泣く少年

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泣く少年


――俺の名前は歌舞鬼。人の為に鬼となり…人に絶望し、仲間を裏切り外道となった男。
まぁ結局は響鬼との対決に敗れて、挙句の果てには最後の最後で甘さを捨てられずに、ヒトツミにバリバリグシャグシャバキバキゴクン。
と、なるはずだったのが生きながらえ、こうして殺し合いに参加させられている。その割には多少の騒動があるとはいえ平和な物なのだが。
仮に神様がいるとしたら、一体俺に何させようってのかねぇ?――

アマゾンと合流した俺は今現在の周囲を確認してみる。辺りにはまるで俺達がいるこの場所を、木々達が守るかのようにそびえ立っている。
本来は動物達の休息場所?とでも言うのだろうか。この場所なら休むのも悪くない。
とりあえずの安全を確認すると俺はアマゾンのデイパックを漁る事にした。
持ち主であるアマゾンは横たわっている二人の少年に付き添ったままで、こちらを気にする様子はない。
支給品の確認を改めて行なう。いくらなんでも変てこな紙芝居だけって事はない筈。何かしら使える物があるはずだ、俺の烈節のように。
中に入っていたのは透明の…あーいや、これは水だな確か。俺に支給されたものと同じやつだ。
それに地図やらなんやら…要するに俺のと内容は同じだったわけだ。ただ一つの物を除けば。

黒い持ち手に、朝日に照らされキラリと光る銀の刃。この短刀がアマゾンに支給された武器なのだろう。
だが…この短刀の刃はあまりにも、短い。辛うじて先端が見えているという程度だ。
デイパックから取り出し、軽く振るってみる。使い勝手は悪くないが、使い道が見えてこない。
だが何度か振るっているうちに今まで短かった刃が突然伸び、俺は驚いて思わず声を上げてしまった。
何かごそごそと作業していたアマゾンは、その声に何事かと思いこちらを見ていた。
俺は何でもない、と手で伝えるとアマゾンは再び何かの作業に没頭する。

どうやら振るっているうちに、持ち手についている引き金のような物を押し込んでしまったらしい。
引き金を引くと刃が飛び出し、使用できるという仕組みか。なかなかよくできていると感心する。
俺は刃を元に戻し、少し考えて懐にしまいこんだ。あまり必要とも思えないが、いざという時には使えるかもしれない。

デイパックの中身を元に戻し、再びアマゾンを見やる。アマゾンは未だに何かをゴリゴリと…擂っているのか?あれは。

「おいアマゾン。何作ってるんだ?」

興味本位で訊ねてみる。アマゾンは振り向き、何か伝えようとしていたが、少し苦い顔をして再び擂りはじめた。
どうやら言葉が思い当たらないらしい。まぁアマゾンに思い当たる言葉と言えば「アマゾン」か「カブキ」か「ケケー」程度の物だろうが…
つまり少なくともアマゾンや俺に関する物では無いらしい。さて何だろうか?まぁ大体の見当はついてるんだけどな。
俺の予想通り、アマゾンは完成した『それ』を、未だ目覚めぬ少年の身体へと塗りつけていく。

「『クスリ』、か?」
「…!アウ!ク、『クスリ』!」

何かピンとくる物があったらしい。アマゾンは何度も頷くように首を振り、『クスリ』を少年に塗りつける。
しかしあの少年は確か…アマゾンとつい先ほどまで戦っていたはずだ。
少年の側に置かれた仮面がそれを証明するかのように不気味に光っている。

「なぁ、アマゾン。おめぇ何で自分で傷つけた相手を治療してやってるんだ?」

アマゾンは手を止め、悩みだす。直後に俺は(まずい事を言ったな…)と思った。
俺はアマゾンの側に近づき、頭をクシャクシャと撫でる。

「わりぃわりぃ。難しい理由なんてわかんねーし、いらねーよな。おめぇが治したいから治す。それでいい」

ニッと笑うとアマゾンもそれに連られて笑顔になる。いい笑顔だ。
アマゾンは再び少年を治療し始める。これでいい。下手に考え込んで、暗い顔になってほしくない。
俺の我侭なのかもしれないが、アマゾンには笑っていて欲しい。子供のように。

