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『バンドはじめました?~文化祭一週間前~』
~水銀燈宅(地下)~
真「ふぅ…今日はここまでにするのだわ。」
リーダー真紅が今日の練習の終了を告げる。
多数決でリーダーを決めようと真紅が言い、真紅4票、水銀燈1票の結果、真紅がリーダーに決まった。
当然水銀燈に入れたのは真紅。本人以外の満場一致だった。
水「…やぁっぱり、真紅の負けず嫌いは筋金入りねぇ。」
水銀燈は呟く。ベースを始めて3週間、真紅は昼夜問わずに練習した。隣に住むジュンの近所迷惑など無視して。
雛苺に感じた敗北感が真紅を駆り立て、今では演奏曲目はスコア(楽譜)を見なくても弾けるくらいに成長した。
雛「ぜぇったい良いライブにするの~!!」
翠「当たり前ですぅ!バカな事言うなです!!チビ苺!!」
そんなやりとりを見て一同が笑う。『私たちなら大丈夫』そんな気持ちが溢れる笑顔。
翠・蒼・雛「じゃ、また明日ね(ですぅ/なの~)!」
3人が帰った後、真紅は水銀燈に話しかける。
真「私…うまくなってるのか解らないわ。何か足を引っ張ってるみたいで…。」
水「何故ぇ?今日もミスなんかしてないし、演奏は完璧だったわよぉ?」
含みのある言葉を返す水銀燈。だが、真紅にも言葉の意図が伝わった。
真「ええ…演奏は…でしょう?」
真紅の悩みは技術では無く気持ち。精神的な不安。
水「ふふ…真紅はやっぱりおばかさぁん♪そんな弱気な真紅もちょっとかわいいわよぉ?」
真「茶化さないで!!!」

真紅の目は真剣そのものだ。不安の色と…うっすらと涙に潤んでいた。
真「……………」
水銀燈はバツが悪そうに謝る。
水「えぇっと…ごめんねぇ?私の部屋に行きましょう?紅茶、淹れてあげるわぁ。」
真紅の手を引いて地下を後にする。
~水銀燈の部屋~
真(水銀燈の部屋…無機質な感じね…。)
水銀燈の部屋は黒と白で統一されていた。女の子らしい物は一つもない。
暫くして、水銀燈が戻ってきた。手には可愛らしいトレイに乗ったカップとポット。
無機質な部屋に暖かい色が灯った様に感じ、真紅は少し和んだ表情だ。
水「さっきはごめんなさいね?」
紅茶を淹れながら水銀燈が優しく、でも真面目に謝る。
真紅は首を振る。機嫌は直っているのに。声を出したら涙が溢れそうで。
水「…真紅が何に悩んでるかは何となく解るわぁ。」
真「…っ………」
水銀燈はお構いなしに続ける。子供を諭し導く母親の様に優しく。
水「ねぇ真紅ぅ?音楽は好き?」
真紅はコクリと頷く。
水「じゃあねぇ、真紅は楽しんでるぅ?」
真「えっ…………!?」
真紅は水銀燈の目を見た。全てを見抜いた様な目で水銀燈が見つめている。

水「音楽ってねぇ…『音を楽しむ』って書くのよねぇ。楽しんでないなら、ただの音なのよぉ。」
真「音を…楽しむ……」水「そう。それでね、楽器は単体でも音楽はできるの。でもね、どんなに技術が有っても『気持ち』がなかったら、ただの音でしかないの。」
真「気持ち…かぁ………」
水「でもぉ!真紅がそんな悩みを抱えるには10年早いわね♪」
水銀燈がイタズラっ子の様に笑う。真紅は『もぅっ知らないのだわ!』っと拗ねてみせる。水銀燈はすぐに真面目に戻り真紅に言う。
水「そりゃぁね、始めてすぐにここまで上達するんだもの。今までみんなに追いつこうって必死だったのねぇ。楽しむ暇も無かったでしょう?心に余裕が出来た証拠よぉ!良い傾向ねぇ。」
真紅「水銀燈にも…あったの?こんな時期が…。」
水「さぁ……ね。そのうち教えてあげるわぁ♪」
水銀燈は笑ってはぐらかす。真紅もつられて笑っていた。
水「真紅ぅ。あなたは落ち込んでいるより笑っている方がいいわぁ!」
真「なっ…(///////)」
水銀燈の突然の言葉に顔が赤くなる。
水「それとねぇ、楽器は個性なの。私たちと一緒よぉ。気持ちが重なれば、音は何倍にもふくらむのよぉ。」
真紅の蒼い目にはもう悩みなど無く、明るく輝いていた。
真「水銀燈!!地下に戻るわ。付き合いなさい。」
水「仕方ないわねぇ。望むところよぉ♪」
『バンドはじめました?~文化祭一週間前編~』終了
あちゃ~…前回と変わらねえ。
雛「前回から出番が少ないのー!」

