベジータ!」
べ「この勝負にさえ勝てば、蒼嬢は俺の物。生足程度目じゃないぜ!!」
べ「目を開けられないなら心眼で見ればいいんだ!」意識を集中させるベジータ。
べ「落ち着け、俺のゴールを心眼で探し出すんだ!!」更に意識を集中するベジータ。
次第にベジータのまぶたの裏。真っ暗な空間に何かがおぼろげに浮かび上がる。

次第にそれは形を成し、縦に伸びた二本の白いものになる。
べ「見えたぞ!これが俺のゴールだ!!」
翠「よーい。」
べ「でも何故、俺の真横にあるんだ?」
ベジータは不審に思ったが、その答えを導くまでの時間はなかった。
翠「どん!ですぅ!」蒼星石が駆け出す。依然とは比べ物にならないスピードだ。
雛「蒼星石の足綺麗なのー。」
JUM「蒼星石・・・・・・・うッッッ!!!」
銀「JUMぅ。見ちゃダメよぉ。」
紅「鼻血を何とかなさいJUM。」
金「生足作戦かしらー?」
突如、心眼に写る縦に伸びた物体が前に進んだ。
べ「何だ?ゴールが前に進んだ!?」
べ「逃がさんぞ!」ベジータは逃げるゴールを追いかける為、駆け出した。
べ「何故だ!何故追いつかない!!」
ベジータが必死に追い掛けるにもかかわらず、ゴールに着く気配はない。
ベジータが進むとそ音物体も前に向かって動くのだ。
競争の結果は、蒼星石の後ろにぴったりとベジータが並ぶ格好になった。
ゴールを越えれば試合は終わる。それなのに何故かゴールを過ぎても走り続ける二人。

紅「様子が変ね。」 銀「走りたい年頃なんじゃないのぉ。」
雛「JUMの様子も変なのー。」 JUM「僕は何も変じゃないぞ!」
金「鼻血垂らしながらじゃ、説得力無いかしらー。」
翠「何やっているですかー。蒼星石ー。」大声を上げながらゴールまで走ってくる翠星石。
蒼「ベジータ君が追ってくるんだよ~。」
蒼「もうやめてよ~。JUM君、助けて~。」悲鳴を上げて逃げ惑う蒼星石。
蒼星石の悲鳴も意識を心眼に集中するベジータには届かない。
べ「俺のゴール。絶対に逃がさんぞ!」夕日に向かって走る蒼星石とベジータ。
その姿は逃げ惑う女子高生と変質者だ。
翠「蒼星石ー。こっちに来るですー。」
蒼「分かったよ~。」蒼星石はもう半泣きだ。
翠「真紅たちも手伝ってほしいです。」頷く姉妹たち。横一列に並び陣形を整える。
蒼星石に引き付けられたベジータを迎え撃つ体勢だ。蒼星石が姉妹たちの間を駆け抜ける。
その瞬間ベジータの心眼に別の物が写る。ベジータがそれを読み上げる。

べ「これからが本当の地獄だ・・・・・・・・・・?」
翠「いまです!」翠星石の合図で薔薇乙女たちが一斉にベジータへ攻撃を仕掛ける。
べ「ぎゃあぁぁぁぁぁぁ・・・・・・・・・。」
ボコボコにされ、鼻血を吹きながら自身も吹き飛ぶベジータ。
きりもみ状態で周囲に鼻血を撒き散らしながら地面に叩きつけられる。
翠「汚いシャワーですぅ。」幻の10回転ジャンプは失敗に終わった。
翠「蒼星石。もう安心していいですよ。」ベジータを倒した翠星石は蒼星石の様子を見る。
翠「蒼星石。何してるですか!」何と蒼星石が、JUMを押し倒しているではないか。
蒼「JUM君。僕、怖かったよ・・・・・・・。」
JUMの顔は蒼星石の胸で下敷きになっており、体操服が真っ赤に染まっている。
翠「チビ人間!そこを退くです!」
翠「そういうことして欲しいなら、二人きりのときに翠星石が・・・・・・・。」
言いかけて、周りの視線にハッとなる翠星石。
翠「とにかく、どさくさにまぎれて蒼星石を押し倒すとは不届きなヤローです!」
JUM「これは僕のせいじゃ・・・・。不可抗力だ!」
薔薇姉妹たちの抱きついた蒼星石への嫉妬はJUMへの怒りに変わる。
翠「みんなでお仕置きするです!」蒼星石を除いた薔薇乙女姉妹がJUMを取り囲む。
JUM「こういう時は何て言うんだったかな・・・・・・・。」
JUM「これからが本当の地獄だ・・・・・・・・かな。」
翠「その通りですぅ。」その言葉を合図に姉妹たちがJUMに飛び掛る。
JUM「うわあぁぁぁぁぁぁ・・・・・・・・・。」校庭にJUMの悲鳴が木霊した。

