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 花見。夜桜が綺麗だなぁと、ジュンは思った。
「……ジュン。あなたも飲みなさい」
「飲みません」
 何だこのカオスは、とジュンは軽く現実逃避気味に思った。ない。一応女子高生だろ。そういう設定だろ。
 だというのに――何故、僕の周りの女の子たちはいわゆる命の水(酒のこと。多分)を手にしてらっしゃるのか。
 これはジュンからすれば、一生かかっても解けないような問題だった。だって理由なんてない。成り行き。ぶっちゃけその一言だけだった。
 それに、ジュンからすれば、いつも一緒に居て、ただでさえ異性を感じている少女たちが顔を赤らめて色っぽくなっている方が問題だ。それに、何故かジュンばかりに絡んでくる。
 真紅は、なんだか照れくさそうにジュンに寄りかかっているし、
 蒼星石は耳はむはむしてるし、
 翠星石はさっきから如雨露について語ってくるし(如雨露で水をあげるということはですね、愛を注ぐことと同じなんです。だからですね、ジュン、以下略は本人の弁)、
 雛苺と金糸雀はジュンの上に登ろうと二人で必死に争っているし、
 薔薇水晶はジュンの膝枕、いや正確にはお姫様抱っこに近い形で気持ち良さそうに目を細めていた。
 それはつまり――それなんてハーレム?



「水銀燈だけだな、酔ってないのは」
 そんな中での、ジュンにとっての唯一の希望。ある意味一番酔われたら困る存在。それが水銀燈だった。
 水銀燈は軽く頬を赤らめているものの、ほろ酔い程度だ。逆にそっちの方が色っぽいという話も各所(水銀t(ryとかで)であがっているのだが、まあそれはそれ。
 ジュンは、会話できることの大切さを噛み締めていた。
「ええ? まあ、一応年長だしねぇ。ジュンばかりに押し付けるのも悪いしぃ」
「……そう思うなら助けてくれよ」
「あらぁ? てっきり喜んでるのかと思ったわぁ。鼻の下、伸びてるわよぉ?」
 くすくす、と水銀燈が笑った。からかうような、楽しむような、そんな笑い方。
「そう見えるのは勘違いだ。っていうか……誰だ、酒持ってきたの」
「確かぁ、べジータだったかしら」
 ジュンの中の、帰ったら真っ先にとある表紙が黒いノートに名前を書く順番一位にべジータが登録された。
「まあ、それはいいんだけど」
 ところで、唐突だが、この会話は、ジュンと水銀燈の会話だけ抜き出している。実際は「だからね、ジュン私はくんくんと同じくらいひながのぼる!それだけは!譲れない!つまり如雨露はジュンと私のようにはむはむはむはむすーすーじゅんーかしらー」みたいな感じだ。だから、省略。



「それに、少し妬けるわねぇ」
「え?」
「その子達よぉ。いつもはそんなことしない真紅と翠星石ですら、ジュンにべったりじゃなぁい? なんだっけ、そういうのを、確かべジータが、ツンデレっていうんだって熱く語ってたわぁ」
 死のノートでは生ぬるい。死の着信を加えてくれる。着信着た瞬間包丁持った子がご招待される特別バージョン。ジュンは心の中で誓った。
「水銀燈も、えーっと……こんなことしたいのか?」
 ジュンは言葉に迷った。いや、だって今、この少女たちは何をしているかわからない。こんなこととしか言えない。
「したいって言ったら、甘えさせてくれるのかしら?」
 ああ――とジュンは納得した。そうか。これは、甘えられているのか。
 甘えるということは、相手に自分を預けること。相手を信頼しているということ。
 それなら――
「水銀燈に、甘えてほしいな」
「お兄ちゃんって、猫なで声で?」
「……それは、何の話?」
「確か、べジー(ry」
 死のビデオも送りつけよう。ダビングできないようにプロテクトかけて。しかも見た瞬間に井戸からご招待の特別バージョン。ジュンは心の中で、硬く、硬ーーーーーーく誓った。