水銀燈の家からの帰り道、翠星石、蒼星石、雛苺が並んで歩く。
翠「ちょっと小腹が減ったです。マックでちょこっと食べて行くです!」
雛「ひなはいちごシェイク飲むの~♪」
蒼「晩ご飯食べれなくなるよ?…ま、たまにはいいかな。」
店内に入り、それぞれが注文する。
雛苺はいちごシェイクとアップルパイ。蒼星石はコーヒーを持って席についた。
最後に翠星石が席に来た。手には…
ビッグマックセットとテリヤキバーガーセット。(しかもLサイズ;
それに、ダブルチーズバーガーとナゲットを単品で。
雛「わぁ………すごいのー……。」
蒼「小腹が空いたんじゃ……?」
呆気にとられる二人を余所に翠星石はガッスンガッスンとたいらげていく。
翠「…ふぃ~…。ごっそーさんです。」
オレンジジュースを飲みながら満足そうに言う。
雛苺は、まだアップルパイを半分程食べたくらいなのに。
雛「食べてる時の翠星石は怖いのー。」
蒼「……おまえに食わせる晩ご飯はねぇ!!」
満足顔だった翠星石がマジ顔になる。それで二人は『言い過ぎた!!』と思った。
雛・蒼「ごめんなさい。言い過ぎました(なの)」
翠星石はキョトンとしている。どうやら聞こえてなかったようだった。
翠「…今日の真紅…何か変だったです。」
ふと翠星石が言った。それは二人も思っていた事だ。
蒼「そう…だね。」
雛「やっぱり真紅がお歌唄いたいのかなぁ…?」
雛苺は真紅をボーカルから降ろした本人。だが、それは真紅も納得した話しだ。

蒼「何か…張り詰めた感じだったね。真紅は何でも自分で抱え込むからなぁ。」
翠「まぁったく!困ったリーダーですぅ。TOKIOのリーダーとドッコイドッコイですぅ。」
蒼(真紅本人が聞いたら怒るだろうなぁ。ふふっ)
蒼星石には、それが翠星石の優しさの裏返しだとわかっていた。
雛苺は押し黙ったままうつむいている。
蒼「雛苺?どうしたのさ?」
翠「やぃチビ苺!ボケボケしてるとアップルパイ喰っちまうですよぅ♪」
蒼(まだ食うか…)
アップルパイに手を伸ばす翠星石。雛苺は翠星石の口にアップルパイをねじ込む!!
翠「!?もがっ!?」
カウンター気味にアップルパイをくらった翠星石は若干ビビる。おそるべし雛苺。
雛「…真紅ぅ…」
真紅の事を考えている。後から入ってボーカルを奪って、ベースをやらせる羽目になってしまったのは自分のせいだ…と。
蒼「雛苺…真紅は気にしてないよ。気にしてたらベースを始める気にならないと思うな。」
翠「(モシャモシャ…んぐっ)…全くですぅ。そりゃ真紅も悔しかったと思うです。
でもおまえの歌声は真紅も認めたですよ?不本意ながら、翠星石も認めてますです。」
雛「翠星石…蒼星石…。ありがとなのー。ひな、真紅が気持ち良く弾けるようにもっと頑張って唄うのー!!」
翠星石と蒼星石に励まされ雛苺の決意は固まった。『みんなの為に唄う』と……

