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エスプガルーダII_1

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注:この作品はCAVE社のシューティングゲーム「エスプガルーダ2~覚聖せよ。生まれし第三の輝石~」を独自にノベライズした物です。
メーカー及びその関係者等とは一切関係ございません。またこの作品の無断転載は一切禁止とさせていただきます。
メーカーリンク:http://www.cave.co.jp/gameonline/espgaluda2/index.html


                             ■


  どこまでも青い空、ちぎれちぎれになった雲がわずかに浮かぶのみ。

――さぁさぁ今日はマグロが安いよ!坊や、はぐれないようにね!

  市場の喧騒、変わりない平和な日々。そして、賑わいの途切れた先にある白亜の邸宅。
  そのテラスに立つ白衣の女。
  プラチナブロンドの中にうっすらと碧の輝きを灯す髪、透き通るように白い肌。
  着衣を縁取る金糸模様も相まって、どことなく高貴な雰囲気が漂う。


「母さん、横になってないとダメだよ!」

  テラスに、同様の輝きの髪を持つ青年が現れた。

「大丈夫よアゲハ、今日は体の調子もいいし……」

  青年……アゲハとその母親、アリス。二人の碧色の瞳に平和そのものと言える光景が写り込む。

「……それにね、あなたとタテハが作ってくれたこの平和な光景を、少しでも心に刻み込んでおきたいの」

  アゲハの表情が曇る。
  無理も無い。度重なる実験の被験者であったアリス、その命は決して先の長い物では無い。
  それは承知している。承知しているが……母の口からそれを匂わせる言葉を聞くのはあまりにも辛い。
  しかも母と妹タテハの3人での暮らしが始まったのはわずか3年前の事。

  そう、3年前……
  脳裏に父ジャコウと、もう一人の妹セセリの姿が浮かぶ。


                             ■


  ――シンラ。ジャコウはその国の国皇であった。
  非常に発達した錬金術によりシンラは支えられ、また国皇であるジャコウ自身も優れた錬金術師であった。
  しかしそれが彼を狂気へと導いていく。

  ジャコウの妻アリス、彼女は『聖霊』の力を代々引き継ぐ巫女であった。

  2人は幸せな結婚生活を送り、やがて2度子を設ける事になる。
  だが、2度とも流産であった……はずだった。

  やがてアリスは一つの計画を知った。

  プロジェクト『エスプガルーダ』。
  人間の体に聖霊力を封印した『聖霊石』を埋め込み、新たなる人類を作り出す計画。
  そしてその計画に使われたのが他ならぬわが子、聖霊の力をわずかながらもその身に宿すアゲハとタテハだったのだ。

  ――流産と伝えられていた2人の子。実は、妊娠時に摘出されていたのだ。検査を隠れ蓑にして。

  この事実を知ったアリスは絶望し、自らを巨大な聖霊石の中へと封印した。

  それでもジャコウの野心は止まらなかった。
  アリスの細胞からクローンを作り出し、アリスが封印されている聖霊石より聖霊力を抽出し、
  ついにはジャコウ自身がアリスと同様の……聖霊としての力を持つに至った。


  ヒオドシ。彼はプロジェクトの中心に位置し、聖霊石を動力源とする『聖霊機関』を開発した人物である。

  平和を信じ、主君に尽くしてきた……
  だが、すでにジャコウは王としても、同じ錬金術師としても信頼出来る存在では無かった。

(陛下が……シンラがこの世界を制したとしたら、この世界は一体どうなると言うッ!)

  彼は決心した、王に反旗を翻す事を。
  プロジェクトエスプガルーダの主軸とも言える存在であるアゲハとタテハ、この2人を連れ逃亡したのだ。
  そして野に下り、息を潜め、かりそめではあるが平和な日々が2人をはぐくんだ。


  しかし逃亡劇から16年たったある日、平和はもろくも崩れ去った。
  あれから側室との間に生まれた皇女セセリ。
  彼女とシンラ兵達が聖霊機関『機甲羽根』を身にまといヒオドシ達の元に現れた。

  シンラ兵達の凶弾に倒れるヒオドシ……
  だが、皮肉にもそれがアゲハとタテハに宿る聖霊を呼び覚ましてしまった。

  ガルーダとして覚聖した2人の手により打ち倒されるセセリ。
  2人は聖霊力に――母、アリスに導かれるままにジャコウの元へと飛ぶ。

  国皇の居城、浮遊城ウツロブネ。
  そこで自身の四肢を聖霊機関と化したセセリ、そして覚聖融合臨界を果したジャコウと戦い……
  そして、倒した。

  こうしてシンラ、聖霊機関、そしてプロジェクトエスプガルーダはこの世界から消滅した。


                             ■


「……ほら、中に入ろう。そろそろ食事も出来上がるだろうし」
「ええ」

  部屋へと戻る手前でアリスがもう一度空を見上げる。

(出来る事なら…)
(出来る事なら、家族全員そろって暮らしたかったわ……)

  ざぁっ……
  暖かい潮風が髪を揺らす。

(ジャコウ……そしてあなたともよ、セセリ……)

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