「それは置いといて。水銀燈も僕に甘えたいって思うときがあるのか?」
「……うーん。そうねぇ。あ、そうだ」
 ぽんっ、と、水銀燈は両手を合わせ、とても嬉しそうな顔で言った。
「それが知りたいんだったら、あの桜の裏まで来てよ。ひとりで来ることが出来たら、教えてあげるわぁ」
 それじゃあ、待ってるわよ。そう言うやいなや、水銀燈は酒片手に歩き出した。ジュンの返事も聞かず。
「……え、それって」
 つまり、水銀燈は。
「ジュン、下僕なのだから、なんていっているけれど、本当はいつも感謝しているのよ?」
「……えっとですねー、だからー、植物には水が必要で、栄養が必要なんです。そのか、関係に、私たちも……」
「はむはむはむはむはむ」
「雛苺とは、この私。だから、ジュンの上は譲れないの――!」
「たまには、私だって頑張ってみるのかしらー!」
「すー、すー……ううん、じゅんー、大好きー」
 このカオスすぎて、逃げ出したくなる光景から、
「脱出しろって、言ってるのか……」
 いいじゃないか、とジュンは心を決める。水銀燈が僕を試すと言うなら、それに乗ってやろう。何故か、とても水銀燈が自分に甘えたくなることがあるのか知りたかった。
「……だけど、すっげえ時間かかりそうだよなぁ」
 だけど、やっぱりため息は出てしまった。そりゃカオスだもん。



 一時間後。ジュンは、何故かところどころ服が破れたり脱がされかけてたりしながら、水銀燈のもとへたどり着いた。
「はぁ、はぁ……どうだ、水銀燈! 僕は、僕は生きているぞ!」
「あら、一時間くらいしか経ってないのに。てっきり、四、五時間かかると思っていたわぁ」
 上出来、上出来と水銀燈はジュンの頭をなでた。それで、ジュンは気恥ずかしくなる。
 顔が近くなったせいで、さっきよりも水銀燈の少し酔った顔が鮮明に見えた。だから、思った。
「ああ――何て、綺麗なんだろう」
「ええ?」
「……あ、いや、桜が」
「ああ、そうねえ。夜桜というのは、綺麗なものよねぇ」
 二人で、空を見上げる。風に舞う花びら。空に散らばる星々。十六夜の月。それは、完成された風景のようにジュンは感じた。
「でもねぇ、ジュン?」
「え?」
「さっきでの満点の解答は――」
 驚く暇もなかった。その言葉で、ジュンが振り返ったときには、

「――私のことを、綺麗だって言ってくれるのが、満点よ?」
 その言葉と、唇に熱い息遣いがあった。


「……あはぁ。唇貰っちゃったぁ」
「す、水銀燈!?」
「なぁに?」
「よ、酔っているのか?」
 ジュンは、驚いた。今さらながら、驚いた。っていうか、平静でいられるわけがなかった。水銀燈。ついさっき、見惚れてしまった水銀燈と、キスを――。
「うふ、そうよぉ。酔っているわぁ」
「……そ、そうか。でも、ダメじゃないか。酔っているからって、軽々しく、そんなことしちゃ」
 酔っていたから。その言葉を、ジュンはどこか残念に思う。何を、期待したのだろうか――。
「はい」
「んぐっ!?」
 突如、ジュンの口にあの独特の味が広がる。
「……って、これ酒じゃんっ」
「間接キスね?」
「そ、そこは、気にするところじゃ……」
 ジュンは、ない、とは言えなかった。水銀燈の恥らった顔。いやいや待て待て。だって、キスだってしただろうに。これは、孔明の罠だ! そうだ、そうに決まっている。
「これで、ジュンも酔っ払ったわね?」
「いや、別に――」
「酔ったわよね」
 疑問系じゃなかった。っていうか、笑顔が怖かった。
「はい、酔いました」
 何か、すごい情けないなぁ、とジュンは思った。


「なら、お互い酔っ払ってるんだもの。仕方ないわ。……ね、だから、キスして」
「……え?」
「だー、かー、らー。私に、キスをして?」
 ジュンの首に絡みつく腕。本当に、首を少し動かせば唇は触れ合う。
「そんなの、ダメだよ」
「あら、何でぇ? 甘えてほしいって言ったじゃなぁい」
 それとこれとは、話が別だ。そう思う心とは別に、ジュンの中に水銀燈の唇をすごく魅力的に感じる心があった。……それは、何故か昔からあるような気がして。
「……あーあ。ジュンのうそつき」
 そう思った瞬間、水銀燈の腕が解かれる。距離が、いつもの距離に戻る。
「甘えさせてくれるって、言ったのに」
「だって、おかしいよ。本当に、酔ってるんじゃないか?」
「あら、酔ってるって、言ったじゃない。……それに、聞くけど。もし私が普段こんなことをして、ジュンは答えてくれた?」
 答える? 何に――。それは、わからないふりだった。本当は、わかっている。そうだ。確かに、水銀燈の言うとおりだった。
「あの子達のことがあるからね。逃げるでしょう、ジュン」
「…………」
 図星、というか、事実だった。ジュンは、誰か一人を選ぶなんて、出来ないと考えていた。