翠「やれやれですぅ。話は変わるですけど、大事な事忘れてますですぅ。」
雛・蒼「大事な事~?」
二人が顔を合わせ頭に?マークをだしている。
翠「はぁ…判らないですかぁ。おバカ苺はともかく蒼星石には落胆しましたです。」
雛「あ…おバカって言ったの…。」
蒼「何だい?本当に判らないよ。大事な事って?」
翠星石が胸を張って言う。
翠「私たちのバンドの名前ですぅ!!」
二人の?マークが!マークに変わった。ぽんっと手を叩いて納得したようだ。
翠「水銀燈と真紅も、きっと忘れてます!」
蒼「え?『蒼星石と薔薇乙女隊』だったんじゃないの?」
蒼星石が精一杯ボケる。
雛「かわいい名前がいいのー!」
翠「ん~横文字かしら~ですぅ。でも良いのが…」
雛「良いのが思い浮かばないのー。名前決めるの難しいのー。」
翠「やっぱり真紅と水銀燈にも聞いて、みんなで決めるですぅ。」
雛「さんせーーなのー♪」
蒼星石の精一杯のボケは二人には聞こえなかったように話が盛り上がる。
翠「自分の名前を入れるなんて言語道断ですぅ。」
雛「どうだ~ん♪」
蒼(くっ………)
どうやら意図的に放置されたらしい。
翠「じゃぁ水銀燈の家に戻るですぅ。」

翠「やれやれですぅ。話は変わるですけど、大事な事忘れてますですぅ。」
雛・蒼「大事な事~?」
二人が顔を合わせ頭に?マークをだしている。
翠「はぁ…判らないですかぁ。おバカ苺はともかく蒼星石には落胆しましたです。」
雛「あ…おバカって言ったの…。」
蒼「何だい?本当に判らないよ。大事な事って?」
翠星石が胸を張って言う。
翠「私たちのバンドの名前ですぅ!!」
二人の?マークが!マークに変わった。ぽんっと手を叩いて納得したようだ。
翠「水銀燈と真紅も、きっと忘れてます!」
蒼「え?『蒼星石と薔薇乙女隊』だったんじゃないの?」
蒼星石が精一杯ボケる。
雛「かわいい名前がいいのー!」
翠「ん~横文字かしら~ですぅ。でも良いのが…」
雛「良いのが思い浮かばないのー。名前決めるの難しいのー。」
翠「やっぱり真紅と水銀燈にも聞いて、みんなで決めるですぅ。」
雛「さんせーーなのー♪」
蒼星石の精一杯のボケは二人には聞こえなかったように話が盛り上がる。
翠「自分の名前を入れるなんて言語道断ですぅ。」
雛「どうだ~ん♪」
蒼(くっ………)
どうやら意図的に放置されたらしい。
翠「じゃぁ水銀燈の家に戻るですぅ。」

席を立つ3人。店を出て水銀燈の家に戻る。
雛「ひな…アップルパイ半分しか食べてない気がするのー」
蒼「いや、全部食べたよ(翠星石が。ってアレ無意識かよ!?)」
翠「美味しそうだったですぅ。(美味しくて痛かったけど。っつかまだイテぇし。)」
雛「ま、いいのー。何だかスッキリしてるから♪」
やはりおそるべし雛苺。
~水銀燈宅~
ぴんぽ~ん…♪がちゃ。
水銀母(以下銀ママ)「はぁ~い。ってあらあら、蒼ちゃんに翠ちゃんに雛ちゃん♪いらっしゃ~い。銀ちゃんね?あがって待っててねぇ~」
水銀燈の母が迎えてくれた。リビングに通される。
銀ママ「銀ちゃぁん?銀ちゃぁ~ん??」廊下から水銀燈を呼ぶ声がする。すぐに階段を駆け上る足音が聞こえ、水銀燈の声がする。
水「もう!ママったら、子供じゃないんだから『銀ちゃん』はやめてって!!」
銀ママ「だぁってぇ。お友達が来てるのよぉ?」
水(////)「………」
水銀燈は耳まで真っ赤になっている。
蒼「やぁ。ちょっとバンドの事でもう少し話したいから戻って来たんだ。」
雛「戻って来たんだ。なの~♪」
蒼星石の真似をしてみる雛苺。そして…
翠「ま、子供じゃないものねぇ。『銀ちゃん♪』」
水「ちょっ!!翠星石!!(///////)」
学校ではクールでワイルドな水銀燈も母の前では普通の娘ッコになるらしい。
翠(このネタ、半年は引っ張れるですぅ。)