子供といえば、だ。並んで横たわっている二人の少年を見比べる。どちらも歳はそれほど離れてないような気がする。
仮面をつけ、アマゾンと戦った少年と…途中で気絶していた少年。この二人には何か接点があったのだろうか?
今まで一緒にいたのかもしれないし、或いは…仮面の少年が気絶していた少年を襲った犯人なのかもしれない。

(嫌な考えだ…大体、子供を戦わせようって考えが気に食わねぇ)

確かに、そういう考えや育て方もあるのだろうが…少なくとも俺は嫌いだ。
腰をドッガと下ろし座り込む。とりあえずはこの二人の少年が目覚めるのを待つために――


          *   *   *


アマゾンの治療が終わってしばらくして、気絶していた少年がゆっくりを身を起こす。どうやら気がついたようだ。

「よう、気がついたか?」
「…あれ…俺…う、うわあ!?」

気がついた少年は隣に横たわっていた仮面の少年に気がつくと、物凄い勢いで飛びのいた。
反応から察するにどうやら先ほどの嫌な考え通りらしい。まったく気に食わない話だ…

「殺されて…!?いや、俺は生きて…あ、こいつケガを!?いや、治されて…?」
「おいおい、落ち着けよ。おめぇが気絶してて、俺が助けた。おめぇの隣に寝てるのは、アマゾンと…あ、そこの半裸の男の名前な。
 アマゾンと戦ってた少年だよ。何か知ってるのか?その仮面の少年の事。まぁまずはおめぇの名前が知りたい所だがな」

錯乱している少年をなだめてやる。まずは情報が必要だ。例えどんな些細な情報であろうと――

「なんでこいつを治したりしたんですか!こいつは化け物…いや、確か魔化魍?そうだよ!魔化魍なんだこいつは!」

…こいつは驚いた。起きてそうそう何を言い出すかと思えばまさか魔化魍発言とは。
だが俺の知る限りわざわざ仮面を被る魔化魍なんて聞いた事がねぇ。何か勘違いしているみたいだな。

「まぁ、そいつが魔化魍かどうかは置いておこうぜ。それよりおめぇの名前だよ名前。名前が呼べないと不便だろ、色々と」
「え…お、俺の名前は、きりや、桐矢京介」
「そうか、京介ってのか。俺の名前は歌舞鬼。人を護る事が仕事の『鬼』、だ」

魔化魍という言葉を知っているなら、まず間違いなく『鬼』という言葉には反応するだろう。問題はどう反応するか、なんだが――

「え、鬼!?もしかしてあの緑と赤の鬼が、あん…じゃない、貴方なんですか!よ、よかった。これで助かった…」

京介は安堵からか、へなへなと座り込む。うーん、鬼に嫌悪の感情はないようだ。ないようだが…
なんとなーくだが、気に食わない。まるで護ってもらうのが当然であるかのような、その言い草が。
まるで俺が大嫌いな大人の連中のようだ。第一印象は悪いぜ。

「…え、なんで!なんで貴方は鬼なのに魔化魍を放置するんですか!今のうちに倒すなり、最低でも縛るなりしないと!」

京介の言いたい事はわかるし、まぁ正論なんだろう。
だが俺はどうにも仮面の少年を拘束する気にはなれなかった。
無差別に襲い掛かる魔化魍のような人物なら京介が生きているはずがないのだから。
理由があるのならば、聞いてみたいものだ。こんな少年が殺し合いに乗ってしまうほどの、理由を。
まるで動こうとしない俺に京介は見切りをつけたのか今度はアマゾンに話しかけはじめた。

「貴方…アマゾンさんでしたっけ?アマゾンさんもそう思うでしょう!こんな危ない奴は放置しちゃ駄目なんです!」
「ガウ?」
「アマゾンにそんな難しい事聞くなよ…アマゾンは言葉が不自由なんだぜ?」

京介は拳をわなわなと震わせ…涙を流し始めた。随分と感情の起伏が激しいな、こいつは…

「俺…まさか本当に三田村さんが人を殺す人だなんて…思ってなくて…それに…魔化魍だなんて考えもつかなくて…
 こいつは、人を騙して、人を殺す!そんな奴なんですよ!だから…っ!」