「だから、酔ってるの。酔ってるんだから、私にキスしても別にいいのよ? しょうがないことっていえることだし。……この理論なら、キスくらいしてくれると思ったんだけどねぇ」
 そう言った水銀燈は酔っている様子はない。それどころか、少し、悲しそうにジュンには見えた。
「……僕は」
 そして。その、心細そうな水銀燈を見て。ジュンは、決めた。
「なあ、水銀燈、僕は」
「え――?」

「僕は――、酔ってなんか、ないぞ」
 ジュンは、水銀燈を、抱きしめ、キスをした。


「……何、それ……」
「言っとくけど、僕は、酔ってないからな」
「……私、勘違いするわよぉ?」
 すがるような瞳で、水銀燈はジュンを見た。
「勘違いって、何だよ」
「……ジュンが、」
「僕が?」
「ジュンが、私のことを好きなんじゃないかって――」
 ……そして、また。
「それは、勘違いじゃないよ」
 二人の影が、ゆっくりと、
「僕は――」
 桜の花びらが舞う中で、
「水銀燈のことが、好きだ」
 ひとつに、なった。


「……今さらながらに、恥ずかしいわねぇ」
「いや、僕はあんまり」
「ええ、私だけぇ?」
 不満そうな顔。そうか。これが、水銀燈の甘えた姿なのか、とジュンは思う。そして、それを愛しく思う。
「ふふ、まあ、いいわぁ。ジュンには、もっと恥ずかしい思いさせてやるんだから」
「……うわぁ、すごい邪悪な笑み」
「ちゅっ」
「「「「「「ああーーーーーーーっ!」」」」」」
 水銀燈の唇がジュンに触れた瞬間、その世界は地獄とかした。
「……まさか」
 ジュンは、後ろを振り向くのがイヤだった。っていうか、想像もしたくなかった。
「ね、恥ずかしいこと、ちゃーんと言ってくれるわよね?」
 どうも、逃がしてはくれないらしい。水銀燈は、純真な笑顔でそう言っている。ジュンとしても、確かに言うのはやぶさかでない。ただ――
「ジュン」「ジュンっ」「ジュンくん…」「じゅーんー」「ジュンかしらー!」「……ジュン」
 ――ただ、後ろに居る彼女たちが、話を聞いてくれるとは思えないのだ。

 それからは、もう大変。ひっちゃかめっちゃかで、やっぱりカオスな空間。……だけど、とある二人の手は、その間中ずっとつながれていたとか。
 もちろん、それを見て激昂する少女たちが居るのだが、まあ、それはそれ。

 それは、きっと日常になりゆく、たったひとつのほんとうの幸せだから――。

end


オマケ。

都合により音声だけでお送りします。決して地の分書くのがめんどくさいからじゃないです。いや、マジで、本当なんですって、信じ(以下略

「ん、何だ、ジュンからテープが届いたぞ……呪いのビデオ? ははぁ。これで脅かそうとしているのか。俺を誰だと思っている。べジータさまだぞ」
「結構忠実だな。ああ、これが例の井戸のシーンか。あれは怖かったなぁ」
「あれ、でも、このシーンは、七日目に出るんじゃあ――」
たーんっ。たんたんたんたん、たんたんたんたん、(例のメロディ
「何だ? ……俺から? 留守電に何か入っている。って、これは、まさか」
『(留守録)……これからが本当の地獄だ』
「まさか、まさか――な、何で、見たばっかりなのに、テレビから出てきて、ぐわ、な、何でお前まで」
「……くそ、なめるな、なめるなよ! 俺を誰だと思っている。王子だ。べジータだ! うおおおおおおおお!」
「……は、ははははははは! 勝った! 勝ってやったぞ!」
【……あ………あ………あ】
「……な、まさか! 呪怨まで――バカなっ! 蘇っただと!?」
【――――】←あの目
【イッショニアソボ?】
【あ……あ……ああああああああ】
「……ここからが、本当の地獄だ」

――とあるノートの書き込み
〇月×日△時◇分
貞子と由美子に追い詰められるも、すんでのところで撃退。しかし、伽椰子が現れ、奇襲。お約束どおり貞子と由美子も蘇り、三人による呪殺。

余談だが、ドラゴンボールって便利ですね。黄泉帰りおめでとう、べジータ。