水「コホン…。ちょっと待ってて。真紅も呼んでくるわぁ。」
水銀燈が席を外し地下へ降りていった。
銀ママ「みんないつもありがとうねぇ。あの子ねぇ、最近笑顔が増えたのよ。」
蒼「いえ、そんな。ボク達こそいつもご迷惑かけっぱなしで…」
銀ママ「あの子ねぇ、『もう二度とドラムは叩かない』って言ってたのよ。」
翠・蒼・雛「えっ………!?」
廊下から二人の足音が聞こえ、話はそこで区切られた。
真「どうしたの?何か問題?」
あたかも自分の家の様にソファに座る。
翠「大問題ですぅ!!名前が無いですぅ!!」
水「名前?誰の?あなたは翠星石でしょぉ?」
真紅と水銀燈は頭に?マークを飛ばしている。
翠「何をボケてるですか!!そんなボケは3点ですぅ!!だからぁ、バンドの名前が無いんですぅ!!!」
水・真「ぁあー!なるほど。」
納得。と言った表情だ。
雛「ひなねぇ考えたけど良いのがなかったのー。」
真「そういえば、忘れてたわ。本当に余裕が無かったのね。」
水「ふふっ…そう言う事。まぁ、名前なんて何でも良いわぁ。」
あーでもないこーでもないと5人で悩む姿がどうにも微笑ましい。そんな事を銀ママは思い、助け船を出す。
銀ママ「あのねぇ、一人一個づつ、この紙にバンド名を書いて、ウチワで扇いで一番遠くに行ったので決定で良いんじゃない?」
一同「ソレ採用!!」
…数分後6枚の紙が真紅の手元に集まる。
そして…真紅がウチワを扇いだ!!

運命の6枚の紙がフワっと宙を舞う。
一枚落ちて…もう一枚落ちる…その時。
雛「ぶぇっきしゅーぃ!!!!…う~ぃ。(ズルル」
全員「はぁっ!?!?」
一番近くにあった紙が、一番遠くに行ってしまった。
雛「ごめんなのー!がまんできなかったのー!!もっかいしよ?ねっ?」
真「くすっ…いいんじゃない?これも運命。今のが神風だったかもしれないわ。」
翠「本当におバカ苺ですぅ。こんな時に。」
みんなで笑いながら真紅は遠くに飛んだ紙を拾いあげる。
真「発表するわよ?」
みんなが笑いを止め真剣な表情をする。
真「…………横文字は読めないのだわ。」
ガタガタガタ…全員ズッコケる。立ち上がった翠星石が代弁する。
翠「Rozen Maiden」
みんなが気を取り直して『おぉ~』っと感嘆の声を出す。
銀ママ「あらやだぁ。それ私のだわぁ♪」
銀髪の三つ編みを揺らせながらはしゃぐ。本当に高校生の娘の母か?と思う程にかわいい。
真「ま、格好いいわね。名前負けしたら笑われるわ。」
雛「ひなは『ぽいずん・べりぃ』って書いたのー」
何とも毒々しいネーミングセンスである。
水「私は『薔薇☆乙女』ママと同じよぉ。ドイツ語か日本語かの違いね。」
やはりこの辺は親子である。
翠「翠星石は『薔薇少女隊』ですぅ。大槻〇ンヂ最高。」
ぱくりである!!ちなみに雛苺の神風がなければこれだった。いやはや雛苺様々である。