突然の涙にアマゾンはオロオロしている。なるほど、仮面の少年の名前は三田村。
三田村と京介は短い間とはいえ一緒に行動し、三田村が裏切ったといったところか。
俺は腰を上げるとポロポロと涙をこぼす京介に近づき、先ほどのアマゾンにしてやったように乱暴に頭を撫でた。

「そんな簡単に泣くんじゃねぇよ…三田村だって何か訳があったんだろうし、それを聞いてから判断しても遅くないだろう?
 それに本当に殺し合いに乗ってるなら、お前を生かしたりはしないさ。大体こんな種族の魔化魍いねぇし」
「…でも…俺…」
「デモもストライキもないだろ。まぁ会ったばかりの俺を信じろってのも難しいだろうがよ…ちょっとは頼ってくれよ、な?」

俺はまだ涙目の京介の頭をさらに乱暴に撫でる。一皮剥けば中身は歳相応の少年、か。
難しいお年頃って奴なんだろうなぁ、素直になったほうが楽なのによ…

「まぁ、今は待とうや。この三田村が目覚めるのをよ」


          *   *   *


まるで腰を掛けてくださいと言わんばかりの切り株に俺は座り込んでいる。
左側には未だに目覚めぬ三田村少年。アマゾンの治療の効果がどれほどのものかはわからないが、そろそろ目覚めそうな気がする。
右側には京介がアマゾンに対して意思疎通を図ろうと四苦八苦している。うーん、目と目で通じ合うとか、無理なもんだろうか?

「やっぱりこういう人と話すときはまずは言語能力を確認するべきだよな…よし!」
「ガウ?」
「…トウキョウ」
「(ピク)!」
「歌舞鬼さん見ました!?東京に反応しましたよ!アマゾンはやっぱり言葉がわかるんだ!」

…俺はどういう反応をしてあげればいいのだろうか。ただ一つ分かる事はこのやり取りが限りなくアホらしいという事だけだ。

「な、なんですかその疑いの眼差しは!」
「いや、アマゾンが言葉わかるのは俺知ってるしな。ところでトウキョウってなんだ?」
「え?歌舞鬼さん、またまたご冗談を…」

京介がニヤニヤしながら再びアマゾンと触れ合っている。まぁ、いいか。笑う余裕ができただけ、めでたいめでたい。
なんとなく、俺は三田村の仮面を手に取ってみる。蛇の頭を模した、お世辞にもいい趣味してるとは言えない仮面だ。
こんな仮面があっちゃ笑顔にはなれねぇだろうなぁ…三田村は。

「…あ…、か、歌舞鬼さん…」
「ん?どうした?」

その声に首を右に向けると京介が口をポカンと開けて俺の後ろを指差している。
その隣ではアマゾンが今にも飛び掛らんとばかりに両手を向けている。

「おいおい、どうした。熊でも出たかぁ?」

だが俺が後ろを振り向く前に、今まで手の中にあった蛇の仮面が無くなった。
ふんふんと頷きながら俺はゆっくりと身体を回す。

予想通り、三田村が蛇の仮面を抱え、こちらを睨んでいた。

「お目覚めか…三田村よ。まずは自己紹介といこうか?俺は人を護る事が仕事の…」

俺の言葉を無視し、三田村は仮面をゆっくりと被る。その仕草はなんとなくだが、親の言葉に耳を塞ぐ子供のように見えた。

「人の名前くらいは聞いてくれよ、寂しいなぁ」

蛇の仮面を装着した三田村…蛇小僧ってとこか?三田村は右手を振り上げ、俺の顔面一直線に振り下ろす。
俺は咄嗟に左手でその拳を受け止める。…あれ?受け止められたぞ?
もう少し衝撃がくると思っていたのだが、これでは本当にただの少年の攻撃だ。
三田村の(まぁ蛇の仮面だが)白い目が驚きで丸くなったような気がした。
今度は左手の正拳が俺に襲い掛かる。俺は首だけを動かしその拳を避ける。
俺は空いている右腕を三田村の腰に回し、正拳の勢いを利用して後ろに放り投げる。

「歌舞鬼さん!」
「カブキッ!」
「手ぇ出すな。俺一人で相手する」

立ち上がりながら俺は加勢しようとする二人を制する。さて、三田村が立ち上がってくる前に確認しとかねぇとな。
全部が全部見てたわけじゃねぇが、三田村のこの蛇仮面を装備した状態はアマゾンの変身した姿と互角の戦いを繰り広げていたはず。
その三田村の攻撃を鬼の姿になってすらいねぇ俺がこうして捌ききれるわけがない。
それに三田村の仮面越しに感じた驚きの表情。恐らくは力を発揮できていないのだろう。だがそれはつまり…