エピローグ

勝負も騒ぎも収まった校庭。
べ「参った!」蒼星石への謝罪も含め土下座するベジータ。
翠「ざまーねーですぅ。」何故か得意げな翠星石。
蒼「とにかく、ベジータ君も顔を上げて。」
べ「蒼嬢は『優しい』な。」顔を上げるベジータ。
べ「そこでだ!『優しい』蒼嬢に頼みがあるんだッ!」
やたらと『優しい』の部分を強調して言うベジータ。
蒼「・・・・・何だい?」一歩引いてしまう蒼星石。
ベ「俺はもっと強くなりたいんだ!だから蒼嬢の重い服を貸して欲しい!」
蒼「どうしようかな・・・・・・。」
ベ「頼むッ!」もう一度土下座するベジータ。
蒼「仕方ないなぁ・・・・・・。」蒼星石は押しに弱いのか手提げ袋をベジータに手渡す。
べ「うはwwwwwwww」ベジータがいつもの奇声を上げる。
蒼「やっぱりやめ・・・・・・。」
べ「それじゃ俺は早速トレーニングに入るな!」蒼星石の声を遮るように大声を出すベジータ。
ベ「またな!」そう叫ぶと、いきなり駆け出しベジータはすぐに見えなくなった。
翠「どうなっても知らねーですよ。」
蒼「・・・・・・・・。」蒼星石は無言だった。

帰り道。始終ご機嫌な蒼星石。
蒼「JUM君。」JUMの腕に手を回す蒼星石。
JUM「どうしたんだ?蒼星石?」
蒼「何でもないよ。」蒼星石の笑顔は止まらない。
翠「何ニヤニヤしてるですか。さっきからずっとこの調子です。」
蒼星石があまりにJUMを独占する為、他の薔薇姉妹は先に帰ってしまったのだ。
蒼「えへへ。」
蒼「僕がベジータ君から逃げたとき、JUM君が抱きとめてくれたから。」
正確には激突され、蒼星石もろとも倒れてしまったのだが。
翠「だからってベタベタし過ぎです。」少し不機嫌になる翠星石。
翠「でも今日は蒼星石が良く頑張ったから、特別に許してやるです。」
翠「色々な意味で、蒼星石はぶっちぎりの凄い奴ですぅ。」
蒼「ありがとう。翠星石。」蒼星石は喜びの余りJUMに思いっきり抱きつく。
JUM「蒼星石・・・・・・胸が・・・・・足が・・・・・。」
シャワーのような鼻血を吹き、白目を剥いて倒れるJUM。
蒼「JUM君!」蒼星石が叫びを上げる。
翠「二人とも大馬鹿ですぅ。」
今日も薔薇学園は平和だった。
翠「それにしても、あの男は今頃何をしているですかねぇ。」

その頃のあの男、ベジータ。彼の自室。

手提げ袋から蒼星石の服を取り出すベジータ。
べ「それにしても重い服だな・・・・・・ハァハァ。」
べ「よし、ハァハァ・・・・・・早速トレーニング開始だ。」
黙々と本来鍛えるべき場所と違う部位に負荷をかけるベジータ。
べ「ハァハァ・・・・・・・うッwwwww」ベジータはトレーニングを終え、脱力する。
力の抜けたその手から蒼星石の服が落ちる。
蒼星石の服はベジータが鍛えていた部位に直撃した。
べ「ぐはあッッッッッッ!!!!」
べ「これが・・・・・・本当の地獄か・・・・・・・・・・・ガクッ。」

fin