蒼「真紅は何て書いたんだい?」
雛「聞きたい聞きたい~」
二人の言葉で視線が真紅に集まる。
真「え?『エレガント真紅とローズビッパー』。」
普通に自然に言う。が、フォーク好きでも流石にそんなのはどうかと思うぞ真紅!
一同(…………こいつリーダーでエエんか?)
真紅にはセンスがない事をみんなが再認識した。
ちなみに蒼星石は、みんなの色(個性)が集まる場所と言う意味で『パレット』と書いたのは内緒にして、紙をまとめてゴミ箱に入れた。
真「明日からRozen Maiden始動するわ!!」
一同「おー!!」
全員が気合いを入れた。明日からの再出発のために。
真「じゃぁ、今日は解散ね。」
水「そうねぇ。お疲れ様ぁ!」
蒼「お邪魔しました。(ペコッ」
雛「また明日なの~♪」それぞれが家路につく。みんなを見送る水銀燈。翠「また明日ねぇ♪ぎ・ん・ちゃん(はぁと」
また顔が赤くなる水銀燈。明日は翠星石にハバネロキャロットケーキを作ってあげる事を一番星に誓った。

明日から再出発。もう何が起きても揺るがない。彼女達は『Rozen Maiden』なのだから………

文化祭一週間前編.その②。完
おまけ
翠星石と蒼星石が家に着いた。
蒼星石が愛用のギターの手入れをしていると、
「蒼星石~」リビングから翠星石の声が。
蒼「何?どうかしたの?」
翠「ごはんマダ~?(AA略」
蒼「おまえはボケ老人かぁ~!!!!」
やっぱり蒼星石は突っ込み担当だね!

『バンドはじめました?~文化祭本番!~』
真「もうすぐね。雛苺?緊張してない?」
真紅は緊張しているであろう雛苺に問いかける。
雛「大丈夫なの!早く唄いたくてウズウズなの~!!」
真紅の心配を余所に、緊張の欠片さえ見えない。
ふと、隣の翠星石に目を向ける。何か違う…おとなしい。
水「翠星石ぃ?おーい?」
ほっぺたをつまんで引っ張る。
水(あ…やーらかい♪)
翠「ひゃ…?ひゃにふんれふはぁ!!(なにすんですかぁ!!)」
翠星石は驚いて慌てている。どうやら緊張していたのは翠星石だった。
普段は悪魔の様に憎まれ口ばかり叩く彼女でも緊張するんだ。
それぞれがそんな事を思って笑う。翠星石本人はぽかぁんとしているが、すぐに耳まで紅く染めていつもの憎まれ口を叩く。
真「それでこそ、翠星石よ。貴女にはおとなしいのは似合わないわ。」
翠「なっ……失礼なっ!」
蒼「準備完了。どう……かなぁ?」
翠星石の言葉を遮り、メイクがやっと終わった蒼星石が立ち上がる。
一同「ぉおぉ~…」
感嘆の声があがる。普段化粧っ気のない蒼星石だから新鮮な感じだ。
普段は履かないスカートの舞台衣装だから素直に可愛い。いや、可憐と言った方が的確だろう。

…わあぁぁぁー…。

前のバンド『くろまてぃ』の演奏が終わった。暗幕が降り、そして、スタンバイを終える。
『次のバンドはぁ!!クールに可愛い5人組!!Rozen Maiden!フゥー!!』
司会のHG先生の声がする。彼女達の文化祭が始まった…。

ステージは暗い。その闇にうっすらと浮かび上がる純白の十字架。
突然スポットが当てられ露わになる十字架に張り付けられた銀髪の白いドレスの少女。
荘厳に鳴り響くパイプオルガン(協力/金糸雀)の音色の中、十字架が沈んでいく。
十字架が消え、ステージには闇に戻り、パイプオルガンの残響が落ち着いた時、
ドラムの音が鳴り響くと同時に今度はドラムにスポットが当たる。
さっきの銀髪の少女が今は漆黒のマントを纏っている。
その光景に観客は目を奪われている。ひとしきりのドラムソロが終わり、歓声が起こった。
突然バイオリン(協力/金糸雀)の音が響いた。照明が真っ白になり暗闇を一掃する。
緑色と青色のドレスを着た二人の少女がステージ脇からギターを掻き鳴らして走ってくる。
二人が位置に着いた時、爆発音と共にステージの下から二人の少女が飛び出してきた。
目を見張る赤と愛くるしいピンク。
雛「みんな~いくの~!!!Rozen Maidenよろしくね~なのー!!!」
雛苺は客席に向かって煽る。会場の熱はさらに熱くなる…。