――キィーーーッン……――

音角を手甲に当て、音波を生み出し、額にかざしてみる。本来ならば鬼の紋章が額に浮かび、体中に鬼の力が漲るのだが…感じられない。
あぶないあぶない、これで『歌舞鬼ッ!』と宣言して変身できなかったらと考えると…かっこわるくて泣けちまうぜ。

「歌舞鬼さん!なんで鬼に変身しないんですかっ!相手は魔化魍なんですよ!」

京介の叫び声が聞こえるがとりあえずは無視。変身できない、とわざわざ言う必要はないだろう。
アマゾンが京介をこれ以上戦いの現場に近づかせないように手で遮っている。乱入の心配はしないで済みそうだ。

投げ飛ばされた三田村がようやく起き上がる。力を発揮できないだけじゃなく、どうやら体力自体ろくに回復していないようだ。

「おい三田村無理すんな。フラフラじゃねぇか…何がお前をそこまで動かすんだよ?なな、俺にだけでいいから教えてくれよ」

三田村は歩きながら…いや、本人は駆けているつもりなのだろう。
だが悲しいかなその速度は歩行するのとほとんど変わらない。
右手から繰り出される腕だけの正拳を俺は受け止めず、あえて避ける。
腰も入っていない。仮に食らったとしてもダメージ等無いに等しいだろう。

今度はえぐるような…(豆腐もえぐれねぇぜ、そんなのじゃ)…左手の拳を俺は右手で抱えるように押さえつける。
左手を三田村の首に絡ませ、ぐいっと引き寄せる。見方によっては抱擁にも見えるかもしれんね。

「三田村…三田村、なぁ頼むよ…おめぇみたいな若いのが、なんでそこまでボロボロになってまで…戦う?」

三田村は言葉に耳を貸すことはなく、唯一自由な右手を俺の腰に駄々をこねる様にぶつけてくる。
が、どうやらそれはフェイクだったらしくーっ!――

「三田村、それは犯則だっ!くぅ、この意地っ張り!蛇!蛇頭!」

俺は三田村から離れると右手で股間を押さえる。
そう、あろうことか三田村はあの組み合った体勢から膝蹴りを俺の股間にぶつけてきたのだ。
流石の俺もこれは痛いし、ちょっと怒ったぞ!

「ちっ、しょうがねぇな。京介!三田村の名前なんてんだ?」
「えっと…確か晴彦、晴彦です!」
「そうか、晴彦!晴彦くん!晴彦ちゃん!はるちゃん!晴彦さん!」

色々と名前を呼んでみる。一瞬だが、晴彦が反応した。
俺はその隙を逃さず両足を大きく広げながら飛び込み、晴彦の胴体を挟み込む。
その勢いに任せたまま晴彦の背中を叩きつけ、馬乗りのような体制になる。
これが魔化魍との戦いなら雨のような打撃を繰り出す所だが、相手が相手だけにそうはいかねぇ。
すっ、と両手を晴彦の仮面に掛ける。意外な事に仮面は簡単に取り外す事ができた。
中から出てきたのは晴彦の素顔。疲れが溜まりに溜まっているのだろう。目の下に隈ができ、折角の端整な顔立ちが台無しだ。

「やっぱこうやって顔と顔を合わせないとちゃーんとしたコミュニケーションは取れねーぜ。この仮面は俺が没収する」

その言葉を聞いた瞬間、まるでどこにそんな力が残っていたのか、晴彦が馬乗りの不利な体勢から強引に起き上がる。
俺はというと晴彦が起き上がる寸前に転がり、ほんの少しだが距離をとっていた。蛇の仮面は勿論離さない。

「…返せ…」
「ようやく口を開いたなぁ、晴彦。この仮面がそんなに大事か?それとも、勝つために必要不可欠だからか?」

晴彦は小声で返せ…と呟くばかりで何も答えてくれない。だが後一歩で何か崩れそうな気がする…
そんな予感ともう一つ感じたもの…悪寒だ。晴彦から今までとは桁違いの気迫を感じる。
それほどまでに大事なのか、勝ち残り、得られる物が。そこまで執着できる物がある事が、ほんの少しだけ、羨ましい。