~曲目~
『flower』
『薔薇と雨』
『名残雪(Vo.真紅とG.蒼星石)』
『ハナノユメ』
『満月の夜』

ライブは完璧だった。心残りがあるとすれば、時間の都合でアンコールに応えられなかった事だろう。
ライブが終わる時には全員にファンが集って大変だった。(水銀党とかいうのが警備してくれたけど。

文化祭終了後、真紅は一人、音楽室に居た。
一ヶ月前、この場所で出会い始まったバンド。
真紅は沈む太陽を見つめながら、余韻に浸っていた。
真紅達の文化祭は大成功だった。
金「あら?真紅かしら?」
入り口に金糸雀が立っていた。
真「金糸雀…今日はありがとう。」
真紅は金糸雀に笑顔を向ける。今日のライブの成功の陰には彼女がいた。
演出も彼女が考えてくれたし、セットにかかる経費も生徒会から××してくれた。
何より、真紅が一曲歌うことを初めに勧めてくれたのは金糸雀だった。
金「真紅こそ、お疲れ様かしら?私も真紅の歌が聴けて楽しかったもの!」
真「そう言ってくれると嬉しいわ。」
金「謙遜する事はないかしら?フォークに限っては真紅の声は雛苺に負けてないかしら。」
金糸雀は素直に言った。真紅は少し照れたようにはにかむ。
雛「あ~!真紅と金糸雀いたのー♪」
そこへメンバー全員がきた。
蒼「そろそろ行こうよ?ママさん待ってるよ。」
翠「腹減ったですぅ。今日は銀チャンの家で打ち上げですぅ♪」
水「銀チャン言うな!(/////)」
真紅は微笑んだ。素晴らしい仲間がたくさん居る幸せを感じながら。
何でも分かち合える大切な仲間となら笑っていける。
真(一人じゃないんだ…。)
夕暮れに並んで歩く『仲間達』は夕陽よりも眩しかった。

『バンドはじめました?』~終劇~

打ち上げ
~水銀燈宅~
銀ママ「みんなお疲れ様ぁ。可愛かったわよぉ。んふふ♪」
料理を運んできた銀ママが労いの言葉をかけてくれる。
水「可愛かった…って?見に来てたの!?チケットは!?」
狼狽える水銀燈。しかし雛苺がとどめを刺す。
雛「ひながママにあげたのー♪」
雛・銀ママ「ね~♪」
水銀燈は言葉を無くして口をパクパクさせている。
リビングが笑いに包まれた。
グラスを持った真紅が音頭をとる。
真「じゃぁお疲れ様ねっ!!乾杯ー!!」
一同「乾杯~~~!!!!」
銀ママ「今日は特別よぉ!飲みなさぁい♪」
乾杯が終わり、銀ママが様々な酒瓶をドンッとテーブルに置く。
~30分後~
翠星石は相変わらず一心不乱に食う。隣で顔色を変えずに焼酎を飲む蒼星石。
雛苺は金糸雀とお喋りに夢中だ。
翠「ふぅ…腹一杯です!ご機嫌ですぅ♪」
水「翠星石?女の子ならもう少し気をつけなさぁい?ベジータ君に嫌われるわよぉ?」
真「そうね。いくら太らないって言っても、ガッついたレディは嫌われるわ。」
翠「ふ…ふん!真紅こそ、もっと食べておっぱいを膨らますです!!」
翠星石は皮肉たっぷりの負け惜しみを吐く。真紅はあえて相手をしない。
真「そういえば、水銀燈には浮いた話無いわね。好きな人は居ないの?」
真紅は聞いてみた。やはり年頃の娘ッコは、そんな話題が好きらしい。
雛苺と金糸雀も集まってきた。(蒼星石は飲み続けてる。現在2本目
水「私は…もう愛せないから…。」

水銀燈はうつむいて、ワインに口をつけた。
翠「それって…ドラムをやめたきっかけ…ですか?」
水銀燈はハッと翠星石の顔を見る。翠星石は、しまったっ!という表情だ。
水「なぜ…知ってるの……?」
雛「こないだね…ママが言ってたから…」
雛苺がおそるおそる言う。金糸雀は訳が分からない。でも、金糸雀の目に映る水銀燈は悲しく儚くそして怖かった。
真「私たちには聞く権利…無いかしら?『Rozen Maiden』のドラマーさん?言いたくないなら構わないわよ?」
真紅は直感した。(水銀燈も私と一緒だったんだ)と。
水「しん…くぅぅ……うぅぁ…」
水銀燈は真紅の胸で泣き出した。今までで一番大きい声で泣いた。
水銀燈の顔は、何時かの真紅同様、涙にまみれていた。

どれくらい泣いただろう。5分…?30分…?いや…もっと…?
水銀燈は顔をあげた。そこには黙って微笑んで髪を撫でてくれる真紅がいた。
水「ごめ…服…汚しちゃったわぁ…」
真「辛かったのね。いっぱい我慢してたのね。」
水銀燈は顔を拭いてソファに座り直した。
水「ごめんなさい。せっかくのパーティーなのに。」
真「ふふっ。弱気な貴女も、たまには良いものね。」
水銀燈に何時か言われた事を言い返す。水銀燈も思い出した様にクスッと小さく笑う。
雛「あ~!!今笑ったのー♪」
翠「ほら、もっと笑うですよ!銀チャン♪」
雛苺と翠星石が水銀燈に抱きつく。
水「もぅ…銀チャン言うなぁ……」
金糸雀の目に映る水銀燈は今まで以上に素敵な天使の笑顔だった。

水銀燈は落ち着いたらしく、ようやく過去を話し始めた。錆び付いた扉を開けるように…。
~回想~
水「…ふぅ……疲れたぁ!!」
男1「お前また上手くなったなぁ。合わせんの大変だよ!」
水「才能…ってヤツかしらぁ?」
男1「真似すんなよ。銀チャン♪」
水「こらっジュン!!銀チャン言うなぁ!!!!!!」
場所は場末のジャズBAR『メイメイ』。
水銀燈と「ジュン」と呼ばれた少年は、音合わせをしながら他のメンバーを待っていた。
ジ「しかし…あいつら遅いなぁ。何やってんだ?」
コーラを片手に呟くジュン(ちなみに真紅の幼なじみとは別人)。肩からはベースが下げられたままだ。
一人の男が走ってきた。全力で走ってきたのか肩で息をしている。
ジ「林田!!遅いぜ~!ってどうした?」
林「…かった」
ジ「ん?買った?何を?」
林田はギター担当のゴツい男である。
林田は、息を切らせているが、顔はうれしそうだ。いきなり見たら変質者扱いされそうだが。
林「違う!!受かったんだ!!オーディション!!!」
水「え…嘘ぉ………!」ボグゥッッ!!!!!
林「ぐはぁっ…!!」
水「痛い?林田くん?」
林「あ…あぁ…。」
水銀燈はジュンと一緒に喜んで跳ね回っている。
林「まぁ…かわいいから許す。」
損な役回りだな…とも思いつつ、二人を見るのが好きだった。

ジ「林田?フレディは?一緒じゃないのか?」
ジュンはもう一人の事を聞いてみた。
このジャズBARの店長のフレディ。見かけは40代だが実は21歳。無口なボーカルのジェントルメンだ。
林「フレディならそこにホラっ。」
そこには、カウンターの奥でウーロン茶を飲んでいる。
彼が飲むとウイスキーにしか見えない。が、彼は下戸だった。
ジ「いつからそこに居たんだよ!?」
フ「…………」
まぁいいか。っという感じで練習を続ける……。
~帰り道~
水「ねぇジュン…。」
海沿いで並んで座る二人。夏の夕暮れに吹く風が気持ち良い。
ジ「んぁ?なに~?」
水「受かったんだよねぇ…」
ジ「あぁ。受かったんだ。ま、最終選考で落ちるかも知れないけどなww」
水「あと…一つ………かぁ。何か実感沸かないなぁ~。」
ジ「ははっ!落ちたら落ちた時だよ。精一杯やるだけだ。」
そこで会話が途切れ、ジュンはバイクの所まで行き、エンジンをかける。
水「ねぇ…合格したらさ、話したい事……あるの。」
いつもならジュンに「ガラじゃねぇなwww」なんて言われそうな真面目な声だと水銀燈は思った。
ジ「………(・∀・)b。」
ジュンは歯切れの良いアクセルワークで走り去った。