「返せっ!」

両手を広げ、晴彦が俺に襲い掛かる。その速度は今までのどの動きよりも素早い。
だが悲しいかな、俺はその攻撃を受ける事はない。俺は晴彦と衝突する寸前に素早く身を屈め、踏み込む。
晴彦はその動きに即座に反応する事ができず、俺の背中を転がるように飛び越え、地面へと投げ出される。

「晴彦…何のためだ?金か?権力か?それともただ生き残りたいがための執念か?」
「五月蝿い!」

晴彦は再び立ち上がり、俺に襲い掛かる。今度はさっと横に避け、すれ違う瞬間に足を引っ掛けてやった。
またしても晴彦は地面に倒れこむ。

「違うよなぁ、おめぇみたいな若いのがそこまで一生懸命になれるとしたら、一つだよなぁ」

地面にうずくまり、それでも尚、立とうとする晴彦の側へと近寄り、しゃがみ込む。

「女か」
「!」

晴彦が顔を上げ、俺を見る。当たりだな…よかった、ここで外れたらかっこわるかった。

「俺の知り合いにも愛した女の為に鬼を一時やめた奴がいた…。愛かぁ、羨ましい限りだぜ」
「だから…どうした!」
「聞いて驚け。おめぇのその真っ直ぐな気持ちが気に入った!どうだ、俺達と一緒に行動しねぇか!」

その言葉に晴彦だけじゃなく、京介も驚きの表情を浮かべている。だが変えるつもりはねぇぜ!

「歌舞鬼さん!本気ですか!?そいつは…」
「まぁ、京介は黙ってな。晴彦…おめぇは勝ち残りたいんだろ?だったら丁度いいじゃねぇか。
 最後の最後、後は俺達だけって時まで…協力しようじゃねぇか?どうだ?」

晴彦はまだ渋っている。渋る理由はねーと思うがなぁ…

「何故、そんな提案をする…」

ようやっと口を開いたかと思えばそんなことか…

「おめぇが気に入ったからだよ。最後までおめぇの進む姿を見てみたい。それじゃ悪いか?」

ま、半分嘘だけどな。こんな危なっかしいの放っておけねぇって、マジで。
このまま一人で進ませたらそのうちパンクしちまう。誰かが側にいてやらねぇと…
三田村はまだ何か聞きたい事があるようで、ゆっくりと言葉をつづる。

「お前は、『正義の味方』なんだろう?そんなのが、僕を助けるなんて…」
「悪いが、鬼は別に『正義の味方』じゃねぇ…と、少なくとも俺は思っている。
 自分が護りたい物を護るために戦う、それが鬼だ」

そう、護りたい物があるからこそ、響鬼達はあれだけ強かったんだと今なら思える。
そこにあるのは…まぁ、正義もあるのは確かだろうが、それだけじゃない。
愛とか、ともすれば執念とか、或いは使命とかも…ともかく、正義だけの味方じゃねぇんだ。
だから、『正義の味方』じゃなく、『鬼』なんだと思う。

「ともかく決定事項だからな、こいつは返すぜ」

蛇の仮面を晴彦の側に置く。晴彦はその仮面を抱きかかえるようにうずくまり…泣いていた。
誰かの名前を呟いたような気がしたが、聞かなかったことにする。

「アマゾン、京介。悪いな勝手に決めちまって」
「…ガウ!」
「そうかそうか、流石アマゾンだ。よくわかってるなぁ」

まぁ本当に理解してくれたかはわからないが、アマゾンは優しい奴だし多分同意してくれてるだろう。
問題の京介は…ふてくされた顔をしている。やはり一度裏切られたというだけあって、そう簡単に迎え入れる事はできないのだろう。

「歌舞鬼さん…あいつはいつか必ず…」
「ま、安心しな。どうなろうとおめぇの身は護ってやるからよ」

そういう問題じゃ…と京介が呟くがその顔はどこか嬉しそうな気がした。

まぁ、あれだな。時間も時間だし…

「とりあえず飯にするか、な!」

状態表

【山本大介@仮面ライダーアマゾン】
【1日目 現時刻:朝】
【現在地:F-6エリア】
[時間軸]:アマゾン本編1話終了後
[状態]:健康、1時間変身不可(アマゾン)
[装備]:ギギの腕輪、コンドラー
[道具]:ルール説明の紙芝居、基本支給品
【思考・状況】
基本行動方針:ケケー!
1:……ガウ!
【備考】
※言葉は人と会話をしていけば自然と覚えます。
※コンドラーはナイフやロープ代わりになります。
※ギギの腕輪を奪われるとアマゾンは死にます。
※第一回放送をまるで聞いていません。

【桐矢京介@仮面ライダー響鬼】
【1日目 現時刻:朝】
【現在地:F-6エリア】
[時間軸]36話、あきらに声を掛けた帰り
[状態]:疲労大、軽い擦り傷、空腹。
[装備]:なし
[道具]:基本支給品(食料紛失) ラウズカード(スペードの10、クラブの10)
【思考・状況】
基本行動方針:生き残る
1:歌舞鬼、アマゾン、三田村と共に行動する。
2:激しい恐怖(特にダグバ・ゾルダに対して)
3:三田村に対し少し警戒。
4:響鬼が助けてくれることへの僅かな期待。
【備考】
※自分を助けてくれた男性(水城)の生存の可能性は低いと予想
※食料は移動中に紛失しました。

【三田村晴彦@仮面ライダー THE FIRST】
【1日目 現時刻:朝】
【現在地:F-6エリア】
[時間軸]:原作での死亡直前から
[状態]:全身に強い疲労、胸に強い痛み、1時間変身不可(コブラ)
[装備]:特殊マスク、鞭
[道具]:基本支給品・不明支給品×1
【思考・状況】
基本行動方針:彼女を救いたい。
1:望みを叶える為にも、バトルロワイヤルに生き残るしかない。
2:生き残る為に歌舞鬼、アマゾン、桐矢と共に行動する。
3:いざとなれば迷わない……はず。
【備考】
※変身制限がある事をなんとなく把握しました(正確な時間等は不明)


飯の準備をしつつ…ふと、疑問が浮かぶ。俺は何のために…晴彦や、京介、アマゾンを護りたいと思うんだ?
そこには愛も正義も…ないなこりゃ。まさか、罪滅ぼしとでも思ってるのか?俺。
あー、くそっ、上手い言葉が思い浮かばない…ともかく護りたいから護る!それでいい!

響鬼ならこういう状況でどう動くんだろうか?考えるだけ無駄か、わかりきっている。
あいつの事だからきっと迷うことなく、誰かを護るんだろうな…
晴彦の真っ直ぐな思いも、響鬼の真っ直ぐな生き様も、俺には眩しくて、ちょいと羨ましいぜ…

俺にはあるか?そんなものが。だが、それを見つけられない限り…俺は中途半端なままに終わる気がする。
死ぬ事に恐れはないが、晴彦達を放って死ぬ事だけは、できそうにない気がした。

状態表

【歌舞鬼@劇場版仮面ライダー響鬼】
【1日目 現時刻:朝】
【現在地:F-6エリア】
[時間軸]:響鬼との一騎打ちに破れヒトツミに食われた後
[状態]:健康、1時間変身不可(歌舞鬼)
[装備]:変身音叉・音角、音撃棒・烈翠
[道具]:基本支給品(ペットボトル1本捨て)、歌舞鬼専用地図、音撃三角・烈節@響鬼、GK―06ユニコーン@アギト
【思考・状況】
基本行動方針:子供は護る。
1:アマゾン、三田村、桐矢と行動する。
2:俺はこの状況下で、何がしたい?
3:響鬼と決着をつけてみるのもいいが、今のままでは勝てない気がする…
4:そういやモモタロスはついて来てねぇな。


061:コントラスト 投下順 063:休息
059:全てを喰らう牙 時系列順 055:The flames of destiny/炎の果てに(前編)
053:二匹の蛇は何を唄う 桐矢京介 080:出たぞ!恐怖の北崎さん
053:二匹の蛇は何を唄う 三田村晴彦 080:出たぞ!恐怖の北崎さん
053:二匹の蛇は何を唄う 山本大介 080:出たぞ!恐怖の北崎さん
053:二匹の蛇は何を唄う 歌舞鬼 080:出たぞ!恐怖の北崎さん

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