水銀燈は彼をその場で見送った。バイクの音が聞こえなくなるまで。

その日の夜。
銀ママ「銀ちゃぁん?電話よぉ~?」
水「はぁーい♪って、銀ちゃんはやめてってば!!(もしかしてジュンかも?ww)」
ぱたぱたと階段を下りて受話器を取る。
水「もしもーし?」
?「…………俺。林田。」
林田だった。ジュンじゃなくて少しトーンが落ちる。
水「ああ、どうしたのぉ?」
林「ジュンが………事故った…。」
林田は顔の割には嘘はつかない男だ。それは今日の昼で再確認している。
水「怪我は?意識は?どこの病院??」
林「落ち着け。命に別状はない。意識もしっかりしている。」
水銀燈は安堵の息をもらした。
林「ただ…手が………無くなったんだ。」
林田は涙を殺してつづけた。水銀燈には理解が出来なかった。
林「薔薇ヶ丘総合病院407号室だ。」
水銀燈は力無く立ち上がり、無言で出ていった。涙を気にしている場合ではなかった。
水「早く…行かなきゃ……。」
ひたすら走る……走る……走る…。
病院に着いた。息をする度に肩が揺れる。
病室の前で呼吸を整える。一言文句を言わないと気が済まない。
勢いよくドアを開ける。
水「ちょっとジュン!……ん?」
ベッドには誰もいない。開いた窓から月明かりが差し込み、夜風がカーテンを揺らしていた。
視界が暗転する。不安が頭を支配する。
水銀燈は窓に近付き下をのぞき込む……………
……………不安が的中した。

~葬儀の日~
……澄み渡った空…白い雲…水銀燈はBARメイメイの窓から眺めていた………。
でも、その目に映るのは白と黒の世界。彼が居ないなら色なんてない方が良い。
フレディが黙ったまま隣にいる。彼は涙を流してはいない。だが、泣いていた。必死に耐えていたのだ。
林田が学制服でやってきた。三人は黙ったままだ。
林田が誰ともなく声をかける。
林「ジュン以上のベースいるかな…?」
フレディの頬を涙が伝う。
水「私ねぇ…ジュンの事大好きだった…合格したら……言う…って…ぁぅ…」
水銀燈も涙を流す。フレディは見向きもせずに水銀燈の頭をクシャクシャと撫でた。
林「解散………だな。」
フ「…………(頷く」
水「そう…ねぇ……。私もうドラムは叩かないわぁ。ジュンじゃないと駄目だもの。」
林「もったいないけどな。水銀燈の腕は…。」
フ「…………。」
水「ま、ジュン以上がいればねぇ…。そうだ!最後に一曲やらない?」
林「ああ…。ジュンに届くかな?」
水「何にしよっか…?」
フ「Friends……。」
水・林「フレディが喋った!!」
フレディがジュンのベースを持って演奏が始まる。
澄み渡った空に響く…永遠の愛しい友達へのプレゼント………『Friends』…。

~リビング~
水「………って話よ。」
雛・金「水銀燈~(抱き!)」
真「そう…私達がジュン君以上になれたと受けて構わないのかしら?」
翠「頼りないリーダーですけどね♪」
真「一言多いのよ!」
リビングに再び笑い声が戻る。
水「ふふっ。ありえないわぁ。だって、ジュンはジュン。あなた達はあなた達だもの。」
水銀燈の部屋に色が戻る日も近いかもしれない。
水(ジュンと同じくらい…あなた達が大好きよ!)
~終劇~

おまけ
水「さて、喉乾いちゃったわ。」
立ち上がると足にコツンと何かが当たった。
目線を前に向けると空の酒瓶の山の真ん中に蒼星石が鎮座している。
一同(おまえ…一応高校生だろ!!)
銀ママ「あらあらぁ♪蒼ちゃん!良い飲みっぷりねぇ♪」
蒼「くぴくぴ…♪」
~fin~